チャットボットの活用による業務効率化やサービスの向上に成功している企業は増加していて、興味を持っている方も多いでしょう。この記事ではチャットボットを企業が導入するメリットと効果を生み出した事例について詳しく解説します。

チャットボットとは?

チャットボットとは人の問いかけに対して機械が回答するシステムです。「チャット+ロボット」によって生まれた概念で、自然言語処理によるAI技術が導入されたことによって高精度の的確な回答を返せるようになっています。チャットボットはビジネスでの導入が進められていて、近年では成功事例も急速に増えてきています。

質問に自動で返答してくれるプログラム

チャットボットとは技術的には人が質問文を投げかけたときに自動返答するプログラムです。質問のインプットを受けた後、分析して適切な内容を選んで提示したり、回答文を生成したりして回答します。

企業ではカスタマーサポートとしてチャットサービスを提供していることがよくあります。ユーザーにとってはチャットを使うとリアルタイムで回答を得られるのが魅力です。ただ、従来の有人対応では、ユーザーにタイムリーに返事をするには24時間常駐で対応せざるを得ませんでした。そのため、有人チャットでは対応可能時間を決めてサービスを提供しているのが一般的です。しかし、チャットボットは機械化されているので自動で24時間対応ができます。

ビジネスで注目され始めた理由

チャットボットがビジネスで注目されるようになったのは、CX(顧客体験)を向上させる取り組みが事業で欠かせない要素という認識が広まったからです。DX(デジタルトランスフォーメーション)による競合優位性の獲得もビジネスで重要視されるようになりました。

チャットボットの導入はDXによるCX向上を目指すためのツールとして活用できます。AIチャットボットのシステムをパッケージで導入できるサービスも増えているため、ビジネス活用を目的としたシステムを導入しやすくなりました。AIの実用化が進んだことで精度も高くなり、ユーザーからも信頼されるチャットボットが生まれてきたのも注目度が上がっている理由です。

チャットボットのメリットとは

チャットボットは使い方次第で大きなメリットを生み出せます。ここでは企業がどのようなメリットを求めてチャットボットを使っているのかを紹介します。

①お問い合わせ対応の業務効率化が可能

チャットボットは顧客によるお問い合わせ対応の業務効率化ができるツールです。顧客からの電話やメールなどへの対応には、コールセンターを設置して対応できる体制を整えることが必要です。1ヶ月を20営業日、コールセンターの対応時間を9時〜18時の9時間とすると、毎月1人のスタッフあたり180時間の労働時間になります。時給1,000円~2,000円のスタッフが対応していたら、180,000円〜360,000円のコストがかかります。

もし、チャットボットの導入によって電話やメールの問い合わせが半分になったら、コールセンター対応の業務が半分になります。その分コストも半減されておよそ90,000円~180,000円になると考えられるでしょう。

②24時間 顧客対応ができるようになる

チャットボットは24時間対応できることがメリットです。電話やチャットによる顧客対応を24時間対応可能にしようとすると、担当スタッフを24時間常駐させなければなりません。早朝や夜間に対応できるスタッフを確保することは簡単ではないでしょう。スタッフの業務負担を増大させる原因になるので好ましいことではありません。

しかし、顧客にとっては自分の都合の良い時間に問い合わせできるのが理想的です。スタッフによる対応が難しかったとしても、チャットボットを導入すれば24時間365日、いつでも顧客対応ができます。いつでも顧客対応ができるようになると気になったときに気軽に問い合わせてくれるようになり、顧客との関係を構築できます。

③同時に多数の問い合わせに対応が可能

チャットボットを導入するメリットとして問い合わせ数の対応力を拡張できることが挙げられます。電話による問い合わせ対応では回線数が限られているため、多数の問い合わせが同時に殺到すると受けられません。何度も電話をかけなければならないのは顧客にとってストレスです。電話がつながらないという不満が口コミで広がるリスクもあります。問い合わせの数が多くなっても臨機応変に対応できることは企業の評価にも関わるため重要です。

チャットボットは一対一対応ではなく、アクセスした顧客全員に対してすぐに対応できます。繁忙期になり問い合わせが殺到するといった場合でも、問題なくすべての問い合わせに対応可能です。

④顧客対応のクオリティにばらつきが生まれない

チャットボットは顧客対応の品質管理に有用なシステムです。クオリティコントロールは顧客対応における重要な課題です。特にカスタマーサポートでは不満を持っていて問い合わせをしているユーザーが多いので、スタッフの受け答えのときのマナーが少し悪かっただけで「もう利用しない」と思われてしまうリスクがあります。

チャットボットを使用すると問い合わせに対する顧客対応のクオリティを一定に保つことが可能です。AIチャットボットの場合には学習した内容によって対応に違いが生じる可能性がありますが、必要な学習を終えたら一定水準のサービスを安定して提供できます。どんなときでも同じ対応を維持できるのがチャットボットのメリットです。

⑤顧客体験を改善させ、売上が向上する

CX(顧客体験)の改善にはチャットボットが有効です。問い合わせてもすぐに返事がない、営業時間外で電話が通じないといった状況は顧客にとって不満やストレスになります。困ったときにはいつでもチャットボットを通じて問い合わせできると安心です。特に製品やサービスを利用してトラブルが起きたときに、チャットボットに質問をして的確な回答を得られて解決できると顧客体験が飛躍的に良くなります。

顧客体験が高くなると顧客はリピーターになってくれます。他の人にも口コミで良かったことを伝えてくれる可能性が高くなり、波及効果で新規顧客を獲得できる可能性もあるでしょう。最終的には売上の向上につながる重要なポイントです。

⑥顧客が質問しやすくなる

カスタマーサポートにチャットボットを導入すると、顧客は質問しやすくなります。カスタマーサポートに電話をして質問するのは気が引ける、恥ずかしい、怖いといったイメージを持つ人はいます。メールを書くのは面倒だからあきらめる、電話をかけてもつながりにくいからやめるということも少なくありません。

しかし、チャットボットを導入すると、顧客はいつでも手間をかけずに質問可能です。相手は機械だと思うと恥ずかしい気持ちも払拭できるので、些細なことでも気軽に質問しやすくなります。チャットボットは氏名や電話番号などの個人情報を入力せずに利用できるシステムにもできるため、個人情報の漏えいに不安がある人にも使いやすくできます。

⑦会話データ等の蓄積によりマーケティングに活かせる

チャットボットにはデータ活用によってマーケティング効率を上げられる可能性もあります。チャットボットを導入せず、電話対応のみになっている場合には、コールセンタースタッフが電話で聞いた内容が正確に記録されていないことがあります。しかし、チャットボットを使えば正確な情報を記録することが可能です。

CRMを導入してチャットボットの会話記録を記録するといった方法で、顧客の回答をくまなくデータとして蓄積できます。顧客情報に基づくマーケティングでは顧客の特徴に応じて適切なアプローチをすることが重要です。チャットボットによって記録された顧客の発言や返答を分析すると、顧客ごとに適切なマーケティングをする戦略を立てやすくなります。

⑧採用活動も効率化でき、求職者のニーズも引き出せる

人材採用の課題はチャットボットの導入によって解決できる可能性があります。新卒採用などの繁忙期には人事の業務量の負担が大きくなります。新卒募集をして大量の応募があったときに履歴書やエントリーシートをチェックする必要があるからです。さらに、応募者からの問い合わせが多数寄せられて対応に困ることがあります。

チャットボットによって問い合わせ対応をすれば人事業務の負担を減らせます。さらに求職者のニーズをデータとして蓄積することが可能です。ニーズを分析すると、求人票に記載すべき事項や、人材獲得に必要な給与水準などの条件を見出せます。優秀な人材の獲得率を向上させながら、採用活動を効率化できるのがメリットです。

⑨業務の属人化の防止やナレッジ蓄積ができる

チャットボットは企業にとって事業継続性を確保するために重要な役割を果たします。業務の属人化を防止するツールになり得るからです。あるスタッフしかできないという業務があると、そのスタッフの退職や一時的な離職により事業に大きな影響を及ぼすリスクがあります。業務の属人化を防ぐには、ナレッジを蓄積して共有することが重要です。

チャットボットなら顧客からの問い合わせ内容をすべてデータとして記録して共有できます。社内での問い合わせに使用することもできるため、業務の課題や解決策をナレッジとして蓄積できます。キーパーソンの喪失によって業務が滞るようなトラブルを防ぐための対策としてチャットボットは役に立ちます。

チャットボットを活用して業務効率化を行った7つの事例

チャットボットによって業務効率化に成功した事例は多数あります。新たなビジネスを生み出すのに成功したケースもあるので、チャットボットの活用可能性は広く考えることが重要です。ここではチャットボットの活用事例を紹介します。

SOMPOシステムズ

SOMPOシステムズでは社内での疑問解決に電話による問い合わせを使用する風土を変化させる目的でチャットボットを導入しました。業務効率化の課題を、電話対応の時間削減という観点で進めた事例です。4年の運用を通して平均返答率が90%以上、利用数が月平均3,000件に上り、問い合わせ業務の効率化に成功しています。

SOMPOシステムズ株式会社|サポートチャットボット
https://chatbot.userlocal.jp/document/casestudy/sompo/

アイリスオーヤマ株式会社

アイリスオーヤマ株式会社では営業課題の解決にチャットボットとSlackを導入して連携させました。同社では、営業担当者が販売店等からの質問に回答する対応の品質や効率を向上させることが課題でした。チャットボットの活用により、商品の詳細な情報をすぐに取得できるようにして業務の精度も同時に向上させることに成功しています。

アイリスオーヤマ株式会社  ― 5,000を超える商品ナレッジの検索性改善による営業DX ~ AIチャットボット&連携により営業生産性の向上へ
https://aisaas.pkshatech.com/success/iris

株式会社レオパレス21

株式会社レオパレス21では賃貸関連に関する問い合わせの対応について、オペレーターの不足による応答率の低さが課題になっていました。チャットボットの導入後、運用を通して会話をスリム化して改善を図った結果、受電のうち55%をカバーできる状況になりました。応答率が繁忙期で20%ほど改善する成果も上がっています。

株式会社レオパレス21 ― 居住者の鍵関連トラブルにPKSHA Voicebotで対応 繁忙期の応答率が2割向上し、コストも2割減 | エンタープライズ向けAI SaaS
https://aisaas.pkshatech.com/success/leopalace21/

エイチアールワン株式会社

エイチアールワン株式会社では年末調整システムのサービスを提供していて、10月下旬以降の問い合わせ集中時期の対応に苦労していました。受電率が70%に満たない日が多い状況に対して、チャットボットを導入して対応しました。Q&Aをユーザー視点で制作・導入したことで受電率を100%まで引き上げることに成功しています。

7割に満たなかった受電率が100%に!sAI Chat+コンサルティングで自社システムの根本課題を発見 | sAI Chatブログ
https://saichat.jp/saichat/saichat-case/interview-hrone/

株式会社マウスコンピューター

株式会社マウスコンピューターでは自分で解決したいというユーザー層をターゲットにして、カスタマーサポートに解決手段としてチャットボットを導入しました。結果としてカスタマーサポートの利用者数が6.6倍に増加し、有人対応を月間56.25時間も削減しています。サポートの質の向上と業務効率化を同時に実現しています。

多様化するユーザーから、「セルフ解決層」を掘り起こしたsAI Chat | sAI Chatブログ
https://saichat.jp/saichat/interview-mousecomputer/

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社では、廃棄物や、環境負荷の大きいフロン類を使用する機器に関する社内問い合わせの対応が課題になっていました。チャットボットの導入によって24時間対応で社内からの問い合わせに自動対応できるようにしたことで、同グループの環境事務局の業務負担の軽減に成功しています。

環境経営に取り組むキリンホールディングスがユーザーローカルのAIチャットボットを導入~社員からの廃棄物管理・処理方法に関する問合せ対応を自動化~|株式会社ユーザーローカル
https://www.userlocal.jp/press/20230426kh/

象印マホービン株式会社

象印マホービン株式会社ではカスタマーサービスにおける課題を解決する方法として、24時間365日間対応できるチャットボットを導入して成功しました。FAQをテキストベースのものからチャットボットに変更し、運用を通して回答率は99%以上に達していて、利用者数も半年間で150%に増加する成果を出しています。

象印マホービン株式会社|サポートチャットボット
https://chatbot.userlocal.jp/document/casestudy/zojirushi/

AIチャットの活用にはSMSが効果的!

企業にとってチャットボットは有用なツールで、AIチャットボットを導入すればユーザー満足度の向上に直結します。AIチャットボットの魅力を生かすなら、SMSの活用も進めましょう。KDDI Message Castでは法人向けのマーケティングに使いやすいSMS配信サービスを提供しています。SMS×チャットボットの連携をして、気軽にSMSを通してチャットボットを使ってもらえるようにすると顧客から喜ばれます。

▼KDDI Message Cast(KDDIメッセージキャスト)詳しくはこちら
https://sms.supership.jp/

まとめ

企業でのチャットボットの活用はAIの登場によって急速に広まっています。導入して成功している事例ばかりなので、自社に合わせた使い方を考えて導入を検討するのがおすすめです。チャットボットはSMSとの相性が良く、SMSへの回答をチャットボットによって対応することもできます。自社の業務負担も軽減できるので便利で活用価値が高いシステムです。ユーザー視点で使いやすいチャットボットシステムを導入して運用しましょう。