近年、DXを推進する企業が増えていますが、デジタル化によって収集したデータを活用できなければ、DXを推進する意味があまりないといえるでしょう。DX推進の効果を最大限出すためにはデータをうまく活用し、その結果をもとに新たな価値を創出することが求められます。

そこで本記事では、DX推進にデータ活用が重要な理由を確認した上で、DXとデータ活用の違いやDXを推進する上でのデータ活用の課題、DX推進のためにデータ活用をする方法などについて解説していきます。

DX推進にデータ活用が重要な理由は?

DXとはデータとデジタル技術の活用を実施し、顧客や社会のニーズに基づいて製品やサービス、ビジネスモデルの変革を行うことです。そして、自社の競争上の優位性の確立を目指します。

DX化の効果を最大限実感するためにはデジタルツールの導入や業務のデジタル化のみならず、デジタル化によって収集したデータを活用することが不可欠といえるでしょう。収集したデータを活用し、業務プロセス全体の見直しやビジネスモデルの創出を行うことで、消費者のニーズに応え、ビジネス市場の変化に対応できるようにしなければなりません。

従来、企業の経営に関する重要な意思決定や判断などはベテランの経験や勘などを頼ることがほとんどでした。しかし、DXの普及により、多くの企業においてデータに基づいた客観的な判断を行えるようになりました。

関連リンク:DX推進が業務効率化に繋がるのはなぜ?重要性や成功事例をご紹介

データ活用が進まないのは何故か

DX推進においてデータ活用が進まない理由はデータを収集して整理し、活用するモチベーションが薄いためです。現状の業務を変えてDXをしなければならないと感じていれば、データ活用の戦略を考えて自発的に現場が取り組んでいきます。しかし、現状の業務に満足していたり、課題を見出せなかったりしている状況ではDXによる改善を進めようという意欲が高まりません。

業務が滞りなく進んでいると現状維持で良いというイメージが生まれます。データ活用をする必要がなければ、あえて今まで慣れてきた業務フローを変更するよりも、今までと同じように業務を進められた方が楽でしょう。

データ活用が進まないのはデータの積極的な利用によって業務をどのくらい改善できるのかがイメージできないことも理由です。課題意識があればデータ活用で何ができるかを考えようというモチベーションが生まれますが、課題がないと感じているのでなかなか理解が深まらない状況があります。

DXとデータ活用の違いとは

DXを推進するためにはデータ活用が不可欠といえるでしょう。ただし、注意しなければならないのはデータ活用とDXは異なるものであるということです。

データ活用とはDXの構成要素の一つである一方、DXとは企業や組織の体制やビジネスの進め方を含めた変革となります。

業務効率化の推進や意思決定の基準としてデータを活用することは、DXの基盤であるデジタイゼーションに含まれます。つまり、業務の一部分においてデータ活用に成功したにすぎず、DXを実現したとみなすことはできません。

DX推進で活用できるデータの種類

DX推進で活用できるデータにはどのような種類があるのでしょうか。

データを収集しやすく、かつ大きな効果を期待できるデータは以下のとおりです。

  • 顧客データ
  • 販売管理データ
  • 在庫データ
  • 入出庫データ
  • Webサイトアナリティクス
  • POSデータ
  • 業務日誌・日報
  • 経理データ
  • 稼働データ

上記のデータの意義を見出すためには、データを収集するだけではその効果を実感することはできないでしょう。データの可視化を行い、分析することにより効果を出すことができます。

DX推進でデータ活用をするメリット

DX推進ではデータ活用が大きなメリットを生み出します。ここではデータ活用に取り組む魅力を4つの角度から解説します。

サービス品質の向上

データ活用によってサービスの品質を向上させる方向性を明確化できます。蓄積したデータを分析すると、サービスの問題点を見つけたり、顧客のニーズを発見したりすることが可能です。

例えば、顧客からの問い合わせやクレームの内容についてデータ分析をすると、現状のサービスで課題になっている点がわかります。問い合わせやクレームでは顧客から要望をもらえることもあるので、参考にしてサービス品質向上の方針を立てやすくなります。

過去の顧客のサービス利用状況を集計して、品質向上に取り組むべきサービスを厳選することもできます。自社を選んでいる顧客の期待に応えるサービスを作り上げられるのがメリットです。

競合優位性の確保

データ活用をすれば競合他社に対する優位性を確保する戦略を立てられます。競合他社が提供しているサービスとの差別化をして、競争優位性を獲得するのは経済産業省が提案するDXのあり方にもマッチしています。公開されている他社のデータと、自社のデータを比較すると競合に対する強みが何かを明確化することが可能です。

また、データを蓄積してデータ活用に率先して取り組むことで、競合他社とのDXの速度や方向性に違いが生じます。より自社の強みを生かし、課題を解決して優位な立場に立つ戦略を立てられるインフラを構築することが可能です。自社データだけでなくインターネット上のビッグデータの収集と活用もできるようになれば、さらに有利な立場を得られます。

現状の把握

現状を把握する手段としてデータ活用は優れています。自社の状況を正しく把握できていないために課題を明確化できないことはよくあります。DXの初期アプローチとして重要なのは課題を把握してITやデータによる解決策を見出すことです。自社の持っているデータを一元的に管理して分析すれば現状を総合的に把握できます。

DXにおけるデータ活用では可視化も課題の一つです。複雑なデータの集まりを分析して1枚のグラフにまとめると、誰でも直感的に課題のエッセンスになる部分を具体的に理解できます。現状を速やかに把握してアジャイルにDXを進めていくインフラを作れるのがデータ活用に積極的に取り組むメリットです。

新しいビジネスの創出

DXの目的の一つとして重要なのがビジネスのイノベーションを起こすことです。データ活用は新しいビジネスの創出チャンスを生み出すことができます。データを詳細に分析することで、顧客ニーズがあったのに知らなかった、顧客が不満に感じていた部分を認識し、改善のチャンスを得られるでしょう。

データを最大限に活用することで新しいビジネスを創出できます。今まで自社がおこなってきた事業とはまったく異なる角度でビジネスを始められる可能性もあります。自社のビジネスによるデータを長期的な視野で蓄積し、総合的に分析して活用することで企業を発展させることが可能です。

関連リンク:DXを推進するメリット・デメリットとは?必要な理由や課題、取り組み方を解説

DXを推進する上でのデータ活用の課題

多くの企業がDXの推進におけるデータの活用に課題を抱えています。

そこでここでは、DXを推進する上でデータ活用におけるどのような課題があるのか見ていきましょう。

データ分析の効果を実感できない

DXを活用した新規事業開発・既存事業の高度化で成功している企業とそうでない企業におけるデータ活用の目的を比べると、成功している企業では顧客行動のモニタリングを選択している傾向にあります。

ただし、顧客理解について現場担当者の知見を超えるインサイトをデータ分析から瞬時に得ることは難しいので注意しましょう。分析を行うのに適切なデータがないことに悩む企業も多く、データ収集に苦戦している企業も少なくないと見受けられます。データ活用は重い負担があるにもかかわらず、効果を即実感できないことは大きな課題となっています。

その一方、成果を出している企業の多くが顧客について商品横断で嗜好性の分析を行っています。そして、リコメンドにつなげるなど、データを基にして導き出された結果を活かして利益を伸ばしています。

データ活用への投資に踏み出せない

データ活用を行うためには初期投資をすることが前提です。データ活用に長けた人材の獲得やデータ収集、分析環境の整備などが必要となるため、デジタル活用の利益が出る前に費用を捻出しなければなりません。

多くの企業がデータ活用に費用対効果の不明確な状態で初期投資を行うことに躊躇しています。特に、経営資金に余裕のない企業は投資のための予算をつくることも難しく、その傾向が強いと見受けられます。

デジタル人材の不足

日本ではIT人材の不足が問題となっていますが、デジタル人材においても同様に不足しています。そのため、企業がデジタル人材の求人を出したとしても、応募者が思うように集まらないことも珍しくありません。

三菱総合研究所が公表しているDX推進のフェーズ別の課題を参照すると、フェーズ4の「DXにより新たな価値を創出している段階」にある企業では、「データ分析人材」不足を課題としているという回答が61%でした。この結果はフェーズ1~3までは「データ分析人材」不足を課題としているという回答が30%台であることを考慮すると、高い数値であることは明らかです。

多くの企業においてビジネス課題とデータ分析を組み合わせて施策につなげられる人材が求められているといえるでしょう。

参考:DX成功の鍵は社内外データの活用 | 特集3 | 三菱総合研究所(MRI)

DX推進のためにデータ活用をする方法

DX推進のためにデータ活用をする方法としてどのような方法があるのでしょうか。
ここでは、DX推進のためにデータ活用をする方法を紹介していきます。

業務課題を明確にする

データの収集、および分析を行うことで、業務において現状抱えている問題が見えてきます。

例えば、販売管理データや在庫データを分析することで、需要に対する供給源の不足や、手配が遅れることによって生じる販売機会の損失を回避可能です。また、必要以上に在庫を抱えていると管理や必要以上に広いスペースの確保などといったコストがかさみます。一方、必要な量だけ在庫を保管しておけば、在庫管理のコストの無駄も省けます。

課題への解決策を策定する

データを活用することで、現状における課題が明らかになり、その課題を解消するための施策が見えてくることもあります。

例えば、製造ラインにおける省人化や資材の在庫量の平準化などが挙げられます。

情報を可視化できるようにする

データ活用によってリアルタイムな情報を可視化するのも効果的な活用方法です。

現状をリアルタイムで把握していることでトラブルが生じた際には早急に対応できるため被害を最小限に抑えることができます。その他にも、顧客対応の迅速化を実現できるため顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

データドリブン経営

データドリブン経営とはデータに基づき、経営上の意思決定とアクションの実行を行うことです。

これまではビジネスにおいても勘や経験に頼った判断が行われる機会も多くありましたが、データ分析を行うことで取得した情報からデータに基づいた判断を下すことができるようになりました。

DX推進のためのデータ活用に役立つツール

DX推進で有用なデータ活用ツールは増えてきています。ここでは役立つツールとして導入が進んでいるツールを紹介します。

BI

BI(Business Intelligence)はビジネスで別々に管理されているデータを取り込んで統合・分析できるツールです。別の形式でまとめられているデータを集めて一元的に集計し、分析してグラフなどを用いてわかりやすく可視化することができます。BIはデータベースから必要な情報を抽出したり、複数のデータリストを比較して評価したりすることも可能です。ビジネスでデータを生かす上での基本ツールになります。

RPA

RPA(Robotic Process Automation)はロボットによる自動化ツールです。人が手作業で処理していた業務を機械的にプログラムして自動的に処理できるようにします。ルールに従って実施すれば良い定型業務は、人が行うとヒューマンエラーによってミスが起こるリスクがあります。RPAによってミスのリスクを下げつつ、高速で処理できるインフラを整備することが可能です。

関連リンク:DXとRPAの違いとは何か?メリットや成功事例、導入方法を徹底解説

CRM

CRM(Customer Relationship Management)とは顧客との信頼関係を維持向上させるための管理ツールです。CRMでは顧客データを基礎情報から営業情報まで、個別にデータとして登録して管理します。顧客とコンタクトを取って販売促進をしたり、購入後のフォローアップをしたりする上で基礎になるデータを体系的にまとめられるのが特徴です。CRMをベースにしてデータ活用によるDXの展開戦略を立てられます。

関連リンク:CRMとは?導入メリットやCRMツールの選び方などを徹底解説

MA

MA(Marketing Automation)とはマーケティングを自動処理できるようにするツールです。マーケティングの業務効率化によるDXツールとしてよく用いられています。CRMを兼ねているツールもあり、顧客情報に基づいて自動的に販促のアプローチをする仕組みになっています。メール、SMS、アプリ、DMなどのさまざまな方法から、顧客属性に合わせた方法でタイムリーにアプローチすることができるシステムです。

SFA

SFA(Sales Force Automation)は営業の総合的な支援ツールです。SFAは名称だけ見ると自動化ツールですが、一般的には営業活動の履歴や進捗状況などをすべてデータとして管理できるシステムになっています。誰がどの顧客の営業を担当しているのか、その営業成績がどうなっているのかも明確化できるツールです。営業活動のデータが集約化されるだけでなく、営業の業務効率も向上させることができるDXツールとして活用されています。

関連リンク:CRMとSFAの違いを徹底解説!どちらを導入するのがおすすめ?

DXの推進で活用すべきデータ一覧

データの種類データの内容データ活用の例
顧客の基本情報氏名、年齢、性別、住所、電話番号、メールアドレスなど顧客属性に合わせた商品やサービスを選定してSMSやメールで送信し、顧客の購買を促す。
顧客の購買情報購入した商品名、数量、金額、日時など購入商品の消耗品の購入提案をして販促する。
営業情報顧客訪問日、顧客訪問時のコメント、案件情報など次の顧客フォロー日として適切な日を分析する。顧客ニーズを把握して商品開発に生かす。
顧客との問い合わせ情報問い合わせのメールや電話の内容など問い合わせ内容の系統的分析をして「よくある質問」の整備をする。コールセンターのマニュアルの作成データにする。
交通情報・物流情報現在の道路交通状況、現在の配送状況、配送にかかった時間など最適な配送経路や配送時の到着予定時刻を予測する。
文字情報アンケート結果、オンライン口コミの内容、業務記録などアンケートや口コミの情報から商品の改善点を洗い出す。業務記録からDXで解決すべき課題を明確化する。
画像情報商品の写真、顧客の表情、広告のイラストなどECサイトで購買につながる商品の写真を選び出す。
位置情報顧客のいる場所、車の走行している場所など店舗の近くにいる顧客にSMSでクーポンを送付して来店を促す。
経理・財務情報収入、支出、営業利益、負債額など資産状況に応じた予算の分配をモデル化する。
人材情報給与、実績、勤続年数、考査結果、採用活動の記録など自社に不足している人材像を明確化する。

DX推進でデータ活用をする際の注意点

データ活用はDX推進の原動力になるのは確かです。ただし、注意しなければならないポイントもあるので押さえておきましょう。

品質と信憑性の問題

DXをデータ活用によって進めるときには、データの品質や信憑性が重要になるので注意しましょう。少ないデータに基づいて下した判断では、必ずしも良い結果が出るとは限りません。母集団を十分に確保して統計分析によって有意性がわかるくらいのデータ分析を進めることが大切です。データの品質がまばらになっていたり、信憑性の低いデータが含まれていたりすると分析結果を信用できません。データの品質管理を徹底していきましょう。

セキュリティ対策の必要性

データ活用によるDX推進では莫大な量のデータを管理することが求められます。データが漏えいしてしまうリスクを考慮し、セキュリティ対策を徹底することが不可欠です。顧客情報などの個人情報や、自社開発をしているサービスなどの機密情報が漏えいしたら一大事になります。データセキュリティを重視して、ハッキングやマルウェアなどによる流出だけでなく、従業員によるデータの漏えいが起きないようにリテラシー研修をしていくことが大切です。

データ活用を担う人材の優秀さ

データ活用がDX推進になるかどうかは、データを取り扱う人材と、その結果を生かす人材の優秀さによって変わります。特に日本ではDX推進の要になるデータサイエンティストの人材が少なく、採用することが難しい状況があります。同じデータを分析しても人によってアプローチが異なるため、見出される観点が異なるので注意しましょう。分析力がある、優秀なデータサイエンティストに担当させることが重要です。

データ活用でDX推進を成功させた事例

データ活用でDX推進を成功させた企業にはどのような企業があるのか気になる方も多いのではないでしょうか。

ここでは、データ活用でDX推進を成功させた企業の事例を紹介していきます。

【DX導入事例14選】DX成功事例に見るDX推進のポイントは?

株式会社MonotaRO

株式会社MonotaROは企業を対象としたEC事業を展開しており、通販サイトのモノタロウの会員数は300万人を超えます。

同社はデータマーケティングによって急成長している企業の一つといえます。データを取り扱うエンジニアのみならず非エンジニアも高いITスキルを保有している他、マーケティング担当者は膨大な量のデータを扱うことができるスキルを保有しています。

顧客との関わりの中で生まれるデータを多方面から分析し、それを次のマーケティングに活かしています。

家庭教師のトライ

家庭教師のトライはリモートで授業を受けることのできるTry ITを開発し、DXの実現を成功しました。

近年、授業をリモートで受けられることは当たり前になりつつあります。しかし、30年もの学習ノウハウがある家庭教師のトライは、現代のようにオンライン学習が浸透していなかった時期から映像授業に着目し、開発を行っていました。

生徒の学習傾向の分析を行って効率的に学習できる仕組みつくりや、オンライン授業で講師に手軽に質問できるサービスの開発に成功しています。

参考:勉強のわからないを5分で解決 | 映像授業のTry IT (トライイット)

サイゼリヤ

サイゼリヤは品質の高いイタリア料理をお手頃価格で食べられることから人気を集めています。同社は食材の調達から提供まで地理的条件も含めデータの活用を行っています。イタリアから調達する食材があることからも、食材の加工から提供までの各フェーズで得られたデータを基幹システムで管理し、集約を行っています。データは全社で共有し、各店舗の状況をリアルタイムで確認しています。

その他にも、気象や防災といった地理的条件を含めて可視化することに成功。これらの可視化により、配送を迅速、かつ確実に行えるようになりました。

DXの推進はSMSの活用がおすすめ

自社のDX化においてお客様とのコミュニケーションに関する取り組みから始めてみることをおすすめします。お客様とのコミュニケーションにSMSを活用すれば、送信したメッセージがお客様の目に短時間で触れやすくなり、かつ高い開封率を期待できます。

また、SMSはメッセージからWebサイトへの誘導も簡単に行えるためコンタクト機会損失の機会を回避することもできます。

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

KDDI Message Castは法人向けのSMS送信サービスです。携帯電話番号を使ってスマートフォンに最大660文字のメッセージを配信できます。加えて、画像や動画などの添付も可能です。

同社は通信事業者としての長年のノウハウで運用体制を構築しているため、高い到達率を実現しています。また、監視運用サポートや誤配信防止機能が搭載されているため大切なメッセージを高い確率で届けることができます。

まとめ

近年、DX推進に向けて動き出している企業は多いですが、収集したデータを活用しきれていない企業は多いと見受けられます。DXの成果を実感するためには収集したデータの分析を行い、活用することが不可欠といえるでしょう。収集したデータを活用することで、意思決定を行う際に勘に頼らず客観的データを参考にして行える他、顧客の行動歴などから顧客にとって満足度の高いサービスの開発も行えます。