業種:運輸業界

流通業界ではDXの考え方が生まれた頃から活発に導入・運用が進められてきました。DX推進をしなければ後れを取ってしまうリスクがあるため、積極的な推進計画を立てようとしている企業もあるでしょう。この記事では流通業界でDXを進めて、優位に立つための情報をまとめました。流通でのDXの現状や課題、導入のメリットや成功事例をご紹介します。競合に対して優位に立てる企業に成長するDX戦略を考える際の参考にしてください。

流通DXとは何?

流通DXの意味

流通DXとは流通業界におけるデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)です。DXとは経済産業省の定義では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指します。

国土交通省では物流DXについて「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義しています。流通DXは「流通業界のビジネスにおいてデータ・デジタル技術の活用により、企業が競争優位性を獲得するための変革」と言えます。

参照:
デジタルガバナンス・コード2.0 |経済産業省
最近の物流政策について 2021年1月22日|国土交通省
関連リンク:DX推進業務効率化に繋がるのか?理由やDX推進の重要性、成功事例をご紹介

流通にDXが必要な理由

流通業界でDXが必要なのは、社会に対応した流通のあり方の抜本的な改革が求められているからです。経済産業省のDXレポートではレガシーシステムの破綻が2025年頃に発生し得ることを指摘し、DX推進の遅れによって2025年以降は最大で年間12兆円の経済損失が出る可能性があるとまとめています。流通業界は商品の小売を担い、経済活動の支えとなっており、DX推進によって消費のインフラを整えることが求められています。市場や顧客の変化の影響も受けて、柔軟な対応力がある流通基盤の構築が必要になっているのが現状です。

流通業界ではモノ不足や物価高、労働力不足などの課題を抱えています。イレギュラーがあっても生活インフラを安定して支えられる流通をDXによって実現することが重要です。

参照:
DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~|平成30年9月7日デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会
40年ぶりの物価高に直面する流通業のあり方を問い直す (METI/経済産業省)

流通業界の現状や課題とは

流通業界は現状として利益を上げにくい状況があります。流通業界における具体的な課題をまずは説明します。

消費者の価値観の変化

商品の買い手になる消費者の価値観が急速に変化してきたため、流通業界では対応を求められる状況が生まれています。安ければ良い、新しい製品が欲しいといった考え方はあまりなくなってきました。より良い体験を得られる商品を購入したい、物を持たずに利用できるサービスを使いたい、オンラインショッピングをしたいというニーズが高まってきたのが典型的な変化です。

消費者の価値観が多様化し、ターゲティングの必要性も高まっています。ニッチを狙った商品が功を奏することも増えています。業者による商品紹介よりもユーザーによる生の口コミを重視する傾向も強まっているため、商品を売れるようにするための戦略を考えなおさなければならないのが現状です。

人材不足の慢性化

流通業界に限ったことではないものの、人材不足の対策が大きな課題になっています。労働人口の減少によって人材獲得競争が厳しくなり、新卒採用が予定通りにできないケースが増えているのが現状です。人材不足が慢性化した状況に対応するためにも、今までにない取り組みとしてDXの積極的な推進が必要になっています。

購入行動の多様化

消費者の価値観の変化とも関連していますが、購入行動についても多様化が進んでいます。実店舗で買いたいという人も根強いのは確かです。しかし、実店舗はショールーム的に使って商品を見る場所として使い、購入にはECを利用する消費者も増えてきました。オンラインでの注文の方が簡単なだけでなく、複数のショップから最安値のところを選び出しやすいからです。オンラインで商品価格を確認してから店舗に行くという消費者もいるので、多様化する行動に対応することが必要になっています。

コロナ禍による影響

流通業界にはコロナ禍が大きな影響を与えてきました。EC購入が好まれるようになったのもコロナ禍による影響力があったのは確かです。コロナ時代の経験によってEC利用による商品購入の利便性がわかり、実店舗購入を好まない人も増えました。実店舗でも感染予防対策ができているか、混雑していないかといった点が重視されるようになっています。

DX推進で流通業界の課題をどのように解決できる?

流通業界には現状として多岐にわたる課題があります。DX推進でどのようにして課題解決ができるかを見ていきましょう。

EC経営による販売

EC経営によって販売チャネルを増やし、O2Oマーケティングを展開して売上を伸ばすのは成功事例が多いDXです。消費者の購買行動の変化によって店頭販売だけでは売れなくなってきています。ECでの販売をして店頭受取をできるようにするなど、EC経営による売上向上だけでなく店舗での販売も促進する施策を進めると相乗効果が生まれます。流通業界で売上の課題が発生している場合にはECに着目して販売戦略を立てるのが効果的な解決策です。

ユーザー・販売データの活用

ユーザーや販売に関するデータを活用することで自社商材に合う戦略を立てられます。ユーザーの購買行動のデータを分析すれば売れるターゲットをあらためて選定し、不良在庫のない生産量や仕入数を決めることが可能です。売れている商品をディスプレイにして集客する戦略や、ターゲットに合わせた販促活動の企画の立案もできます。トレンドの変化に対応する上で継続的にデータ収集に取り組むと具体的なDXを進めやすくなります。

サブスクリプションサービスの実施

サブスクリプションサービスは価値観や購買行動の多様化に対応できるシステムです。サブスクリプションは定額料金を設定してサービスを利用する権利をユーザーに与えるといった仕組みです。ユーザーに合うサービスを臨機応変に変えながら提供できる特徴があります。ユーザーデータを活用してサービス改善も目指しやすいのが特徴です。商材によって相性がありますが、流通業界のDXとして検討する価値があるビジネスモデルです。

自動化による業務効率の向上

人材不足が慢性化している課題を解決するには人手を減らしても必要な業務を正確に進められるようにするDXが必要です。人よりもコンピューターがやった方がミスがなくてスピードも速い業務を自動化すれば全体として業務効率が向上します。勤怠管理のデータから給与を自動計算したり、在庫に応じた発注や受注時の連絡を自動化したりするのが典型例です。流通業界では商品データの取り扱いが多いので、自社に合うシステムを活用するのが大切です。

人材採用・教育研修の効率的実施

DXによって人材不足の課題も解決できる可能性を切り開けます。自社に合う人材管理システムを導入し、採用プロセスを効率化したり、アルムナイ採用やリファラル採用を推進したりすることで慢性的な人材不足を解消することが可能です。また、人材の実績や経歴を加味して有効な研修内容を自動選定するシステムを導入し、人材のパフォーマンスを向上させることも可能です。流通業界の人手不足の課題を多角的に解決に導けるアプローチです。

情報伝達の高速化

流通業界では会社の本部から各社員、担当部署から配送業者などへの情報伝達が不可欠です。イレギュラーへの対応も可能なリアルタイムのコミュニケーションをモバイル端末を利用して実現することができます。

店舗内の人員削減

小売においては店舗の人員削減による業務コストの削減が可能です。セルフレジの導入は典型例で、無人店舗も運営されるようになってきました。商品補充の対応の必要性もIoTの活用によって実現可能になっています。

キャッシュレス

流通DXではキャッシュレス対応が効果的です。現金ではなくクレジットカードや電子マネー、QR決済による簡便な決済方法のニーズが高まっています。レジ締めの業務も減らせるのでキャッシュレス対応は費用対効果が高い方法です。

コロナなどの感染対策

コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、感染についての不安意識が高まりました。顧客と従業員の両方の観点から感染対策のためのDXが必要とされる時代になっています。混雑状況のカメラによる確認により、顧客へリアルタイムで情報提供をしたり、従業員の品出しのタイミングを提案したりすることが可能です。

流通業界がDXを推進するメリット

DXによる課題解決のあり方に基づくと、流通業界ではDXを推進するメリットが大きいと言えるでしょう。メリットを具体的にご紹介します。

購入行動への柔軟な対応

DXを推進すると時勢の変化による消費者の購入行動のトレンドに柔軟に対応できるのがメリットです。流通業界では消費者に買ってもらえるサービスを提供するのが重要です。サブスクリプションのようにモノを持つことから利用することを重視するトレンドが生まれてきているのが現状ですが、今後はどのように変化するかは予測できません。DXによって消費者ニーズをデータによって捉えると、柔軟にサービスの変えられる体制を整えられます。

従業員のパフォーマンス・満足度の向上

従業員のパフォーマンスや満足度の向上になり、意欲的に業務に取り組ませられる体制を整えられるのはDX推進のメリットです。流通業界ではルーチンによるあまり生産的でない業務がたくさんあります。DXによって自動化や一元的な情報管理を進めるだけで無駄な業務がなくなり、従業員が本領を発揮できる専門業務に従事しやすくなります。全体として生産性が向上するだけでなく、授業員も自分だからできる仕事に時間を割けるので満足度が向上します。

トータルコストの削減

DX推進にはコストがかかりますが、トータルコストは削減できる可能性が高いのがメリットです。最初のシステム導入にコストがかかり、サービス利用にランニングコストがかかるのは確かです。しかし、流通業界では仕入れの注文や在庫管理などの自動化によって対応できる業務が多いため、DXによって人件費を減らせます。人材不足の課題も同時に解決しつつ、トータルコストも下げて事業を成功に導けるポテンシャルがあるのがDXのメリットです。

業務の効率化

デジタル技術を活用した流通DXによって、業務の効率化を実現できます。運送や小売の現場業務などの個別的な実務もDXを通して無駄をなくすことが可能です。さらに、DXの考え方を理解させ、新しいシステムの理解を浸透させる教育研修でもDXを使えます。流通業界ではアルバイトやパートの人も多く、人材の流動性が高いのが特徴です。新たに働き始める人材にも適切な情報リテラシーを覚えさせるシステムを構築することができます。

関連リンク:
DX推進が業務効率化に繋がるのはなぜ?重要性や成功事例をご紹介
業界別のDX事例15選 DXが各業界にもたらす影響や変化とは

流通業界でDXを推進する際のポイント

流通業界におけるDXでは経営者主導で顧客重視のプランを立てて推進するのが大切です。現場の声を吸い上げることは重要ですが、現場任せになってしまっては決断が遅くなります。消費者のニーズは刻々と変化しているので、柔軟に対応できるように経営者が積極的に取り組むことが必要です。

また、流通業界では部署間の連携が必要になります。データを一元管理して共有できるシステムを整え、サプライチェーン全体を通して一気通貫で業務を進められる体制にするのがポイントです。営業やマーケティング、商品開発でも情報を共有し、消費者のニーズを捉える施策を各部署が推進できるように組織を作り上げることも重要になります。流通業界では他社との調整も必要になるため、協力を得られるように働きかけるのも大切なポイントです。

DXの結果を中長期的な視野で評価しながら進めるのも重要です。DXは多かれ少なかれ現場を動揺させることに加え、従業員の教育も必要になります。従業員が新しい環境に慣れて本来求めていた成果を出せるようになるまでに時間がかかることは覚悟しなければなりません。できるだけ効果が発揮されて成果が見えやすい施策から始めていき、中長期的に推進していくことで競争力の高い企業に変革することができます。

関連リンク:DX領域とは?推進されている領域やDXに取り組む際の注意点を解説

流通業界のDX活用事例

流通業界でのDX活用による成功事例は増えてきました。ここでは参考になる事例を厳選してご紹介します。

コーナン

コーナンではレジシステムとデータ関連システムの改善によるDXで成功しています。マニュアルがなくても簡単に取り扱えるレジシステムの導入と、カスタマーが自分で生産できるセルフレジを導入しました。特にコーナンではNECによる協力を得て、有人レジとセルフレジを切り替えるシステムを導入して柔軟な対応力を持たせたのが特徴です。

POSシステムの導入によりオリジナルのコーナンPayや共通ポイントなどによる決済管理も一元処理できるようにしています。ユーザーフレンドリーなインターフェースを取り入れることでアルバイトやパートの人もすぐに業務に対応できるようにして、教育コストを削減することにも成功した事例です。

参照:コーナン商事株式会社様: 小売業向けPOSソリューション NeoSarf/POS | NEC

ローソン

ローソンでは2022年10月11日から「Lawson Go」の導入を進めています。コンビニではセルフレジの導入が進んでいて、ローソンでも導入してきました。さらに一歩進んだDXとして、ウォークスルー決済として生み出されたのが「Lawson Go」です。

「Lawson Go」では専用アプリで入店するときにQRコードをかざして入力したら、欲しいものを持って店舗から出ていけるようになっています。つまり、レジが不要のキャッシュレス決済システムになっていて、ユーザーはレジ待ちをする必要が一切ありません。コンビニ店舗の運営コストを下げられるだけでなく、ユーザーエクスペリエンスも向上させられる斬新なDXとして話題になっています。

参照:ウォークスルー決済導入店舗 「Lawson Go」10月11日(火)から、新たに展開開始|ローソン公式サイト

AOKIホールディングス

AOKIホールディングスではリコーの「ドキュメントライフサイクルサービス」の導入によって書類のデジタル化・ペーパーレス化をしています。契約書類や労務書類の管理はスペース的な負担も大きく、コストがかさむ原因になります。AOKIホールディングスでは電子書類として各種書類をクラウド上に保管できるようにしつつ、さらに書類原本も預かってもらえるリコーのシステムを導入しました。

DXが進んでいるとはいえ、個人を相手とするビジネスでは書面での取引が多いのが現状です。AOKIホールディングスでは、原本保管もデジタルデータ化もまとめて依頼できるサービスを活用することで情報管理の効率化とスペースの有効活用を実現しています。

参照:お客様事例(株式会社AOKIホールディングス 様)| リコー
関連リンク:【DX導入事例14選】DX成功事例に見るDX推進のポイントは?

企業のDX推進をするならSMSの活用がおすすめ

流通業界における企業のDX推進ではSMSの積極的な活用が効果的です。SMSはスマートフォンに直接ショートメッセージを送れるのが特徴で、送信したらすぐに相手の手元に届きます。流通業界の現場では顧客から注文を受けたときにすぐに物流業者に連絡して配送してもらったり、倉庫業者に通知して出荷手配をしてもらったりするのに活用できます。顧客フォローの手段としてもSMSは開封率も到達率も高いため、DXツールとして優れています。

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

DXにSMSを生かすなら顧客管理や一斉送信に対応しているサービスを活用するのが重要です。KDDI Message Castは流通業界のニーズに応える多機能でリーズナブルな料金設定のサービスなのでおすすめです。Salesforceとも連携しているので、顧客管理システムとして利用している場合にはスムーズにデータを活用できます。長文配信や短縮URLなどの機能も整っているので、SMSのポテンシャルを最大限に引き出せるサービスです。

まとめ

流通業界では近年の消費者動向の大きな変化への対応が課題です。DX推進は自社のターゲットとなる消費者の動きに柔軟に対応し、事業を変革させていくのに効果的です。本格的にDXに乗り出すなら、SMSの有効利用から始めてみましょう。KDDI Message Castなら初期費用ゼロでSMSを活用できます。流通業界では顧客との接点を保つことが大切なので、SMSによるフォローから始めてDXを計画的に推進していくのがおすすめです。