そもそもKPIとは?

KPIとは、業務目標を達成するプロセスを管理して円滑化するための指標です。Key Performance Indicatorの略称で、重要業績評価指標とも呼ばれます。KPIはKGI(経営目標達成指標、Key Goal Indicator)を達成するための中間目標として位置付けられます。KGIよりも細分化された指標を設定して、KGIの達成に必要な構成要素を明確にすることがKPIの役割です。

KPIを設定して定点観測することにより、KGIの達成状況を多面的に評価できます。KPIは業務フローを変更したり、新しいシステムを取り入れたりして軌道修正をすることで業務改善を進めるのに役に立つ指標です。

KPI設定で重要な「SMART」とは

KPIはSMARTに基づいて設定することで戦略的なKGI達成が可能です。SMARTとは、的確な目標設定をする方法で、以下の5つのポイントを押さえてKPIを設定します。

  • S(Specific) 具体的
  • M(Measurable) 計測可能
  • A(Achievable) 達成可能
  • R(Related・Realistic) 関係性・現実的
  • T(Time-bounded) 時間期限

KPIをわかりやすく、かつ正確にKGI達成に到達できるように設定するための基本概念です。期日を設定し、管理できるように数値で計測できる指標を選んで目標達成を円滑に進められるようにします。

コールセンターのKPI一覧【対応品質】

コールセンターでは対応品質のKPI設定が必要です。ここでは品質管理に役に立つKPIを紹介します。

①応答率

応答率とは顧客からの問い合わせにオペレーターが対応できた割合です。【応答率=応答件数÷着信件数×100%】として計算できます。応答率は80%~90%をKPIとして設定するのが一般的です。問い合わせ数に対して必要な人数のオペレーターを確保することで応答率を向上させられます。AIチャットボットやSMSなどによる対応を取り入れて業務効率を改善して応答率を上げることも可能です。

②放棄率

放棄率とは顧客からの問い合わせにオペレーターが対応できなかった割合です。放棄呼率とも呼ばれています。【放棄率=放棄数÷着信件数×100%】、あるいは【放棄率=100%-応答率】として計算できます。放棄率のKPIは10%未満を目安として設定するのが一般的です。オペレーターの数や対応スピード、応答のためのサービスの導入などによって応答率が変わると放棄率も変動します。

③サービスレベル

サービスレベル(SL)とは設定時間内に顧客の問い合わせに対応できた割合です。「SL=設定時間内の応答件数÷着信件数×100%」として計算できます。サービスレベルはコールセンター対応の顧客満足度にも影響がある指標で、80%以上をKPIとして設定するのが一般的です。サービスレベルは問い合わせ数に対して十分な人数のオペレーターがいるかどうかによって変動します。問い合わせの多い時期や時間に対応できるオペレーターを増やすことで改善が可能です。

④平均応答速度(ASA)

平均応答速度(ASA)とは問い合わせに応答するまでにかかった時間の平均値です。【ASA=オペレーター対応までの待ち時間の総時間÷着信件数】として計算できます。ASAは顧客を待たせてしまった時間の指標で、KPI設定では20秒以内にするのが一般的です。平均応答速度は問い合わせの混雑状況とオペレーター数によって変わります。IVRを用いることで一次対応を自動化することで平均応答速度を向上できます。

コールセンターのKPI一覧【顧客満足度】

コールセンターでは顧客満足度の向上に取り組むことが必要です。顧客満足度のKPIとして重要な指標を紹介します。

①顧客満足度(CS)

顧客満足度(CS)とはサービスに対する顧客がどれだけ満足したかを示す指標です。コールセンターでは問い合わせに対する応答速度や対応内容、事後のフォローアップの品質などによって変動します。CSは顧客アンケートによって評価するのが一般的です。数値化されたアンケートを使用して、各項目や全体の平均値の数値目標をKPIとして設定します。コールセンターのオペレーターの質による変動が大きい指標です。

②顧客推奨度

顧客推奨度(NPS®)とは顧客からの信頼や顧客の定着を評価する指標です。顧客ロイヤルティを把握できる計測指標です。アンケート調査による数値評価をおこない、顧客を11段階で評価します。自社を推奨する顧客(9~10)、中立的な顧客(7~8)、自社を批判する顧客(0~6)に分類して、「NPS=推奨者の割合-批判者の割合」として計算します。製品やサービス、コールセンター対応などのさまざまな品質によって変動する指標です。

コールセンターのKPI一覧【効率・生産性】

業務改善のためのKPIの設定は重要です。コールセンターの業務効率や生産性の向上に有効なKPIを紹介します。

①稼働率

稼働率とはコールセンターのオペレーターが実働していた時間の割合です。【稼働率=業務対応時間÷勤務時間】として算出できます。業務対応時間は応対時間、保留時間、後処理時間、待機時間の合計です。オペレーターが不足していると稼働率は高くなりますが、オペレーターが過剰になっていると稼働率が低下します。稼働率が100%なら無駄なくオペレーターが仕事をしている状況ですが、休む間がないので業務負担が大きくなります。

②平均処理時間

平均処理時間(AHT)とは顧客からの問い合わせにかかった時間の平均値です。【AHT=(総通話時間+総後処理時間)÷総処理件数】として計算します。平均処理時間は後述の平均通話時間と平均後処理時間の総和としても算出可能です。AHTはオペレーターの教育や経験の蓄積を通して短縮できます。マニュアルの整備や業務効率の向上になるシステムの導入によってAHTを改善することも可能です。

③平均通話時間

平均通話時間(ATT)とは顧客からの入電に対して通話していた対応時間の平均値です。【ATT=総通話時間÷総処理件数】として算出します。平均通話時間は電話による顧客対応の方法によって変動します。問い合わせに対して言葉で説明すると平均通話時間は長くなりますが、資料の送付で対応すれば短縮可能です。マニュアルの整備によって定型的に応答できるようにするのも平均通話時間を短くするのに有効な方法です。

④平均後処理時間

平均後処理時間(ACW)とは顧客からの問い合わせの一次対応をした後の顧客フォローや業務内容の記録にかかった時間の平均値です。【ACW=総後処理時間÷総処理件数】として計算できます。平均後処理時間は通話による顧客応対の後に必要な業務内容によって変動します。通話内容のデータ入力を自動化したり、必要なフォローアップをSMSやメールで自動処理したりすることができると平均後処理時間を短縮することが可能です。

⑤CPC

CPC(Cost Per Call、コスト・パー・コール)とは1回の問い合わせにかかるコストの指標です。【CPC=総処理件数÷コールセンター経費】として総計算ができます。コールセンターの総生産性を評価するKPIとして経営指標としても用いられています。CPCはオペレーターの人件費による影響が大きい指標です。オペレーターの稼働率や平均処理時間による変動もあります。業務改善を通して効率を向上させるとCPCを減らすことが可能です。

コールセンターのKPI一覧【マネジメント】

マネジメントのためのKPIを設定するとコールセンター管理が容易になります。ここではマネジメントに必要なKPIを紹介します。

①欠勤率

欠勤率とは勤務する予定だった日に休みを取った日の割合です。【欠勤率=欠勤日数÷予定勤務日数」として計算できます。早退や遅刻によって実働できなかった時間も加味して欠勤率を算出する場合もあります。

欠勤率はさまざまな要因によって変動します。子育てや親の介護をしているときには家庭の事情で急に休みを取りたいときもあります。仕事がつらくなって休むケースも少なくありません。

コールセンターのマネジメントで重要なのはオペレーターの身体的・心理的要因によって欠勤せざるを得ない状況を減らすことです。欠勤率が高い場合には、オペレーターのケアが必要です。

②離職率

離職率とは仕事を辞めてしまった人の割合です。【離職率=離職者数÷労働者数】として算出します。コールセンターで離職率が高い場合には業務ストレスが大きくなっている可能性が高いので対策が必要です。特に離職率が上がっている場合には業務改善を進めて働きやすい環境を整備し、優秀なオペレーターの定着を図ることが重要です。

転職して他の職場に移る人が増えている影響で、業務の内容やフローに問題がなくても離職する人が増えることもあります。ただ、離職率が高いのは他社の方が魅力があると判断されていることを示しています。オペレーターにヒアリングをして課題を確認し、より働きやすい環境を整えましょう。

コールセンターのKPIを設定する際のポイント

コールセンターのKPIは的確に設定することが必要です。ここではコールセンターのKPIを設定するときに重要なポイントを紹介します。

KGIや目的を明確化する

KPIを設定する際には最終目標となるKGIを定めることが重要です。KPIは最終目標を達成するために必要な要素としての細分化された目標です。目的を明確化することでKPIとして必要な要素も具体的な数値を定められるようになります。

コールセンターでKPIとして用いられている指標は互いに関連しています。オペレーター数を調整して稼働率が上がったとしても、平均処理時間が長いと顧客満足度は上がらないでしょう。マネジメントをして離職率が下がっても、オペレーターが不足していては稼働率やサービスレベルは上がりません。最終的に何を達成したいのかを具体的に数値化してKGIにすることで、現場で取り組むべきことが明らかになります。

課題に優先順位をつける

コールセンターでは多数の課題を抱えていることが多く、一度にすべて解決することは難しい場合があります。KPIを設定するときには課題の優先順位をつけましょう。優先順位の高い課題との関連性が深いKPIの数値や期日を厳しく設定して積極的に解決に取り組む体制を整えると目標達成に近づきやすくなります。

ただ、課題には取り組めばすぐに効果が出るものと、長期的な改善によって成果につながるものがあります。目下の課題にばかり気を取られてしまい、中長期的な業務改善に失敗することもあるので気を付けましょう。最終目標のKGIを達成する流れを考えて、どこから注力して取り組むべきかを判断してからKPIを設定することが大切です。

定期的に振り返る

KPIは具体的に設定することが必要ですが、最初に決めたKPIが正しいとは限りません。KGIを軸にして定期的に振り返り、KPIを改善することは重要です。業務改善を進めていくと新しい課題が生じる場合もあります。例えば、サービスレベルの向上を目下の課題として考えてオペレーターの積極的な採用をした結果、CPCの上昇や稼働率の低下が課題になる場合があります。

定期的にKPIの数値を集計して確認するだけでなく、KGIとの関係も確認して修正をしましょう。全体をマネジメントしながらPDCAサイクルを回すことが最終目標に辿り着くためのポイントです。新しいKPIを追加したり、目標数値を変更したりして改善を図ることが大切です。

コールセンターの業務効率化にはSMSの活用がおすすめ

SMSの導入はコールセンターの業務効率化を進めるときにおすすめの方法です。SMSは顧客への到達率が高い連絡方法で、コールセンターの平均処理時間を減らすのに効果的です。SMSは通話によらずにメッセージで連絡できるだけでなく、メールのように宛先を指定して一斉送信することもできます。予約送信によって料金支払いの督促をしたり、リマインドの連絡をしたりするといった使い方もできるので導入を検討してみましょう。

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