飲食店のDXとは?導入事例8選!必要とされる理由も紹介
飲食業界では競合店との競争が常に繰り広げられています。飲食店はDXによって競合に対する優位性を獲得することが重要な時代になりました。この記事では飲食店のDXが必要な理由と成功事例をご紹介します。
目次
飲食店のDXとは
飲食店のDXとは、デジタル技術の活用によって業務効率の向上やコスト削減、新しいサービスの提供を通して競合競争力を生み出す変革を起こすことです。ITの浸透によって生活様式の変化が起きていることも踏まえて、顧客満足度を向上させる取り組みが重要とされています。例えば、以下のような施策はDXになる取り組みです。
- 電子決済による無人レジでの会計を導入
- AIチャットボットやIVRによる予約受付の実施
- アプリによる顧客ロイヤルティの付与とリピーター化
DXの始まりと拡大
DXは2004年にエリック・ストルターマン教授(スウェーデン)が概念を提唱して注目を浴び、日本では2018年から経済産業省によって推進が始められました。経済産業省ではデジタルガバナンスコードを策定して産業界のDXを牽引する政策を進めています。大企業からDX銘柄、中堅・中小企業等からDX Selectionを選定してDXを推進するモデルケースを表彰しています。この数年間で急速に活発化されている取り組みです。
参照:
産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX) (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
飲食店のDX活用シーン
飲食業界以外でも業務効率化やコスト削減のツールを導入したり、デジタル技術の活用による新しいビジネスやサービスの創出をしたりするDXが活発です。ここでは飲食店でのDXに限定して、シーン別のDX活用事例を紹介します。
飲食店業界以外のDXの事例についてはこちらをご覧ください。
関連リンク:界別のDX事例15選 DXが各業界にもたらす影響や変化とは
https://sms.supership.jp/blog/dx/dx_jirei15/
注文・会計におけるDXの活用例
飲食業界では注文から始まって会計に至ることで売上になります。注文と会計は欠かせないプロセスなのでDXの際にも重要なシーンです。
飲食店では消費者を席に案内した後、フロアスタッフがオーダーを取って手書きでメモし、キッチンで調理スタッフに伝えるのが一般的なフローでした。ただ、スタッフの聞き間違いや伝達ミスによってオーダーミスが起きるリスクがある方法です。オーダーが直接キッチンに送られるシステムがあればミスが減ります。オーダーを取る手間もなくなるので業務効率も上がります。
セルフオーダーやセルフ会計は飲食店の注文・会計における典型的なDXです。他にも注文や会計の改革をした事例もあるので具体例を紹介します。
株式会社FOOD & LIFE COMPANIES
株式会社FOOD & LIFE COMPANIESは「スシロー」などを経営している企業で、2002年から回転すし総合管理システムを導入してきました。DXによる課題解決を推進していて、会計の効率化を達成した事例があります。
課題
- 会計の待ち時間の長さ
- 皿の数え間違いのトラブル
施策
- カメラでの画像認識による会計システムの導入
効果
- 会計の皿の確認が不要になり業務効率化と省人化を達成
- 会計の非接触化を実現
参照:
食品ロス削減にDXで挑む | 株式会社FOOD & LIFE COMPANIES
https://www.food-and-life.co.jp/sustainability/sushisystem
スシローがお皿のカウントを自動化 AIが画像認識して価格と数を自動計算! ISPのエッジAIを活用して回転寿司の省人化を推進 – ロボスタ
https://robotstart.info/2020/12/05/akindo-sushiro-ai.html
スシロー、超ハイテクな店舗の全貌…「回転寿司総合管理システム」で顧客満足度を極大化 | ビジネスジャーナル
https://biz-journal.jp/company/post_109302.html
株式会社すき家
株式会社すき家は株式会社ゼンショーホールディングスの傘下で「すき屋」を運営している企業です。すき屋アプリなどの導入によるDX施策を推進する中で、店内業務効率化を目的とする注文・会計システムを導入しています。
課題
- スタッフの業務負担の軽減
- 非現金の決済手段への対応
施策
- セルフサービスの注文システムの導入
- セルフサービスのキャッシングレジシステムの導入
効果
- スタッフの注文受付・会計対応の負担の削減
- 顧客利便性の向上
参照:
すき家のDX | すき家の取り組み | すき家
https://www.sukiya.jp/about/dx
予約・顧客管理におけるDXの活用例
飲食店では予約を取れると売上が確定し、食材やスタッフの調整もできるので理想的です。再来店する顧客には、前回の感想を踏まえた対応をした方が喜ばれてファンになってもらえる可能性があるでしょう。予約対応や顧客管理でもDXが効果的です。
予約は電話で受け付けたり、グルメサイトから予約を受けたりするのが一般的でした。しかし、予約受付システムや自社アプリを使用して予約を受けると電話対応の負担がなくなります。顧客情報も取得して記録できるため、利用者を分析してサービスの向上を図ることも可能です。予約前日や当日にリマインドを自動送信することで来店率を向上させる取り組みもおこなわれています。
ここでは予約・顧客管理のDXを成し遂げた事例を紹介します。
株式会社サッポロライオン
株式会社サッポロライオンは「銀座ライオン」や「ヱビスバー」などを手掛けてブランド展開をしている企業です。同社では予約管理のDXによるリピーター獲得施策に取り組んで成功しました。
課題
- リピーターの自社の予約窓口への誘導
- ネット予約の強化
- グルメサイトの送客手数料の最適化
施策
- 予約管理システムの導入
- 公式アプリからの予約受付の導入
- AIレセプションの導入
効果
- 自社窓口からの予約の増加
- 予約受付時間の拡大
- ネット予約率の向上
- 送客手数料の削減
参照:
導入事例 株式会社サッポロライオン | 【公式】ebica|レストラン・飲食店向け予約管理システム
https://www.ebica.jp/casestudy/sapporo-lion/
日本ピザハット株式会社
日本ピザハット株式会社はピザのデリバリー・お持ち帰り・イートインサービスを提供する「ピザハット」の運営企業です。同社では宅配ビジネスの競合が増えた影響で顧客ロイヤルティを高めるサービスの提供と業務効率の向上が課題になっていましたが、CRM・SFAツールの導入で解決しました。
課題
- メルマガによるマーケティングプロセスの効率性の低さ
- レポーティング業務の負担
- リピーターの獲得
施策
- Saleforceの導入
- 自社アプリへのプッシュ通知機能の追加
- ロイヤルティプログラムの導入
効果
- カスタマージャーニーのきめ細かな設計による購買頻度の向上
- データ集計・分析・可視化機能によるレポーティング負担の7割削減
- ロイヤルティプログラムによるリピート率の向上の達成
参照:
日本ピザハット株式会社 | セールスフォース・ジャパン
https://www.salesforce.com/jp/resources/customer-stories/pizzahut
集客におけるDXの活用例
飲食業界では集客のDXの取り組みが活発です。競合店が多い飲食店ではリピーターを増やしながら新規獲得を目指すことで安定経営につながります。
集客におけるDXでは従来は紙媒体だったチラシやクーポン、スタンプカードなどをデジタル化している事例が目立ちます。自社アプリを開発して特典を配信することでリピーターを獲得しているのが典型的です。LINEの公式アカウントを運用してLINE経由で接点を作ったり、SMSを活用したりしている飲食店もあります。
集客ではパーソナライズされたマーケティングが求められる時代です。ここでは消費者視点で魅力のあるアプローチで集客施策を推進し、成功している事例を紹介します。
株式会社すかいらーくホールディングス
株式会社すかいらーくホールディングスは「ガスト」や「バーミヤン」などのファミリーレストランチェーンを運営している企業です。同社ではDXツールとしてアプリを開発して運用してきました。集客施策としてアプリ上で使用できるポイントプログラムを導入して成功しています。
課題
- 顧客の利便性の向上
- 働き手不足への対応
施策
- すかいらーくポイントプログラムの開始
効果
- 顧客ロイヤルティの向上
- 従業員へのインセンティブ付与基盤の構築
参照:すかいらーくグループ 統合報告書2023年
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3197/ir_material_for_fiscal_ym18/157096/00.pdf
株式会社物語コーポレーション
株式会社物語コーポレーションは「焼肉きんぐ」や「丸源ラーメン」などのブランドチェーン店を展開している企業です。同社では店舗とブランドが紐づく概念から、ブランドを中心とするマーケティングに切り替える施策を通してDXに成功しました。
課題
- ブランド別に分かれていた顧客の統合管理
- 顧客体験の最適化
- オペレーションコストの削減
施策
- ブランド概念の切替
- 顧客データの連携・統合・分析
- 優良顧客や商品分析の可視化
- チラシのデジタル化
効果
- アプリ会員・メルマガ会員・アンケートDM会員の統合化
- セグメント配信による値引き誘引売上の削減
- チラシによる販促費の削減とROIの向上
- 商品分析の効率化によるオペレーションコストの低下
参照:「店舗=ブランド」からの脱却・アプリ化で実現したコスト削減 | 株式会社物語コーポレーション – PLAZMA by Treasure Data
https://plazma.treasuredata.co.jp/case-study-monogatari-01/
勤怠管理におけるDXの活用例
飲食業界ではシフト制で正社員、パート、アルバイトの人が働いているため、正確な勤怠管理の実現が重要な課題です。スタッフの勤務時間が正しく集計されていないと適正な給与を支給できません。飲食店のDXでは勤怠管理の正確性と信頼性を向上させつつ、業務効率化を実現している事例が多数あります。
勤怠管理の方法は手書きの勤務簿やタイムカードが用いられてきました。小さな飲食店ではシフト通りに勤務したものと見なして給与計算をしている場合もあります。給与計算のときには勤務時間を集計するだけでも膨大な時間がかかります。
しかし、近年では自動集計できる勤怠管理システムが利用可能です。バックオフィスの業務システムとの連携もできるため、総合的な業務効率化の目的で導入している事例が増えています。
株式会社木曽路
株式会社木曽路は「木曽路」や「大将軍」を経営する企業です。同社ではグループ全体でのバックオフィス業務の効率化をDXによって成功させました。
課題
- アナログ業務からデジタル化への対応の必要性
- グループ全体での人事・労務の一元管理
施策
- 人事労務システムの導入
効果
- 勤怠管理や給与明細などの管理システムの一元化・デジタル化
- 約8,000名の契約更新手続きのオンライン化などの業務効率化
参照:担当者の業務効率化と10,000人を越える従業員の円滑な利用を期待 | SmartHR|シェアNo.1のクラウド人事労務ソフト
https://smarthr.jp/case/press_kisoji
株式会社クオリス
株式会社クオリスは「越後まる松」や「安兵衛」を新潟中心に店舗展開している企業です。同社では従業員の勤怠管理と関連する人事業務の課題をシステム導入によって解決しました。
課題
- 打刻漏れやミスの発生
- 従業員の勤怠をExcelで管理する負担の大きさ
- 給与計算の負担の大きさ
施策
- 勤怠管理システムの導入
効果
- 丸一日かかっていた勤怠の集計や給与計算の作業を約30分に削減
- 打刻漏れやミスの減少
参照:株式会社クオリス|導入事例|ジョブカン勤怠管理
https://jobcan.ne.jp/case/7620
飲食店にDXが重要な理由
飲食店でのDX事例が増加しているのは、顧客満足度の向上が重要課題になっているからです。ここでは具体的にDXが重要な理由を解説します。
人手不足が懸念される時代になったから
飲食店では人手不足が懸念される時代への対策が必要です。帝国データバンクの調査によると、人手が不足していると感じる企業の割合は、全業種で正社員では51.0%、非正社員では30.1%に達しています。2024年4月の集計結果では、飲食店は人手不足割合の業種として正社員では10位に位置しています。また、アルバイトやパートが不足していると回答した企業は飲食店においては74.8%と、業種別でトップとなっており、人手不足が深刻になっているのが現状です。
DXをすれば人手を最小限にしながら、質の高いサービスを提供できます。少子高齢化の影響を受けて労働人口割合が減っている状況もあります。今後も人材が不足する可能性があることを考慮し、DXを推進して打開することが重要です。
参照:
人手不足に対する企業の動向調査(2024 年 4 月)|帝国データバンク
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240501.pdf
人手不足に対する企業の動向調査(2024年4月) | TDB景気動向オンライン
https://www.tdb-di.com/special-planning-survey/sp20240502.php
中食対応が必要だから
飲食業界では、デリバリーやテイクアウトに対応している店舗も多くなりました。財務省の広報誌「ファイナンス」では外食の市場規模は2010年から2019年にかけて9.7%成長しました。しかし、エヌピーディー・ジャパン株式会社による調査では、2019年から2022年にかけて外食の市場規模が23.3%縮小しています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて外食をせずに中食(なかしょく)をする(お弁当やデリバリーを利用して家で食事をする)動きが強まったからです。
中食の市場規模は2010年から2019年にかけて27.2%、2019年から2022年にかけて13.8%も成長しており、着実に拡大しています。DXによるデリバリーやテイクアウトのオンライン対応を推進すると市場の変化に乗り遅れずに済むでしょう。
参照:
中食、外食市場の動向と課題|財務省 広報誌「ファイナンス」
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202109/202109l.pdf
<外食・中食 調査レポート>2022年7月、外食・中食売上は2019年同月比7.9%減、コロナ第7波の拡大で回復鈍る|サカーナ・ジャパン / Circana Japan / NPD
https://www.npdjapan.com/press-releases/pr_20220908
非接触のサービスが求められているから
新型コロナウイルスの感染拡大によるコロナ禍の時期には新しい行動様式が浸透しました。飲食店でのキャッシュレス決済への対応が浸透し、非接触での注文や会計が当たり前のように使われる時代になっています。スマートフォンで注文をして店頭で料理を受け取ってテイクアウトする、オンラインでコースの予約をして決済まで済ませるといったケースも増えてきました。
飲食店ではテーブルにQRコードを設置して、スマートフォンやタブレットで読み込んで注文するセルフオーダーも広まってきています。非接触のサービスが受け入れられ、効率が良くて便利なサービスが選ばれる時代です。デジタル技術を生かして消費者から喜ばれるDXをする必要性が高まっています。
飲食店DX導入に役立つ補助金制度
飲食業界でDXをするには初期費用の確保が課題です。DXを目的としてIT導入を進めるときには国の補助金制度を利用できる可能性があります。以下の補助金制度は対象になる場合が多いので活用しましょう。
- IT補助金
- 小規模事業者持続化補助金
IT補助金は予約システムや勤怠管理システムなどの導入費用だけでなく、当面のランニングコストもカバーできます。小規模事業者持続化補助金もシステム導入による事業継続性を伝えれば必要なツールの導入コストの一部を補完可能です。
参照:トップページ | IT導入補助金2024
https://it-shien.smrj.go.jp
飲食店の業務を効率化するなら
飲食店のDXでは業務課題を見つけて効率化することから開始し、だんだんと大きな変革を目指す計画を立てることが大切です。最初から抜本的な改革をするにはコストも従業員の教育も必要になります。簡単に使えるツールで業務効率化を目指しましょう。
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https://sms.supership.jp/
まとめ
飲食業界では注文、会計、予約、集客などのさまざまなシーンでDXを推進する価値があります。外食から中食へのトレンドの動きにも対応し、消費者から選ばれる飲食店への変革を目指すDXに取り組みましょう。業務効率化は飲食店経営で始めやすいDXです。予約の受付やフォロー、リピーターの獲得などの施策を効率化して、ファンを育てれば経営が安定します。導入しやすいシステムから取り入れて、段階的にDXを進めていきましょう。