医療のIT化について解説!IT化で何が便利になる?
医療のIT化は、病院によって差があり、必要性を感じながらも実施できていないケースもあるようです。しかし、人材不足を補うための業務の効率化や、よりスムーズな医療の提供のためには、IT化が不可欠となっています。ここでは、医療のIT化によってどのような利便性があるのか、メリットや導入のポイントについてご紹介します。
目次
医療のIT化
IT化とは、デジタル技術やITツールを用いることを指しますが、すでに多くの業界で導入されていると言っても過言ではありません。医療の分野においても、電子カルテやオンライン診療などを実現するためにはIT化が不可欠です。
医療現場では、慢性的な人手不足が深刻となっていますが、このIT化が進むと業務の効率化につながり、医師や看護師、医療事務等の業務負担も少なくなることは明白です。さらに医療従事者だけでなく、患者の負担軽減にもつながると考えられています。
医療のIT化の現状とその問題点
医療のIT化は、人手不足の解消や現代を取り巻く状況を鑑みても、メリットの大きい取り組みです。しかし、実際は医療現場でのIT化はさほど進んでおらず、特に病床規模の小さな病院ほど遅れていると言われています。
例えば、電子カルテの導入率は、400床以上の大規模の病院のほとんどが既に対応済みなのに対し、一般の診療所や200床未満の病院ではまださほど導入されていないと言われています。この現代においても、電子カルテではなく手書きの紙カルテで対応している病院が珍しくないということです。
なぜ、このようなことが起こるのか、考えられる理由を3つご紹介します。
ITリテラシー不足
アナログな方法で長く続いてきた業務を、IT化するのはなかなか骨の折れる取り組みかもしれません。特に、PCなどの操作に強くない人にとっては、新しいことを覚えたり変えていくことに不安もあるでしょう。スタッフが少ない小さな病院ほど、ITに強い人材がいない可能性も高まります。例え、シンプルですぐに慣れるシステムであっても、頼れる人材がいなければ消極的になりがちです。
予算の不足
ITシステムの導入にはコストもかかります。これまでIT化をしてこなかった病院では、具体的にどのようなメリットがあり、どのくらいの業務の効率化ができるのか把握しきれないこともあり、多額の費用をかけてIT化を進めることの検討もされにくいと考えられます。
セキュリティの問題
個人の医療情報は、重要な個人情報です。IT化を進めたくても、セキュリティに関する不安が大きく進められないという問題を抱えている病院も多いです。病院側の懸念は当然ですが、患者の立場としても、自分の個人情報がどう扱われるのか、きちんと守られるのか不安になる方もいます。医療のIT化が進めば、さまざまな関係機関とのデータ共有も可能となりますが、そのこと自体に抵抗感をおぼえる人もいるため、万全のセキュリティ対策と十分な患者への説明もセットで進めていく必要があります。
対面営業の縮小化
近年は、新型感染症の流行もあり、対面での診療以外の手段を用いることの必要性が強く感じられるようになりました。また、仕事等で診療時間に病院へ出向くことが困難な人への対応や、往診にかかる医師の負担の軽減など、今まさに直面している問題への対処にIT化は深く関わっています。
地方など、医師が少ない地域では往診できる医師も限られており、移動にかける時間がかさむなどの問題があります。これは、少子高齢化の進む日本では重大な問題の1つです。病院の経営を維持しながらさまざまなニーズを満たすために、対面営業の縮小化はいずれ必要になってくることですが、そのためにもIT化によるDX化は不可欠です。
医療のIT化に対する対策
医療のIT化を進めるにあたり、必要になってくる対策をご紹介します。
スタッフのITリテラシーを高める
PCなどの機械の操作に詳しくないスタッフは、IT化をあまりよく思わないかもしれません。しかし、操作についての研修会等を設けて自分でも操作ができると感じれば、状況も変わっていくでしょう。もちろん、できるだけシンプルで使いやすいツールを導入する必要はあります。
予算を確保する
病院のさまざまな業務を一斉にIT化するのではなく、限られた部分から始めると、予算不足が問題になっている病院でも取り入れやすくなります。まずは、ITツールが導入しやすい部門から始めたり、業務効率化のツールから導入することを検討してみてはいかがでしょうか。
ITツールの連携がスムーズにできるようにする
1つの機能に特化したITツールを導入するよりも、複数の機能を備えたツールの方が利便性は高まりやすいでしょう。ITツールを連携させることに不安がある場合は、あらかじめ多機能なツールを選ぶことで解決します。既存のツールがある場合は、必ずしも新しいものと連携させなければならないとは限りません。業務に支障がなければ、既存のツールとともに活用する方法を検討しましょう。
医療のIT化で便利になること4つ
医療のIT化が進むと、どのような点が便利になるのでしょうか。具体的にご紹介します。
現場の業務負担が減る
IT化が進むと、アナログで行ってきた業務を中心に、その手間が大幅に少なくなり、効率化できるようになります。そのぶん、現場の負担が減り、他の業務に時間を割くことも可能となるでしょう。また、患者にとっては待ち時間が短縮され、より多くの受け入れができるようになる可能性があります。
人件費の削減につながる
業務が効率化できると、スタッフが行う仕事量や1つひとつの業務へ割く時間が減ります。すると、人材不足に悩まなくてもよくなったり、人件費を削減できたりするようになります。
災害時の診療に備えられる
災害が起こると、病院自体も被害を受ける可能性があります。場合によっては、紙で保存してきたカルテがダメになることも考えられます。IT化を進め、電子カルテやオンライン診療ができるようにしておくと、緊急時でも電気やインターネットの復旧ができ次第診療が速やかに行えるというメリットがあります。
感染症の予防につながる
新型感染症が院内でクラスター発生したことの1つの原因として、紙の文書のやりとりが指摘されていました。IT化が進めば、院内で紙を持ち運ぶ必要が減り、感染症対策になります。また、感染症の疑いのある患者に対してオンライン診療ができれば、感染拡大も防げます。
医療のIT化の3STEP
医療のIT化を進める手順を、3つのステップに分けて解説します。
現状の課題を把握する
IT化の目的を明確にして、優先順位の高い順から決めていきます。スタッフ同士で意見を出し合い、支障となっていることや効率化されると便利だと思われることを洗い出しましょう。ここで大事なのは、現場スタッフが考える重要度と、経営視点からの重要度を分けて整理することです。場合によっては、経営視点からの重要度も十分に加味して優先順位をつける必要があるでしょう。
使用するITツールを選ぶ
先にあがった課題が解決できるようなITツールを探し、比較しながら選んでいきます。ここで比較するのは、導入コスト、操作性、教育コスト、利便性です。せっかく導入しても、活用しきれなければ意味がありません。操作性については、使用してみないと分からない部分もあるため、デモが使えるツールもおすすめです。
ITツールの導入・運用
ITツールが導入できたら、スタッフのための研修等を開いて使用方法を周知させます。業務に差し障りのないように伝えていく必要があるため、場合によっては複数回に分けて行わなければならないかもしれません。そして、定期的に運用方法を見直して、改善すべき点を直していきます。
医療のIT化のメリット4つ
医療のIT化で便利になることについて、先ほどご紹介しました。その他にも、以下のようなメリットがあります。
経営上の課題解決につながる
人件費の削減や人員不足の解消、院内感染の予防など、IT化によって経営上の課題が解決できるケースは意外と多いものです。医療のIT化によって、業務の無駄をなくすことは、残業をなくす上でも役立ちます。
臨床情報の共有で研究・開発にも貢献できる
患者の医療データや検査データのサンプルが増えれば増えるほど、研究や開発のために必要な情報が増え成果も得やすくなります。医療のIT化によって、新薬の開発や解明されていない病気の治療法などに役立つデータが得やすくなり、よりよい研究へとつながれば、将来的には医療費の抑制や治療できる病気の増加などにも貢献できるでしょう。
過去の診療情報を一元化し複数の医療機関で共有できる
日頃のかかりつけ医では対応できない手術や検査、治療などは、他の病院で対応することとなりますが、こういった場合に同じ情報が共有できれば最適な医療を提供しやすくなります。複数の医療機関が同じ診療情報を見ることで、既往歴や使用薬剤の確認などが可能になります。
BCP対策になる
BCPとは、危機的な状況でも重要な業務を継続するための計画を指します。地震、台風、大雨など自然災害のリスクが高い日本では、病院のBCP対策が重要です。病院そのものが災害の被害を受けたとしても、周辺に住む人々が怪我や病気をした場合は早急に復旧をして治療を行わなければなりません。IT化することで、有事の際にも早急な復旧がしやすくなります。
医療のIT化を行った事例
ここからは、医療のIT化を導入した事例を4つご紹介します。
電子カルテで医療情報の共有が容易に
医療のIT化でまず始めに思いつくのが、電子カルテではないでしょうか。電子カルテは、大規模の病院を中心に既に多くの医療機関で導入されています。電子カルテとは、カルテを紙からデジタル化することを指しますが、電子カルテを導入したA総合病院では医療情報の共有が非常に容易になりました。
電子カルテにすると、病院内での異なるフロアや診療科、異なる職種が同じ情報を共有することができます。総合病院で複数の科にかかったり、入院中に病棟を移動したり、医師と薬剤師が異なる場所で薬の相談をしたりと、さまざまな場面で役立ちます。これまで、申し送りや紙カルテの移動に時間がかかっていた病院で、電子カルテにしただけで業務が効率化しています。予約システム等の他のシステムとの連携を図ることで、さらなる効率化が目指されているところです。
オンライン診療の開始により患者の通院負担が減った
都市部から離れた場所にあるB診療所では、IT化によりオンライン診療を始めました。高齢者の多い過疎地だからこそ、在宅医療のニーズは高く、患者は病院までの移動に困るという現状もありました。
オンライン診療を始めたことで、体力がなく移動手段に困る高齢者の家庭では通院の負担が軽減でき、患者と家族が「助かっている」との声をよく耳にするようになりました。医師にとっても、病院から距離のある患者宅まで移動する時間が省け、同じようにオンライン診療を受けたい人への対応量が増えました。
問診票のペーパーレス化により書類管理の手間が減った
C総合病院には、毎日多くの患者が受診されています。一度の受診で複数科にかかる患者が多く、その都度問診票に記載してもらうことが患者にとって負担であり、病院側としても書類の管理が大変という問題を抱えていました。
従来の方法では、患者に手書きで問診票を記載してもらい、それをスキャンして電子カルテに紐付けをしていましたが、それにも手間がかかっており、こうした問題を解決するためにタブレット画面の問診票を導入することとなりました。
結果、問診票に使っていた紙が削減でき、電子カルテへの紐付けの作業にかかる時間がなくなりました。診療までの待ち時間の短縮化にもつながり、患者の負担が大きく減ったことで喜ばれています。
電子カルテと予約システムの連動で事務作業が大幅に削減
大都市にあるD総合病院では、電子カルテへの移行は早い段階で行われており、既に全スタッフが問題なく使える状況でした。インターネット上からの予約にも対応していましたが、この予約システムと電子カルテとが連携していないために、診療予約システムと電子カルテの両方で個別に予約の管理をする手間が発生し、課題が生じていました。しばしば、入力ミスによって予約システムと電子カルテの情報が異なるというミスが発生しており、患者に迷惑をかけることもありました。
そこで、D総合病院では、既存の電子カルテと連携可能な予約システムへ乗り換えることに。二重の予約管理から解放され、ミスによる齟齬もなくなりました。事務スタッフの作業量が減り、他の業務に集中できる時間が増えたことで、残業時間の短縮にもつながっています。
医療のIT化の動向
医療のIT化は、今後ますます必要性が増していくと考えられています。それは、新型感染症の流行が大きなきっかけになったとも言えます。病院内でのクラスター発生のリスクや、感染の恐れがある患者への診療、さらに医療現場でのテレワークの推進といった課題に直面し、医療現場でのIT化が急務であると認識したケースも多いようです。
また、新型感染症の流行以前より、病院経営では人件費比率についての問題も指摘されていました。慢性的な人材不足を抱える医療業界で、さらに人件費を削減しようとするとサービスの質の低下を招く恐れも高まります。
サービスの質を維持し、限られた人数のスタッフで病院を運営するために、削減できる作業や手間はIT化によって解決していくことが、健全な運営につながります。
医療のIT化例:SMS送信サービス
医療のIT化では、電子カルテへの移行や予約システムなどが注目を集めがちですが、SMSの活用もメリットをもたらすことがあります。
SMSは、病院と患者とのコミュニケーションを容易にする手段であり、主に診療日のリマインドとして活用することが可能です。予約をうっかり忘れてしまった、という失敗は、珍しいことではありません。しかし、予約を忘れることで服薬中の薬が切れてしまったり、新たに予約をとろうとしても空きがなくて困ってしまったりという事態につながる恐れがあります。
SMSは、Eメールに比べると開封率や到達率が高く、認知されやすいと言われています。電話のように、つながるまで何度もかける必要もありません。特に、数ヵ月ごとに受診といった、期間の空く予約時にはリマインドとして予約日のお知らせがあると便利です。
関連リンク:医療業界でのSMS(ショートメッセージ)送信サービスの活用事例
法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」
KDDI Message Castは、Salesforceに登録されている顧客情報を用いて、簡単にSMSを送信することができるサービスです。Salesforceの画面上から、特定のリードを指定して個別にSMSを送信するだけでなく、任意に選択したリードに一括送信することも可能。
送信スケジュールの設定を行えば、患者の次の予約日前にあらかじめSMS送信の準備をすることができます。
まとめ
医療のIT化は、その必要性が長きにわたり指摘されていながら、未だに導入されていないケースもあります。その背景には、さまざまな理由がありますが、今後ますますその必要性が高まると考えられており、いずれは導入に踏み切ることとなるでしょう。
ITに詳しい人材がいなくても、小さな規模から徐々に取り組んでいけば、医療のIT化は可能と考えられます。日々の業務の中で、効率化したい部分や課題となっている部分があれば、IT化によって改善できないか考えてみてはいかがでしょうか。