DX戦略は「SMS」から始めませんか?

近年、DX推進の重要性が叫ばれ、デジタル技術を取り入れる風潮が強まっています。しかし、DX推進といっても、どこから始めてどこに向かっていけばいいのか分からない企業のご担当者もいることでしょう。本記事では、DXやDX戦略の意味、DXが必要とされる理由、戦略の立て方やポイントなどをご紹介します。経済産業省が発表した「DX推進ガイドライン」についても概要を説明していますので、DXを検討している企業の方は参考にしてください。

DX戦略とは

企業が市場競争で優位性を保つには、デジタル技術によるビジネスモデルなどの創出(DX)が重要です。DX戦略とは、DX推進のための指針といえるでしょう。DXの戦略にはフレームワークが重要です。フレームワークによって変革の推進状況を評価・分析できるため、現状と今後の方針を示す指針となります。

戦略・戦術には具体性が求められるため、3年から5年程の予測可能な期間で策定する場合が多く見られます。既存のビジネスモデルから脱却し、企業文化や風土まで企業全体を変革していくため、中期経営計画などの経営戦略との整合性もとっておくことが必要です。

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か

DXとは、「IT技術の浸透は社会の人々の生活に良い影響を与える」というのが広義の定義です。近年ではビジネスで重要視され、注目されている考え方で、「デジタル技術を活用することで、ビジネスや企業の組織をより良い方向に変革させていく」という意味で使用されています。DX推進は、企業が市場において優位性を維持していくために必須のテーマです。

企業にDX戦略が必要とされる主な理由について確認しておきましょう。

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DX戦略が必要とされる理由は?

「2025年の崖」問題は、経産省のDXレポート で指摘されました。レポートでは、老朽化や複雑化したシステムやブラックボックス化した状態のシステムが残存し、稼働している場合に、サポート終了などのリスクが高まると予測しています。また、そのリスクに伴う経済損失は、2025年以降、年間で最大12兆円になると推定しています。「2025年の崖」に直面すると、企業が市場で勝ち抜くことが困難になり、業務効率や競争力の著しい低下などが懸念される問題です。この問題に対応するために、企業にはDX推進によりビジネス変革やビジネスモデルの創出が求められています。

「2025年の崖」問題とDX化についてのセミナーも多数開催されており、企業のDXへの関心度が高まっているといえるでしょう。

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IT技術の進化と消費者ニーズへの対応

ネットワーク通信の高速化、クラウドなどのI T技術の急速な進化で、消費者の行動やニーズは日々変化しています。顧客の消費行動などの大部分はオンライン上で完結することが可能です。またコロナウイルス感染症の拡大などにより、リモートワークの必要が生じた場合でも、最新のITシステムが企業に導入されていれば、業務に支障なく、事業運営を継続できます。変化に対応し、競争力をつけていくために、DX推進は重要な施策といえます。

政府でも自治体DX推進計画において、働き方改革の一環として、感染症予防、災害時などの事業継続などにも有効なテレワークを推進しています。

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経済産業省の「DX推進ガイドライン」について

2018年に経済産業省が公表した「DX推進ガイドライン」は、企業がDXを推進する際に活用できるようにまとめたものです。DX推進のための経営のあり方や仕組み、基盤となるITシステムの構築など、多岐にわたるガイドラインを国が示しています。

DX推進に向けて、経営者には2つの姿勢が求められます。1つはDXに対する明確なビジョンや経営戦略を持ち、社員に示すこと。2つ目は経営者自らがDXの推進に関わっていくことです。また、DX推進には人材や仕組み、ガバナンス、さらに適切なITシステムが構築できるプロセスも必要です。システム構築では、既存のシステムの評価や分析を行い、新たに構築するシステムの要件定義などに、積極的に関わっていかなければなりません。このように、DXは経営者のリーダーシップのもと、全社一丸となって進めていく必要があります。

DX戦略の立て方

DXの戦略の立て方を4ステップでご紹介します。企業によって具体的なステップは異なりますが、基本的には以下が共通のステップとなるでしょう。

現状把握

DXの戦略は、まず自社のDX推進状況を把握することから始まります。目指していくレベルと施策を決定するために欠かせないプロセスです。方法としては、経済産業省の「DX推進指標」を活用して自社で診断するか、第三者機関に依頼する選択肢があります。

外部環境の分析

コロナ禍にしっかり対応できた企業もあれば、対応できなかった企業もあったように、企業が存続する上で外部環境の変化は大きな影響をもたらします。そのため、外部環境が直近の数年間でどのように変化しているか、自社のビジネスに影響を与えているか分析し、予測することも必要です。外部環境の変化を理解できていないと、DXの戦略を策定し実行しても、顧客に受け入れられなかったり、規制上実行できなかったりということが起こる可能性があります。

外部環境の分析には、PESTというフレームワークを活用することが一案として挙げられます。PEST分析は、外部環境が自社のビジネスにどのような影響を与える可能性があるかを把握するためのフレームワークです。政治、経済、社会、技術の4つの外部環境が分析対象となります。

改革方針・施策の策定

自社の現状と取り巻く外部環境について把握できたら、取り組むことを決めるステップに移ります。デジタル技術とデータを活用して、どのような価値を創出するかを明文化します。会社がリソースを集中的に使って新たに取り組むべきことを決定していきますが、一方でやめるべきことを決める必要もあります。

その際に大切なことは、二つの軸で考えることです。一つめは、重きを置く領域を決めて、その分野のユニーク性をより伸ばすことです。商品やサービス、業務プロセス、企業文化・風土など、企業によって注力する分野は異なるでしょう。電子機器やソフトウェアなどを多角的に経営している企業であれば、ソフトウェア事業の強化かもしれません。

二つめは、脆弱性や弱点を克服することです。会社全体の社員のITリテラシーが低い場合は、特定のデジタル知識に精通した人材の採用を増やすことが考えられます。そして、日本企業の多くで問題とされているのが、レガシーシステムの存在です。先述したように、既存システムのブラックボックス化で、維持管理費の高騰やデータの非活用が問題視されており、こうした点を克服しないと大きな経済損失が生じることが懸念されています。レガシーシステムについては自社ではどうなのか検討すべきポイントです。

つぎに改革方針に基づいて、具体的な施策や目標を策定していきます。施策の策定では、どのくらいの変革を目指すのか、どの組織が実行するかなど、現実的な目標を改革方針ごとに立てるとよいでしょう。

ロードマップの策定

改革施策や目標を設定したら、施策をいつまでに実施するか、ロードマップを策定します。ロードマップは、ビジネスでは図や表を用いて作成した計画案のことです。道路のロードマップに似ていることから、開発の分野でこの名称がよく使われるようになりました。現在では、ビジネス全般でロードマップを利用しています。目標から逆算して時期を決めていくことも一つの方法です。

ロードマップを策定することで、目標が明確になり、チームのメンバー全員が同じ方向に向かって注力することができます。何のための作業かがよく理解できるため、モチベーションも上がるはずです。現状のDX推進状況やリソースに応じて、ロードマップを描いていきましょう。

DX戦略の推進プロセス

ここではDX戦略の推進プロセスを3つご紹介します。業界を問わず参考になりますので、確認してみてください。

プロセス①ビジョンを明確にする

まず、DXを推進することでどんなことを実現したのかというビジョンを明確にします。そしてそのビジョンを経営層だけでなく、社員全員で共有することが大切です。DX導入の成功の鍵は社員一人ひとりの行動にかかっているからです。また、ビジョンではDX推進により、企業はどう変化し、どのようなメリットが得られるかを明らかにする必要があります。ビジョンが明確になると、目標に到達するためにはどのような最善な方法があるかなど、抜本的な改革に向けた考えが生まれてきます。

プロセス②自社の強みの可視化

次のプロセスでは、自社の強みを出していきましょう。自社の課題だけでなく、強みを把握することは、経営方針を考える際に重要な作業になります。

市場で競争力を強化するには、もともと持っている強みを伸ばしていくことが効率的な方法です。どのような価値を社会に与えられるか、どんなことが評価されてきたのかをあらためて確認することは、今後の方針を考える上で大いに役に立ちます。

プロセス③自社の課題に合わせたDXの推進

DXを推進させるために時期を逃さないためにも、完全を目指さずに、今できることから実践していくことが肝要です。まずは自社の抱えているさまざまな課題を「すぐに対応できるもの」と「時間がかかるもの」に分けておくと、「すぐにできるもの」に速やかに対応することができます。DXが進んでいくと、ノウハウがどんどん蓄積されていくため、DXのスピードも加速していきます。なお課題が絞れていない場合には、アナログデータのデジタル化を優先的に行いましょう。

DX戦略を成功に導くためのポイント

DX戦略を成功させるためのポイントを4つご紹介します。ポイントをつかんだうえで、DXを推進していきましょう。

DX戦略の方向性を明確にする

DX戦略の策定においては、進むべき方向性を明確にしておきましょう。成功に導くためには社内の協力が不可欠です。社員全員から協力してもらうためには、「なぜDX戦略を進めるのか」、「DX戦略でどのようなことを実現したいのか」など、方向性を示し、全社員の意識を統一する必要があります。そのためには自社の課題を洗い出し、課題解決に向けてDXをどのように活用するかなど、DX戦略の目的を決めておくことが大切です。たどり着きたいゴールを目標とすることで、方向性が明確になってきます。

スモールスタートが重要

DX戦略は長期的な視点に立って進めていくことが重要です。短期間に社内の全システムを見直したり、あらゆる業務にITシステムを導入したりすると、現場では大きな負担となる可能性があります。これまでのやり方から大きく変わったことで、ミスやトラブルを招きかねません。途中で方針転換しようとしても、一度動き出してしまうと調整が上手くいかない可能性があります。そのため、まずは小規模なことからスタートし、段階的にDXに取り組んでいくことを意識しましょう。最初から大きく始めてしまうと、DX推進が上手く進まなかった場合のリスクが大きくなるからです。

システム構築は一貫性を意識する

DXを推進していくには、一貫性のあるシステム構築を意識することが重要です。従来利用しているシステムは老朽化や複雑化、さらにブラックボックス化しているケースも少なくありません。そのため部門ごとの旧システムの維持にかかるコストが高額になり、データ連携ができず、データを有効活用できないことも課題となっています。また、ITシステムの導入を事業部ごとに行なった場合は、一貫性のないシステムとなる可能性があります。社内で蓄積されたデータをスムーズに活用できるように、会社規模で一貫性のあるシステム構築を行うことが求められます。

IT人材の確保・育成

DX戦略に取り組んでいくためには、IT技術に精通した人材を確保し、育成することも重要なポイントです。IT人材がいないということは、DXを推進していく中核を担う人がいない状態であり、途中で進められなくなるケースも考えられます。または予期せぬトラブルが発生した際に迅速に対処できず、より大きなトラブルになる可能性もあるでしょう。IT人材の確保は、現在在籍している人材を育成する方法と、新たな人材を採用する方法、または外部から人材を招く方法があります。まずは自社のリソースを見直し、人材確保に適切な方法を見極めましょう。

DX戦略事例紹介

医療業界

高齢化社会の日本における医療業界でDXを推進することで各種問題を解決できると見込まれています。その一つとして、ICT(情報通信技術)を活用したオンライン診療です。医師の診療が遠隔地から可能になることで、地方エリアなど医師が少ない地域や移動手段が限られる高齢者でも診療を受けられるようになります。

その他にも、情報ネットワークの構築による医療施設と介護施設、行政機関の連携も期待されています。患者の診療情報を一元管理できれば重複検査を受ける必要がなくなります。

医療現場のDXについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
医療現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)とは?現状や課題などを解説

化粧品業界

化粧品業界ではユーザーの経験(UX)におけるオンラインとオフラインでの差がなくなりつつあります。顧客はオンラインを活用することで店舗に足を運ばなくても、店舗を訪れたときと同様の接客を受けられます。

例えば、日本ロレアルは顧客にオンラインでも充実したブランド体験を提供している企業の一つです。同社は商品の色味を試せるバーチャルトライオンシステムやオンライン上でカウンセリングを行う美容部員を導入しました。これにより、ロレアルの店舗が自宅近くにない顧客も気軽にカウンセリングを受けられるようになりました。

参照:​​https://www.lorealparisjapan.jp/virtual-try-on

製造業界

製造業に属する多くの企業は産業用ロボットやセンサーを活用したファクトリー・オートメーションの推進を行いました。これにより、工場の効率化や自動化が促進され、少ない従業員数でも従来の生産量を維持できるようになった他、無人化などによって作業員の負担が大きく軽減されました。それを実現に導いたものとしてモノをインターネットにつなげるIoT技術やAIは欠かすことができません。

例えば、三菱電機はe-F@ctoryというコンセプトに基づいて、製品同士をインターネットに接続し、収集したデータ、および知見を利用するIoTソリューションの提供を実施しています。

参照:https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/solutions/efactory/index.html

製造業のDXについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
製造業におけるDXとは?課題や進め方は?DX化を成功させるためのポイントも解説 

DX戦略は「SMS」から始めませんか?

DXを推進するには多額な費用が発生します。コストをできるだけ抑えて、DXの費用対効果を上げるためにおすすめの方法がSMSの活用です。生損保業界では、お客様とのやりとりでさまざまな課題が発生しています。例えば、繁忙期のコールセンターへの多数の入電数への対応、電話や郵送物ではスムーズな連絡が取れず、保険の手続きなどに支障が出ることなどが一例です。これらの課題について、近年注目されている到達率・開封率の高いSMSを活用しDX化を進めることで解決し、一定の成果を上げている企業が多数あります。

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まとめ

DXとは、デジタル技術を活用した変革を表す言葉です。また、DX戦略はデジタル技術を戦略的に活用することで、組織構造自体の変革を推進するためのロードマップといえます。「2025年の崖」問題、社会や顧客ニーズの変化などに対応するために必要とされるDXは、多くの企業で注目されており、セミナーなども開催されています。DXを推進するためには押さえておくべきポイントがいろいろありますが、DX戦略の明確な目的を定めることは、DX推進において核となる部分です。また会社全体で取り組む必要があるため、DX戦略のビジョンを社員全員に浸透させ、情報を共有することが重要です。他社の導入事例やDX戦略に関する本なども参照しながら、全社員で各自が当事者意識を持って取り組んでいきましょう。