DXは経営における重要な課題として注目されています。経営層によるDX推進はビジネスを成長させる上で欠かせないでしょう。DXには経営者が現状課題を把握し、適切な方向性を示して推進することが必要です。この記事ではDX推進における経営課題と解消方法、成功のための手順を解説します。これまでに経済産業省によって評価されたDX成功事例と、課題解決につながる重要なDX施策もご紹介します。

日本企業のDX取り組みの現状とは

DX推進の経営課題を把握する上で重要なのが日本企業のDXに対する取り組みの状況です。日本では2018年に経済産業省がDX推進のガイドラインを策定したのをきっかけにビジネスで注目される施策になりました。しかし、現状として日本企業のDXへの取り組みは積極的とは言えません。

総務省によって実施された2021年の「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」ではDXの取り組みについて多角的に調査をしています。同調査によると、日本企業では約6割の企業がDX推進をする意向がないことが示されました。業種別の集計結果は以下のようになっています。

2018年度以前2019年度2020年度今後検討今後予定なし
製造業15.7%3.7%3.4%20.0%57.2%
情報通信業30.5%7.2%7.3%18.6%36.4%
エネルギー・インフラ14.8%3.9%3.9%18.6%58.8%
商業・流通業16.8%3.4%4.3%18.9%56.5%
サービス業・その他9.6%3.1%3.1%14.9%69.3%

参照:総務省|令和3年版 情報通信白書|我が国におけるデジタル化の取組状況

もともとITを基盤とする情報通信業では、DXの概念が国によって打ち出された2018年度以前から3割程度の企業がDXに取り組んでいました。しかし、他の業種では15%程度しか取り組んでいなかった事実があります。

特にサービス業やその他の農業・林業・漁業、医療・福祉などの場合には今後も取り組む予定がないという見解を示している企業が多くなっています。医療・福祉では2018年度以前からDX推進をしている割合は5.4%で、今後予定していない割合が78.7%に上っています。業種による違いは大きいですが、情報通信業を除くとほとんどの業種で今後もDXに取り組む予定を立てていないのが現状です。

DX化に取り組む中での経営課題

DXの必要性が唱えられる中で推進を予定していない企業が過半数を占めているのは経営課題が大きいからです。ここではDXに取り組む際の課題点を簡単に解説します。

ITインフラが不十分

DXはITに支えられているため、社内のITインフラを整えなければ推進するのが困難です。ITインフラに継続的な投資をしてきた企業は少なく、DXを速やかに推進するためのインフラが整っていないケースが多くなっています。DX推進の戦略を取る上ではIT予算を策定してインフラ整備から始めなければなりません。しかし、長期的に必要なシステムの選定が難しく、DXに手を出せない企業が多いのが実情です。

DX人材の不足・育成の困難

DX人材の不足は大きな経営課題です。合理的かつ円滑にDX推進が可能な人材を十分に確保できれば、ITインフラの整備も戦略の推進も任せられます。しかし、日本ではDX人材が不足していて、適材を獲得するのが困難な状況が続いています。DX人材を社内育成するにも優秀な人材が必要なので、DX推進の人的リソースの不足によって手を付けられないケースが多くなっています。

DX戦略の策定の課題

経営者がDXを推進するには経営戦略を策定して、具体的な事業や業務に落とし込む道筋を立てることが必要です。しかし、DX戦略を立てるのが大きな課題になっています。DXによってビジネスの価値を向上させるだけでなく、新しい価値を生み出す原動力になる戦略を打ち出して取り組まなければ優位な立場を獲得することはできません。経営者自身がDXについて十分な知識を持っていないのが原因で、DX戦略を策定できないのも大きな課題になっています。

DX化に向けた経営課題を解消する為のポイント

DX化の経営課題はあまりにも切実で、DX推進は不可能と考えてしまいがちです。しかし、以下の3点に取り組むだけで解消可能なので、前向きに取り組んでいきましょう。

現状の情報資産と運用システムの把握

ITインフラの課題解決にはまずは現状を把握しましょう。データを活用してシステムで運用していくのがDXの基本になっています。現状の情報資産の調査をしてデータベースとしてまとめると、活かせる情報の有無を確認できます。そして、運用されているシステムを総合的に評価し、入れ替えが必要か、連携を取れるシステムの導入が適切かを考えましょう。正確な現状把握ができれば、即効性の高いDXの方向性と必要システムを見出せます。

DX人材戦略の策定・推進

DX人材の不足の対策として不可欠なのがDX人材戦略の策定です。自社に不足しているDX人材を具体化しましょう。DXによる経営戦略を立てられる人材がいないのか、現場でデジタル技術を活用する具体策を考えられる人材がいないのかといった視点で、レイヤーごとに考えるのが大切です。必要な人材の獲得だけでなく、社内教育の戦略も立てて推進し、中長期的にDXを進められる体制を整えるのが課題解消につながります。

DXによる中長期目標の具体化

経営戦略としてDXに取り組む具体的な方針を定めることは欠かせません。短期的に成果を出そうとするとDX戦略の策定は困難です。新しいシステムを導入したらすぐに売上が倍増するといった単純なDXはほとんどありません。数年間の取り組みが必要と認識し、中長期目標を立ててDXを推進するという視点を持つと解決につながることがよくあります。ステップを踏んで課題解決を進めていく基本的なプロセスを意識してDX戦略を立てましょう。

DX化を成功させる為に経営者が果たす役割とは

DX化では経営者は重責を負うことになります。成功させるために経営者が果たさなければならない役割をまとめたので参考にしてください。

DX化戦略の周知と組織の構築

経営者はDX化を企業の戦略として取り入れたことを周知するのが重要な役割です。全社研修などの機会に経営者として重要性と方針を説明したり、社内通知をしてDX化戦略を認識させたりすることで、企業全体としてDXに取り組めるようになります。また、DX推進に必要な組織構築をするのも経営者の役割です。DX推進室を設置したり、各部署にDX担当者を用意させたりして、組織的にDXに取り組めるようにしましょう。

自発的なDXチャレンジに取り組む環境整備

DXでは新しいアイデアに基づいてデジタル技術を活用するのが大切です。経営者は現場で働いている社員の着想を活かし、新事業の創出や既存事業の改善を推進することが重要な役割です。全従業員とコミュニケーションを取るのが難しいくらいの企業規模の場合には、権限移譲をして現場で判断してDXを推進できるようにすることも大切です。DXチャレンジに取り組む社員を高く評価する人事評価制度やインセンティブ制度の導入も効果的でしょう。

積極的なDX投資の判断

DXには新しい人材の採用やシステムの導入などのために資金が必要です。DX投資の最終判断をするのは経営者なので、良し悪しを見極めた上で積極的な投資をしましょう。ただ、闇雲にDX投資を進めてしまったら利益を上げられずに経営不振に陥るリスクがあります。中長期的な視点でROIが高いと考えられる施策を選び、自社の注力分野を飛躍的に伸ばせるDX施策に対してリソースの積極投資をするのが重要です。

経営者が導く、DX成功への手順

DXの成功は経営者によって導き出されます。ビジネスをDXによって成功させるための基本手順を解説します。

ビジネス全体のDX化骨子の作成

経営者がDXを成功に導くには、経営戦略におけるDXの位置付けを明確にしてビジネス全体としてDX化をどのように進めるかを具体化するのがとても重要です。現場単位での細かな業務効率化を狙うのではなく、全体のビジョンを示して全社としてどのようにDXに取り組むかをはっきりとさせましょう。DXを通していつまでに何を実現するのかを示し、社員がDX化のために何をしなければならないかを常に考えさせることが大切です。

業務プロセスのDX化計画の策定

DX化の骨子が定まったら、業務プロセスのDX化の計画を立てましょう。現場で必要とされている業務を全体として把握し、デジタル技術によって実現できる理想的な業務プロセスを考えます。複数の部署がかかわっている業務もあることを考慮してプロセスを組み立て、実現に必要なシステムを選定します。アナログだった業務だけでなく、デジタル化されているプロセスも含めて考えて、全体を一元的に効率化させるプロセスを作り上げるのが重要です。

個別業務のDX化への細分化

業務プロセスのDX化まで具体的に落とし込むことができたら、個別業務のDX化に細分化します。企業規模が大きくなると個別業務を経営者が正確に把握するのは困難です。各部署の長に権限を委譲し、部署ごとに具体的なDX化を進めさせるのが合理的です。業務プロセス全体の骨子ができていれば、部署間の連携についても考慮してDX施策を考えられます。個別業務のDX化では現場に判断を任せることもできますが、具体策の提案を受けて経営者が可否を判断しても構いません。

取引先との連携によるDX化の並行的推進

多くの企業では自社のみでビジネスをおこなっているわけではありません。仕入先や販売先などの取引先と連携を並行して進めましょう。取引先が使用しているシステムと連携できれば効率が上がる場合には、自社に新規導入するシステムは連携可能なことを要件にして選定するとスムーズです。取引先にDX化を促して、自社システムと連携できるシステムを導入してもらうこともできます。お互いにメリットになるDX化の形に落とし込むことで良好な取引関係を維持できます。

関連リンク:DX戦略とは?立て方や推進プロセス、成功のポイントもご紹介

企業のDX成功事例

DX推進をする上で他社の成功事例を参考にするのは効果的です。ここでは経済産業省に評価されたDXの成功事例を紹介します。

日清食品ホールディングス

日清食品ホールディングスでは「サプライチェーン清流化」プロジェクトによるDX化に成功しています。同社ではNBX(NISSIN Business Transformation)の食品製造業における重要な経営課題のサプライチェーンの強化を図る戦略として立ち上げられたプロジェクトです。サプライチェーン横断的な推進を担うBPMチームを同時に結成してパートナーとの連携も推進してきました。2020年には売上高・売上利益のどちらも史上最高値を達成しています。

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/dx-report2021.pdf

日立製作所

日立製作所では日立グループが持つ膨大なデータを活かしLumadaの開発を通して自社価値を高めることに成功しています。Lumadaは「Illuminate(照らす)」と「Data」から生まれた造語で、顧客データに光を当てることをイメージして生み出されたコンセプトです。ITとOT(制御・運用技術)の融合により顧客価値を創出することを目指しているのが特徴です。「Lumada Innovation Hub Tokyo」により顧客との共創を実現する場を設けて積極的なDX推進をしています。バリューチェーンの最適化などでの成功事例も出てきています。

https://www.hitachi.co.jp/products/it/lumada/about/index.html

中外製薬

中外製薬ではDXの”全社ごと”化を掲げて2030年までにヘルスケア産業のトップイノベーターを目指す成長戦略を策定しました。DX人財の評価定義をして可視化し、育成と獲得の両軸で人材戦略を推進しているのが特徴です。AI創薬とロボティクスの導入によって創薬成功確率の向上と業務効率化にも積極的に取り組んでいます。デジタル技術を用いてデジタルバイオマーカーの創出を進めるなど、革新的な取り組みによって2021年にはDX銘柄に選ばれています。

https://note.chugai-pharm.co.jp/n/n81517fe91022

関連リンク:DX戦略とは?立て方や推進プロセス、成功のポイントもご紹介

DX推進にはSMSの活用がおすすめ

SMSの活用はDX推進を支える重要なアプローチなのでおすすめです。多くのユーザーがスマートフォンを持つ時代になり、SMSは本人認証にも用いられるほど信頼性の高い情報配信手段になっています。SMSは到達率も開封率も高いため、顧客への連絡手段として適しています。連絡がなかったから支払いを忘れた、カートに入れたけれど買うのを忘れていたといったときにSMSで連絡があればユーザーがアクションを起こします。社内通知でもSMSなら周知しやすいので、多様な活用方法があるツールです。

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

DXにSMSを活用するのにおすすめなのがKDDI Message Castです。法人向けのSMS送信サービスで、通常のSMSとは違って複数の相手に対してSMSを一斉送信できます。SMSの既読確認をしたり、長文配信をしたりすることもできるので、汎用性が高いサービスです。6~10営業日の短期間での導入が可能で、迅速なDXの推進にも適しています。費用対効果の高いSMS配信サービスなのでKDDI Message CastをDX化に活用してください。

Salesforce連携

まとめ

DX化は経営者が牽引することが重要です。DXを実現して成功するには数々の経営課題を乗り越えなければなりません。また、DXによって他社との競争に打ち勝つには迅速さも求められます。経営者は明確に中長期的な経営戦略を立ててDXを推進し、積極的な投資判断をするのが大切です。SMSは活用の可能性が広いDXにおすすめのツールです。KDDI Message Castなら初期コストゼロで導入できるので積極的に利用してDXを推進していきましょう。