企業のDX化が推進されている昨今、あらゆる環境でデジタル化がすでに進んでいます。営業職においても、営業DXという言葉をよく耳にする方が多いのではないでしょうか。しかし、デジタル化と何が違うのか、営業DXで得られる効果は何なのか分かりにくい部分もあるでしょう。ここでは、そんな疑問にお答えできる情報を成功事例をまじえてご紹介します。

営業DXとは何か

営業DXとは営業による顧客の課題解決にデジタル技術とデータを活用し、顧客ニーズに的確に応えるための取り組みです。営業では顧客とのコミュニケーションを通して莫大なデータを手に入れられます。データに基づいて営業戦略を策定し、営業プロセスを効率化して自社にとっての利益を最大化することを目指します。営業は商品やサービスの販売を促進する基盤です。営業DXの推進によって自社の価値を的確に伝えられるようになります。

営業DXが必要とされる理由

営業DXが必要なのは時代の大きな変化が起きつつあるからです。インターネットやITの活用が進み、営業やサービス利用のあり方が大きく変化しました。リモートワークなどの働き方も導入されてきています。営業活動では効率を上げるだけでなく、顧客満足度の向上を目指す必要も高まってきました。時代の変化に合わせ、営業のあり方も変えていかなければいけません。ここでは営業DXの必要性について詳しく説明します。

インターネットの普及

ここ数年で、営業職を取り巻く環境の変化はどんどん進化しています。インターネットの普及は、特に大きな変化と言えるでしょう。インターネットの普及により、誰でも簡単に欲しいものを欲しいタイミングで購入できる時代となりました。それは国内のお店だけでなく、海外のお店にまで及びます。そして、営業職は取引先や顧客と電子メール等を通じてやりとりをすることも一般的になりました。

働き方の変化

新型コロナウイルスや働き方改革によって、リモートワークの体制を整えた企業が増加しています。インターネットの普及によって、こうした体制がとれるようになり、営業もリモートワークに適した働き方が求められています。

顧客満足度が重視される時代に

一昔前の、大量生産・大量消費の時代が過ぎ、現在は顧客満足度を高める経営が重視されています。顧客が簡単にインターネット等を通じて情報を得られる時代となり、スピードや満足感なども求められるようになりました。営業は、さまざまなデータを活用してよりニーズに合った手法を用いて仕事をする必要があります。

営業DXのメリットとは

営業DXは、企業の売上の基盤となる営業活動をイノベーションすることで、以下のようなメリットが生まれます。

  • 生産性向上・効率化に役立つ
  • 顧客体験を向上させられる
  • データを用いた営業戦略が立てられる

ここでは各項目についてDX化による効果を解説します。

生産性向上・効率化に役立つ

DXは営業活動の各業務を効率化し、全般的に生産性を向上させることができるのがメリットです。今まで時間がかかっていた業務を自動化したり、営業担当者間で連携して顧客対応を行ったりすることが可能になります。また、リードや顧客の基本属性、過去の取引情報などの各種データを一元管理するだけでも、営業のサポートとなり業務効率が向上します。

顧客体験を向上させられる

営業DXは顧客体験の向上に直結します。顧客とのコミュニケーション履歴をもとに提案を行い、全体のトレンドやニーズを踏まえたアプローチ戦略を考えることができるからです。これにより、個々の顧客に合わせた情報提供やアフターフォローが可能となり、顧客体験が向上します。結果として、リピーターやファンの増加につながります。

データを用いた営業戦略が立てられる

データの活用は営業DXの重要な要素です。営業内容や顧客情報などのさまざまなデータをデジタル化して一元管理することで、データドリブンに営業戦略を立てることができます。顧客動向や市場状況を踏まえ、自社の強みを生かした営業方法を選択することが可能です。データの蓄積を通じて競争力のある企業に成長できるのも、営業DXを推進するメリットの一つです。

営業DXを実現した企業の成功事例

富士通

営業職の代わりに「エバンジェリスト」という商品の良さを伝達する職種が世界的に増えてきており、この流れに乗ったのが富士通です。自身がDX推進の役割を担う企業でもあり、営業の役割を見直して撤廃し、代わりに「ビジネスプロデューサー」を設置しました。顧客とともにビジネスをプロデュースしていく新会社「Ridgelinez株式会社」を設立しました。テクノロジーを駆使して、商談活動支援や社内調整はインサイドセールスを行う部門が担当し、効率的に社内連携を図っています。

参考:
営業DXのエキスパートに聞く「営業のデジタルシフト」の解決法 : 富士通
お客様のデジタルトランスフォーメーションを実現する新会社「Ridgelinez株式会社」を設立 : 富士通

NTT東日本

インサイドセールスを専門に扱う部門を発足し、リード獲得からクロージングまで行う「Webリードクロージングセンター」を開始。Web問い合わせへの返答のスピードアップなどにより、いわゆるキーマンとの接触率が大幅に向上し、受注率も上がりました。自社でDXコンサルティングを中心とした事業を行う新会社「株式会社NTT DXパートナー」も設立しています。

参考:
DXコンサルティング・プラットフォームビジネス分野における新会社「NTT DXパートナー」の設立について | NTT東日本

テスラ

電気自動車を手掛けるテスラは、多くの店舗を閉鎖してオンライン販売へ移行しています。デジタル部分に投資をしてWebからでも抵抗なく車を選びやすいよう工夫し、「購入後7日以内または走行距離1600km以内(いずれか早い方)なら全額返金が可能」として新しい購買体制を整えました。営業コストや人件費、テナント料などの削減により、車の販売価格を6%も引き下げることに成功し、より多くの顧客の購買意欲を高めています。

参考:
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株式会社LIFULL

株式会社LIFULLでは営業の効率化を推進するためにDXを多角的に推進しています。インサイドセールスの導入やリモートワークへの対応、学習コンテンツのプラットフォーム導入による営業人材の育成など、総合的に取り入れてきました。営業DX推進ユニットも設置して積極的にツールを導入し、改革を進めています。

参照:
LIFULL、経済産業省が定める「DX認定事業者」に認定 – 株式会社LIFULL(ライフル)
LIFULLの営業DX トップセールスの知見を学習コンテンツ化 | 2021年7月号 | 先端教育オンライン

営業DXを進めるためにすべきこと

営業DXでは営業活動に必要なプロセスとワークフローをデジタル化して取り組むことが重要です。以下の取り組みを並行して始めると営業DXを加速できます。

  • 営業支援のツールを導入する
  • オンラインでのリード獲得注力する
  • 営業や契約をオンライン化する

ここでは重要な3つの取り組みについて解説します。

営業支援のツールを導入する

営業支援ツールは、SFAやCRMに代表される、営業業務の効率化や顧客データ、営業履歴などのデジタル化を行い、資産として管理するためのツールです。これらのツール上で営業担当者同士のコミュニケーションや進捗管理ができ、営業資料の共有プラットフォームとしても活用できます。営業DXに必要なインフラとなるため、自社に合う機能を持つツールを選定し、早期に導入・運用を開始することが重要です。

オンラインでのリード獲得注力する

営業とマーケティングの連携を強化し、オンラインでのリード獲得から顧客として成長させる道筋を立てることが重要です。オンラインでのウェビナーや商品紹介などのイベントを開催したり、Web広告を通じてブランディングを行うマーケティング手法が一般化しています。マーケティングから得たデータを基に営業でリードを獲得するワークフローを構築することで、効率が向上し、自社のデータを最大限に活用できる営業DXが実現します。

営業や契約をオンライン化する

マーケティングだけでなく営業もオンライン化する取り組みを進めることが大切です。インサイドセールスを通してリードや顧客とのコミュニケーションを取るオンライン営業を基本にして営業効率を上げると営業DXになります。成約時には電子サインによるオンライン契約にすると、契約書のやり取りの手間もコストも抑えられます。リード獲得から成約に至る営業プロセスは営業支援ツールを使って可視化できるので、営業DXの成果も評価しやすいでしょう。

営業DXで使用されるツールの種類

営業業務を大きく変えられるツールは多数開発されていますが、ここでは営業DXによって大きな変化を生み出すことができるツールの例を厳選して紹介します。

営業コストの見える化を行うツール

営業DXではコスト削減を目的として推進することがよくあります。営業コストを見える化するツールは有用で、パッケージ化されている製品も多いので容易に導入可能です。

営業活動では営業担当者の人件費だけでなく、訪問、テレアポ、ダイレクトメールなどによるコストがかかります。顧客との交渉にどれだけの工数がかかったか、結果としてどの程度の金額の契約を取れたかを総合的に評価すると、営業活動のコストパフォーマンスがわかります。営業のアプローチや営業担当者などで分類してコストパフォーマンスを視覚的に比較することで、コストを抑える営業戦略を立てられるようになります。

営業の潜在顧客・顧客要望の見える化を行うツール

営業DXでは顧客の見える化をするツールが有効です。営業活動では顧客に潜在顧客の段階からアプローチし、優良顧客として継続的に自社に利益をもたらす顧客に育成することが重要です。潜在顧客の状況を見える化して分析したり、顧客要望を視覚的にまとめてアプローチする戦略を立てたりすることができると営業効率のアップにつながります。SFA・CRMは顧客情報をデータベースとして整理し活用できるツールとして使われています。

潜在顧客の状況や顧客の要望を見える化するだけでなく、具体的なアプローチもできるツールはさらに有用です。マーケティングオートメーションによって、メールやSMSによるフォローを自動化できると営業効率が上がります。SMSは一斉送信によるアプローチも可能で、信用性が高いことから顧客からも喜ばれる方法です。見える化によって得られたデータに基づいて自動対応できるツールをSMS送信サービスと連携させると便利でしょう。

営業DXを導入するための流れ

営業体制の棚卸し

現場で働く営業職の意見を中心とし、複数の部門から声を聞きながら最適なDXのためのITツールを見つけます。大事なのは、具体的な運用を想定して、どのような部分をDX化したらよいのか明確にすることです。IT部門が中心となって整備を進めてしまうのではなく、時間がかかっても丁寧に現在の体制を見つめて、実際に現場の営業職が使えるツールを導入することが大事です。

方針の決定

営業体制の棚卸しができたら、IT部門やITコンサルタントなどの専門家の意見を聞き方針を決定していきます。まず先に行うべきなのは、ゴールのイメージです。営業のDX化の最終的なゴールがイメージできると、より効果的なツールの選定ができます。この段階は、とても慎重に行う企業が多く、時間をかけて行う企業であれば半年近くかかる場合もあります。DX化のための予算の問題もあるため、営業職だけで決定することは難しいかもしれませんが、潤沢な予算があれば社外のITコンサルタント等の意見を取り入れるのも有効です。

インフラ整備

方針が決定すれば、あとは体制づくりです。IT部門としっかりと連携をはかり、実際に使用するツールの運用や必要なインフラ整備を始めていきます。現場の営業職の声がしっかりと拾える体制をとり、誰もが使いやすい環境を整えることが大切です。

営業DXを実現するためのポイント

現在の課題を抽出する

現在の営業プロセスで、どのような課題があるのかを常にチェックしておきましょう。必要に応じて、その都度最適な対処法を検討することで、よりよい体制づくりが実現していきます。課題の抽出には、SFAやCRMなどのセールステックの活用が便利です。

より高度な営業ができる人材の育成

インターネットの普及により、顧客自身が必要な情報を簡単に収集できる時代となりました。そのため、これからの営業職には、物事を見抜く力や先回りして必要となるであろう情報を見つけるスキルが求められます。こうした高度な営業ができる人材を育てるのも、営業DXをすすめていく上で重要です。

機能の細分化

現在の主流は、インサイドセールスと物事の決定に関わる場面での営業を分けてそれぞれの専門性を高めて連携する営業方法となっています。従来の方法を続けていると、アポイントがなかなかとれずに困ってしまう事態につながりかねません。営業体制の機能を細分化することで、生産性の向上につなげていくのがポイントです。

プロジェクトチームの編成

営業DXを担当するプロジェクトチームを編成して推進すると、効率が格段に向上します。営業DX化の成功事例には、組織横断型プロジェクトとして自社に合う方針を柔軟に検討し、実行する権限と裁量が与えられていることが共通しています。チーム編成においては、メンバーが主体的に意見を出し行動することが重要です。優秀なDX人材がトップに立ち、メンバーの意見を汲み取ることで、営業DXの成功に繋がります。チーム編成は慎重に行う必要があります。

営業DXを進める際の注意点

営業DXを推進する際には、様々な障害が発生する可能性があります。プロジェクトチームは特に以下の注意点を念頭に置いて施策を検討することが重要です。

  • ツールの導入が目的にならないよう注意
  • 認識齟齬に注意

営業DXは全体で協力して成果を出してこそ意味があります。ここでは営業DXを進める際の注意点を解説します。

ツールの導入が目的にならないよう注意

営業DXのプロジェクトチームを結成する際に最初にやるべきことの一つは、営業支援ツールの導入です。しかし、ツールの導入自体を目的としてしまうと、営業DXは失敗することがあります。

営業支援ツールを導入しても、それを使いこなしイノベーションを起こさなければ意味がありません。実際に現場で使用することを前提にツールを選定し、導入後のワークフローや運用ルールも策定する必要があります。導入後も試行錯誤を重ね、適した運用方法を見つけ出すことが重要です。

認識齟齬に注意

営業DXは組織的に実施することで高い競争力を獲得する可能性が高まります。しかし、部門間の連携がうまくいかないと認識齟齬が発生しやすいため、注意が必要です。営業部門の課題解決を優先してDXを推進した結果、マーケティングなど他部門に負担がかかる場合があります。また、DXの重要性を理解してもらえず協力を得られないこともあります。このような状況を避けるためには、DX目標を全社的に掲げて理解を促し、一丸となって進めることが大切です。

営業DX推進にはSMSの活用がおすすめ

オフィスやレンタルスペースでパソコンを操作する女性。オンラインで快適に仕事をするイメージ。

営業DXの推進には、SMSの活用がおすすめです。これまで主流だった電話やメール、郵送でのDMでは、つながりにくい、開封率が悪いといった問題がありました。しかし、SMSの場合、開封率が高く必要な情報を顧客に届けやすく効果も得やすいというメリットがあります。

便利なSMSツールを用いると、その管理や運用はとても楽に行えます。手間も大幅に省くことができるため、人材不足で悩む企業にも適しているでしょう。

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まとめ

営業職をとりまく環境は、日々変化し続けています。顧客がインターネットを使って簡単に必要な情報の収集や商品の購入を行えるようになった昨今では、営業職には従来よりもより高度なスキルと対策が求められます。営業DXの推進により、仕事の効率性を高めるだけでなく顧客の心に刺さるような営業が実現可能です。これから、体制づくりを行っていきたいと考える方は、ぜひ参考にしてみてください。

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