アンケートによる市場調査では回収率が重要です。回収率を向上させることでアンケートを実施するメリットが大きくなります。この記事ではアンケートの回収率の定義、目安、回収率を上げるためのポイントをご紹介します。

アンケートの回収率とは?

アンケートの回収率とは、アンケートの対象数に対する有効回答数の割合です。1,000人を対象としてアンケートを配信したときに、550人から回答が得られ、そのうち500人について回答の有効性の条件を満たしていた場合には50%の回収率になります。

アンケートを実施したときに、すべての項目に回答せずに提出する人もいます。重要な項目への回答が欠落している場合には無効な回答と見なすのが一般的です。上記のケースでは50人について十分な回答を得られなかったために回収率が低くなります。

回収率の計算方法

アンケート回収率は以下の計算式で求められます。

アンケート回収率=有効回答数÷対象数×100%

例えば、以下のようなアンケートの集計結果になったとします。

  • 対象数:10,000人
  • 回答数:5,000人
  • 無効な回答数:100人

この場合には以下のようにしてアンケート回収率を計算できます。

有効回答数=回答数-無効な回答数=5,000人-100人=4,900人アンケート回収率=4,900人÷10,000人×100%=49%

回答数が多かったとしても、有効回答数が少ない場合には回収率が低くなります。例えば、無効な回答数が1,000人だったときにはアンケート回収率は以下のようになります。

有効回答数=回答数-無効な回答数=5,000人-1,000人=4,000人アンケート回収率=4,000人÷10,000人×100%=40%

なぜアンケートの回収率が重要なのか?

アンケートの回収率を高めることが重要なのは、客観的な市場調査のデータを得て、信憑性の高い結果に基づく施策を進められるからです。アンケートの回収率が低いと母集団の一部しか回答していないため、偏った意見の集計結果になります。アンケートの実施者のファンだけが回答した結果の可能性もあり、市場全体の意見を集約することにはなりません。

アンケートでは回収数が多くても、全体の意向を反映した回答になるとは限りません。10万人から1万の回答を得るよりも、1万人から9千の回答を得られた方が偏りのない統計データを手に入れられます。

アンケートの目的は対象者から総合的なデータを得ることです。データに基づいて商品開発やマーケティング施策を進めるには、できる限り対象者の偏りをなくすことが必要です。アンケートを実施するときには回収率を高くするための工夫をして、活用メリットのある集計データを取得しましょう。

アンケートの回収率が低い6つの理由

アンケートの回収率が目安よりも低いときには対策が必要です。ここでは回収率が低くなる代表的な理由を説明します。

1. 配布先がターゲットと異なる

アンケートの回収率が下がる理由として多いのは、配布先のターゲットが誤っているからです。アンケートの目的とターゲットが合っていないと、自分には関係のない調査だと思われて無視される可能性が高くなります。また、配布先を厳選しすぎると客観的なデータを得られないデメリットがあります。しかし、ターゲットにする枠を適切に決めて配布すれば回収率を上げて、その枠内での統計情報を取得可能です。

2. 時間や手間がかかってしまう

アンケートに回答するときにユーザーの負担が大きいと回収率が低くなります。顧客は時間や手間がかかるアンケートは面倒だと答えないからです。以下のようなアンケートは離脱率が高くなるため、回収率も下がります。

  • 質問の数が多い
  • 質問文が長い
  • 自由記述が多い
  • アンケートの終わりがわからない

3. 質問内容がわかりにくい

質問内容の設計が十分にできていないと、アンケートに回答してもらえる可能性が低くなります。質問の意図が分からず回答に迷ってしまってストレスになり、離脱する可能性が高くなるからです。質問内容は第三者が見てもわかりやすいように記述することが大切です。質問に書かれている内容がわからず、適切な回答ができないと思った時点で離脱してしまうユーザーもいるので注意しましょう。

4. 興味が持てない内容である

ターゲットが興味を持ってくれないとアンケートに見向きもしてくれません。興味のあるアンケートを作れていないのは回収率が下がる典型的な理由です。アンケートに答えることでベネフィットがあるというイメージを持ってもらえるようにアンケートを企画する必要があります。アンケートの回答プロセスを楽しんでもらえるように設計するのが理想的です。

5. 目的が不明確である

アンケートの目的がわかりやすく説明されていないと回収率が低下する原因になるので注意が必要です。アンケートに回答するのに必要な時間や労力に見合うリターンがあるかを回答者は検討します。目的が明確で、回答したら自分にリターンがあるとわかると意欲的に回答してもらえます。アンケートの結果の管理についても明記して信用を得ることも重要です。

6. 回答期限が短い

回答期限が短すぎるのはアンケートの回収率が低くなる原因です。回答期限までにアンケートに気付かず、回答できなかったというケースがあるからです。機会損失は実施者も回答者も不利益を被るため、回答期限は無理のない範囲で長く設定する必要があります。長すぎると忘れられることもあるので1週間〜1ヶ月を目安に設定しましょう。

アンケートの回収率を上げるための5つのポイント

アンケートの回収率は質問内容や実施方法などを検討すると向上させられます。ここでは回収率を上げるためのポイントを紹介します。

1. 簡潔で分かりやすい質問内容にする

アンケートの質問内容は簡潔にしてストレスなく理解できるように設計しましょう。ターゲットがわかりやすいと思うことが重要です。目的を短い文章で伝えて、回答への意欲を持ってもらう工夫も効果的です。文章が長い、要点がわからない、質問の意図がわからないといった問題があると回収率が下がるので注意しましょう。

2. 負担の少ない内容・形式にする

回答のときに負担が少ないアンケートに仕上げると回収率が上がります。以下の要素を減らすと負担が少なくなります。

  • 質問数
  • 自由回答
  • 選択回答の選択肢
  • 個人情報に関わる質問

また、マルチデバイス対応をして回答しやすい形式にすることも重要です。パソコンでは回答しやすいけれど、スマホでは難しいとなると回収率が下がります。

3. インセンティブを付与する

アンケートへの回答に対してインセンティブを設けることで回収率を上げられます。回答者は、明確なベネフィットを受けられるとわかると回答に対する意欲が高まる可能性があります。以下のようなアンケート特典を設けて実施すると、マーケティングやブランディングにもなるので効果的です。

  • ポイントやクーポンの付与
  • 抽選によるプレゼント
  • 新製品のモニター抽選権の獲得

4. 配信元を明確にする

アンケートの回収率を下げないためには、配信元を明確にしてアンケートを送付することが大切です。信頼性がない配信元からのメールは無視される可能性があります。迷惑メールとして処理される場合もあるので、信頼性を重視することが大切です。SMSを使用して配信元を伝える方法もアンケートではよく用いられています。個別性があるだけでなく、配信元を明記して送付することもできるので回収率を上げやすい方法です。

5. リマインドなどのフォローアップをする

アンケートの回収率を上げるにはリマインドをしたり、フォローアップをしたりして積極的にターゲットにアプローチすることがコツです。アンケートを送付した時点ですぐに答えてもらえなかったとしても、追加配信や回答を促すメッセージを送るだけで回答をもらえる可能性が上がります。すぐに読んでもらえるSMSでフォローアップをするのは効果的な方法です。

アンケートの回収率の目安とは

アンケートツールの開発・提供を手掛けるPointerpro社による2021年の集計では、アンケート回収率の平均は33%でした。ここでは調査方法によるアンケート回収率の目安を解説します。

令和4年度青少年のインターネット利用環境実態調査:64.6%

令和4年度のこども家庭庁による「青少年のインターネット利用環境実態調査」では、青少年調査におけるアンケートの回収率は64.6%でした。保護者調査では65.5%、低年齢層調査では69.6%の回収率になっています。訪問配布・訪問回収による対面調査の回収率が高く、保護者調査と低年齢層調査では50%以上を占めています。

外部リンク:統計・調査研究|こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/policies/youth-kankyou/internet_research

令和2年度国勢調査:約70%~80%

令和2年度国勢調査のアンケート回収率は全国平均で79.8%でした。都道府県、市町村によってアンケートの回収率に違いがありますが、70%〜80%の回収率が平均的です。インターネットと郵送での回収率に大きな差はありません。

外部リンク:統計局ホームページ/令和2年国勢調査
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/index.html

対面調査の平均:57%

Pointerpro社による集計結果では、対面調査は他のアンケート方法と比較して最も回収率が高い方法になっています。対面調査はアンケートの実施者と回答者が対面で直接インタビューやアンケートへの記入を促す方法です。回答者への接客対応によって好感を得られるため、回収率を上げやすいと考えられます。

参照:What’s the average survey response rate? [2021 benchmark] | Pointerpro
https://pointerpro.com/blog/average-survey-response-rate

郵送調査の平均:50%

郵送調査はアンケートの実施者が回答者に対して郵送ではがきや封筒を送り、返送によって回収する仕組みの調査方法です。Pointerpro社による集計では、回収率の平均は50%となっています。デジタル化が進んでいる影響で、郵送によるアンケートには特別感が感じられ、回答する人が多いのではないかと考察されています。

Eメール調査の平均:30%

Eメール調査は、Eメールでアンケートの文面もしくはそのURLリンクを送付して回答を促す方法です。Eメール調査の回収率の平均は30%で、全体平均の33%よりもやや低くなっています。スパムメールやフィッシングメールなどの被害が増えている影響で、Eメールによるアンケートの回収率が低くなる傾向があります。

オンライン調査の平均:29%

オンライン調査はウェブ調査やインターネット調査とも呼ばれる方法で、メールやSMSなどでオンライン調査のURLを送って回答を依頼します。オンライン調査の回収率の平均は29%で全体平均よりも低めです。オンライン調査は一斉送信できる点で実施者にはメリットがありますが、特別感がないと回答者に興味を持ってもらえないリスクがあります。

電話調査の平均:18%

電話調査はアンケートの実施者が回答者に電話をかけて聞き取りをする方法です。P

ointerpro社によると、この40年間で電話調査によるアンケート回収率は低下してきています。電話調査の回収率は平均18%です。電話調査は回答者の時間的拘束が大きく、都合の悪い時間に電話をかけてしまう場合もあるため、回収率が低くなる傾向があります。

アプリ調査の平均:13%

アプリ調査はアプリを通してアンケートを依頼する方法です。スマートフォンの普及率が向上している時代ではあるものの、アプリ調査によるアンケート回収率は平均13%しかありません。専用のアプリをインストールしなければならない点に抵抗感があったり、手間がかかって面倒になったりすることが回収率の上がらない原因になっています。

アンケートを配信するならSMSで!

アンケートの実施にはSMSが便利です。到達率・開封率が高く、アプリインストールなどの手間もありません。ここではSMSのアンケート配信での活用事例を紹介します。

KDDI株式会社

KDDI株式会社では顧客体験向上、コスト削減、生産性向上を目指してSMSの本格的な導入を進めました。取り組みの中で顧客アンケートにSMS配信システムを導入し、顧客ごとに作成したアンケートページのURLをSMSで送付する方法を取り入れています。本人確認のプロセスを不要として顧客体験向上に成功し、回収率も20%から40%に向上しました。

KDDI株式会社 電話、書面での連絡をSMSに切り替え
https://sms.supership.jp/case/post-186

株式会社デジロウ

株式会社デジロウではアンケート調査の企画運営の総合サービスを提供しています。同社ではSMS認証の導入によって重複回答の防止を実現しました。アンケート回答の際にSMS認証を実施することで、顧客にとって受け入れやすい仕組みにしています。同社で使用していたシステムとの連携にも成功して効率よく業務に活用できる体制を整えています。

株式会社デジロウ本人確認の手段としてSMS認証を導入 
https://sms.supership.jp/case/post-1430

日本カーネット株式会社

日本カーネット株式会社では長文配信可能なSMSサービスを導入して、顧客のフォローやサポートに活用しています。同社では自動車販売業や整備業、板金業などを営む経営者向けの顧客管理システムを運営しています。システムからSMS送信をすることでクーポンの発行やアンケートの実施が可能です。SMSによってリピート率と売上の向上を目指す施策を実施できるシステムに仕上げています。

日本カーネット株式会社 顧客管理システムからSMS送信のAPIを使用し、SMS送信機能を提供
https://sms.supership.jp/case/post-1383

auフィナンシャルサービス株式会社

auフィナンシャルサービス株式会社では後払い決済、クレジットカード、ローンなどのファイナンス商品を取り扱っています。同社では、電話やメールでは顧客に連絡が届きづらく、支払いの催促への課題感がありました。SMSによる通知でリマインドすることにより、回収効率を向上させています。顧客にダイレクトにアプローチできる点を生かして他の展開の可能性も検討されています。

auフィナンシャルサービス株式会社 SMS配信で後払い決済の延滞率が低下
https://sms.supership.jp/case/post-41/

まとめ

アンケートの回収率は対象者数に対する有効回答者数の割合です。回収率が高いほど信頼性のある統計データになるため、市場調査では工夫をして回収率を上げることが重要です。アンケートの回収率を上げるには質問項目、実施方法、配信対象などを考えて設計する必要があります。SMSは個別性が高くて到達率・開封率が高いことから、アンケートに有効なツールです。SMSによるアンケート配信やリマインドをして回収率を上げましょう。