不動産業界のDXとは?必要性やメリット・推進のポイントを解説!
近年、さまざまな業界で進められているDXですが、不動産業界でもアナログな業務からデジタルを活用した業務へシフトし、消費者や社会のニーズに対応し始めています。この記事では、DXの導入が遅れている不動産業界の現状にスポットをあて、不動産業界でDXが求められている理由、現在抱えている課題、DXを導入する必要性やメリット、DX推進のプロセスとポイントなどについて解説します。
目次
不動産DXとは?
不動産DXとは不動産賃貸業や不動産コンサルティング業などの不動産業界の企業が推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)です。デジタル技術やデータの活用によって、競合他社に対する優位性を生み出すビジネスを展開することを指します。不動産業界では昔から定型的なサービスを提供している傾向がありますが、不動産DXでは新しいコンセプトやビジネスモデルを取り入れ、新しいニーズに応えるサービスを提供することを目指すのが特徴です。
不動産DXと不動産テックの違い
不動産テックは不動産DXとよく混同されています。不動産テックとは不動産関連事業に対してITを活用することで提供されているサービスです。不動産テックの開発や導入は不動産DXにつながることもあります。しかし、単純に不動産テックを導入したからといってDXになるとは限りません。不動産テックはクラウドサービスやVRなどの技術面を指しますが、不動産DXは技術活用によってビジネスのイノベーションを起こすことを意味しています。
不動産DXの具体例
不動産DXでは、法制の整備の影響も受けて積極的な取り組みが始まってきました。不動産DXで初期から進められてきたのは不動産管理システムの導入です。クラウド管理が可能なシステムが開発されて、物件情報や顧客情報などを簡単に一元管理できるようになっています。業務負担を軽減できる点でも優れているシステムです。
また、宅建業法の改正により、電子契約やオンライン重説もできるようになって導入が進められています。不動産の賃貸でも売買でもオンライン対応が可能になり、サービスを拡張しやすくなっています。オンライン内覧やWeb接客によって遠方にいる人でも物件情報を確認しやすいサービスを提供し、成功している事例も多くなってきています。
不動産業界のDXは遅れている?
不動産テック7社・1団体が実施したDX推進状況調査によると、アンケートに回答した不動産事業者のうち約90%が「DX推進をしている」と答え、前年のアンケート調査結果と比べて1.5倍増加となりました。また、DXの目的は「業務効率化」が最も多く、「集客力アップ」「成功率アップ」がそのあとに続きます。DX年間予算は、「50万円以上」が67%、そのうち「100万円以上」は50%以上でした。「1,000万円以上」も18%存在していることから、本格的なDX投資を進めている企業が20%近くあることがわかりました。
参照:不動産事業者のDXは昨対1.5倍の90%超、DX予算規模も明らかに
不動産業界はアナログ作業が中心になっていて手書きでの対応が今でも常識的になっています。ようやく法整備が進んできた状況があり、不動産DXを進めやすくなりました。まだ不動産DXは途上の段階にあるので先手を打って推進することが重要です。
不動産業界においてDXが必要とされる理由
不動産業界でDXがなぜ必要なのか、主な理由を3つ解説します。
アナログ作業の常態化
不動産業界は、古い商習慣により変化の少ない業界です。ITによる顧客管理を行っていてもシステムが古いままだったり、手書きで帳票を作成したり、など古い商習慣がDXの効率化を阻んでいます。重要事項説明の電子化も、2021年3月30日になってようやく施行されました。このような状況を打破するには、IT化やITの活用からさらに進んで、商習慣や企業風土の改革が求められます。
人手不足
不動産業界が抱えている問題の1つが長時間労働です。パーソル総合研究所と東京大学の教授による残業実態調査の結果、各業種での残業実態がわかってきました。不動産業界は14業種のうち4番目に高く、30時間以上残業している人(管理職を除く)の割合は31.8%でした。月平均は21.6時間です。長時間労働による就労意欲の低下に加えて、不動産業界ではサービス残業が多いため、離職率が高いことも慢性的な人手不足につながっています。
参照:パーソル総合研究所×東京大学 中原淳准教授 「希望の残業学プロジェクト」 会社員6,000人を対象とした残業実態調査の結果を発表 – パーソル総合研究所
ニーズの多様化
市場規模が拡大傾向を続けている不動産業界では、インターネットの普及により、顧客ニーズの多様化が顕著となったことも、DXが必要とされる要素に挙げられます。顧客はスマホなどで自ら情報収集を行い、自分のライフスタイルに合った商品やサービスを探すことが日常的になっています。近年は不動産を選ぶ際にも店舗に足を運ぶ機会が少なくなり、パソコンやスマホで物件を検索して情報を得ることが可能です。さらに新築不動産に限らず、中古不動産や付加価値を加えたリノベーション物件の需要が高まっており、顧客ニーズが複雑化してきました。こうした顧客ニーズに対応するために、DXは欠かせません。
不動産業界がDX推進に取り組むメリット
不動産業界がDXを推進することで期待できる主なメリットを解説します。
業務効率化による生産性の向上
DXの活用により、従来のアナログ方式からデジタルにシフトすることで、業務全体の効率化がアップし、生産性向上につながります。具体的には目視で行っていた物件情報をシステムで一括管理できることや、予約システムにより予約電話への対応に割かれるリソースが減少することが挙げられます。また、生産性が向上すると、余ったリソースをコア業務である顧客とのやりとりに集中できるようになることも大きなメリットです。SNSなどのクチコミは宣伝材料として効果を発揮しますが、コミュニケーションが活発になれば、お客様に何度も選ばれるようになりさらに継続的な利益につながるでしょう。
関連リンク:不動産の業務効率化は可能!どの業務が効率化出来る?
人手不足問題の解消
人手不足が課題となっている不動産業界では、DX導入によってこの問題の解消が期待できます。具体的には、事業プロセス自動化技術の一種であるRPA、AIなどを活用することで、定型業務の自動化が可能です。
見込み顧客からの問い合わせには、チャットボットを取り入れれば、AIが自動で返信するため、対応する人員や労働時間の削減も可能です。またAIを活用した価格査定システムを導入すると、膨大なデータから必要な情報だけ収集し、不動産の価格を瞬時に出すことができるなど、時間や手間を大幅に削減できます。
顧客満足度のアップ
不動産業界における顧客ニーズが多様化してきている中で、DXは顧客満足度を向上させる方策として重要な取り組みになっています。不動産に対するニーズはライフスタイルやワークスタイルによって変化していきます。顧客満足度は不動産業界の売上にも信用にもつながるので高い水準を維持することが必要です。
ニーズの変化に対応して適切なサービスを提案することで顧客満足度を引き上げることが可能です。データに基づく提案やオンラインサービスの提供などのさまざまなアプローチのDXで顧客ニーズに応えられるようにサービスを展開できます。
労働環境の整備
DXの推進により、業務の効率化、人手不足問題の解消が実現できると、企業で働く従業員の労働環境改善にもつながります。たとえば物件査定などの経験や知識が必要な業務でも、膨大なデータと連携しているシステムが導入されていれば、経験の浅い社員でも対応でき、業務の幅を広げられます。また顧客対応に追われる長時間労働環境が改善されることで、余裕を持って仕事に取り組めるでしょう。こうした労働環境の改善は仕事に対するモチベーションアップにつながります。
付加価値やビジネスモデルの創出
ビジネスで企業の競争力を高めるためには、新たに付加価値やビジネスモデルを創出することが重要です。業務の効率化だけでは限界があるため、付加価値やビジネスモデルを生み出すことで、ビジネスそのものの価値を大きく引き上げていく取り組みが必要です。DXを推進することで、付加価値やビジネスモデル創出の機会が得られるため、企業価値を高めることにつながります。
人件費など経費の削減
不動産業界でDXに取り組むと人件費や印刷費などのコストを削減できます。システムの導入によって自動化すれば人材を減らすことが可能で、外注で済ませていた作業を内製化する余力も生まれるでしょう。不動産業界では書類の取り扱いが多いですが、電子署名の導入やペーパーレス化を進めれば印刷費や消耗品費、書類の保管費用などを削減できます。経費削減が課題となっているときには初期投資をしてDXを進めた方が長期的には利益になります。
2025年の崖への対策
日本では2025年の崖に向けて対策が必要な状況にあります。2025年の崖とは経済産業省が「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」で指摘した問題です。既存システムの課題を克服できなければ2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じると主張しています。
レガシーシステムでは事業部門ごとにシステムが構築されて、横断的なデータの利用ができないのが一般的です。システムの複雑化によって連携を取るのが困難なのもシステムの統合を妨げる原因になっています。この状況から脱却するには本格的にDXに取り組むことが必要です。
不動産業界では古くから使用されてきたレガシーシステムがある場合がほとんどです。抜本的にシステムを入れ替えてデータ活用を全社で行える体制を整えるには、少なくない費用や工数がかかるため、覚悟が必要になります。しかし、2025の崖を乗り越えるためには不可欠な施策です。率先してDXに取り組めば、有利な立場で経営を続けられるようになります。
参照:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)
関連リンク:不動産業界でIT化を進めるメリットとは 最新技術や導入が必要な理由を徹底解説
不動産業界でDXを推進する方法
不動産業界におけるDX化の推進プロセスを4ステップで解説します。
関連リンク:DX戦略とは?立て方や推進プロセス、成功のポイントもご紹介
プロセス①組織作り
DX推進では、業界を問わず、組織的な体制づくりが欠かせません。日米のDXの取組状況について、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)による「DX白書2021」を参照すると、DX推進に対して圧倒的に米国企業の方が積極的に取り組んでいることがわかります。また、組織的なDX推進の項目で、経営者、IT部門、業務部門の協調について日米の企業を比較すると、違いが明確に表れています。米国の企業では、協調性を重視しており、組織的なDX推進体制を重要視していることが顕著です。
参照:IPA DX白書2021
プロセス②目的の明確化
つぎにDXを推進する目的を明確にしておくことが重要です。業界によってDX推進の目的はさまざまで、目的によりDXの進め方や導入するシステムが異なります。そのため目的が曖昧では、自社の業務内容に合っていないシステムを導入してしまう可能性があります。目的がビジネスモデルの創出なのか、業務効率化なのかで運用方法が異なります。目的はその後の方向性を決める大切なステップです。組織全体で明確な目的意識を共有し、どのようにDX化を行えばビジネスの成長につながるのかを考えましょう。
プロセス③人材の確保
DXを推進するにはDXに精通した人的リソースが必要です。どの業界にもいえることですが、DXを推進したくても対応できる人員が不足していることが課題となっています。不動産業界に限らず、DX推進にはデジタル人材が必要です。デジタル人材は最先端のデジタル技術で企業に新しい価値を提供できる知識とスキルのある人材のため、多くの企業で求められています。人員を確保するにはDXパートナー企業と提携することも選択肢の一つです。
プロセス④システムの導入
DX推進の準備が整ったら、DX推進の目標を目指して、できることから実践していきます。まずDX化で欠かせないのがシステムの導入ですが、社内の全システムを一気に見直すと混乱を招きかねないため、段階的に進めていきましょう。不動産業界に有効とされるシステムはさまざまで、選定に迷うと思いますので、システム選びのポイントについては後述します。
不動産業界におけるDXの成功事例
不動産業界でDXに取り組む企業は増えてきました。代表例として経済産業省がDX認定事業者として認定をした株式会社LIFULLが挙げられます。同社では、以下の社内DXの方針に則り2025年に向けた社内ITシステムのDX推進計画を立てて施策を講じています。
・Remote first
・Simple & Orchestration
・Trust, but verify
株式会社LIFULLでは社内ITシステムの最適化を通して生産性の向上を実現することを目指しています。BYOD(Bring Your Own Device)を前提としてモバイル化とペーパーレス化を促進しつつ、不動産マッチングのサービス向上の同時実現を目指しています。
参照:LIFULL、経済産業省が定める「DX認定事業者」に認定 – 株式会社LIFULL(ライフル)
2025年に向けた社内ITシステムDX推進計画|株式会社LIFULL(ライフル)
不動産業界のDX推進システムの選定ポイント
DX推進の実現には、適切なシステムの選定が欠かせません。ここではシステム選定の主要ポイントについて解説します。
関連リンク:DXツールとは 成功事例や活用状況、導入のメリットや選定時の注意点などを解説
DXソリューションとは 成功事例や導入方法、選定のポイントなどを徹底解説
明確な目標が重要
DX化に必要なシステムは、DX推進の目標によって異なります。DXは短期で取り組めるものではなく、中長期的に進めていくものであるため、明確な中長期ビジョンを決めておくことがまず重要です。それはシステムの選定に必要なだけではなく、今後のDX推進の方向性を固める意味でも非常に重要なポイントとなります。「DX推進でどのようなことを実現したいのか」という目標を明確にすることが、自社に最適なシステムを選定する最初の判断基準になります。
付加価値がある
DX推進は、データやデジタル技術による変革であるため、検討しているシステムが自社のビジネスを変革させるものであることが重要です。すなわち、ビジネスモデルの創出や新たな付加価値がシステムで実現できることが求められます。自社の中長期ビジョンに適したシステムであるかどうかを精査しましょう。
柔軟性、拡張性、使いやすさ
DX推進の際に導入するシステムには、後で機能を追加したり、性能を向上させたりすることを想定し、柔軟性や拡張性が求められます。ビジネス環境の変化に伴い、DXの在り方も変わっていくためです。また、システムの使いやすさも重視すべきポイントです。DXは経営者、IT部門と業務部門が協働し組織的に行いますが、ITリテラシーがどのくらいあるかは人によってさまざまです。そのため組織全体で扱えるようにシステムの使いやすさも検討しましょう。
導入後の運用方法
システムを導入したら活用していきます。DX推進でありがちな失敗が、システムを導入したらそれで終わりになってしまうケースです。DX推進をサポートするためのシステムなので、導入すること自体が目的ではありません。検討しているシステムにはどのような運用プランがあり、どれほどDX推進に貢献できるかを検討することが大切です。また業務に合うシステムを構築しても、途中で業務プロセスが変わる場合も予想されます。そのような場合はシステムのアップデートなどの見直しが必要ですので、導入後の運用方法も確認しておきましょう。
不動産業界ならSMSの活用も有効!
不動産業界では、到達率と開封率の高さから、SMSの活用が進んでいます。SMS活用の事例として、電話や手紙などの連絡手段をSMS送信に変更し成功した例があります。不動産会社では、入居者の方への家賃督促は電話または手紙で連絡していましたが、手間と時間が非常にかかっていました。そこで、SMS送信に変更することで、これまでの連絡業務に費やしていた時間と手間を短縮でき、さらにペーパーレス化も可能になりました。また入居者の方の電話番号宛に直接送信できるため、確実に本人に届けることができ、送信履歴も残っているためトラブルの際にも安心です。
関連リンク:不動産業界でのSMS(ショートメッセージ)活用事例について
SMS(ショートメッセージ)送信サービスの不動産業界での活用ポイントと活用ケース
住宅展示イベントでのSMS(ショートメッセージ)活用について
法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」
KDDI Message Castは、大手のKDDIが提供する、法人を対象としたSMS送信サービスです。最大660文字までの長文配信、画像や動画などの配信、国内直収接続による高い到達率などが特徴です。また、誤配信防止機能が搭載されているのも安心ポイントです。初期費用や月額費用などの負担がなく、低予算で始められるのも嬉しいポイントといえるでしょう。SMS送信サービスなら、ぜひKDDI Message Castをご利用ください。
まとめ
不動産業界では、書類のやり取りや顧客管理・情報管理などの業務でアナログ方式が未だに残っている企業が少なくありません。その中でも大手の不動産会社は先駆けてDX化へ取り組み、成功しています。不動産業界のDXでは、業務フローの見直し、人手不足の解消、DX推進システムの選定など、多様な作業が必要ですが、DX化による恩恵はそれ以上に大きいといえるでしょう。中長期的なビジョンを明確にして、DX実現に向けて今できることから始めてみましょう。