近年、多くの企業においてDX導入の重要性が高まっています。しかし、現状としては中小企業を中心に推進が遅れている傾向にあると見受けられます。DXの重要性を理解していても、人手不足や初期費用の捻出などが問題となり、うまく進まない企業も多いのです。

そこで本記事ではDXの定義を確認した上で、DX導入のメリットや導入しないことによるデメリット、DX導入の課題、手順、ポイント、事例などについても紹介します。

目次

DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義

DXとはDigital Transformationの略語で、日本語ではデジタルトランスフォーメーションと称します。

DXではITやデジタルの技術を活用し、業務の生産性向上や新しいビジネスの創出を目指します。

DXの推進により、働く人たちの負担が軽減される他、多くの人にとっての住みやすい社会が実現されるでしょう。

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DXとIT化の違い

DXはITを導入することと抜本的に違うわけではありません。IT化はDXの手段で、一般的にはデジタル化、IT化を経てDXが達成されます。DXではITを導入して活用するプロセスが不可欠です。ただ、IT化をしたからといってDXを実現できるとは限りません。IT導入によってイノベーションを起こし、新しい価値を創出して競争力を生み出すことでDXになります。自社に合うITを取り入れて活用することでDXを実現できます。

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DXの推進が必要とされている背景

DXを導入しないことによってデメリット・リスクが生じることも懸念されます。

ここでは、DXを導入しないことでどのようなデメリット・リスクが懸念されるのか確認していきましょう。

①レガシーシステムの老朽化と属人化

レガシーシステムとは古い技術や仕組みによって構築されていて、ブラックボックス化しているシステムのことです。

システムが古い技術や仕組みで構築されていると、一部の担当者にしかその状態が分からないこともあります。担当者が退職や異動をした後、そのシステムの対応を行える人がいなくなり、トラブル発生時などに対応できなくなります。

②同業他社だけでなく、世界からも遅れをとる

日本企業が成長していくためには国内だけでなく、世界も視野に入れていかなければなりません。

企業が国際社会に進出するためにはDXによるシステム化やデータの活用が不可欠といえるでしょう。自社のDX推進が遅れると、国際社会への進出の機会も逃すことになりかねません。

今後、DXが導入されている企業とそうでない企業の差がますます広がると考えられます。

③時代の変化に対応できていない企業だと思われる

割合的にも多くの企業がDXを進めており、働き方改革や業務の効率化などを実現しています。そうした中、DXを進めていくことに後ろ向きであると、社員や就活生から時代の変化に対応していない企業だという印象を抱かれかねません。

社員の中には他社のようにDXを推進して業務を効率化してほしいと不満に思う人も出てくるかもしれません。また、就活生の中にはITやデジタルを活用し、働きやすい企業を好む人も多いです。

DXの推進メリット

企業はDXを導入することでどのような意義・メリットが得られるのでしょうか。

以下、DX導入の意義・メリットについて説明していきます。

①生産性の向上

DXを導入することで業務フローが改善されれば、作業の効率化や自動化などが実現します。作業の効率化・自動化が実現すれば、稼働時間を変えなくても生産高をアップできるはずです。そうなれば、企業の売上はおのずと増加するでしょう。

また、生産性の向上は従業員の労働時間削減、残業時間や休日出勤の削減にもつながるはずです。

②BCP(事業継続計画)対策

BCPとはBusiness Continuity Planningの略語で、日本語では事業継続計画と称します。BCPには自然災害や感染病、テロ攻撃などといった事態における対応方法や事業継続のための手段をまとめておきます。

BCP対策を実施していれば、不測の事態が生じた際も被害を抑えられる他、社会的信用も得やすくなるといえるでしょう。

③2025年の崖問題に対応できる

2018年9月、経済産業省はDXレポートを公表しました。このレポートでは、2025年までに老朽化した基幹システムの刷新を行わなかった場合、年間で最大12兆円の損失が出ると憶測されています。

DXの推進は各企業における問題だけでなく、日本全体にかかわる問題です。大きな損失が生じることを回避するためにも、企業にはDX推進を進めていくことが求められています。

④市場変化に対応できる

社会やビジネスを取り巻く環境は大きく変化しています。企業が存続していくためには、市場変化に対応できるかが鍵です。

例えば、通信は4Gから5Gへと移行しようとしています。5G通信に移行することで高速や大容量、多数同時接続などを実現できる一方、既存のサービスの中には利用できなくなるものも出てくるでしょう。

企業には5Gに対応するサービスを提供することはもちろん、5Gを活用した新たなサービスの創出も求められています。

⑤新しいビジネスが創出できる

ITやデジタルを活用した新しいビジネスが次々に創出されています。例えば、遠隔操作のできる冷暖房やタッチキー、お掃除ロボットなどは一例です。

そうした中で自社の製品を消費者に選んでもらうためにはこれまで以上に利便性が高い製品であることはもちろん、目新しさのある製品を開発しなければなりません。

⑥管理システムの改善に繋がる

DXを活用すれば、生産計画の自動化はもちろん、受注から納品までをシステムで一括管理できます。管理を行う手間や負担が軽減されるのはもちろんのこと、入力ミスなども回避できます。

管理にかかる手間や負担を削減することで、従業員の負担軽減や各種コストの軽減などにもつながるでしょう。

⑦働き方改革が推進できる

DXをうまく活用することができれば、従業員の業務負担が軽減できる他、リモートワークの推進にもつながります。

例えば、経理やデータ入力、顧客対応の一部などを自動化すれば、従業員は別の業務に集中できるでしょう。また、クラウドやコミュニケーションツールを活用することで、従業員は場所にとらわれず仕事を行えます。

⑧人件費などのコストが削減できる

DXはコスト削減に直結するのがメリットです。特に人件費の削減では多数の事例が知られています。人がおこなっている作業をITによって自動化すれば、余計に人を雇わなくても良いことは明らかでしょう。また、どの業務にコストがかかっているのかをシステム上で可視化し、コスト削減をする方針を立てることもできます。コスト削減に必要なデータも一元管理できるので、データを生かしてコスト削減方法を導き出すことが可能です。

⑨効率化による利益率の拡大

DXによってさまざまなアプローチで業務効率化が実現できます。自動化によって人よりもコンピューターがおこなった方がミスもなくて心配がない業務プロセスを構築することも可能です。業務の内容やプロセス、フローなどを可視化してわかりやすくすると効率が上がります。このような効率化の総合的なDXによってコスト削減と利益拡大を進めていくことにより、利益率を上げて経営成績を引き上げていくことができるのがメリットです。

DXの推進デメリット

DX推進はメリットばかりではありません。DXによって生じる可能性があるデメリットについても理解した上で推進していきましょう。

①初期費用やランニングコストが発生する

DXはコスト負担が大きいのがデメリットです。システムやツールの導入には数百万円ものコストがかかることも少なくありません。初期費用だけでなくランニングコストもかかるため、継続的に運用してDXを進めることが困難になる場合もあります。

コストベネフィットを考慮して予算を立ててDXを推進することは欠かせません。スクラッチ開発でシステムを導入するのは理想的と思われがちですが、コストがかかり過ぎるリスクがあります。導入コストが低くて従量制でランニングコストも制御しやすいサービスを利用すると費用対効果を上げられます。

②既存システムからの移行が大変

DXでは既存システムの課題を認識して新しいシステムを構築することが重要です。ただ、今まで慣れてきたシステムから新システムに移行すると、データの変換やインポート、従業員の教育研修などの手間がかかります。従業員が新しいシステムに慣れるまでは業務が滞るリスクもあるため、円滑に移行できるフローを整えることが必要です。

アナログなシステムからデジタル化をしてDXを目指す場合には特にシステム移行の負担が大きくなります。無理のないスケジュールを立てて、スモールスタートで従業員の意識改革をしながらDXを推進していくことが重要です。

③長期的な取り組みが必要になる

DXの推進は一朝一夕にして成果が見えるとは限りません。長期的に取り組んでいくことで大きなイノベーションを起こせる可能性があることはメリットですが、DXを始めた直後から利益を生み出せることはあまり多くありません。従業員の教育やデータの収集などのさまざまな課題を乗り越え、自社に合ったIT活用を進めていくことで成果につながります。

すぐに成果が出なかったとしても、データを集積して試行錯誤を進めていけば最終的にはメリットを生み出せます。しかし、コストをかけてDXを始めてもすぐに利益になるとは限らないのはデメリットです。

DXの推進における課題

課題1:現場で働く従業員の理解が必要

自社にDXを導入した場合、影響が出るのは経営層だけではありません。

現場で働く従業員も新しい業務フローに慣れていく必要があります。そのため、多くの従業員が作業に慣れるまでに手間取ったり、アナログ作業に慣れ親しんでいる従業員にとってはデジタル化に苦手意識を抱いたりすることもあるでしょう。

DXを導入する際は社員にDXを導入するメリットを説明し、導入のステップを共有しておく必要があります。

課題2:社内教育の体制を構築しなければならない

現在の日本ではIT人材の不足が問題となっています。そのため、IT人材を新たに雇い入れようと思って募集をかけても、うまくいかないケースも多々あります。

このような状況ではIT人材を自社で育成することも視野に入れておく必要があります。自社でIT人材を育成する際は教育体制を整えたり、業務の配分を見直したりしなければなりません。

課題3:レガシーシステムの対応

レガシーシステムは長年にわたる機能追加、規模の拡大などにより複雑化していることも多いです。また、導入から時間が経ち、以前の担当者が異動や定年退職で不在になり、既存の従業員では対応しきれないケースも少なくありません。

DXを推進する中で業務フローを見直す際に、レガシーシステムの見直しも必要になるでしょう。複雑化されたレガシーシステムをどのように対応するかも課題となります。

DXを推進する手順・流れ

手順1 ツールをデジタル化する

ツールのデジタル化とは、クラウドサービスやアプリなどを導入することです。

会計管理ツールや勤怠管理ツールなど便利なツールは多くあります。これらのツールを活用することで、業務フローを大幅に改善できます。

手順2 業務の効率化を行う

業務の効率化はDXを推進している企業の多くが実施している取り組みの1つです。

ツールをデジタル化することで蓄積したデータを用いて、生産性アップを目指します。

手順3 データ活用の基盤を構築する

データの活用は課題の解決や新たなビジネスの創出に効果的な手段です。データ活用で得られた成果を明確にし、評価項目の設定を行ってください。

続いて、目的を果たすためのデータ活用方法を検討します。活用方法がまとまったら仮説を立て、施策を実施しましょう。

施策の実施後はデータについて検証を行い、データ活用の基盤を構築していきます。

手順4 データの運用を行う組織をつくる

IT部門における担当部署がデジタルイノベーションを主に担当し、DXを進めていきます。

データ運用を行う組織を編成することで、運用体制が確立され、業務フローを明確にできます。

手順5 事業計画につなげていく

蓄積されたデータの活用を行い、新たな価値を生み出す事業計画を見直します。

また、DXを導入すれば、すぐに成果が出るわけではないため、事業計画を参照しながら問題点や課題を洗い出して、次回の施策につなげていかなければなりません。ほとんどの場合、一度のサイクルでは思うような結果は出ないため、根気強く取り組む必要があります。

DX推進を成功させるための重要なポイント

社内ルールや評価基準の設定

自社でDXを推進する際はDXツールの利用についてのルールや、評価基準の設定も必要です。

例えば、DXツールを導入してもそれを利用する人が決まっていなければ、手つかずのまま化石化してしまうと考えられます。

また、DX導入とともに従業員の働き方をテレワークに切り替えた場合、上司は部下の業務に対する姿勢が分からないため、評価基準を成果主義に変更する必要があるでしょう。

業務内容を明確にする

DXツールを導入する際は業務内容を見直し、明確にしなければなりません。

例えば、DXツールには業務を自動化できるツールが多くありますが、対象となる業務を明確にできなければ、どの作業を自動化すればよいのか分からないでしょう。

また、複数の業務を自動化したい場合は業務内容をそれぞれ明確にし、DXを活用する際の優先順位をつけます。

ツールのベストな選択

ITツールにはさまざまなツールがありますので、ツールを導入する際は自社が抱える課題を洗い出した上で選択するようにしてください。ツールによって搭載されているシステムや内容が全く異なるため、自社の課題に合ったツールを選択しなければ導入効果は得られません。

また、ツールを最大限に活用するにはユーザーインターフェースも重要です。ITに慣れていない人でも使いやすいツールを選ぶようにしましょう。

DX認定制度を確認する

DX認定制度は企業価値を高められるメリットがある魅力的な制度です。経済産業省によって認められたDX認定事業者となり、ロゴの活用による社会や顧客へのアピールや税制支援の享受ができます。DX認定制度ではデジタルガバナンス・コードに則って体制を整備すれば認定事業者として認められるため、具体策を考えやすい点でも魅力があります。

また、DX認定を受けるとDX-Emerging企業やDX Excellent企業を目指してさらなる成長を目指すことが可能です。DX銘柄としてもノミネートされる可能性が生まれるため、DXの先進企業としての地位を確立できる可能性を切り開けるメリットがあります。ブランディング戦略としても注目されている方法です。

ただ、デジタルガバナンス・コードを満たす体制整備にはコストも時間もかかります。認定を受けることを目的としてDXを推進することが、必ずしも自社にとってベストソリューションになるとは限りません。マーケティングやブランディング、節税対策としては優れていますが、DXにかけられるコストや時間は限られているでしょう。DXの本質を見失わずにまずできることから始めた方が良い場合もあります。

他社のDX導入事例を参考にDXを進めていきましょう

DXの推進を検討している企業の中には、どのように進めていけばよいか分からない企業も少なくないと見受けられます。

自社で最適なDX推進方法が分からない企業は、DX導入事例を参考にDXを進めていくことをおすすめします。

以下の記事では、DX導入事例について紹介しています。DX推進の方向性がなかなか見いだせない企業のご担当の方は、ぜひ以下の記事を参考にしてみてください。

【DX導入事例14選】DX成功事例に見るDX推進のポイントは?

企業のDXでSMSを活用した事例を紹介

事例1 SMSを活用して工事日のリマインド

空調設備や水まわり、通信回線の開通工事などでは、工事時に契約者の立ち合いが必要なケースも多いです。業者が工事日に現場に出向いたものの、契約者が工事日を忘れて不在というケースも少なくありません。

工事日に契約者が不在の場合、工事日時の再調整を行わなければなりません。また、業者側は再訪の必要があるため手間が二重にかかります。

こうした問題を解決する方法として、SMSを活用したリマインドメールの配信が挙げられます。工事日前日にリマインドメールを送ることで、契約者が工事日に不在になることを避けられます。

工事日リマインドでのSMS活用

事例2 入金のお知らせの配信はSMS

不動産業界では家賃の入金が期日を過ぎても確認できないというケースが多々あります。スタッフが契約者に電話をかけてもつながらなかったり、郵送で入金が遅れている旨を伝えても反応がなかったりというケースも珍しくありません。

SMSは契約者のスマートフォンや電話にメッセージが配信されるため、送信から短時間、かつ高い確率でメッセージを確認してもらえると期待できます。また、スタッフが契約者に電話を何度もかけなおす手間も省けます。

督促でのSMS活用

事例3 お客様の来店日忘れ防止にSMSを活用

近年、Webサイトやアプリでいつでも予約を受け付けている美容院が増えています。お客様にとって自分の好きなタイミングで、かつ手軽に予約できて便利である一方、手軽に予約できるがゆえに予約していたことを忘れてしまうお客様も少なくありません。

前日や当日の来店時間前にSMSを活用してリマインドメッセージを配信することで、当日の無断キャンセルを防止できます。スマートフォンや携帯電話に届くSMSであれば、忙しいお客様にも目を通してもらえるでしょう。

リマインドでのSMS活用

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

SMS送信を検討している企業のご担当の方には、KDDI Message Castがおすすめです。このサービスを活用すれば、携帯電話番号を使って携帯電話やスマートフォンにSMSを配信できます。

KDDI Message Castは大手通信会社であるKDDIグループが提供するサービスであるため安心感があります。キャリア直収接続のため重要なメッセージも安心して送ることができます。

1通当たり660文字までのSMS長文配信ができる他、SMSを進化させた動画や画像などのリッチコンテンツが送信できる+メッセージの配信も可能です。

まとめ

ITやデジタル化が進んでいる昨今、企業はDXを導入しなければ大きな後れを取るだけでなく、損害が生じることになるでしょう。

DXの導入にはデジタルやITに精通した人材の確保や初期費用・運用費用などといったコストがかかります。しかし、DXを導入することで、生産性向上や社員の負担軽減などといったメリットを得られるでしょう。

DXの導入について得られる効果と初期費用や運用費用を考慮しながら検討することをおすすめします。

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