DXに活用できる補助金・助成金とは?申請方法や注意点などについて
経済産業省の「DXレポート」では、DXの推進がうまく進まなかった場合には最大12兆円の経済損失が2025年に生じると懸念されています。しかし、現状としては予算の面などからDXの推進が容易でない企業や自治体も多いです。予算がネックとなっている企業や自治体におすすめなのが補助金・助成金の活用です。そこで本記事では、DXの概要を確認した上で、DXに利用できる補助金一覧や補助金の申請によるメリット・デメリット、手続きの流れなどについて解説します。
目次
そもそもDXとは?
DX(ディーエックス)とは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語です。
最新のデジタル技術を活用することで、ビジネスに変革を起こし、企業を取り巻く環境への適応を目指します。そして、長期的に利益を上げ続け、自社を成長させていくことも目標にしています。
また、DXでは人々の暮らしの利便性をより向上させ、快適な暮らしの実現、業務の効率化、従業員の業務負担軽減なども目標としています。そうしたことからも、企業だけでなく、自治体においてもDXの推進が求められています。
DXについて詳しく知りたい方は以下の記事を参照してください。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?DX推進のメリットと課題も
DX推進に必要なこと
経済産業省が策定した「DX推進ガイドライン」には、DX推進に欠かせない取り組みとして、以下の5つが挙げられています。
- 経営戦略・ビジョンの提示
- DX推進のための体制整備
- 適切な経営者によるリーダーシップ
- 投資などの意思決定のあり方
- 全社的なITシステムの構築のための体制、人材の育成など
企業や自治体がDXを実現するためには経営戦略やビジョンを明確にしておくことが前提です。経営戦略やビジョンが曖昧な状態で、単に流行しているからといった理由でDXを推進したとしても実感できるような成果は出ないでしょう。
経営戦略・ビジョンを明確にし、社内で共有を行ったら、DX推進のための体制整備を行う必要があります。体制整備において行うこととして、DX推進を担当する部署の設置や担当者の選任などが挙げられます。
DXの推進は社内における一部の人たちだけで進めるのではなく、経営層はもちろん、投資家や従業員にも理解してもらうことが前提です。周囲の理解を得られた上で、ITシステムを構築するための体制を整え、ITに精通した人材の育成を行います。
関連リンク:DX推進が業務効率化に繋がるのはなぜ?重要性や成功事例をご紹介
DX推進にかかるコスト
DXを推進するには役割分担や社内の体制構築だけでなく、さまざまなコストがかかります。DX推進にかかる費用として、主に以下の4つのコストが挙げられます。
- 社内体制構築費
- 開発費
- 宣伝広告費
- 人材育成費
DXに向けた社内体制構築費には社内プロジェクトチームの運用に関わる経費や専門機関へのコンサルティングの費用などが含まれます。
また、開発の段階においてもさまざまなコストがかかり、生産施設の維持費や人件費、機械装置や専用ソフトウェアなどの購入費用、外注費などが挙げられます。
DX推進の基盤が整ったら、展示会出展やセミナー開催、市場調査などの費用の他、研修費など人材育成の費用などがかかります。
DXに利用できる補助金一覧
IT導入補助金
IT導入補助金では「IT導入補助金」において低感染リスク型ビジネス枠(「特別枠 C類型・D類型」)を設け、コロナ後の業務の非対面化に対応する事業を検討している企業のIT導入を「通常枠」よりも支援しています。
本補助金の申請にはいくつもの条件があり、中小企業・小規模事業者などであること、日本国内で法人登記していることなどが挙げられます。補助金額は類型によって異なり、30~450万円以下となります。
注意点として、企業など(1法人・1個人事業主)が同時に申請できるのは1つの類型のみです。また、国が推進する関連事業の実施、国が推進するクラウド導入の取り組み、インボイス制度の導入などを実施している場合は、審査で加点の対象になります。一方、過去3年間に類似の補助金の交付を受けた事業者については、審査上の減点措置の対象となることを留意しておかなければなりません。
事業再構築補助金
事業再構築補助金はコロナ禍における経済社会の変化に対応するため新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編、もしくはこれらの取り組みに関する規模の拡大など、事業の再構築に取り組む中小企業などの支援を目指します。
申請要件はコロナ前の同時期の売り上げと比較して基準値よりも利益が下まわることを前提としています。
補助金額の「通常枠」は中小企業者などが対象となり、100万円~4,000万円(従業員数20人以下)、100万円~6,000万円(従業員数21~50人)、100万円~8,000万円(従業員数51人以上)です。また、「大規模賃金引上枠」は中小企業や中堅企業などが対象となり、従業員数が101人以上であれば8,000万円超~1億円です。その他にも、枠ごとに受給できる金額が異なります。
対象となる経費として、建物費や機械装置、専門家経費、技術導入費、外注費、クラウドサービス利用費、研修費、海外旅費などが挙げられます。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は中小企業などが働き方改革や被用者保険の適用拡大、インボイス導入、賃上げなどの対応に向けて革新的サービスの開発や試作品開発、生産プロセスの改善を支援する補助金です。その他にも、通常枠の他に特別枠として「低感染リスク型ビジネス枠」が新たに設置されました。
申請要件は国内に本社、および補助事業の実施場所がある中小企業者、特定非営利活動法人が対象です。申請の条件として、要件を全て満たした3~5年の事業計画を策定して従業員に表明していること、事業計画期間は給与支給総額を年率平均1.5%以上増加することなどが挙げられます。
補助金額は一般型が100万円~1,000万円、グローバル展開型が1,000万円~3,000万円です。また、補助率については一般型(通常枠)が1/2、小規模企業者・小規模事業者が2/3、低感染リスク型ビジネス枠特別枠が2/3、グローバル展開型が1/2、小規模企業者・小規模事業者 が2/3になります。
対象となる経費は類型によって異なりますが、機械装置やシステム構築費、技術導入費、広告宣伝費、専門家経費、運搬費などが対象です。
サイバーセキュリティ対策促進助成金
サイバーセキュリティ対策促進助成金は中小企業者などがサイバーセキュリティ対策を実践する設備などの導入経費の一部について支援を行う制度です。助成率は対象経費の1/2、助成額は上限1,500万円になります。
申請の際には独立行政法人 情報処理推進機構が実施しているSECURITY ACTIONの2段階目(二つ星)を宣言している必要があります。
令和4年度 サイバーセキュリティ対策促進助成金 申請案内 | 設備助成 | 東京都中小企業振興公社
研究開発型スタートアップ支援事業
研究開発型スタートアップ支援事業は事業終了後に概ね3年後まで事業化による継続的な売上げが見込める事業計画を有する、研究開発型スタートアップを支援するものです。
助成率は対象費用の2/3以内、助成額7千万円、もしくは2億円以内となっています。また、助成の対象となる技術には一定の条件があります。
2022年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」に係る第1回公募について | 公募 | NEDO
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ促進の取り組みを実施する事業主に助成する制度です。補助金とは異なり、一定要件を満たした企業であれば助成を受けられます。
なお、コースはいくつかあるため、自社に該当するものを選択してください。助成の内容についてもコースによって異なります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者および一定要件を満たす特定非営利活動法人(以下「小規模事業者等」といいます。)が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス制度の導入等)等に対応するため、小規模事業者等が取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とします。
本補助金事業は、小規模事業者自らが作成した持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組(例:新たな市場への参入に向けた売り方の工夫や新たな顧客層の獲得に向けた商品の改良・開発等)や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
日本の厚生労働省は、中小企業事業主に向けて「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」を提供しています。この助成金は、テレワークの導入と実施をサポートするためのものです。助成の対象となる取組には、就業規則や労働協約の作成・変更、外部専門家によるコンサルティング、テレワーク用通信機器の導入・運用、労務管理担当者や労働者への研修が含まれます。2023年4月1日からは、テレワーク用端末(PC、タブレット、スマートフォン)のレンタルやリース費用も助成対象となりました。支給要件には、評価期間後の離職率の管理やテレワーク実施計画の達成などが含まれ、支給額は支給対象経費の30%で、最高100万円または労働者数に応じた金額が上限とされています。
成長型中小企業等研究開発支援事業
ものづくり基盤技術は、自動車、医療機器、宇宙・航空、ロボットなど様々な産業分野にとって重要な技術であり、日本経済の持続的な発展にはこれらの技術の高度化が不可欠です。中小企業は市場のニーズに応じた技術開発に積極的に取り組む必要があり、特にAIやIoTといった先端技術との融合による高付加価値製品の開発が重要です。経済産業省は、Go-Tech事業を通じて、大学や研究機関と連携する中小企業の研究開発を支援しており、これによりものづくり基盤技術及びサービスの高度化を目指す事業が促進されます。令和5年度では、第2回公募の採択が決定し、12技術や高付加価値企業への変革に関する事項が対象とされています。
成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業) (METI/経済産業省関東経済産業局)
躍進的な事業推進のための設備投資支援事業(東京都)
この事業は、変化と変革に対応し、先端技術を用いた持続可能な発展を目指す東京の中小企業者を支援するものです。目的は競争力の強化、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、都市課題の解決への貢献、市場拡大が期待される産業分野でのイノベーションの推進、及び後継者による新たな取り組みです。助成対象は、競争力・ゼロエミッション強化/賃上げ促進、DX推進、イノベーション、後継者チャレンジに関連する機械設備の導入経費の一部で、令和4年度からは予算が大幅に追加され、助成率も優遇されています。対象は東京都内に2年以上事業を継続する中小企業者で、助成対象期間は交付決定日の翌月1日から1年6ヶ月です。詳細は第6回募集要項で確認できます。
第6回 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 | 設備助成 | 東京都中小企業振興公社
DXリスキリング助成金(東京都)
中小企業や個人事業主が従業員に対して民間教育機関等が提供するデジタルトランスフォーメーション(DX)関連の職業訓練を実施する際の経費に対する助成事業です。申請資格は、東京都内に本社や事業所があり、特定の資本金または常用労働者数の基準を満たす中小企業等です。助成対象となる訓練には、DXに関連する専門知識や技能の習得を目指すものが含まれ、オンラインや対面で実施されるものも対象です。助成対象経費には受講料、教科書代、教材費、eラーニングに関わる費用などが含まれます。助成対象受講者は、中小企業が雇用する従業員で、訓練時間の8割以上を出席した者です。詳細は募集要項で確認でき、申請方法や必要書類に関する情報も提供されています。
令和5年度DXリスキリング助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業) | 東京しごと財団 雇用環境整備課
DXの補助金・助成金の利用用途とは
日本におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の補助金や助成金は、ビジネスのデジタル化を促進するために提供されます。これらの資金は、さまざまな用途に活用され、企業の競争力強化や効率化を目指します。以下は、その主な使用用途の例です。
データ分析と統合プラットフォームの構築
企業は補助金を使用して、顧客データや市場動向の分析を行うためのデータプラットフォームを構築することができます。これにより、より効果的なビジネス戦略の策定が可能になります。
クラウドサービスへの移行支援
DX補助金を活用して、企業は既存のITシステムをクラウドベースのソリューションに移行させることができます。これにより、運用コストの削減やリモートワークのサポートなどが可能になります。
電子商取引プラットフォームの開発
補助金を用いて、Eコマースプラットフォームの開発や改善が行われます。これにより、オンラインでの販売チャンネルを強化し、顧客基盤を拡大することができます。
AIや自動化技術の導入
人工知能やロボット工学などの最先端技術を活用するための資金としても用いられます。これにより、生産性の向上や新たなサービスの創出が期待されます。
サイバーセキュリティの強化
デジタル化の進展に伴い、サイバーセキュリティの重要性も増しています。補助金は、セキュリティ対策の強化やリスク管理システムの構築に利用されることがあります。
これらの用途は、デジタル化が進む現代において、企業の競争力を維持し、新しい市場機会を掴むために不可欠です。
補助金や助成金の申請によるメリット・デメリット
補助金や助成金の申請によるメリット
補助金や助成金を活用することで、多くの企業がDXを推進する上でネックとなっている費用の確保を行えます。補助金や助成金は一般的に返済の必要がないため、自社の資金と同様に利用できます。
補助金や助成金の獲得には厳しい審査にパスしなければなりませんが、審査にパスすることができれば事業内容について国からお墨付きを得られるでしょう。ビジネス内容や事業計画について客観的に高い評価を得られたという証明にもなります。
補助金や助成金の申請によるデメリット
補助金や助成金の申請期間は短く、かつ募集内容が大きく通知されないことも多いです。そのため、申請書に記載する内容をある程度用意しておいたり、各機関の公式サイトを日頃から確認したりする必要があります。業務が多忙な時期と申請の時期が重なると、申請を逃してしまうこともあるので注意してください。
また、企業が国などから補助金や助成金を受給したら会計検査の対象となることもあります。また、この検査では会計状況全般について調査が行われます。
補助金の申請前に確認すべき注意点
補助金などの申し込みをする際に注意すべき点は以下の4つです。
- 事業内容との一致
- 必要資金の見積もり
- 申請要件や期限の確認
- DXレポートの内容
補助金を申請するにあたって行うべき準備は多くあります。事業内容と申請書記載の内容の一致、DXレポートの内容はもちろんのこと、必要資金の見積もりなども不可欠です。これらは助成金に採択された後も業務に直結する項目となりますので、ミスがないように気を付けましょう。
また、申請する際は申請要件や期限についてしっかりと確認を行い、間違わないように申請するようにしましょう。申請期限を過ぎたものは対象外となるので注意してください。
補助金・助成金の申請手続きの流れ
ここでは、補助金・助成金の一般的な申請内容の流れを紹介します。補助金・助成金によって申請内容の流れは異なるものの共通する部分も多くあるため、流れを念頭に置いておくとスムーズに進められるでしょう。
- 公募
- 審査
- 採択
- 交付申請、決定
- 補助対象事業スタート
- 中間検査
- 事業の終了、報告書の提出
- 確定検査
- 支給額の確定
- 請求書の提出、補助金の振込
注意点①
補助金・助成金の交付が認められた場合でも、決定後でない限り補助事業を行うことはできません。事業に決定前から着手している場合、それにかかった経費が支払われないケースもあります。
注意点②
補助金・助成金の申請において補助事業に必要な経費の確保が見込めることが重視されます。「融資を受ける」でも問題ないこともありますが、実現しがたいと客観的に判断された場合は審査にパスすることが難しくなります。
注意点③
補助金・助成金の中には審査において加点の対象となる条件があります。比較的クリアしやすい条件を満たすことで加点されることもあるため、加点の対象となる条件として何があるのか確認するようにしてください。
注意点④
事業が完了した後で行われる確定検査では、補助金の使い道や金額が公募要領に従っているか検査が行われます。申請時とは異なる支出や正しい処理が行えていない場合は、補助の対象にはなりません。
注意点⑤
補助金・助成金が振り込まれるのは事業が完了し、検査に合格した後です。補助事業の経費や経営に必要な資金についても事前に用意しておかなければなりません。
融資申請に関する確認事項
補助金などの申請で必要となる資金調達の方法として、融資の活用が主流といわれています。
しかし、融資は誰もが受けられるものではありません。
・財務状況
・返済能力
・税金などの滞納の有無
上記は融資の可否を決める際の判断材料となります。
また、融資を受けられることになっても、将来的に返済が必要であることを忘れてはいけません。返済計画をしっかりと立てると同時に、返済できるだけの利益を出していけるように事業を営む必要があります。
DXの推進にはSMSを活用するのがおすすめ
DXの推進を検討している企業にはSMSの活用がおすすめです。SMSを活用してメッセージを送ることで、必要な情報をリアルタイムで届けられる他、封書や電子メールよりも受け取り手からの反応を得やすくなります。
封書の場合、他の郵送物に紛れ込んだり、受け取り手の手元にわたっても開封してもらえなかったりというケースも珍しくありません。また、封書を送る場合、1通あたりのコストも割高です。
また、電子メールについては他のメールにうもれて開封してもらえなかったり、迷惑メールフォルダに振り分けられて気付いてもらえなかったりすることもあるでしょう。
SMSはスマートフォンに配信されるため、受け取り手に気付いてもらいやすく、かつ他のメッセージにうもれる心配もありません。
最近では多くの企業がサービス紹介や店舗情報、各種お知らせ、支払い方法の連絡などにSMSを活用しています。
法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」
KDDI Message Castは携帯電話番号を使って携帯電話やスマートフォンにSMSを配信するサービスです。キャリア品質の保守運用体制のため安心安全な配信を実現しています。また、異なるエンドユーザーへの誤配信を防げるよう、誤配信防止機能も搭載されています。その他にも、1通につき660文字までのSMS長文を配信できる他、リッチコンテンツの配信も可能です。費用については従量課金のみとなっているため無駄なく利用できます。
まとめ
企業や自治体が存続していくためには、最新技術やデジタルをうまく活用していくことが不可欠といえるでしょう。DXの重要性が国を掲げて重視されている昨今ですが、現状としてはコスト面からDXの推進が難しいと感じている企業も少なくありません。本記事で紹介したように、DXに活用できる補助金・助成金は多くあります。補助金・助成金を活用することで、予算の観点からDX推進が困難だと感じている企業や自治体もDXを進めていけるはずです。
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