不動産業界のLINE活用方法とは?商談化につなげる方法や事例を解説
不動産業界のうち、特に不動産の売買や賃貸を仲介する業者において、LINE公式アカウントを活用している企業が増加しました。不動産仲介業でLINEを活用するメリットや導入前に押さえておきたい各種機能、導入までの流れなどを、事例や注意点とあわせて解説します。
目次
LINEの公式アカウントとは?
LINE公式アカウントは、企業や店舗の販売促進などを目的に開設される、ビジネス用のLINEです。LINEを活用して情報を届けたり、クーポンを配信したり、顧客とコミュニケーションをとったりすることができます。
LINE株式会社によると、日本国内のLINE利用者は月間9,400万人に達し、日本の人口の約7割が利用しているとのことです(2022年12月末時点)。また、2022年に実施された株式会社コンシェルジュの利用実態調査では、20代から60代のLINE利用者の6割が企業のLINE公式アカウントを1社以上友だち追加しており、年代別で追加していないと答えた割合が最も高かった40代でも6割弱に達していました。一方で、ブロックしたことがあると回答した割合も約6割に上るため、情報の内容や届ける頻度に留意する必要があるといえます。
参照:
LINE公式アカウントの作り方|開設の設定と運用方法
【企業LINE公式アカウント調査】約6割の利用者が1社以上のLINE公式アカウントを「友だち追加」。サービス利用に必須で有益な情報が届くアカウントは高評価
不動産業界でLINEの公式アカウント活用が注目されている背景
不動産業界でもLINE公式アカウントの活用が増えてきました。ここでは、不動産業界でLINE公式アカウントを開設した背景について解説します。
利便性の高さ
LINE公式アカウントは顧客と企業、双方にとって利便性が高いサービスです。顧客の場合、チャット機能を使っていつでも手軽に物件を探すことができます。電話は問い合わせできる時間帯が決まっているため、仕事などの都合で利用しづらいという方もいますが、チャットであれば夜間も利用することができます。
また、メールは返信が届くのを待つ必要がありますが、チャットの場合自動応答が設定されていれば、顧客は待たされることなく回答を得ることが可能です。返信が遅くなったことで、無視されたと感じる顧客を減らすことにもつながります。
キーワード応答機能(自動応答メッセージのひとつで、キーワードごとに例文を設定できる)が設定されている場合、顧客はキーワードを入力するだけで情報を検索できるため、問い合わせるための文章を考える手間が省けるというメリットもあります。このことから、企業側も紹介できる物件の数が増やせるようになり、成約につながりやすくなる効果が期待できます。
開封率の高さ
さらに企業の場合、マーケティングに活用できることや、プロモーションの質を高められるといったメリットもあります。具体的には、LINE公式アカウントでは友だち追加した相手にメッセージを配信することができますが、このときに一斉送信のほか、セグメントを指定して配信することもできます。
マーケティングに利用する場合、LINE公式アカウントの強みは開封率の高さでしょう。2021年に実施されたLINE株式会社のアンケート結果によると、受け取ったメッセージをその日のうちに見ると答えた人の割合は約8割だといいます。また、セグメントについては以下の指定が可能です。
- エリア
- 年齢
- 性別
- 友だち期間
- OS
- 4種類の詳細ターゲティング(趣味・関心、行動、属性、購買意欲)
そのほか、さらに詳細なターゲティングが可能になるオーディエンス機能や、複数のメッセージをテスト配信して各メッセージの効果を比較検証する機能(A/Bテストメッセージ)もあります。
出典:【公式】LINE公式アカウント|LINE for Business
効果的な顧客管理
LINE公式アカウントのチャット機能には、タグやノートといった設定もあります。タグやノートは顧客管理に利用できる機能です。具体的には、チャットルームごとにタグ付けして顧客を管理したり、ノートに顧客に関する情報を入力して引き継いだりすることができます。
さらに、タグは顧客情報を管理するといった使い方のほかに、ターゲティングに活用することも可能です(チャットタグオーディエンス)。例えば、顧客が希望する条件をタグ付けしておき、チャットタグオーディエンスを作成して新着物件情報をメッセージ配信するというような使い方もできます。
不動産業界がLINEの公式アカウントを活用するメリットとは
企業側のメリット
不動産業界がLINE公式アカウントを利用するメリットは、電話やメールよりも利便性が高いことだといえます。具体的なメリットは次のとおりです。
- メールよりもメッセージの開封率が高い
- 当日中にメッセージが開封される確率が高い
- 写真や動画を交えて情報を伝えられる
- メッセージをターゲティングして配信できる
- 双方向のやりとりをすることが可能
- 簡単な質問であれば自動応答機能で対応できる
- タグやメモを使って顧客情報を管理できる
- マーケティングの効果を分析できる
LINE公式アカウントをマーケティングに活用する場合、注意するべきことは、どのような情報を配信するかということです。前述のとおり、LINE利用者の6割が企業のLINE公式アカウントを1社以上友だち追加している一方で、ブロックしたことがある割合も約6割に上ります。同調査によると、ブロックした理由の約6割が「メッセージが頻繁に届く」ことと、「不要な情報ばかり届く」ことでした。
さらに、同社が企業のマーケティング担当を対象に実施したアンケート調査では、LINE公式アカウントの運用に課題があると回答した割合は約9割に上ります。このことから、メリットを伝えて友達追加してもらうこと、顧客にとって有益な情報を提供することが求められているといえます。
参照:【マーケティング担当者のLINE公式アカウント活用の実態調査】約6割の企業がマーケティング活動でLINE公式アカウントを利用も、約9割が運用に課題を持つ
顧客側のメリット
企業がLINE公式アカウントを利用していることは、顧客の利便性を高めることにもつながります。具体的には、顧客に次のようなメリットをもたらします。
- 利用の手続きが簡単
- 問い合わせにかかる手間が軽減される
- いつでも連絡できる
- 新着物件などの最新情報を入手できる
- 簡単な質問であれば即時回答が得られる
- 新着物件などの情報を入手できる
問い合わせにかかる手間とは、例えば問い合わせフォームを利用した場合、氏名やメールアドレスといった個人情報の入力が求められます。さらに、何について問い合わせているのかということを相手に伝えるための文章を考えなければいけません。電話であれば、仕事の都合などで企業の受付時間内に連絡がとれないといった問題が出てきます。
一方、LINE公式アカウントであれば、利用の手続きは基本的に友だち追加ボタンをタップするだけです。あとはアンケートに答えたり、キーワードを入力したり、リッチメニュー(トーク画面下部に固定表示されるメニューのこと)のボタンから当てはまるものを選んだりするだけで、いつでも手短に問い合わせることができます。このような意味で、問い合わせにかかる手間が軽減されます。
公式LINEの導入を検討する前に知っておきたい公式LINEの機能
LINE公式アカウントを開設する前に、押さえておきたい6つの機能をご紹介します。
メッセージ配信
メッセージ配信では、友だちになっている顧客にメッセージを送ることができます。一度に送信できるメッセージは最大3通(吹き出し3つまで)です。メッセージ配信では、以下の表現メディアを利用できます。
- テキスト
- 画像
- 動画
- スタンプ
- 音声
そのほか、テキストと画像を一体化させたリッチメッセージや、複数の画像をカルーセルで表示させるカードタイプメッセージといった配信形式も用意されています。また、以下のような配信方法があります。
- すべての友だちに配信
- 絞り込み配信(オーディエンス、過去の配信、属性)
- A/Bテストメッセージ
メッセージ配信の主なメリットは以下のとおりです。
- メールよりも開封率が高い
- 即時性が高い
- 反応率が高い
チャット機能
チャットでは、LINEのトークのように顧客一人ひとりと個別にやりとりすることができます。ただし、チャットを利用するためには、はじめに顧客からチャットメッセージを送ってもらう必要があります。
また、顧客側からグループに招待された場合、グループトークを利用することも可能です。グループトークは顧客とのやりとりのほか、社内の情報共有手段としても活用できます。また、チャットでは以下のような機能も用意されています。
- 定型文の作成
- LINEコール
- 応答時間の設定
- ステータスバー(トークルーム上部に表示され、対応方法などを伝えられる)
- ユーザーやメッセージのピン留めや、要対応の設定
なお、チャットの主なメリットは以下のとおりです。
- いつでも連絡を受けられる
- 問い合わせや予約などの履歴を確認することができる
- 画像などを用いて、視覚的に情報を伝えられる
- グループチャットの場合、グループ内で情報を共有できる
- タグやノートを活用して、顧客情報を効率的に管理できる
- 無料で利用できる
リッチメニュー
トーク画面の下部に固定表示されるメニューのことをリッチメニューといいます。例えば、リッチメニューから顧客を外部サイト(物件を検索できるページなど)に誘導したり、LINE公式アカウント上で利用できる機能(物件のキーワード検索ができるなど)の使い方をトーク内に表示したりすることができます。各メニューに設定できるアクションは次の5種類です。
- リンク
- クーポン
- テキスト
- ショップカード
- 設定しない(画像として設定したメニューに使用)
また、リッチメニューの主なメリットは次のとおりです。
- 顧客が情報を見つけやすい
- 顧客の注意を引きやすい
- 外部サイトに誘導できる
- フリープランでも利用できる
LINE VOOM投稿
LINE VOOMは、ショート動画や写真などを投稿できるサービスです。社内調査をもとに、2019年8月の訪問ユーザー数(MAU)は6,800万人以上であると公表されています。
LINE VOOMでは、TwitterやInstagramのように投稿に「いいね」や「コメント」を付けたり、相手をフォローしたり、トークルームやVOOM内で投稿をシェアしたりすることができます。また、友だち以外のユーザーも投稿を見ることができるといった特徴があります。LINE VOOM投稿の主なメリットは以下のとおりです。
- 投稿を拡散してもらえる可能性がある
- 新規顧客の獲得が期待できる
- 無料で利用できる
- 投稿を削除できる
- コメントからコミュニケーションがとれる
出典:LINE VOOM
LINEコール
LINEコールでは、顧客からの音声通話やビデオ通話を受けることができます。企業から顧客に電話をかけることはできません。LINEコールを利用する場合、事前にLINE公式アカウントの設定変更が必要です。
変更が完了したら、プロフィール画面に通話ボタンを表示したり、相手に通話リンクを送信したりして、顧客がLINEコールを利用できるようにします。なお、LINEコールの主なメリットは以下のとおりです。
- 通話料がかからない
- 顧客とのコミュニケーションがLINE公式アカウント上で完結する
- ビデオ通話を利用したオンライン内見が可能
- LINE公式アカウントの管理画面で着信履歴を確認できる
- 発信用のQRコードを発行できる
レポート機能
レポート機能では、友だち追加数やブロック数などを、数値として確認することができます。レポート機能のメリットは、効果検証や業務改善などに役立てられることです。さまざまな数値を確認できますが、どれを見ればいいのか迷ったときには、まずは以下の数値をご参照ください。
- 友だち追加
- ターゲットリーチ
- ブロック
- 属性
- 友だち追加経路
- メッセージの開封数(開封率の算出に利用できる)
- メッセージのクリック率
公式LINEを導入するまでの流れ
LINE公式アカウント導入までの流れをご説明します。
アカウントの開設
まずは、LINE公式アカウントを開設しましょう。開設にはスマートフォンまたはパソコンが必要です。 準備ができたらLINE for Businessのトップページを開き、指示に従ってアカウントを開設します。なお、開設には個人のLINEアカウントまたはメールアドレスが必要です。
アカウントの設定
アカウントを開設したら、続けてアカウントの設定を済ませておきましょう。利用開始前に設定しておきたい項目は以下の3つです。
- アカウント設定
- プロフィール
- あいさつメッセージ
なお、LINE公式アカウントには「認証済アカウント」と「未認証アカウント」があり、開設後は未認証アカウントになっています。認証済みアカウントに変更する場合、申請が必要です。申請などに費用はかかりません。
アカウントの運用
アカウントの開設と設定が完了したら、顧客に友だち追加してもらいます。そのためには、開設したアカウントの存在に気付いてもらう必要があります。まずは、管理画面から作成できる友だち追加用のQRコードやURLなどを用意しましょう。以下のような方法で知らせることができます。
- 来店した顧客に伝える
- 公式サイトに掲出する
- メールやSNSで告知する
顧客に友だち追加してもらったら、運用をはじめましょう。例えば、以下のようなサービスの提供が考えられます。
- 問い合わせへの回答
- 物件情報の提供
- 内見などのスケジュール調整
- 留意点などの伝達
- オンライン内見の実施
- 物件契約時の説明など、各種手続きの実施
- 各種連絡やフォロー
公式LINEアカウントの料金プラン
LINE公式アカウントには3つの料金プランがあります。2023年6月1日に料金プランの改定が予定されている点にご注意ください。
フリープラン | ライトプラン | スタンダードプラン | |
月額固定費 | 0円 | 5,000円 | 15,000円 |
無料メッセージ通数 | 1,000通/月 | 15,000通/月 | 45,000通/月 |
追加メッセージ料金 | 不可 | 5円/通 | ~3円/通 |
基本機能 | 〇 |
不動産業界での公式LINE活用事例
不動産業界でLINE公式アカウントを活用した事例を2つご紹介します。
株式会社センチュリー21・ジャパン
株式会社センチュリー21・ジャパンのLINE公式アカウントでは、物件情報の配信や各種問い合わせ、来店や内見の予約などのサービスが提供されています。公式サイトにLINE公式アカウントへと誘導するバナーなどを設置して、LINEで何ができるのか、友だち追加することで得られるメリットは何か、どのように利用するのかという3点が画像とセットで記載されています。
参照:センチュリー21
株式会社エイブル
株式会社エイブルは、エイブルAGENTという名称でサービスを提供しています。希望条件を反映した賃貸物件情報の配信や、自動応答での質問対応、内見予約などが利用できます。公式サイトでは、顧客の悩み、サービスのポイント、自社サービスの特徴(世帯数別に3種類のアカウントを用意)、登録方法、登録後の利用方法の5項目が順序立てて紹介されています。
出典:エイブルAGENT
SMSとLINEの違い
SMSはSMSアプリのひとつで、携帯電話の電話番号を利用してメッセージのやりとりをするサービスです。標準搭載されていることが多く、アプリなどを利用するときの本人確認に利用されることがあります。LINEアカウントの新規登録にもSMSが使用されています。また、メールなどと比べて開封率が高いことから、マーケティングにもSMSが活用されはじめています。ただし、SMSは送信料がかかります(受信料は無料)。
一方、LINEはSNSアプリのひとつで、メッセージのやりとり以外の機能も搭載されています。ただし、LINEを利用するためにはアプリをインストールする必要があります。
関連リンク:SMS(ショートメッセージ)とLINEの違いを解説特徴と使い分け方を紹介
LINEの登録促進にはSMSが活用できる
SMSから友だち追加用のURLを送信することで、友だち追加を促すことができます。SMSは開封率が高いため、友だち追加がサービスの提供に必要となる場合の通知手段として有効です。ただし、SMSを送信する場合は、事前に個人情報の利用目的を伝えて同意を得ておく必要があります。
関連リンク:LINE登録促進のためのSMS活用
法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」
KDDI Message Castは、1通あたり最大660文字の長文配信のほか、画像や動画などが送信できます。費用は従量課金のため、初期費用や月額費用がかかりません。他社の配信システムとAPI連携させることで、特定の顧客への配信や双方向のやり取りも可能になります。
まとめ
LINE公式アカウントは、顧客と企業のそれぞれにメリットがあるサービスです。さまざまな機能があり、情報提供のほか、顧客とのコミュニケーションやマーケティングなども活用できます。友だち追加を促しながら、顧客にとって有益なサービスを提供していきましょう。