DX推進実態調査 2023について解説 日本企業に必要な要素とは?
変革の成否がビジネスの鍵を握るといわれている現代、多くの企業がDXを重要課題と捉え、DXの推進に取り組んでいます。しかし、実際のところ、DXの成果は出ているのでしょうか。DX推進の活性化を目的として、さまざまな機関が企業のDX推進についての実態調査を行っています。本記事では、DXの概要、重要視される理由、2022年のDX推進実態調査について解説します。各調査の回答結果から分かってきた、DX推進の成功に必要な要素についても解説しています。
目次
そもそもDXとは?
DX(Digital Transformation)は、広義ではデジタル技術を活用して人々の生活や社会の変革を目指すという概念です。ビジネスにおいては、AIやIoTなどのデジタル技術により業務効率化やビジネスモデルの創出をはじめ、組織全体を改革していくことで、競争優位を維持することを目的としています。
DXは単なる変革ではありません。デジタル技術により、既存の枠組みから価値観までを覆すような革新的な変革を意味する言葉です。変化の激しい現代、DXは企業の発展に欠かせないテーマといえます。
経済産業省は2018年に、民間企業がDXを推進する際に参考になるようにと、DX推進ガイドラインを発表しています。
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DX推進が重要視されている理由
DXが重要視される理由として、以下の3点が挙げられます。
・環境の変化に対応
テクノロジーの発展とともに、生活もビジネスも、身の回りの環境が急速に変化し、それに伴い消費者の求めるものも多様化しています。こうした環境の変化に対応して、ビジネスモデルを創出したり、サービスを工夫したりするために、DX推進が注目されています。
・競争優位性の維持
市場は国内だけでなく、グローバルに拡大をしています。そのため、企業は競争優位性を保つことが必要です。業務プロセスから、企業の組織や企業文化までも変革するDXを推進することで、グローバル市場で優位に立つことができます。
・古いシステムからの脱却
多くの企業で古くから利用されているレガシーシステムが存在しています。DXのような新しい取り組みを始める際には、レガシーシステムの刷新が必要です。
2022年のDX推進実態調査について
多くの企業が自社の重要課題として積極的に取り組んでいるDXですが、日本企業のDXは成功しているのでしょうか。DXの推進状況を把握するため、公的機関やリサーチ会社でDX推進実態調査が実施されています。一連の調査結果から、DXの取り組みについて進展はあるものの、成果は不十分であることがわかってきました。
規模の大きい企業では、DXへの理解度や取り組み状況、成果が高い傾向にありますが、日本企業全体としてはDX推進にはまだ多くの課題が存在します。
日本企業はDX推進の成果を出しているのか?
日経BP総合研究所は、日本企業のDXに関する調査を、2019年、2020年、2022年と3回実施した結果、674社から回答がありました。DXの推進状況についての質問には、「少しは推進している」と答えた企業の割合は38.3%、「積極的に推進している」と答えた企業は31.8%でした。この2つを合計すると「推進している」が7割を占めます。一方、「あまり推進していない」または「全く推進していない」を合わせると、「推進していない」と答えた企業の割合は3割です。
また、PwCコンサルティングの調査では、DX推進企業(※売上高10億円以上)の1,103名の幹部(※管理職以上)から回答がありました。
「DXに成功しているのか」という質問に対して、回答者の約60%が「全社的に取り組んでいる」と回答しています。具体的には、半数以上がデジタル技術を使ったビジネスモデルの変革や、企業そのものを変革する取り組みを行っていることがわかりました。一方で、下記の図が示しているように、「十分な成果が出ている」と感じている回答者はわずか10%と低い割合となっています。また「何らかの成果が出ている」としている回答者が半数あまり存在し、残りの約30%は「成果が不十分」でないとみていることがわかります。
これらの調査結果から、DXに取り組んではいる企業の大半は、成功には至っていないといえるでしょう。
参照:DXの成果は不十分、674社調査で分かった日本企業の現状 | 日経クロステック(xTECH)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02325/012700001/
日本企業のDX推進実態調査2022 ~1割のDX成功企業から見えてきたDXMOの役割とは?~ | PwC Japanグループ
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/dx-survey2022.html
日本企業がDX推進を成功させるために必要な要素
DX推進に必要な主な要素は、明確なビジョン、社員全員の行動変容、DXの専門組織の牽引、CxOの設置です。それぞれの要素について解説します。
要素①明確なビジョンを提示する
上記のPwCコンサルティングの調査結果をさらに詳しく見てみると、十分な成果が出ている企業では、経営層がDXに対して明確なビジョンを描いていることが重要な要因であることがわかりました。
DXは新たな価値やサービスを提供して社会のニーズを満たし、競合優位性を獲得することが目的です。そのためには、企業のトップが全社をリードし、将来の事業構想を明確に示して、具体化していくことが重要です。顧客や社会が求めているものを提供できなければ、デジタル化や事業・経営の変革を行っても、それはDXの成功とはいえません。
したがって、経営者や企業のトップ層が目指すべきゴールを全社員に明確にすることが最初に求められます。その上で目的を達成するために具体的な開発に入ってください。
要素②社員全員の行動変容を促す
DX戦略への理解度とDXの成果の関係について見てみると、理解力が高い役職ほど成果が現れやすい傾向があることがわかりました。DXは全社的な変革を目指す取り組みのため、経営者も含めた全社員が、デジタルに関して最低限度のリテラシーを習得しなければなりません。
そのためには、企業のトップ層の動機付けに加えて、リーダー層が現場社員と適切にコミュニケーションをとる機会を持つことが必要です。全社員の行動変容を促すことで、現場にDXを浸透させることができます
要素③DXの専門組織が牽引する
DXを確実に実現するためには、組織編成が求められます。DX推進に必要な組織体制としては、主に3つのパターンがあります。IT部門が率先して行う体制、事業部門が中心となって進める体制、専門組織を設置するというパターンです。このうち、よくある一般的なパターンは、専門組織を新たに立ち上げるタイプです。
大半の企業では、DXを推進するための組織を立ち上げて、全社的な活動として進めています。DXによる成果を得るには、既存の組織が進めるのではなく、専門組織が推進する方がより成果が得られやすいということが調査によってわかりました。なお、DXの司令塔ともいえる専門組織は、DXMO(Digital Transformation Management Office)と定義されています。
要素④CxOを設置する
DXの専門組織に加えて、CxO(Chief x Officer)の存在がDXの成果につながることもわかりました。CxOは、企業活動における業務の責任者で、日本語では「最高〇〇責任者」という意味です。CxOは欧米の企業でよく見られますが、近年は日本でも外資系企業などで積極的に導入されています。
具体的には、CxOを設置し、従来からの組織力学に振り回されずに、全社的な問題と向き合うために権限と責任を有することが重要です。つまり、DXの推進にあたっては、その責任者を明確にし、リーダーシップの下、DX施策を実行することが有効といえます。
調査でも「CxOを設置している」と答えた企業幹部の17%が、「DXの取り組みに十分な成果が得られている」と回答しています。CxOを設置していない企業幹部の場合、「十分な成果が出た」と回答しているのはわずか3%であり、その差は明白です。
要素⑤原資を確保する
DXにはITシステムの導入やDX専門組織の構築などに用いる原資が必要です。DX予算を立てて初期投資と継続支払いが可能な資金を用意できなければ、DXを推進することはできません。原資確保ではDX予算を独立させることでDXの成功率が高くなります。
PwCによるDXの調査ではDX予算の確保状況について、DXの成果が十分に出ている企業の場合には他の予算と分けていることが明らかにされています。DXの原資をIT予算やコーポレート予算から分離して管理することにより、資金面の安定性を前提にしたDX計画を立てられるようになるからです。DX原資は独立した形で確保することが成功につながります。
要素⑥DX人材の確保・育成
DX推進を成功させるためには、DX人材を専門の組織やCxOとして確保するだけでなく、従業員全体をDX人材として育成していくことが重要です。DXに対する理解やITリテラシーについて個々の人材が理解できていなければ、組織として一丸になって変革を起こすことはできません。DX推進の要になる人材だけでなく、従業員の育成にも対応できる人材を確保することで組織としてDXを持続的に進めるインフラを整えられます。
DX人材採用では自社に欠けている人材のジョブディスクリプションを定義して募集することが必要です。従業員の意見をヒアリングして必要な人材を明確化することも欠かせません。また、従業員の発言機会を設けてDXに積極的に取り組む姿勢を持たせることで自己成長を促すことができます。
要素⑦中長期的な視点での取り組み
DXは中長期的に取り組んで成果を生み出すことが大切です。DXではデータ活用が基軸になります。イノベーションによる抜本的な変革には時間がかかるため、効果が見えるまでに時間がかかることは否めません。DXでは数値指標を用いて定量的に成果を評価し、短期・中期・長期のKPIを立てて推進することが成功につながります。
PwCによる調査ではDX成果を評価するKPIを設定して定量的に分析し、意思決定に用いるインフラ構築に成功した企業ほどDXの成果が出ていることが示されています。売上・利益やコスト削減だけでなく、非財務指標も対象として評価し、継続的なKPIの向上によってDX推進の意思決定をしていることが成功をもたらしています。
2023年に日本企業が取り組むべきことは?
まず、CxOのリードで、専門組織DXMOが変革活動を全社的に強力に推進していくことです。DXMOは、DX推進に向けて会社全体が効率的に動いていくために不可欠な組織です。
DXMOには、具体的には、経営層とCxOが提示するビジョンに基づいた施策を全社員で着実に推進することが求められます。管理監督組織としてではなく、変化や改革を確実に促進できるアクティビストとして、DXMOが施策を進められるか否かが、DXの成否の鍵となるでしょう。
しかし、DXを主導できる人材が圧倒的に不足しているため、DXがスムーズに進んでいないのが現状です。そのため、DX推進を主導できる人材を早期にできるだけ多く確保することが重要です。そのためには、DX人材育成のための環境も整えておく必要があります。
パートナーシップ型DXも検討を
PwCによる調査ではパートナーシップ型DXによりDX推進による成果が出る可能性が高まることを指摘しています。顧客企業やサプライヤーのように事業に直結する取引がある企業とのパートナーシップはDXの効果を高めるためには欠かせません。システムを導入した際に連携を取れればお互いの業務効率の向上につながります。
コンサルティング企業とパートナーシップを組んで二人三脚でDXを進めたり、SIerやプラットフォーム提供者との協力を得たりして成功している企業もあります。十分な成果が出ている企業では競合会社とのパートナーシップを進めてきている点も特徴的です。パートナーシップ連携指向がDXの主流になりつつあります。
企業のDX推進をするならSMSの活用がおすすめ
DXを推進するなら、SMSを活用することをおすすめします。SMSはスマホに配信されるため、メールと違い見落としにくく、メッセージを確認しやすいことがメリットです。また、リーチ率の高さに加えて、一斉配信と個別配信のどちらにも対応しており、配信コストが安いことも見逃せません。DXを推進するには、SMSのこうしたメリットを活かせば、よりスムーズに進められます。
SMSは多くの業界で活用されており、活用方法も企業によってさまざまです。例えば、商品配達日時のお知らせ、リマインドメッセージ、緊急連絡などは、ほんの一例です。
SMSアプリは携帯に標準搭載されているため、送信先の電話番号がわかれば、手軽にメッセージを送れます。SMSは国際規格のため、国内だけでなく、世界中の端末同士で送受信することも可能です。
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まとめ
テクノロジーの急速な発展とともに、DXの導入が重要視されています。多くの企業が導入しているDXですが、近年になって、DXの推進状況を把握するために、リサーチ会社や公的機関によりDXの実態調査が進められています。アンケートの回答結果からは、DXに取り組んではいるものの、十分な成果が上げられていない企業が多数あることがわかってきました。DX推進にあたり必要な要素として、企業トップの明確なビジョン、社員の行動変容、DXの専門組織やCxOの設置などが挙げられます。これらの調査結果を踏まえて、2023年以降はCxOのリードで、DXMOが変革活動を強力に進めていくことが必要です。