コールフローとは?意味、設計のポイント、メリット・デメリットを紹介
コールフローとは電話を適切に担当者に割り振って効率的な電話対応をする基盤になる施策です。コールフローを設計して運用すると、コールセンターの業務を改善できます。この記事ではコールフローの特徴と設計方法を詳しくご紹介します。
目次
コールフローの定義
コールフローとは、電話の問い合わせ内容に応じて適切な振り分けをする一連の流れを指す言葉です。顧客が問い合わせの電話をしたときに、電話口に出たスタッフが適切な回答ができるとは限りません。専門的な内容の問い合わせなら、担当する専門職のスタッフが対応できるように転送する必要があるでしょう。また、顧客から電話を受けたコールセンターのスタッフが、誰に転送すれば適切な顧客対応ができるのかがわからずに困る場合もあります。
コールフローは顧客が抱えている課題を解決するための流れをパターン化したものです。受電したときに音声ガイダンスなどによる振り分けをして、適切な担当者に電話をつなぎます。顧客満足度・顧客体験の向上につながる施策です。
コールフローの設計が求められる理由
コールフローの設計が必要なのは、コールセンターやコンタクトセンターの顧客満足度の向上が重要になっているからです。電話対応の品質を向上させて速やかに顧客の課題を解決することはサービスとして今や常識になりました。不満のある対応をされたと顧客が感じると、SNSやブログなどで不満の口コミをして広まってしまうリスクがあります。顧客満足度を高めるためには速やかに専門の担当者に辿り着けるコールフローが必要です。
顧客の問い合わせ内容の多様化が進んでいて、専門性の高い人でなければ回答できないことも多くなりました。問い合わせが専門的で、コールセンターのオペレーターでは回答が難しいときには、専門職の担当者が直接対応するのが理想的です。このようなコールフローを設計することで、顧客の抱えている悩みをスムーズに解決することが求められています。
コールフローの2つの制御システム
コールフローを整えるときにはITシステムを活用すると効率的です。コールフローの制御で用いられているシステムにはACDとIVRがあります。ここでは各システムの特徴とメリットを活用例と合わせて紹介します。
着信呼自動分配装置(ACD)
ACD(Automatic Call Distribution)は入電時の振り分けを自動化できるシステムです。コールセンターでオペレーターへの接続を効率化しつつ、顧客のストレスを軽減させる目的に適しています。ACDによってコールフローを制御するメリットは以下の通りです。
- 待ち呼のときに音声ガイダンスを流せる
- あふれ呼のときに顧客ストレスを軽減できる
- 待ち時間や着信回数に応じて優先度を変えられる
- オペレーターのスキルに合わせた優先順位の設定ができる
ACDでは着信時の振り分けルールを設定し、優先順位を付けて接続先を決めます。一次対応をするオペレーターの対応効率を向上させられるシステムです。
ACDによるコールフローの例
ACDでは以下のようなコールフローを構築できます。
- 入電時に電話番号から新規顧客か既存顧客かを確認する
- 新規顧客では新規顧客グループ、既存顧客では既存顧客グループの優先度を上げる
- 問い合わせ内容の事前情報がある場合にはスキルベースで対応可能なオペレーターをふるい分ける
- 電話対応をしていないオペレーターがいるかどうかを確認する
- 対応可能なオペレーターがいれば接続する
- 対応可能なオペレーターがいないときには待ち呼ガイダンスを流す
- 顧客を待たせているときには着信回数や待ち時間に合わせて案内する
ACDではオペレーターにつなぐ条件を細かく設定できます。現場に合わせた設定をすることで、オペレーターの対応件数を増やして業務効率化ができるシステムです。
自動音声応答装置(IVR)
IVR(Interactive Voice Response)は入電時に自動音声ガイダンスを使用して、顧客の問い合わせ内容に応じた振り分けをするシステムです。IVRは音声による顧客への質問を通して、顧客の問い合わせ目的を確認できます。IVRの特徴は以下の通りです。
- 自動音声ガイダンスによる一次対応ができる
- 問い合わせ内容に応じて適切なオペレーターに接続できる
- 顧客情報の入力を求めて担当者を自動選定できる
- コールセンターの状況に応じたアナウンスを流せる
IVRは問い合わせの一次対応を自動化して、適切なオペレーターに接続するコールフローを設計できます。新規の問い合わせでも柔軟な対応が可能です。
IVRによるコールフローの例
IVRを使用する場合では以下のようなコールフローを構築するのが一般的です。
- 自動音声ガイダンスで質問をして問い合わせ内容を分類する
- 問い合わせ内容に応じて契約者番号や生年月日などを確認する
- 問い合わせ内容の担当オペレーターが空いていれば接続する
- 空きがない場合には待ち呼ガイダンスを流す
- 待ち時間や問い合わせ内容に合わせて優先順位を付けて順次オペレーターに接続する
IVRでは自動音声ガイダンスに対して顧客が番号をプッシュすることで、双方向のコミュニケーションができます。入電時に顧客の問い合わせ内容の情報を集めたうえで電話対応をするコールフローを作ると顧客満足度の高い対応ができます。
コールフローを設計するメリット・デメリット
コールフローの設計には以下のようなメリット・デメリットがあります。
<メリット>
- 顧客満足度の向上
- コールセンターの業務効率化
<デメリット>
- 顧客離脱のリスク
- システム導入コストの発生
コールフローをコールセンターで導入するときにはメリットとデメリットのバランスを考えて設計することが大切です。ここではメリットとデメリットを詳しく解説します。
メリット
コールフローを設計して運用すると顧客満足度とコールセンターの業務効率の向上を同時に実現できることがメリットです。ACDやIVRによって適切なオペレーターに速やかに接続され、課題や悩みが解決されれば顧客は喜ぶでしょう。
電話での問い合わせのときには、電話でつながったオペレーターに相談しても解決できず、別の担当者に転送しなければならない場合もあります。顧客としてはたらい回しにされるうえに、転送の度にしばらく待たされることでストレスにつながります。
IVRを導入してコールフローを設計すれば、顧客の問い合わせ内容に合わせて的確なオペレーターが対応する流れを構築可能です。ACDによる電話の振り分けを最適化すれば、待ち時間も軽減できるでしょう。
IVRなら電話の一次対応ができるので、オペレーターが顧客に質問して問い合わせ内容を聞き出す業務負担も減らせます。ACDでも待ち時間や入電回数による振り分けができるため、効率的な電話対応をする基盤ができます。
デメリット
コールフローの導入は、顧客の離脱につながる可能性があるのがデメリットです。顧客が電話で問い合わせをするときには、すぐにオペレーターに対応してもらいたいと考えている場合があります。自動音声ガイダンスが流れてきたときに、すぐに対応してもらえないという不満が生じてしまうかもしれません。音声ガイダンスでの説明が長いと途中で電話を切られてしまい、顧客の不満を募らせる可能性が高くなるので注意が必要です。
また、効率的なコールフローを導入するにはIVRやACDなどのシステムが必要となり、導入時点でコストがかかるのもデメリットです。初期にはコールフローの試行錯誤による最適化もしなければならず、コストがさらにかさんでしまいます。
デメリットの対処方法
コールフローの設計・導入によるデメリットは以下のようにすれば対処できます。
- 問い合わせ目的ごとに電話番号を用意する
- 電話以外にもメール、SMS、チャットなどによる問い合わせ窓口を用意する
- よくある質問と回答のページを作って顧客が自己解決できるようにする
- 利用目的に合わせてコストパフォーマンスが高いシステムを選ぶ
- コールフローの改善をしやすいシステムを導入する
デメリットがあっても克服は可能なので、前向きにコールフローを取り入れてメリットを生かしましょう。
コールフローを上手く設計するポイント
コールフローの設計は導入効果に大きな影響があります。以下のポイントを押さえて上手く設計することで、コールフローのメリットを生かしましょう。
- 短くてわかりやすい音声ガイダンスを作成する
- 選択肢の数と種類を最適化する
- 階層設計を工夫する
- ここではコールフローを設計するときに重要なポイントを解説します。
短くてわかりやすい音声ガイダンスを作成する
自動音声ガイダンスを流すときには、できるだけ短く内容をまとめましょう。音声ガイダンスが長くて次に進むのに時間がかかると顧客がストレスを抱えます。わかりやすい表現で端的にまとめて説明することが重要なポイントです。
IVRの自動音声ガイダンスの目的は、顧客に問い合わせ内容を選択させることです。電話をしてくれた顧客への挨拶や宣伝などをして、顧客が選択肢に辿り着くまでに時間がかかってしまうと離脱するリスクが高くなります。営業電話のような勧誘をされるとストレスになり、企業の評判も下がる可能性があります。
電話による問い合わせではすぐに解決したいと考えている顧客が多いので、時間に対してセンシティブです。コールフローを設計するときには、適切なオペレーターに少しでも早くつなぐことを目指して自動音声ガイダンスの内容を決めることが大切です。ただし、短くし過ぎて顧客の誤解を招いてしまわないように注意しましょう。
選択肢の数と種類を最適化する
コールフローの設計では顧客に提示する選択肢を最適化することがポイントです。IVRでプッシュする番号の選択肢を与えるときには、数が多いと選択肢の内容を聞くだけでも時間がかかります。どれがベストな番号なのかがわからずに迷ってしまう場合もあるでしょう。
選択肢の数は多すぎず、少なすぎないことが重要です。問い合わせが多い内容は項目化して顧客に選択してもらう形を整え、問い合わせが少ない内容は「その他の問い合わせ」として集約すると良いでしょう。また、回答の際に専門性を求められる内容を項目として分けておくと、電話をつなげるオペレーターのスキルに応じた割り振りができます。
コールフローで選択肢の検討をするときには、自社での問い合わせ履歴を参考にしましょう。過去の問い合わせ内容を分類して選択肢を設計すると、自社の事情に合わせて顧客の適切な分類ができます。定期的に問い合わせ内容を見直して選択肢を最適化すると、より良い顧客体験を提供できます。
階層設計を工夫する
コールフローは階層設計をして顧客満足度の高さを追求することが大切です。コールフローは階層化すると、より詳細な情報を顧客から取得してから電話対応方法を決定できます。
単層のコールフローでは、自動音声ガイダンスによって顧客に質問をして、問い合わせ内容を選択させます。内容に応じてオペレーターを振り分けたいときには有効ですが、項目数が多いと音声ガイダンスが長くなるのが問題点です。
階層設計をすれば、条件分岐により顧客がスムーズにオペレーターに辿り着けるコールフローを構築できます。例えば、「申し込み」「契約」「その他」のように最小限の選択肢を提示した後、「契約内容」なら「現在の契約内容」「契約の変更」「契約の解約」といった詳細を尋ねる下層を用意して細分化する方法があります。
ただし、「申し込みについての問い合わせですか?」といったイエス・ノーの選択肢のみの質問が連続し、階層が深すぎると顧客が希望する問い合わせ内容に辿り着きにくくなります。最近の顧客の問い合わせ内容を考慮して、短時間でオペレーターに辿り着けるように設計することが重要です。
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コールフローを的確に設計することで、顧客に喜んでもらえる対応ができる体制を整えられます。ただ、電話だけでは十分な顧客対応ができないこともあります。SMSを導入して顧客対応に活用しましょう。
KDDI Message Castは法人向けの機能が豊富なSMS送信サービスです。顧客からの電話のフォローをSMSでおこなって電話するチャンスを手に入れたり、問い合わせの回答に必要な資料のURLを送信したりすることができます。コールフローの策定と合わせてSMSの活用も取り入れると、より顧客満足度の高いサービスを提供できます。
まとめ
IVRやACDを導入してコールフローを設計すると、顧客満足度も業務効率も向上できる可能性があります。電話対応を最適化できることがコールフローを構築するメリットです。自動音声ガイダンスによる電話の一次対応をするときには、最小の選択肢と最低限の階層設計をして顧客に不満を抱かれないように対策することが大切です。
SMSによる顧客対応も組み合わせると、さらなる顧客体験の向上が期待できます。コールフローの構築と合わせてSMSの導入も検討しましょう。
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