昼休みに電話対応させるのは違法?労働・休憩時間の定義や解決法について解説
ビジネスでは、昼休みの時間に顧客から電話がかかってくる場合があります。BtoCビジネスでは特に多いため、電話対応できる体制整備が必要です。しかし、昼休み中にスタッフに電話対応をさせる場合、休憩時間に働かせていることになり、違法ではないかと心配になることもあるでしょう。昼休みの電話対応は、労働基準法違反になる可能性がありますが、対策を正しく講じれば、解決できます。この記事では、昼休みの問い合わせが多い時間帯に、正しく電話対応できる仕組みを整える解決法をご紹介します。
目次
昼休みに電話対応させるのは基本的に違法
基本的に、昼休みにスタッフに電話対応させると違法行為になります。電話対応は労働基準法上の労働に相当するからです。
労働基準法第九条では、労働者を「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と定義しており、労働とは事業主などの管理下で業務に携わることを指します。
昼休みに電話対応ができる状態で待機している場合にも、労働に該当します。労働基準法第三十四条では「使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」と定めています。6時間以上働いているスタッフの昼休みに電話対応をさせる場合で別途休憩時間を付与していない場合、休憩時間を十分に与えていなかったと見なされて違法になります。
参照:e-GOV法令検索 労働基準法
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
参照:厚生労働省 労働時間・休憩・休日関係
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken02/jikan.html
参照:厚生労働省 私の職場では、昼休みに電話や来客対応をする昼当番が月に2~3回ありますが、このような場合は勤務時間に含まれるのでしょうか。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_11.html
休憩時間の定義
労働基準法第三十四条には、労働上の休憩時間を明確に定義しています。休憩時間は一斉に与えなければならないのが原則で、休憩時間は自由に利用させることが求められています。昼休みに1時間の休憩時間を設けている企業が多い理由は、8時間を超える労働者を基準にして一斉に休憩できる仕組みを整えているからです。実際には労働時間が6時間未満なら休憩時間を与える義務はなく、6時間以上8時間未満の場合には、45分の休憩時間の付与が義務付けられています。
休憩の三原則
労働基準法の定める休憩には以下の三原則があります。
1.途中付与の原則
2.一斉付与の原則
3.自由利用の原則
ここでは昼休みなどの休憩時間の原則を詳しく解説します。
1.途中付与の原則
途中付与の原則とは、休憩時間を労働の途中で与えなければならない原則です。労働基準法第三十四条第一項では、使用者が付与しなければならない休憩時間と合わせて、「休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定めています。
休憩は、始業時間の前や終業時間の後に付与することは認められません。労働時間の途中に一定時間以上の休憩時間を与えれば構わないため、45分あるいは1時間の休憩時間をまとめて確保する必要はありません。休憩の合計時間が労働基準法第三十四条第一項を満たしていれば合法です。1時間の休憩時間が必要な労働者に対して、昼休みは45分として夕方に15分の休憩時間を設けるといった方法も認められます。ただし、休憩時間が極端に短い場合には、休憩時間の自由度の制限が生じるため、留意する必要があります。
参照:厚生労働省 休憩時間を分割する場合どのようなことに注意が必要でしょうか。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_14.html
2.一斉付与の原則
一斉付与の原則とは、事業所の労働者の休憩時間を同じ時間にまとめて与えることを定めた労働基準法第三十四条第二項の原則です。ただし、一斉付与の原則は条件を満たす場合には免除されます。
まず、別表第一に掲げられている特定の業種については一斉付与の原則が適用されません。以下のような特定の業種では休憩時間の確保は必要ですが、休憩時間は自由に決められます。
- 運輸交通業
- 通信業
- 商業
- 保健衛生業
- 金融広告業
- 接客娯楽業
- 映画・演劇業
- 官公署
上記以外の業種でも、労働組合または労働者の過半数の代表者との労使協定の締結によって、休憩時間の一斉付与の適用外になります。
参照:厚生労働省 休憩(第34条) 休日(第35条)
https://jsite.mhlw.go.jp/ehime-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/hourei_seido/20404/2040407.html
3.自由利用の原則
自由利用の原則とは、休憩時間は使用者による管理や指揮命令などを受けない状況を提供しなければならないことを定めている原則です。労働基準法第三十四条第三項には「休憩時間を自由に利用させなければならない」と明記されています。
電話対応が必要になるかもしれないと労働者が考えて、休憩時間中もずっとデスクに座っている状況だとしたら、自由利用の原則に反すると考えられます。業務から完全に切り離された状態で過ごせるようにすることが使用者の義務です。意図していなかったとしても、労働者が業務に拘束されている印象を受けた場合には、違法になる可能性があります。
ただし、労働基準法施行規則第三十三条で定められている警察官や児童養護施設などの労働者は自由利用の原則の対象外になります。
参照:e-GOV法令検索 労働基準法施行細則
https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023
労働時間に当たる場合と当たらない場合の違い
労働時間の該当の有無の判断基準で重要な点は、労働者が業務にかかわっているか、事業主の指揮命令下にあるかどうかです。電話対応のために昼休みの時間にもデスクで食事をしている場合、電話対応業務をするために指揮命令下に置かれていると考えられるため、労働時間にあたります。
仮に昼休みにデスクから離れている場合も、社用携帯に電話がかかってきて対応した場合には少なくとも通話時間は労働時間になります。昼休みにかかってきた電話に出る必要がないと明確に会社で定めていて、電話対応をしなかった場合は、労働時間に当たらないと判断できます。また、会社による定めがあった場合も、昼休み中の電話に出た場合には労働と見なされる可能性があるため、社用携帯を昼休みには持たせないといった対応も検討が必要です。
労働時間と判断される可能性が高いケース
業務に直接従事している場合には、労働時間と判断されます。しかし、業務をしていない状況でも、指揮命令下にあって拘束や束縛を受けている場合には、労働時間と見なされるのが一般的です。以下のようなケースでは労働時間になる可能性があります。
- 会社の命令によって時間外の出勤をした時間
- 電話対応をするための待機時間
- 始業前や終業後、昼休みの前後などに着替えをする時間
- 勤務先と取引先の間の移動時間
- 過剰な業務による残業時間
- 昼休みに強制参加で交流会を開催した場合の参加時間
電話対応に限らず、仕事のために待機が必要だったときには待機時間も労働時間に含まれます。そのほか、上記の例のように業務に必要な時間と見なされれば、労働時間に該当するのが通例です。
労働時間と判断される可能性が低いケース
業務に携わっていなかった時間や、事業主や会社による指示や命令を受けていなかった時間は、労働時間と判断されないことが一般的です。例えば、以下のようなケースは労働時間と判断される可能性が低くなります。
- オフピーク通勤のために労働者が自発的に早く出勤した場合の早出時間
- 昼休みに外出し、食事中に電話対応をしたときの通話時間“以外”の時間
- 昼休みに着替えてジョギングをする場合など、労働者の都合による着替えの時間
- 取引先から自宅に直帰したときの移動時間
- 自宅で自主的に仕事を持ち帰っておこなっている時間
- 自由参加で交流会を開催したときの参加時間
行動の判断者が労働者本人か、会社かどうかが、判断の大きな分かれ目です。労働者の判断で発生した業務に関連する時間は、労働時間外になる場合があります。
昼休みに電話対応させる際の解決法
昼休みの時間帯にも、顧客の電話対応をしなければならない職場もあります。ここでは昼休みの電話対応の問題に対する解決策を紹介します。
交代制を導入して休憩時間を調整する
労働基準法を遵守し、昼休みにも電話対応できるようにするためには、交代制を導入する方法があります。労使協定を締結し一斉に休憩にしなくても良い状況にしたうえで、電話対応を交代制にして昼休みも電話対応する人を置くようにすれば解決できます。この場合、昼休みに電話対応をした人には他の時間に休憩時間を与えれば問題ありません。
IVR(音声自動応答システム)を利用する
IVRを導入し昼休みの電話対応を自動化すると、業務効率化につながります。IVRは、電話がかかってきた時に自動音声ガイダンスを流して顧客にプッシュ操作をしてもらい、オペレーターへ転送したり、質問の回答などを音声で流したり、SMSで送付したりするシステムです。このように、昼休みや時間外の対応をIVRで自動化すれば、スタッフはしっかりと休憩をとることができます。
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IVRによる電話対応の効率化ならKDDI Message Cast IVRがおすすめです。KDDI Message Cast IVRは指定電話番号に電話をかけると、SMSで自動対応するサービスです。IVR連携によって、顧客の問い合わせ内容を振り分けた後、必要な情報をSMSで送信する対応ができます。こちらのサービスを利用することにより、昼休みの時間に問い合わせがあったときにも、顧客の求める情報のURLを送付したり、営業時間再開後の連絡先を伝えたりすることができるため、顧客満足度の高いサービスを提供できます。
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まとめ
昼休みに電話対応をさせる場合、労働基準法第三十四条に違反します。より良い労働環境を作るためにも、昼休みには電話対応を不要にするような対策が大切です。具体的には、交代制で対応できる仕組みを整えるか、IVRを導入するのがおすすめです。IVRの場合には、昼休みなどの営業時間外の電話にも自動対応ができます。電話対応の業務効率の向上にもつながるため、IVRの導入を検討してみましょう。