DX推進を考えるとき、RPAという言葉を耳にすることが多いでしょう。しかし、これらの言葉はしばしば同じような意味として捉えられることもあり、違いが分かりにくいという人もいます。ここでは、RPAとは何なのか、DXとの違いを明確にしながら、導入のメリットや事例を通してご紹介します。

RPAとは?意味は?

RPAを正式な言葉で表すと、「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」となります。直訳の意味は「ロボットによる業務自動化」で、日本語では「仮想知的労働者」や「デジタルレイバー」と呼ばれることもあります。

ロボットといっても、RPAにおけるロボットには実体がありません。つまり、PepperやASIMOのようなロボットではなく、パソコンやサーバーにインストールするソフトウェア型のシステムを指します。

これまで人間が行ってきた単純な作業や定型業務などは、RPAで自動化し代行することができます。金融業界や保険業界、製造業界、通信業界など、幅広い分野で活用することができ、導入によって業務の大幅な効率化が期待できます。

RPAが注目される背景

人手不足

多くの業界で人手不足は深刻な問題となっています。少子高齢化のすすむ日本では、人手不足への対処が余儀なくされており、今後ますますその必要性は増すと言われています。人手不足の解消のためにできる施策はさまざまですが、業務の改善と生産性の向上を図る上でRPAは有効であり、これから導入を検討しようと考えている企業は多いです。

働き方改革での長時間労働是正

働き方改革の推進により、長時間労働は大きな解決すべき課題であると多くの方が認識する社会となりました。長時間労働を暗黙する文化は改善しつつあるとしても、人手不足によってどうしても解決できないという根本的な原因への対処は追い付いていないケースも多々あり、未だ課題は多いです。

人手不足により既存の従業員の業務量が多くなるといった問題は、RPAの導入により改善が期待できます。RPAが新たな労働力となることで、業務量の減少とそれに伴う労働時間の削減に役立つと考えられているからです。

DX推進

DX、つまりデジタルトランスフォーメーションは、企業の今後を左右するともいえる重要な取り組みです。DXとは、業務そのものやビジネスモデルを、ITの技術によって変えていくことを指します。

その取り組みの一環として、RPAを導入しようと検討する企業は多いです。DXの推進にはそれなりのリソースが必要ですが、RPAを導入すると既存の業務に費やしていた時間の一部を浮かせることが可能です。その浮いた時間を、従業員は他の重要な業務に充てたり、新たな取り組みに費やすことが可能となります。

RPAとDXの違いと関係性

ここで、RPAとDXの違いや関係性について整理しておきましょう。しばしば、RPAとDXは同じように捉えられてしまうことがありますが、実際は異なります。

DXとは、「Degital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」のことを指し、IT技術を用いてビジネスを変えていくときによく用いられる言葉です。IT技術の導入だけにとどまらず、もっと広い意義があり、企業戦略を変えていくといった意味があります。

RPAは、DXのための1つの施策として用いられます。先程もご紹介したように、RPAは既存の業務をロボットによって自動化し、業務を効率化するものです。IT化という言葉に近く、DXを進めていく上で有効な手段と考えられています。

もちろん、DXの推進はRPAの導入だけでは不十分です。その他のツール等を組み合わせて、DXは進行していきます。

DXについての詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?DX推進のメリットと課題も

RPAの導入メリットについて

人件費が削減できる

RPAによって人間が行っていた業務の一部をロボットが行うようになると、その業務に従事していた人員を他の業務に充てることができます。どんな業務がRPAで行えるのか、その一例は以下のとおりです。

  • データの集計、グラフ化、検証、分析
  • 請求書、領収書、納品書作成
  • メールの送受信

これらの業務以外にも、手順やルールが決まっていてPCを使った業務であれば、RPAで行えることは多いです。一方、複雑な作業や臨機応変な対応が必要な作業など、人が考えながら行うような作業には適していません。しかし、RPAが行える作業を任せることができれば、人手不足の解消や人件費の削減につながる可能性は高いと言えるでしょう。

生産性が向上する

1人の社員が仕事に従事できる時間は限られています。しかし、RPAでの業務は24時間365日いつでも可能です。もちろん、定期的なメンテナンスのために一時ストップすることもありますが、会社の営業時間外でも作業を代行できる点は特筆すべきメリットです。考え方によっては、1人の社員で行える業務の何倍もの業務時間を、RPAが担うことができます。

ヒューマンエラーが防止できる

人が行う仕事は、どうしても不注意や思い込みなどによってミスが起こる可能性があります。これを、ヒューマンエラーと呼びますが、ヒューマンエラーを完全になくすことは不可能です。

しかし、ロボットが行う仕事はヒューマンエラーが起こりません。RPAはルールの変更に臨機応変に対応することが難しいものの、決められたルールであれば確実に実行します。そのため、ヒューマンエラーによるミスの発生を少なくするといった意味でも、RPAは有効です。

テレワークでも導入できる

近年では、テレワークで仕事をする人も増えました。RPAツールの運用方法はいくつかありますが、インターネット上の仮想サーバに構築するクラウド型であれば、インターネット環境がある場所からいつでもアクセスできます。

つまり、クラウド型のRPAを導入すると、テレワークを行っている社員が自宅からメンテナンスを行うことも可能です。RPAは、昨今の多様な働き方にも対応できるツールと言えるでしょう。

小規模から始められる

RPAの導入は、大がかりな準備や体制づくりを必要としません。特定の部署の特定の業務だけから始めたいという、スモールスタートにもおすすめなツールです。パソコン1台でも始められることから、多くの企業で導入しやすい点もメリットです。

RPAツールは、デスクトップ型、サーバ型、クラウド型の3種類があります。小規模で運用を始めたい場合は、パソコン1台に構築できるデスクトップ型か、仮想サーバに構築するクラウド型がおすすめです。

RPA導入の成功事例

セブン-イレブン・ジャパン

セブン-イレブン・ジャパンは、2018年4月からRPAを導入しています。サービスを提供している株式会社エル・ティー・エスによると、RPAにより自動化した業務数は31種類にのぼり、各業務の平均8割もの業務時間削減に成功しています(2018年9月~2020年12月)。

業務の可視化とアセスメントによる課題分析、本部機能の見直しによってRPAを導入し、さらに最新のITの活用による最適な施策を選定したことで、この大幅な業務時間削減を実現しました。

セブン-イレブン・ジャパンで導入したRPAシステムは、リモートでの操作も可能です。リモートワークを推進している会社でも効率的に運用が可能であることを証明しました。

参考:セブン‐イレブン・ジャパン向けにRPA導入支援サービスを提供 | 株式会社 エル・ティー・エス

KDDI

携帯電話事業や固定電話事業、ISP事業などを展開しているKDDI。au(エーユー)のブランドで広く知られています。RPAの導入で顕著な改善が見られているのは、法人ビリングセンターにおける業務です。繁忙期になると、増員体制をとっても夕方から夜にかけて膨大な量の入力作業に追われ、ヒューマンエラーによるミスも課題でした。

業務品質の改善のためにRPAを導入すると、導入前に合計27時間かかっていた業務がわずか2時間に短縮。手作業で行っていた業務の作業時間を92%削減し、ミス率ゼロも実現しました。1人あたりの業務量は1日あたり2.5時間短縮され、本業や高度な作業へと集中できる体制へ変換することができました。

参考:RPAツール導入でバックオフィス業務の高効率化を実現 KDDI様|通信・情報の導入事例|コンタクトセンター・BPOのKDDIエボルバ

マツモトキヨシホールディングス

マツモトキヨシホールディングスがRPAテクノロジーズの「BizRobo!」を導入したのは2018年のことでした。働き方改革の推進のためにこのRPAツールを導入し、現場の担当者により開発や運用のための体制づくりが行われました。3年間にわたって徐々に体制が整い、RPA化につながった業務は約500種類にものぼります。

特にその効果が顕著にみられたのは、商品部の業務でした。RPA化によってロボットに代替できた単純作業は約90%。また、財務経理部では全11工程のうち3工程をRPA化し、作業にかかる時間の約50%が削減できました。

こうした取り組みにより、現場の担当者は早朝勤務や繁忙期の負担が軽減され、働き方改革という大きな目的に効果的な成果をあげています。

参考:年間2万9,000人時を創出、RPAだからこそできる作業も登場。 徹底して現場担当者が扱う体制が普及の鍵に | RPA テクノロジーズ株式会社「BizRobo!(ビズロボ)」

金融機関A

とある地元の金融機関では、税務調査に関する資料作成に膨大な時間と手間をかけていることが課題でした。資料の作成には、複数のデータベースにある口座情報や取引情報を検索し、必要な情報を取得するといった手間があり、これをRPA化によって自動化することに成功。

これまで費やしていた資料作成にかかる時間は、70%も短縮することができました。削減できた時間を具体的に数字にすると、年間およそ15,000時間にものぼります。

参考:【まとめ】RPAとは?メリット・デメリット|導入手順や活用事例も解説

通信業者B

カスタマーサポートのオペレーターの業務負担が大きく、人件費増加が課題でした。従来のやり方では、顧客から電話を受け、契約内容を変更する場合に複数のシステムから内容の登録や確認を行う必要があり、1件あたりの処理に費やす時間が多かったようです。

RPAの導入により、データ入力の支援やガイドをロボットが行うことで、オペレーターが行う作業時間の約70%を削減。人件費も抑えることができ、年間約1,800万円の削減に至りました。

参考:【まとめ】RPAとは?メリット・デメリット|導入手順や活用事例も解説

RPA導入によるDX推進のポイントとは

ビジネス全体の最適化に焦点をあわせる

RPAの導入では、喫緊の課題に対しての効果ばかりに目がいきがちです。もちろん、その効果をすぐに感じる場面もあるでしょう。しかし、DX推進の一環としてRPAを導入するのであれば、目標はビジネス全体の最適化となります。

DX推進において、RPA導入は1つの施策にすぎません。他のツールも必要に応じて活用し、上手に組み合わせていく必要があります。RPA導入そのものが目標になってしまうと、その先の本来目指していたゴールが見えなくなってしまいます。目標を明確にして、視野を広く持つことが大事です。

コストばかりにとらわれない

RPAツールを選ぶ際、コストがどのくらいかかるのか、という問題は重要なポイントです。しかし、せっかく導入しても自社の担当者が扱えなければ導入までに時間を要したり、思い描いていた効果が十分に発揮されない恐れがあります。

コスト面と同様に、自社に合ったツールであるかどうかもチェックが必要です。担当者が扱いやすいかどうか、自社の業務に合わせてカスタマイズできるかどうか、サポートがしっかりしているかどうかといった点も総合的に見て判断しましょう。

DX認定事業者のサポートがあるかどうか

日本には、DX認定制度というものがあることをご存じでしょうか。これは、2020年に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づき、DX推進の準備が整っている企業を認定するもので、その企業の中には他企業のDX推進をサポートしているところもあります。

これからDXを効率的にすすめていきたい会社の場合、DX認定業者のサポートを得ながら行うのもおすすめです。

DX推進にはSMSの活用がおすすめ

DXの推進に向けて、まず何を始めればよいのか迷うかもしれません。そんな時は、SMSの活用がおすすめです。

SMSは、効率的に必要な情報を必要な相手に送るツールとして注目を集めています。メールの開封率が低く困っていたり、日中に電話をかけてもつながらなかったり、郵送によるDMはコストばかりかかって非効率だったりといった問題も、SMSなら改善する可能性があります。

SMSの送信を自動化すると、メールの送信にかかる手間や郵送のコスト、電話をかけるスタッフの人的コストを削減できます。さらに、開封率が高いとされるSMSにより、効率的に必要な情報を届けることができます。

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

KDDI Message Castは、KDDIグループが提供するSMS送信サービスです。SMS送信通数に応じて課金される仕組みとなっており、初期費用や月額費用はかかりません。送れる文章は660文字までと多く、必要な情報をしっかりと届けることが可能です。一斉送信と個別送信の両方に対応しており、Webに接続すると簡単に操作することができます。

既に、さまざまな行政機関や企業、医療機関などで導入されており、課題の解決に向けて活用されています。例えば、とある地域の保健所では、新型コロナウイルスに関する問い合わせに対する業務が逼迫し、陽性者への連絡や自宅療養の案内が遅延してしまう点が課題でした。KDDI Message Castの導入により、メール連絡が可能な方には一斉送信で情報を発信できるようになり、スタッフは他の業務に充てる時間をとれるようになりました。

まとめ

RPAは、DX推進に向けて取り組むべき1つの対策と言えます。RPAによって業務が効率化すると、人材不足などの課題も同時に解決することができ、スタッフはよりコアな業務に専念できる体制がうまれます。RPAだけではDX推進という大きな目的を達成することは難しいため、他のツールと上手に組み合わせていくことが大切です。

KDDI Message Cast(KDDIメッセージキャスト)詳しくはこちら