自社を将来的にも存続させていくためには顧客と良好な関係を構築することが不可欠といえるでしょう。そのためには、それぞれの顧客に合った接客や対応、アプローチなどを行う必要があります。そこで注目したい戦略の一つとしてCRM戦略が挙げられます。CRM戦略とは顧客と良好な関係を維持し、自社の利益を安定的に得ることを目標にした経営戦略のことです。そこで本記事ではCRM戦略の概要をおさえた上で、メリットや進め方、重要ポイントなどについて解説していきます。

CRM戦略とは何か

CRMはCustomer Relationship Managementの略語で、日本語では顧客関係管理と訳されています。そしてこの言葉には顧客との良好な関係性を維持し、利益を安定的に得る経営戦略といった意味が含まれています。

例えば、美容室においてもCRM戦略は効果的といえます。美容室は多く存在するため、消費者は数ある選択肢の中から自分好みの美容室を選択できます。あるいは、一つの美容室に通い続けている消費者もいます。そのため、新規顧客を獲得できる期待は薄く、新規顧客にのみ頼っては多くの顧客を日々集めることは難しいでしょう。そこで重要となるのが既存の顧客です。既に来店したお客様を大切にし、再来店してもらうことで売上を獲得できます。お客様のニーズに合った施術を行い、円滑なコミュニケーションをとることで、継続して売上を得られるようになります。

CRMとは?導入メリットやCRMツールの選び方などを徹底解説

CRM戦略の必要性

近年、同業他社間の競争は激化しており、企業が売上を獲得するためには顧客に自社を選んでもらえるような戦略を企てることが不可欠です。これまでのように、商品やサービスを単に提供しているだけでは多くの顧客を獲得することはできません。

そうした中で、CRM戦略で顧客のニーズや好みなどについて細かく分析を行い、顧客に合った商品やサービスを提供することの重要性が増しています。各顧客に合ったサービスや商品を提供することによって顧客満足度は向上し、自社の売上を伸ばしていくことができます。

CRM戦略のメリット

CRM戦略は企業にとって利益率のアップにつながる方法の一つです。ここでは、以下5つのCRM戦略におけるメリットについて見ていきましょう。

  • 顧客に合わせた商品やサービスを提供できる
  • 顧客の深層的なニーズを把握できる
  • データドリブンンなマーケティングや営業を実現できる
  • 顧客生涯価値を向上できる
  • 顧客満足度の向上につながる

それぞれについて詳しく解説していきます。

顧客に合わせた商品やサービスを提供できる

前述のように、消費者は数多くの選択肢の中から自分に合った商品やサービスを選択できます。多くの消費者は商品やサービスを選択するにあたって価格や品質だけではなく、自身にとっての必要性や抱えている課題に対する効果についても考慮しています。また、消費者の中には商品における性能の高さとコストの高さを結び付ける人も少なくなく、性能の高さが必ずしも求められているとはいえないでしょう。企業が商品やサービスを開発する際は顧客のこうしたニーズを汲み取ることが重要です。また、顧客ごとにカスタマイズされた商品やサービスは特に人気を集めています。

顧客の深層的なニーズを把握できる

顧客が抱えているニーズは表面的なニーズと深層的なニーズに分類できます。表面的なニーズは顧客が自覚しているものであり、顧客から店員に相談されることも多いです。一方、深層的なニーズとは顧客自身が自覚していないため、顧客の口から語られることはありません。

顧客の深層的なニーズに気付き、顧客が本当に必要とする商品やサービスを提供することによって、顧客から信頼を得やすくなる他、顧客に満足してもらいやすくなるでしょう。

データドリブンなマーケティングや営業を実現できる

データドブリンとは勘のみに頼るのではなく、データに基づいて施策や立案を検討することです。データを参照しながら施策や立案を行うことで、より効果的なアイデアを導き出せるだけでなく、属人化を回避しやすくなります。

その他にも、時代の変化とともに出てきた新たなニーズについても柔軟、かつスピーディに対応できるようになるでしょう。

LTV(顧客生涯価値)を向上できる

顧客生涯価値とは企業がもつ顧客の将来に関係する価値のことです。

CRM戦略では顧客生涯価値を高めることも期待できるでしょう。CRM戦略では取引の開始から取引終了までを含めるため、CRM戦略を成功させ、顧客と長期におよぶ取引を実現できれば顧客生涯価値を向上することもできます。

顧客満足度の向上につながる

CRM戦略とは顧客情報を一括で管理し、さまざまな情報を頼りにしてビジネスを進めていくことです。顧客情報をうまく管理し、顧客対応をしていくためにはカスタマーサポートの充実化が不可欠となります。

各顧客について取引情報や過去にやりとりした履歴などをまとめることで、顧客に対して適切な対応ができます。また、担当者が不在のときにも、別の従業員が過去の問い合わせ履歴を確認できればスムーズ、かつ円滑な対応を行えます。

顧客は問い合わせを手軽、かつ簡潔に行いたいと考えているため、顧客に対するスマートな対応は顧客満足度の向上につながります。

CRM戦略を推進する方法

CRM戦略の推進方法について悩まれている方も少なくないでしょう。CRM戦略を推進する方法として以下7つの方法が挙げられます。

  • 目標を設定する
  • ペルソナを設定する
  • カスタマージャーニーを作成する
  • CRMツールを選定する
  • PDCAを回す
  • CRMツール(システム)の理解を深める
  • ツールを導入することを目的にしない

それぞれについて詳しく解説していきます。

目標を設定する

CRM戦略の効果を測定する上での目標となるKPIの設定を行います。KPIとする指標には多くの種類があるため、CRM戦略の目的やビジネスモデルに応じて決定します。

以下は、CRMの効果を測定する目標のKPIとしてよく選ばれるものです。

  • 受注金額
  • 継続率
  • 顧客数
  • 顧客単価
  • リードタイム
  • 顧客満足度
  • 商談件数

自社に合ったKPI設定を行った上で、しっかりと調査することによって高い成果を期待できるようになります。

ペルソナを設定する

ペルソナとは自社が商品やサービスを提供する顧客像のことです。ペルソナの設定では年齢や性別、居住地、職業、家族構成といった属性に着目することが多いです。また、趣味や好みなど細かく設定し、顧客像をより具体的に思い描くこともできます。

CRM戦略では顧客との関係性を重視するため、自社の顧客が抱える課題や自社商品のニーズなどについて把握を行い、顧客の目線になって商品やサービスの内容を検討しなければなりません。

カスタマージャーニーを作成する

カスタマージャーニーとは商品やサービスを利用する顧客の行動や思考などについて分析し、購入にいたるまでのシナリオを検討することです。カスタマージャーニーを定めることにより、顧客がどのような行動をとり、どういったプロセスを踏んで購入するかを可視化できます。

そのため、顧客がどのようなタイミングで、かつどういった情報を必要とするかなどのニーズを把握し、CRM戦略に活かすことができます。

CRMツールを選定する

CRM戦略ではCRMツールの活用が不可欠といえるでしょう。とはいえ、CRMツールにはさまざまな製品があるため、自社に適切な製品を見極めることは容易ではありません。自社に適したCRMツールを選択するためには以下のポイントに着目し、選択してみてください。

  • 自社の課題を解決する機能が搭載されている
  • 誰もが簡単に操作できる
  • 外部サービスとの連携の有無
  • 予算内で導入、及び利用できるか

CRMツールの選択で失敗しないためには自社の課題に加え、CRMツールにおいて必要とする機能を洗い出しておきましょう。

PDCAを回す

PDCAとはPlan(計画)、Do(実行)、Check(確定)、Action(対策)の頭文字を取った用語です。CRM戦略において成果を出すためにはPDCAサイクルをまわし、計画から対策までを繰り返すことが重要です。施策を実行し、それが成功しなかった場合にも、施策における改善策を発見し、施策を再度実行することで成果を少しずつ高められるでしょう。思い通りの成果が出なかったとしても、PDCAを根気強くまわすことで目標達成に近付けるはずです。

CRM戦略におけるポイント

CRM戦略はポイントをおさえて実施することが重要です。CRM戦略におけるポイントとして以下の2つが挙げられます。

  • CRMツール(システム)の理解を深める
  • ツールを導入することを目的にしない

それぞれについて詳しく解説していきます。

CRMツール(システム)の理解を深める

CRMツールの使用に慣れるまでは何かと問題が生じるものです。また、導入したツールについてきちんと理解していない場合、そのツールの機能や特性を最大限活かせないこともあるでしょう。

CRMツールを導入した際には従業員にツールの使用方法について教える機会を設けたり、各従業員がツールを使いこなせるようになるまでサポートしたりすることが重要です。

また、CRMツールを自社で使いこなすためには提供元のサポートの重要度も鍵となりえます。導入するツールを選択する際は、どのようなサポートを受けられるのかに加え、問い合わせ方法についても確認しておきましょう。

ツールを導入することを目的にしない

CRMツールを導入することが目的になっている企業も少なくないと見受けられます。CRMツールを導入したことに満足し、それ以降は何も行わなければ、導入効果は見出せません。

CRMツールの導入はCRM戦略における最初の段階にすぎないといえるでしょう。CRMツールを導入したら従業員が問題なく利用できるようにサポートを行ったり、CRMツールを活用して問題解決に向けてアクションを実際に起こしたりしましょう。

CRM戦略の実施事例紹介

日本ピザハット

日本ピザハットではCRMシステムとしてSalesforce Loyalty Managementを採用しました。顧客とのコミュニケーションを促進する目的で、顧客体験(CX)を高めるためのツールとして導入しています。日本ピザハットではアプリやLINEなどによるマルチチャネルでのデジタルマーケティングによるDXを進めてきました。その基盤システムとなるCRMを導入することで、選ばれるブランドを目指して取り組みを進めています。

参照:日本ピザハット、Salesforce Loyalty Management を採用|株式会社セールスフォース・ジャパンのプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000169.000041550.html

ミズノ

ミズノではロイヤルカスタマーを1人でも多くしたいというコンセプトで、マーケティングオートメーションに対応したCRMを導入しました。ミズノではECサイトで販促をしていましたが、メールマーケティングが円滑に行えていない課題がありました。そこでミズノでは自動化を進めてメルマガを配信し、メルマガ経由での売り上げを向上させることに成功しています。メールマーケティングの業務量の削減も達成しています。

ミズノ株式会社様|カスタマーリングス活用事例
https://www.customer-rings.com/case/ec_mizuno.html

パナソニック

パナソニックではクラウドCRMの導入による効率化を実現しました。パナソニックは国内だけでなく海外でもシェアを広げていて、グローバル展開が重要課題になっていました。発展途上国でのCRM戦略を展開する目的で自社サーバーからクラウドサーバーに視点を切り替えました。もともと導入していたツールを最新システムに入れ替えたことによってパフォーマンスは最大46倍に向上し、グローバルな業務効率化に成功しています。

パナソニック社のクラウドCRM事例 | アバナード 日本
https://www.avanade.com/ja-jp/clients/panasonic

レバレジーズグループ

レバレジーズグループではマーケティング部にCRMチームを結成してCRMのオペレーションをしています。メールやLINE、電話などによる顧客との接点が多様化していることを受けて、コミュニケーション方法を設計している部署です。「顧客接点の最適化により、事業利益を最大化する」ことを命題として掲げて、CRMシステムを活用しながら顧客とのコミュニケーション設計や、自社システムのUI・UXの設計にも取り組んでいます。

【組織紹介#6】マーケティング部 顧客接点を「線」で捉えた先の利益最大化 | meLev

SMS送信サービスを活用したCRM

CRMサービスを利用するにあたり、SMSを活用することでより効果的に利用できるようになります。SMSとCRMツールを連携させることにより、データを一つずつ移行させる手間が不要になります。加えて、情報の一元管理を行えるようになるため、メッセージを二重に送信してしまうことも回避しやすくなります。その他にも、既存のCRMツールにおいて管理している情報を活用し、SMSを送信することもできます。

また、最近では携帯電話やスマートフォンなどの電話番号を頻繁に変更する人は少ないという特性を活かし、SMSとCRMツールを連携させ、SMS認証が行われることも増えています。

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

KDDI Message CastとはKDDIグループが提供する法人向けのSMS送信サービスです。このサービスを活用することでSMSの配信を少ない負担で行えるようになる他、従来よりも高い到達率を期待できます。また、管理画面はユーザーインターフェースが重視されているため、使いやすさも特長です。

Salesforceの画面においてSalesforce Platformに登録の顧客情報についてSMSの配信、および開封データを取得することもできます。

Salesforce連携

まとめ

ビジネスが多様化する昨今、企業においてCRM戦略を実施することの必要性が高まっています。既存の顧客と良好な関係を維持することにより、自社の経営を安定させることができるはずです。

そこでおすすめできるのがCRMツールを活用することです。CRMツールを利用することでそれぞれの顧客のニーズや好みに合ったアプローチを効率的、かつ効果的に行えます。

CRMツールと一口でいっても製品によって搭載されている機能などが大きく異なるため、自社に合った製品やサービスを選択するようにしてください。