業種:自動車業界

さまざまな業界で、デジタルテクノロジーを活用して、サービスから組織構造までも変革するDXを推し進めています。大変革期にある自動車業界でも、生き残りをかけてDX化が急がれています。

本記事では、DXが重要視されている理由、自動車DXの現状と課題、自動車業界のトレンドの業務改革法CASEについて詳しく解説します。自動車DXの導入事例もご紹介していますので、DXを検討されている企業のご担当者の方はぜひ参考にしてください。

そもそもDXとは?

DXが重要視される理由

DXには、「デジタル技術の浸透が人々の生活にさまざまな良い変化や影響をもたらしている」という広義の意味があります。すなわちDXとは、AIやIoTなどのデジタルテクノロジーによる社会全体の変革を指します。概念が幅広いため、利用する人、場所、状況に合わせて正しく捉えて認識する必要があります。

一方、DXには狭義では「デジタル技術の活用により変化しやすいビジネス環境に対応し、事業やビジネスモデルを変革し、競争優位性を確立する」という意味もあります。経済産業省によるDXの定義は後者のほうに近く、DXというとこちらの意味で使われるのが一般的です。

DXが重要視されるのには、いくつかの理由があります。まず、今のままIT人材不足が続き、システムの老朽化が進んでいくと懸念される問題です。いわゆる「2025年の崖」という課題に直面し、2025年から年間最大12兆円もの経済損失が生じることが予想されています。そこで、リスク回避の手段として、DXの推進が注目されているのです。

その他にも、ITの進歩により変化してきた消費行動に対応する必要があることや、ビジネスモデルが新たに創造されていることなども挙げられます。サービスから、ビジネスモデルや組織構造までを変革することで、企業の競争力を向上させることが今求められています。

なお、デジタイゼーションやデジタライゼーションといったDXと混同されやすい用語があります。デジタイゼーションとは、作業をデジタル化することを指し、デジタライゼーションは、デジタル技術の活用により既存のビジネスモデルを変革することです。どちらも「デジタル化の推進」が大枠の目的ですが、DXは生産性能を向上させるために、より抜本的な内部改革を目指しています。

自動車DXの現状と問題

では、日本の自動車業界におけるDX導入状況はどうでしょうか。ここでは、日本におけるDX導入の現状とDX導入時の問題について詳しく見ていきましょう。

日本のDX導入の現状

世界デジタル競争力ランキング(2020年:ビジネススクール国際経営開発研究所)によると、日本は6位であり、他のG7先進国よりも遅れていることがわかります。

https://lh3.googleusercontent.com/IfNU6pyTF1LUJZ7-TKas0SIvP4BDEOkLj-nz13ZE0wrF297DsN5wqQyKvKSlunm-Vpfw_RLhlD5YOwKVFEPP8fKC7gpI8WTlMlpoDK6HW3VBN7IHNa65N_ZKIlBePXLSxeZxkiBvrQQh05kXBkKv_R8

出典:2 DXの重要性と我が国におけるDXの現状|国土交通白書2021

このランキングは、知識、技術、将来への準備という3項目について評価していますが、その中の以下の個別項目では、63か国中で最下位です。

  • 国際経験
  • 機会と脅威
  • 企業の機敏性
  • ビッグデータの活用と分析

以上のデータから、日本はまだまだデジタル競争力の強化が必要であるといえるでしょう。

この日本のDXの現状をもとに自動車業界を注視すると、他のデジタル化と同様に日本は欧米と比較して遅れています。特にデジタル化を活用したビジネスの創出、攻めるDXにおいて、欧米に先を越されているのが現状です。

DX導入時の課題

DXを導入するにあたっては、主に以下の課題が存在します。

1.デジタル人材の不足

自動車業界に限らず、ITに対応できる人材が不足していることが大きな課題です。DXは人手不足を解消できることがメリットの1つですが、そもそもデジタル化を進められる知識や実装を先導する人材が不足しています。DXに対応できる人材がいないと、IT部門へ仕事を丸投げするといった問題も出てくるため、デジタル人材の育成が急務です。

2.サイバーセキュリティ

DXはインターネットを使う以上、サイバー攻撃のターゲットになる可能性があります。ITが浸透していくほど、サイバー攻撃も巧妙な手口が多く見られます。DX時代では、セキュリティリテラシーがなければ、ビジネスモデルや信頼は守れません。

3.DX導入が目的になっている

DXは、目的を実現するための手段です。DX導入を手段ではなく、目的にしてしまうと、もともとのビジネスで達成したい目標が曖昧になってしまい、失敗につながりかねません。

自動車のDX①「CASE」

自動車業界のDXで欠かせないトレンドが、”CASE”と呼ばれている業務改革です。CASEという言葉は、ドイツダイムラーのCEOがパリモーターショーで中長期戦略を発表した際に提唱した造語です。Connected・Autonomous・Shared&&Service・Electricのそれぞれの頭文字をとってCASEと呼んでいます。ここでは、CASEそれぞれの意味と業界の動向について詳しくお伝えします。

C

CASEのCは“Connected”を表しています。車に通信技術を搭載し、IoT技術を活用して車とユーザーがネットワークでつながる仕組みを構築することです。ニュースなどで最近良く耳にする「コネクテッドカー」は、直訳では「繋がりのある車」という意味になります。すなわち、インターネットに接続できる機能を搭載した車のことです。車をデジタルとつなぐことで、必要な情報を運転者に提示し、サポートできます。

国内の代表的な例が、トヨタ自動車の「コネクテッドサービス」です。トヨタ自動車では、ほぼ全ての車に車載通信機(DCM)を搭載し、車をデジタルとつなぐコネクテッド化を加速させています。例えば、事故発生時のオペレーターによる緊急通報、スマートフォンでの車両位置確認、車が盗難された場合の位置情報からの追跡などの機能を提供しています。

また、日産自動車はマイクロソフトと提携し、「NissanConnect」を開始。スマートフォンアプリを利用して、車のドアロックなどのリモート操作や、バッテリー残量などの確認ができます。

このように、コネクテッドカーはICT端末として機能するため、ネットワークを介して、車の状態や道路状況などのデータを取得することが可能です。通信機能を活かすことで、エンターテインメントをはじめ、多様なサービスの提供が予想されており、車にも新しい価値の提供が期待されています。

A

CASEのAは“Autonomous”を表しています。Autonomousは「自動運転」のことです。すなわち、自動車業界のDXで非常に力を入れている分野といえます。

車の運転は、認知・判断・制御という3つの動作に分類できます。自動運転は、自車と周りの状況を認知し、得られた情報をもとにAIなどを利用して、判断や制御を行い、自律走行する技術です。

自動運転は、次のとおり、実現する機能により5つのレベルが設定されています。

レベル1:ハンドル操作またはアクセル・ブレーキ操作のどちらかの自動実行
レベル2:ハンドル操作またはアクセル・ブレーキ操作を組み合わせた制御の自動実行
レベル3:特定の場所ではシステムがすべてを操作、自動走行が不可の場合は手動で操作
レベル4:自動走行の継続ができない場合でも安全な状態になるまで自動走行が継続
レベル5:すべての運転操作を自動実行

海外では、アメリカのGMやドイツのアウディなど、レベル3を搭載する企業も多数ありますが、法整備などの環境が整っていないこともあり、実際にはレベル2の運用に留まっている状況です。

また、自動運転車による事故や責任に関するルール作りも必要です。今後日本を含め世界の自動車業界がどのように対処するかも大きな課題といえるでしょう。

S

CASEのSは、“Shared&Service”を表しています。いわゆるシェアリングサービスのことです。海外では、非常に人気のあるサービスです。

日本ではフードデリバリーとして認知されているUber Eatsは、もともと配車サービスから派生しました。日本でもUberはタクシー配車アプリとしても一部で導入されています。海外では、日本と異なり、一般の人が自分の車でサービスを提供することが可能です。日本では、法律で一般人の配車サービスが規制されているため、海外のようにUberのようなサービスを提供することはできません。

また、日本では法律上、ライドシェア(相乗り)ができないため、シェアリングサービスは発展していませんでした。しかし、近年になってトヨタ自動車やTimesなど国内の多くの企業で車両のシェアリングサービスをスタートしています。月額費用と利用した時間分の費用を払えば、車が利用できるサービスです。予約も支払いもスマホアプリででき、車の鍵の開錠などもスマホで操作できます。

ライドシェアには慎重な日本ですが、タクシーの配車サービスは人気があり、注目を浴びています。東京都を拠点として、タクシー事業者5社とソニーなどによる「みんなのタクシー」では、タクシー配車アプリのS.RIDE(エスライド)を提供。S.RIDEは、AIとIT技術により開発した配車アプリで、簡単な操作でタクシーを配車できます。

E

CASEのEは、“Electric”を表しています。Electricは「電気で動く」という意味ですが、Electricは、EV(電気自動車)の重要な要素です。

CO2排出が環境へ与える影響が世界的に懸念されており、2050年CO2削減目標がパリ協定で制定されました。これに向けて各国はよりいっそう環境規制に対しての取り組みを強化しています。特に自動車から排出されるCO2は、環境への影響が大きいことで問題視されており、排ガス規制の設定が厳しくなっています。そこで、環境汚染を防止するための自動車のDX対策の1つが、電気自動車への切り替えです。

例えば日産は、バッテリー不足問題を解決した「リーフ」を発売しました。ホンダもEVシフトを宣言しており、トヨタ自動車もEV化に向け動き始めています。GoogleやApple、さらには

Amazonなども車両開発を宣言。自動車業界はまさに厳しい戦いの場になりつつあります。

ただ、EVへの電力供給問題が最大の課題です。今後電気自動車が普及していくと、エアコンなどで電力消費量が増加する夏場は、電力不足の問題が懸念されます。そのため、火力発電や原子力発電の稼働が万が一増える事態に陥ると、EVによるCO2削減という本来の目的が意味をなさなくなります。そのため、ガソリン車からEVへの転換を進めるには、まず電力供給の問題を解決することが必要です。

注目度が高いEVですが、高級車であり、新車ともなると価格は高額になります。手が出ないと感じる場合は、比較的安価なEVの中古車を購入するという選択肢もあります。

自動車のDX②「サプライヤー向け」

自動車のDXにおけるトレンドの2つめは、サプライヤー向けの導入です。自動車業界でDXが進展し、新技術が増えていくと、従来の方法ではどのサプライヤーも対応が難しくなっていきます。そのため、サプライヤー向けのDX導入も進められています。例えば、社内外でシステムを連携し、データを共有することで、不良品やミスを早期に発見することが可能です。

とはいえ、ものづくりの現場では従来のまま、いまだに勘や経験に頼っている部分もあるのが現状です。しかし人手不足が深刻になってきているなかで、いつまでも人に依存しているわけにはいきません。企業の発展のためには、IoTやAIを導入して効率化と生産性を高めていくことが重要です。

自動車DXの導入事例

自動車DXの導入事例を5つご紹介します。

  • フォルクスワーゲン
  • トヨタ自動車
  • 旭鉄工
  • 日産
  • ホンダ

旭鉄工はサプライヤー向けの導入事例ですが、その他は「CASE」の導入事例です。

事例①フォルクスワーゲン

独フォルクスワーゲンでは、CASEのAにあたる自動運転を開発。2022年には自動車部品の最大手と技術提携して自動運転のソフトウエアを開発しています。現在、フォルクスワーゲンでは、ハッチバックからMPVまで、多数のモデルに運転支援技術「レベル2」を搭載。先進のテクノロジーを装備したラインナップがそろっています。2023年には条件付き自動運転が可能なレベル3の搭載も予定しており、DXを積極的に推進しています。

また、2021年3月に開催された「Power Dayイベント」で、”Vehicle to Grid(V2G)”を発表。

“Vehicle to Grid”とは、EVを蓄電池として活用し、クラウドベースの電力系統に接続して利用する技術です。充電だけでなく電力供給もできる、再生可能エネルギーの活用を実現するコンセプトといえます。V2G搭載のEV開発と電力供給の実現は、トヨタ自動車をはじめ、日本の自動車メーカー各社も取り組んでいます。

参照:
ID.4 | SUV | フォルクスワーゲン公式
V is for Vehicle-to-Grid (V2G) | Volkswagen Newsroom

事例②トヨタ自動車

トヨタ自動車は、モビリティカンパニーへの変革を目標として、CASEを積極的に打ち出しています。

これまでもデータのデジタル化により技術開発や生産準備に一定の成果をあげてきました。しかし製造や消費者からのデータなどをタイムリーに技術開発に生かせないことが課題でした。そこで工場と現場などをつなぐ共有プラットフォームを構築し、共有プラットフォームを使ってプロジェクトを立ち上げました。その結果、取り組みの件数を増やすことができ、費用対効果向上につながりました。

工場IoTが成功したことで、サプライチェーン、エンジニアリングチェーンにもIOTを展開。DXによる開発、市場、工場の連携を目指して、情報共有基盤の構築がさらに進められています。

2018年6月からスタートした”T‐Connect”は、万が一の際の緊急通報をはじめ、ナビ音声による注意喚起、お役立ち情報検索などのサービスを提供。また、衝突の回避や事故による被害を軽減するために、”Toyota Safety Sense”という機能を装備し、衝突被害軽減ブレーキ、追従ドライブ支援機能などを実装しています。

また、2019年からは”TOYOTA SHARE”を全国に向けて展開。”TOYOTA SHARE”は、入会費、月額費が無料で利用でき、多彩な車種が揃っているため、人気を集めているカーシェアリングサービスです。

参照:IOT機器・クルマでつくるモビリティ社会は“CASE”にあり| 特集 |トヨタキャリア採用情報

事例③旭鉄工

トヨタ自動車の一次サプライヤー、旭鉄工では、IoTやデジタルツールを活用することで、生産性を飛躍的に向上させ、スマートサービスも提供しています。

生産性の向上とは、製造ラインにおける1時間当たりの生産能力を高めることです。製造ラインの生産性を向上させることで、残業や休日出勤を抑えることができ、労働時間を大幅に低減することに成功しました。これにより年間の労務費削減にもつながりました。

参照:製造分野 DX 推進ステップ例|独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)社会基盤センター

事例④日産

日産は走行距離458kmの電気自動車「リーフ」を発売しました。電気自動車を利用する際に懸念されるのがバッテリー不足ですが、「リーフ」はこの問題を解決した車両です。自宅でプラグに挿しておくことで、翌朝までにはフル充電ができます。スマホの充電のような気軽さです。自宅では蓄電池としても利用でき、節電や災害時の電源としてのサポートにもなります。また、EVならではの加速性能の俊敏さやハンドリング性能、静粛性も魅力です。

参照:日産:リーフ [ LEAF ] Webカタログ トップ

事例⑤ホンダ

ホンダが2021年3月に発売した「レジェンド」は、運転操作をサポートする「Honda SENSING Elite」を搭載し、ハンズオフ機能や渋滞運転機能なども追加。アクセル、ブレーキ、ハンドルの自動制御が可能です。これにより、公道を走るレベル3の自動運転車としては世界初といわれています。最先端の技術により、つねに進化し続けてきた高級車「レジェンド」は、上質な乗り心地とともに、 最先端の安全性能により安心してドライブを楽しめます。

参照:Hybrid EX・Honda SENSING Elite専用ページ|レジェンド(2022年1月終了モデル)|Honda

SMS送信サービスを活用した自動車DX

自動車DXでもSMS送信サービスが有効に利用できます。車検や点検の案内などはこれまで電話やメール、DMが連絡手段でしたが、SMSへの切り替え、またはSMSと並行利用するケースが増えてきています。このようにさまざまな業務のDX化を図りたいときに、到達・開封率が高く、コストも抑えられるSMS送信が有効です。

SMS活用では実績のある日本カーネット社では、自動車整備&車両販売システムのSMS送信機能に、SMS送信サービスの「KDDI Message Cast」を連携しました。これによりSMSをより安全に簡単に利用できるようになりました。

関連リンク:SMS活用・DX推進セミナー「自動車業界向け SMS活用・DX推進セミナー」

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

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Salesforce連携機能もあり、SMSの送信・開封データを登録されている顧客情報に組み込めます。顧客の行動データを簡単に把握できるため、Salesforceを導入されている企業にもおすすめです。

Salesforce連携

まとめ

デジタル技術を活用し抜本的な内部改革を目指すDXは、政府も推奨しており、あらゆる業界で導入または検討されています。しかし、日本のDX導入は先進国よりも遅れているのが現状です。DX導入時には、デジタル人材の不足、サイバーセキュリティなどの問題が存在しており、とくにデジタル人材の育成が急務です。

国内の大手自動車メーカーでは、すでにCASEという業務改革法でDXを導入し、成功しています。自動車を単に移動手段として捉えるのではなく、社会も巻き込み、規模の大きいDX施策に取り組んでいるのが特徴的です。

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