金融DXとは何か?

金融DXとは金融におけるサービスや業務プロセスなどをデジタル化し、業務改革を行うことです。総務省の「令和3年 情報通信白書」では金融業・保険業のうち32.2%が2018年よりも前からDXに取り組んでいることが明らかにされています。サービス業の16.1%と比べても、金融業界においてDXは他の業界よりも進んでいるといえるかもしれません。一方で、金融・保険業における35.7%の企業はDXが未実施であるばかりでなく、将来的にも実施の予定がないと回答しています。

社会におけるITのあらゆる場所への普及によって市場のデジタル化は急速に進んでいます。市場のデジタル化の進展にあわせて金融業界においてもDXによる顧客サービスの向上や業務の効率化、事業課題への対応が求められています。

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DXとはDigital Transformationの略語で、日本語でもデジタルトランスフォーメーションと称されています。

DXという言葉はスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって唱えられました。彼は2004年に発表した論文において「ITの浸透によって人々の生活はあらゆる面でより良い方向に変化していく」と主張しています。

また、DXを推進することによってレガシーシステムからの脱却や市場における競争力アップなども期待できます。

DXについてより詳しく知りたい方は以下のページを参照してみてください。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?DX推進のメリットと課題も解説

金融サービスにDXが重要な理由

現代社会ではさまざまな業界やサービスにおいてDX推進が求められていますが、金融の分野においても例外ではありません。そこでここでは、金融サービスにおいてDXが必要とされている理由について解説していきます。

マーケティングの観点における必要性の高まり

多くの銀行員がデジタルトランスフォーメーションの重要性を理解しているものの、金融業においてデジタルを最大限に活用できるようになるまでに時間がかかると考えています。

BCGが金融機関に対して行った調査の結果によると、回答者のうち86%がデジタルテクノロジーへの投資は競争力を得るために正しい戦略であると考える一方、43%が自分が所属している組織のデジタル活用能力の低さを実感しています。

さらに、回答者のうち80%以上が利用者とのコミュニケーションを複雑な技術インフラが妨げる可能性があると懸念しています。

銀行にはお客様の体験に応じた変化が求められている

消費者は高品質のサービスや商品の恩恵をデジタルの進化によって受けられるようになっています。消費者は利便性の高い金融サービスに慣れているだけでなく、魅力的なサービスが新しく登場すれば移行していくことも予想されるでしょう。

実際、Everfi社のレポートでは金融機関利用者の半数以上が主な金融機関の変更を行い、9%が変更を検討していると回答しています。

銀行は既存の顧客との関係を維持するために、顧客が満足できるサービスを提供していかなければなりません。そのためには、従来通りのサービスを届けるだけでなく、時代に合ったサービスを届けることが不可欠です。銀行においてもオンラインやモバイルアプリのチャネルを導入していく必要性が高まっています。

外部参入者との競争が激化しているから

近年、銀行においても他社との競争が激化しています。さらに、AppleやGoogleといったテックジャイアントも金融サービス業界への参入を企てています。

銀行がテックジャイアントに勝ち抜くことは容易ではありません。なぜなら、テックジャイアントはDXやデータ分析のプロであると同時に、すでに膨大な顧客情報をもっているからです。

今後、銀行には競争力を強化するべくDXの推進はもちろん、銀行ならではの特徴やノウハウを活かした独自のサービスを開発していくことがさらに求められます。

金融DXを進める上での課題は?

前述のように金融業界でDXが求められているものの、現状としてはDXの推進がうまくいっているとはいいがたい状況といえるでしょう。ここでは、金融DXを進める上での課題を見ていきましょう。

レガシーシステムから脱却できない

レガシーシステムとは過去の仕組みや技術で構成されたシステムのことです。レガシーシステムについて、開発を担当した社員が異動や定年退職などで不在になると対応できなくなる可能性が高いことの他、新システムとの互換性が低いことなどが問題視されています。

経済産業省が公表している「DXレポート」によると、ほとんどすべての金融企業がレガシーシステムを抱えているとのことです。長期間にわたって手が加えられていない部分は老朽化やブラックボックス化が進んでおり、脱却が難しいといった問題を抱えています。

さらに、金融業界は膨大な個人情報を扱い、顧客の資産管理を行っていることからもミスは徹底して回避しなければなりません。そうしたことからも、新しい取り組みや新システムの導入に後ろ向きです。

DX人材の採用や育成が進んでいない

多くの銀行においてDX人材の採用や育成が進んでいません。また、国内におけるIT人材は需要に対して供給が追い付いていないため、IT人材の求人を出せば応募が集まるとも限らない状況です。

その他にも、金融業界におけるDX人材の遅れは古いプログラミング言語でシステムが構築されていることにも関係しています。金融業界のシステムの多くはCOBOLというプログラミング言語で構成されていますが、COBOLを扱えるエンジニアの多くが定年退職を迎える年齢となっています。当時の技術の引継ぎを行える人材の不足による属人化などにより、DXの推進に踏み出せない企業も少なくないと見受けられます。

顧客のITリテラシーにばらつきがある

顧客のITリテラシーのばらつきも金融DXの課題となっています。デジタル技術は急速に変化しているため、顧客側もアンテナを日々張り、最新の技術についていこうというモチベーションを持たなければなりません。しかし、高齢者やITに苦手意識のある方はITに後ろ向きであるため、最新のサービスについていこうという気にもならないでしょう。

顧客の中でITリテラシーにばらつきがあると、ITに精通している顧客とそうでない顧客ではシステムやサービスの満足度に差が出てしまいます。特に、ITに精通していない顧客はシステムやサービスに対応できず、満足に利用できないこともあるかもしれません。

金融業界では顧客のITリテラシーに関わらず、全ての顧客が安心してサービスを利用できるような基盤の構築や顧客サービスの見直しも求められています。

金融機関が取り組むべきDX戦略の目標

マッキンゼーの調査によると、世界の金融サービス企業の経営者はDXプロジェクトで優先的に取り組むべき事項は顧客体験の向上であるといいます。

回答者のうち76%が顧客への投資を重視している一方、16%がDX戦略における生産性やオペレーションコストの削減を優先事項として考えています。

金融DXの成功事例5選

DXをこれから進めていこうと考えている方の中には、DX推進によってどのような効果を得られるのか気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、金融DXの成功事例を5つ紹介していきます。

【DX導入事例14選】DX成功事例に見るDX推進のポイントは?

東京海上ホールディングス株式会社

東京海上ホールディングス株式会社はお客様接点にデジタルを導入することで、人にしかできない寄り添う対応を行うことを目指しています。

同社は自然災害に対応するためのシステムや保険商品の開発、さらには認知症の早期発見・予防への取り組み、中小製造業の事故被害額予測、蓄電池普及の推進に向けたソリューション開発などにDXを導入しています。

参考:「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」に選定 |東京海上ホールディングス株式会社

SBIインシュアランスグループ株式会社

SBIインシュアランスグループ株式会社は、DX推進においてAIの積極的な活用を行っています。社内に蓄積されているデータの利活用を推し進め、事業における各種課題をAIドリブン・データドリブンで課題解決していくAIドリブンカンパニーの実現を目指しています。

また、AIを全社に導入した他、システム開発においてもAⅠ搭載型システムテストツールの実装を行い、業務改善や顧客サービスの向上を目指す方針を示しています。

参考:SBIインシュアランスグループ株式会社

株式会社三菱UFJ銀行

株式会社三菱UFJ銀行はデータ活用の分野を担当する一部の社員だけではなく、全ての社員がデータリテラシーを持つ必要性を実感しています。全社でデータを活用できる人材を育成するためにブレインパッドの「データ活用人材育成サービス」を採用しました。

eラーニングによる社員教育の実施や集合研修の実施など、自社でデータを活用できる人材の育成を積極的に行っています。

参考:三菱UFJ銀行が全行員にDX教育、「コア人材」のスキルをどう定義したか | 日経クロステック(xTECH)

プレミアグループ株式会社

プレミアグループ株式会社は2025年壁問題を克服できるよう、レガシーシステムを2025年までに廃止することを目指しています。それに向けて、基幹システムのデジタル化に向けた取り組みを実施。

また、2023年までの中期経営計画である「VALUE UP↗2023」を2021年には公表しており、計画的に取り組んでいる様子がうかがえます。

参考:プレミアグループのDX戦略

日本生命保険相互会社

日本生命はデータサイエンティストの育成、および配置を数年前より進めていました。しかし、一部の担当者を除き、データ活用の重要性への認識やデータ分析の概要についての理解は不足しており、データ活用を思うように進めることができませんでした。

こうした状況を顧み、全社向けのデータサイエンス基礎研修や総合演習の選抜研修の他、アクチュアリーを対象にしたデータサイエンティスト育成研修など、階層やレベルごとに研修を実施。その結果、データ活用の推進に手ごたえを感じる社員も増えました。

参考:データドリブン企業を目指す日本生命 カギになるデジタル人材育成の手法 – 「データ」は全社で活用する…:日経クロステック Active

金融業界がDXの推進に取り組むならSMSの活用がおすすめ

金融業界におけるDX推進の一つとして、SMSの活用がおすすめです。金融業界はサービスの特徴からもお客様と連絡を取る機会が多くあります。お客様に電話をしても繋がらなかったり、メールを送っても反応がなかったりといった困りごとは多々見られます。

携帯やスマホの電話番号で送信でき、かつお客様の目にも留まりやすいSMSで伝達事項を伝えれば、お客様とのやりとりを円滑化できるでしょう。近年、金融業界における少なくない企業で料金督促や口座開設・ローン申し込み時の確認などでSMSが活用されています。

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

KDDI Message CastはKDDIグループが提供しているサービスです。携帯電話番号を使って携帯やスマホにSMSを配信できる法人を対象にしたサービスとなっています。キャリア品質の保守運用体制のため、大切なメッセージを安心して配信できます。さらに、異なるエンドユーザーへの誤配信を防ぐために誤配信防止機能を搭載。費用は配信したメールの数に応じて決まるため無駄がありません。

まとめ

他の業界と同様、金融業界においてもDX推進の重要性が高まっています。金融業界における少なくない企業がDX化を行っている一方、人材不足やレガシーシステムからの脱却の遅れなどによって、DX化がうまくいっていない企業があることも事実です。サービスの内容が複雑化している昨今、他社との競争における優位性を高めるためにも、DX化を進めていくことは不可欠といえるでしょう。

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