近年、医療業界ではIT化の重要性が高まり、多くの医療現場でITシステムの導入が進んでいます。ここでは医療業界のIT化の現状や課題、IT化のメリットやデメリット、そして医療業界でのIT化の事例などを解説します。

IT化とは?

IT化とはアナログでの業務や作業などをデジタルに変えていくことです。

アナログでは人の力で行っていた業務をIT化することによって、アナログのときより効率があがったり、信頼性などの向上することを目的としているものです。

近年、DXやIT化やICT化という言葉を聞く機会が増えてきていますが、このIT化とICT化ではなにが違うのでしょうか。ここでは、IT化とICT化の違いについて解説します。

IT化・ICT化の違いとは

IT化やICT化と似たような言葉ですが、どのような違いがあるのでしょうか。ITとは「Infomation Technology」の略で、情報技術を意味します。情報通信に関するすべての技術のことをITといいます。

ICTとITは似ているようにみえますが、ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術を意味します。IT技術を使って人々のさらなるゆたかな生活を送っていくかというITの活用方法ということに該当します。医療業界でのICT化とは医療側と患者側とのコミュニケーションの部分が重要とされています。

IT化とICT化の違いとは、IT化はデジタル機器の普及や機能向上を目的としていることでIT技術そのものであり、ICT化はデジタル機器を使った開発や活用方法のことです。

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医療業界のIT化の現状

医療業界でのIT化について、現状ではどのような問題があるのでしょうか。ここでは医療業界のIT化の現状について解説します。

関連リンク:医療現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)とは?現状や課題などを解説

電子カルテシステムの普及率

電子カルテを使用したシステムに変更している病院が年々増えてきています。

今までは紙のカルテを使用してきていますが、規模の大きい病院の多くが紙のカルテから電子カルテのシステムを導入し切り替えているのが現状です。電子カルテシステムを導入することで、カルテがデジタル化され、業務の効率化が高まっています。

新型コロナウイルス流行による医療現場

近年新型コロナウイルスの流行によって、IT化が進められていなかった医療現場は医療崩壊という危機に何度も直面しました。

IT化が進んでいなかったことが原因で患者さんの感染状況などをなかなか把握しきれず、医療現場では混乱状態になったことで医療業界でのIT化を早く進めようとしています。例えば、FAXでのやりとりしていた連絡方法をオンラインに切り替えたり、オンラインでの診断や学会などもオンライン化に変えたりなどの対応が進められています。

地域医療情報連携ネットワークの活用

地域の病院や診療所、介護施設や薬局などで保持している情報をネットワークで連携し、どこでも閲覧できるようにしているシステムが地域医療情報連携ネットワークです。この地域医療情報連携ネットワークは地域医療においてのあらゆる面での向上や過剰医療などを防止するために構築されたシステムです。

しかしながら現状ではこのシステムを有効に活用することができておらず問題となっています。都道府県からの説明不足が理由として挙げられており、連携不足を解消していくことが重要となっています。

医療業界でIT化が求められている理由とは

医療業界でIT化が求められている理由としては、少子高齢化がさらに進んでいくと人手不足が原因で労働環境が悪くなってしまう懸念があるため、医療業界でもIT化が求められているといわれています。

医療業界でのIT化としては、多くの臨床情報などを共有化することができるため、今後の新薬の開発や再生医療などで情報を活用することができます。また、治療ができなかった病気の治療方法を、見つけることができることも可能となります。

また数多くの患者の医療や検査結果などの情報などもまとめて分析なども可能となるため、今後の研究などのスピードも上がります。

医療業界でIT化があまり進んでいない理由と課題

病院向けのいろいろなITシステムが出てきていますが、医療業界でのIT化はなかなか進んでいません。現状、IT化があまり進められていない理由やどのような課題があるのか解説します。

ITリテラシーが低い現場の現存

ITリテラシーとはパソコンなどのIT機器やインターネットやSNSなどの情報ツールなどを使いこなす能力のことをさしています。医療についての知識は高くても、ITリテラシーが低いという医療現場はまだまだ現存しています。医療現場にいる人のITリテラシーが低いままでIT化を進めたとしてもシステムを有効活用することができない可能性があります。

医療現場が理解できていないとIT化は浸透しません。医療現場の誰もが使用できるシステムの使用方法などについてしっかりとした説明が必要であり、サポートが必要になります。

セキュリティの問題

どこの業界でも問題となるのは、セキュリティの問題です。医療業界ではとくに多くの患者の重要な個人情報を扱っているため、データセキュリティについては特に大事とされています。

医療業界でのIT化が進むことでデータが共有化されてしまうため、患者のなかでは心理的に抵抗があると考える人が多いそうです。情報が漏れてしまうと患者の個人情報の漏洩はさせられません。患者に安心で安全なセキュリティ管理ができる対策が必要とされ課題とされています。

人材不足の状況

どの業界でも同じことですが、少子高齢化により労働力が減少し、ハードな労働でもあることから医療現場では人手不足が深刻な状況となっています。とくに過酷な労働環境になってしまう医療現場は医療従事者がたりていません。医療従事者1人あたりの負担が増え続けてしまうことから人材が定着しません。

今後もますます少子高齢化が影響していき、人材不足がさらに深刻になると思われているため、医療業務の効率化がとても重要となってきます。

複数の部署においての合意形成が難しい

医療業界のIT化において大病院での課題には、複数の部署においての合意が難しいという点があります。病院によってはそれぞれの部署、例えば、診療科ごと、病棟ごと事務などそれぞれの部署ごとにシステムを使っている場合があります。

最新のITシステムを導入しようと考えていても部署によっては合意するのに時間を費やしたり、不満がでたりなどがあります。簡単に進めることができないために最新のITシステムを導入することをやめてしまう病院などもあり、合意形成が進まないために病院のIT化が進まない遅れの原因にもなっています。

業務フローを混乱させる問題がある

最新のITシステムを導入することで、今までとは異なる業務フローになることから混乱が発生してしまうという問題があります。例えば、新しい業務フローになることで今までより業務効率があがるのかどうかや病院のスタッフだけではなく患者側にも違和感がないのかどうかなどが考えられます。

こういう点を考慮していき、IT化を進めていく必要があります。

医療業界のIT化のメリット

医療業界でのIT化にはどのようなメリットといえるものがあるのでしょうか。ここでは、医療業界のIT化におけるメリットについて4つ解説します。

業務効率化につなげることができる

医療業界でIT化をすすめることで業務効率化につなげることができるため、深刻な問題とされている人手不足などが解消されるというメリットがあげられます。

例えば、電子カルテを活用したり、オンライン予約などのシステムを導入することで医療業務にかかわる医療従事者の作業工数を減らすことができます。

さらに、労働環境がよくなることから人件費や残業代なども減らすことができるため、病院の経営にかかわる問題なども解消することが可能となります。

開発分野や研究分野に活用できる

医療業界でのIT化は数多くの臨床情報なども共有化することができるため、開発分野や研究分野、再生医療などでも共有された情報を活用することができます。また、まだ不明確な病気の原因の解析や治療方法の発見などにも活用することができます。

患者の医療や検査情報などをまとめて分析することができると開発や研究などのスピードがあがります。

適切な医療提供が可能

医療業務のIT化が進むことで、患者の過去に受診した情報、例えば治療内容や使用していた薬の種類などの情報も一元化することができます。

過去にさかのぼって情報を知ることができるため、患者にとって適切な医療を提供することが可能となります。IT化された情報は1か所の医療機関だけではなく、複数の医療機関で情報共有することができます。

例えば、医師と薬剤師などが別の医療の場所にいた場合でもおなじ情報を確認することができることから診察結果の内容の確認や薬の副作用などを回避することも可能となります。

BCP対策につなげられる

BCPとは、「Business Continuity Plan」の略でシステム障害などによる危機的状況におかれた場合においても業務を継続することを目的とした事業継続計画です。日本では自然災害のリスク対策としてBCP対策がとても重要とされています。

システム障害などが発生した場合には医療機関の早急な復旧が必要であるため、BCP対策も必要となります。例えば、医療業務のIT化が進むことで医療業務が崩壊した場合においてもバックアップなどによって復旧作業が今までより早くなる可能性が期待されています。

医療業界でのIT化の事例紹介

医療業界においてIT化はどのように進められているのでしょうか。ここでは医療業界でのIT化の事例を3つご紹介します。

電子カルテ利用

電子カルテを利用することは医療業界のIT化には欠かすことができない技術になります。

電子カルテを利用する病院が増えていくことは医療業界のIT化の第一歩です。今では電子カルテを利用することにより医療現場ではいろいろな新しいことができるようになっています。

例えば、カルテを電子化することで患者の医療情報を瞬時に見ることができたり、患者のカルテを迅速にみつけることが簡単になりました。また、検査予約や検査結果の画像をみるなども他のシステムとのやりとりが容易にできるようになったりとしています。

オンライン診療

オンライン診療というのは、パソコンなどのデジタル機器の通信技術を使って、診療することも薬を処方してもらうなどができる診療形式のことです。一般的には画像を見ながら会話ができたり、ビデオチャットなどを使用したオンライン診断をするシステムが導入されています。例えば、患者は自宅などで診療を受けることができるので通院の負担が少なくなります。

また、医療サービスの質が地域ごとで異なっていましたが、この地域差が軽減されます。オンライン診療はいろいろな面で幅広く導入されています。

AIシステム導入

IT化となるとAIシステム導入というのは今では必須のことになります。AIという最新の技術を組み込んだ医療機器や製品、サービスなどにおいても医療業界では導入することが少しずつ増えてきています。

例えば、AIシステムが搭載されている画像診断ツールではレントゲンやMRIなどの画像のリスク領域も判断し見逃しの防止だったり、早期発見など眼では見落としてしまいそうな部分をとりこぼさないようにするために導入されています。

AIシステムを導入することで医師の診断時間も短縮することができ、誤診などの防止にもつながります。

SMSを活用した医療業界のIT化事例

診断を行うために重要なことは患者とのコミュニケーションです。SMS(ショートメッセージ)を活用した医療業界のIT化には次のような事例があります。リマインダーを活用して診療予約を確認することです。診療予約を忘れてしまうとそれ以降の通院などが滞ってしまうという原因になっています。

また、次の診療までの期間が空いてしまうことで忘れてしまうことがあります。ひとりひとり電話連絡などで確認することは困難であり、患者に必ず連絡がとれるというわけでもないため手間がかかります。

そこでSMSの一斉送信機能を使って予約の確認をすることで診療予約を忘れを防止することができます。

関連リンク:医療業界でのSMS(ショートメッセージ)送信サービスの活用事例

医療業界のIT化にはSMSの活用がおすすめ

医療業界のIT化にはSMSを利用することがおすすめといえるのは今まで課題とされていたことが解消することができます。

定期検診の案内、診療予約などを確実に届けることが難しいと思われていましたが、SMSを活用することでSMSのリマインダー機能によってリマインドメールを送信することで確実に届けることができ、診療予約の忘れを防止することができるようになりました。

また、お知らせなどをDMやはがきを使っているがどうしても費用がかかっていましたが、SMSに切り替えることで費用をおさえることができるようになりました。

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まとめ

ここまで医療業界のIT化について現状はどのような状況なのか、IT化を進めるにあたってどのような課題があるのか、IT化による医療業界のメリットとはどのようなものがあるのかなどを解説してきました。少子高齢化がすすみ、最近ではコロナウイルス感染などにより、医療業界のIT化の必要性が高くなっています。

また、業務効率化や人件費の削減、病院自体の経営の問題にもIT化の導入は必要不可欠とされています。医療業務のIT化は医療崩壊のリスクを回避するために早急に必要とされていて、ますます重要視されることとなります。

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