業種:不動産業界

他業界よりも残業時間が多い不動産業界は、人材不足に加えて、とりわけデジタル化が進んでいないことなどの課題を抱えている業界です。残業を削減して、社員の負担を軽減するためには、業務効率化が必要ですが、不動産業務の効率化は実現可能でしょうか?

本記事では、不動産業界の概要、現状と課題、システムを活用した業務効率化、ツール導入事例などについてくわしくお伝えします。

そもそも不動産業界とは?

不動産業界とは、土地や建物を扱う業界のことです。扱う範囲は、戸建住宅やマンション・アパートをはじめ、商業施設、駐車場などさまざまです。そのため、仕事内容も幅広く、大きく分けると開発、販売、賃貸、管理の4つの業務に分かれます。ハウスメーカー、不動産仲介業者、デベロッパー、住宅販売会社、不動産管理会社などが不動産業界に属します。

開発

開発は、商業施設などの建物の企画立案を行う仕事で、デベロッパーと呼ばれる企業が行います。開発用地の仕入れなどを行うのもデベロッパーの仕事ですが、直接建設に関わることはありません。開発事業としては、街の再開発、商業施設開発、リゾート開発などがあります。街の再開発では、デベロッパーがエリアの方向性を定め、商業施設などを複合的に開発し、街をつくりあげていきます。

販売

販売は、戸建てや分譲マンションなどを売ることがメインの仕事です。土地を売る場合もあります。前述のデベロッパーのほか、住宅販売会社、ハウスメーカーなどが販売を行います。不動産の販売活動は、レインズと呼ばれる指定流通機構への登録、広告作成、広告活動、内覧実施などです。作成した広告を新聞の折り込みチラシや不動産サイトへ掲載してもらうために営業活動を行います。販売の中心となる活動は、この広告活動といってよいでしょう。

賃貸

不動産賃貸は、戸建てやマンションなどの賃貸の仲介を行い、賃貸契約を結ぶ仕事です。この仕事は賃貸仲介会社が該当します。街でよく見かける不動産会社の大半は、賃貸仲介会社です。大手から個人不動産までの幅広い賃貸仲介会社が存在します。部屋を探している人の目にとまるような広告の作成、物件情報をインターネットに掲載することも賃貸の仕事に含まれます。

管理

管理は、マンションなどの建物の保守・管理を行う仕事です。不動産管理会社が入居から退去までの一連の業務を担います。具体的な業務内容は、家賃の集金、契約更新業務、賃料保証、入居者対応、駐車場の管理、設備の維持・管理など多岐に渡ります。賃料保証とは、保証会社が居住用の賃料債務を保証するサービスです。入居者対応には、水漏れや排水溝の詰まりといったクレームへの対処も含まれます。

不動産業界の現状と課題

不動産業界というと、長時間の労働と激務というイメージがあります。特に不動産仲介業者の業務内容は多岐にわたります。店舗での顧客対応から、メールや電話の問い合わせへの対応、内見対応、物件や顧客情報の管理、売上管理など、きりがありません。顧客対応では、休日や営業時間外に対応することもあります。

内閣府の資料によると、不動産仲介業の従事者で、週あたりの労働時間が60時間以上の雇用者の割合は、2013年と2018年を比較すると、この5年間で6.2%まで改善しました。しかし、他の業種に比べると、6.2%という数字は依然高い水準です。

労働基準法の規定では週の労働時間は40時間以下ですから、週60時間勤務は明らかに基準を超えており、36協定の1カ月残業時間も超えています。このような背景もあり、不動産業界の離職率は高い傾向があります。不動産業界の課題は、まず残業時間の削減といえるでしょう。

・人材不足

雇用動向調査結果(厚生労働省)によると、2020年に不動産業・物品賃貸業に入職した人の数は約12万人で年々減少しています。一方、離職した人は2020年では約11.4万人でした。人口は減少傾向にあるため、今後も入職者が減少する可能性が高く、不動産業界における人材不足はこの先も続くでしょう。

・膨大な業務量とアナログな対応

不動産業界は業務範囲が広いわりには、デジタル化が進んでいません。例えば、業者の中には、いまだに手書きや手入力で日報や帳票を管理していたり、物件情報などを送るのにFAXを使ったりしている業者もいます。業務量が多いにもかかわらず、現状ではアナログ的な対応をしていることで、記載ミスがあったり、情報更新が遅れたりするため、生産性は上がりません。その結果、長時間労働につながってしまいます。

そのため、長時間労働を見直すことに加えて、システムの導入が望まれます。実際に業務のシステム化を望んでいる声が多く、特に残業が常態化している企業や、離職率の高さへの対応に頭を悩ませている企業で多いようです。

参照:
内閣府 仕事と生活の調和レポート2018(図表 7)
令和2年雇用動向調査結果(厚生労働省)
令和元年雇用動向調査結果(厚生労働省)

不動産業界の業務効率化は可能!

残業時間を削減し、長時間労働を改善するには、業務効率化が必要です。不動産業界の業務効率化は、以下の記事を読めば達成できますので、ぜひ最後まで読んで業務効率化を実現してください。

不動産業界の業務効率化をするメリット3つ

メリット①コストの削減

書類の作成や物件の入力などをアナログで行っていては、時間もコストもかかってきます。アナログ作業は業務フローが決まっていないため、特定の担当者だけが業務の進め方など把握している状況に陥りやすいのが欠点です。そのように業務が属人化されると、ノウハウなどが引き継がれにくくなります。

しかし、システム化により業務効率化を図ることで、誰でも短時間に同じような対応ができるため、残業代を含め、人件費の削減が期待できます。さらに、クラウドでのデータ保存などができるようになると、ペーパーレス化により、用紙などの消耗品のコスト削減にもつながるでしょう。

メリット②顧客満足度の向上

業務の効率化により時間に余裕が生まれると、これまでよりもお客様の対応に注力できるようになります。接客や内見などでお客様とよりコミュニケーションできれば、顧客満足度の向上が見込めます。口コミやSNSでの評判が良いと、問い合わせの件数も増えるでしょう。

コロナ禍により、VR内見や電子契約など、オンラインで完結するサービスが注目されるようになりました。このような時間やコストを軽減できるサービスを提供し、顧客満足度を向上させることは、競合他社との差異化にもつながります。

メリット③離職率の改善

アナログ的な業務が多いほど担当者に負担がかかり、残業が常態化する傾向があります。長時間の残業により、ストレスや不安が強くなると、心身に不調をきたした従業員は退職を選択するでしょう。不動産業界で離職率が高いのは、このような環境が要因です。

担当者の負担をできる限り減らすためには、不動産業務を見直し、効率化を図ることが重要です。業務の効率化は、コスト削減だけでなく、従業員の精神的・肉体的な負担を減らすことができ、退職リスクを軽減できます。

不動産業界の業務効率化:仲介

不動産仲介業務は、顧客対応、電話やメールでの返信、売上管理など、多忙を極めますが、不動産管理システムを導入することで効率化が可能です。不動産管理システムとは、不動産関連のさまざまな管理を行う専用のシステムです。システムを利用することで、定型業務を大幅に簡略化できます。

業務①顧客対応

システムの導入により顧客への対応がスムーズになるため、追客効果も期待できます。追客とは不動産業界で重要視される営業活動で、具体的には見込み客へ物件を紹介したり、キャンペーンを案内したりする活動などです。システム導入により、30以上のポータルサイトからの反響を自動で取り込むことができ、自動返信機能などにより素早く顧客とやりとりできます。

自動返信機能はこれまで獲得が難しかった潜在顧客にも定期的にアプローチすることも可能です。また、顧客一覧を見ればどの顧客に追客したらよいかがひと目でわかります。

業務②広告出稿

物件1件を登録するのに、アナログベースで行うと通常は30分もかかってしまいます。しかし、不動産管理システムには、広告出稿機能が搭載されているため、広告に出稿する物件の登録作業が効率よくできます。登録はこれまでポータルサイトごとに必要でしたが、不動産管理システムを利用すれば、30以上のポータルサイトに出稿可能です。物件の自動入力、コメント自動生成といった入力アシスト機能も充実しており、入力ミスや登録漏れも防げます。

業務③分析

分析は、業務改善を行う上で欠かせない業務です。しかし業務に追われていると、改善ポイントを探すためにさまざまなデータを分析する時間的な余裕がないかもしれません。そこで、分析業務にもおすすめなのが不動産管理システムです。

システムを使えば、これまでの蓄積されたデータを抽出してグラフや表で可視化できるため、改善の効果が期待できそうなところから見直しすることができます。例えば、エリア別、価格帯別など条件ごとに反響数をチェックできるため、データを分析することで追客効率を高めることが可能です。

不動産業界の業務効率化:賃貸管理

賃貸管理は、マンションなどの賃貸経営に関する業務のことです。具体的には、入居者の募集(客付け)から始まり、入居者対応(家賃回収、クレーム対応など)、修繕対応を行います。複雑で多岐にわたる業務ですが、一般的には不動産管理システムを利用することで以下の賃貸管理業務について効率化が図れます。

業務①管理物件の登録

システムの物件管理機能を使えば、入力補助機能がついているため、通常20〜25分かかる登録作業が半分以下の時間で済みます。Excelで管理していると、物件の登録数が増えるに伴い処理に負荷がかかってしまい、ソフトの機動が遅くなる場合があります。また、複数で同時に操作できなかったり、ファイルを探すのに時間がかかったり、など扱いづらいことも少なくありません。

しかし、賃貸管理システムでは、複数人で同時に操作でき、登録情報の抽出も効率的に行えます。物件データは賃貸管理システムの中で一元管理されているため、修繕やクレーム対応などの業務の進捗状況について現場にいなくても把握できます。

業務②集客・空室対策

自社のHPやポータルサイトに登録した管理物件情報を一括で掲載できます。複数のサイトに何度も同じ情報を入力する手間がなくなることで、集客・空室対策にかかる時間を短縮できます。

また、広告表示チェック機能により、掲載した物件情報に不備や禁止表現、または公正取引規定に違反する項目があれば検出することが可能です。ワンクリックで400以上の項目を素早くチェックできるため、工数を大幅に削減できます。集客・空室対策に悩んでいる不動産会社にとって、この部分の業務を効率化できるのは大きなメリットといえるのではないでしょうか。

業務③物件案内・契約

物件登録時に作成したデータから、資料や重要事項説明書、賃貸借契約書といった書類を一括で自動作成できます。書類の作成時間を短縮できるだけでなく、入力ミスや記載の間違いなどを大幅に削減することが可能です。自社のひな形をもとにカスタマイズして作成できるため、書類作成にかかる手間を省けます。さらに、支援システムを利用すればオンライン内見も可能です。遠方に住んでいる方や多忙で来店できない方などがオンライン内見を利用できれば、顧客層を新たに獲得できるでしょう。

なお、2022年5月改正宅建業法が施行され、契約書と不動産取引の重要事項説明書の電子化が解禁されました。電子契約を導入することで、書類郵送の手間もなくなります。内見から契約までをオンラインで行うことは、今後の不動産会社に必須の対応となるでしょう。

業務④物件維持管理

物件維持管理とは、マンションなどの建物や部屋の価値が損なわれないように検査したり、経年劣化した箇所を修繕したりする業務です。物件維持管理業務でも維持管理に関する情報の登録が必要ですが、賃貸管理システムを利用すれば、備品の発注や発注先、設備交換費用などをまとめて登録できます。点検や修繕の履歴、手配状況などをデータ化すれば、過去の履歴も簡単に調べられるため、さまざまな情報を関係者で共有することが可能です。入居者やオーナーからの問い合わせがあったときに有効利用できます。

業務⑤入出金管理

不動産管理業務の中でも、入出金管理はとくに負担の大きな業務です。不動産管理を行う企業の多くが以下のような課題を抱えています。

  • 入金があった際に行う入金消込業務に時間がかかる
  • 取引件数が多いと作業工数が増える
  • 債権・滞留管理も必要である
  • 作業が属人化しやすい

システムでは物件情報、入居者とオーナーの情報などを一元管理できるため、家賃滞納者への催促・督促状、オーナーへの月次報告書などの作成も簡単です。照合、消込、報告などの作業ができ、かつ報告書へ自動的に情報が反映されます。督促や報告の漏れも防止できるため、オーナーとの関係性を強めるとともに、信頼を獲得できるでしょう。

業務⑥契約更新

システムの更新管理機能は、さまざまな更新に関する処理をサポートする機能です。契約満了日が近ついている物件は自動的にリスト化できます。そのため、うっかり更新手続きをするのを忘れるということを防止するのに有効です。更新通知書や契約書の自動作成にも対応しているため、手間を大幅に削減できます。

業務⑦解約

賃貸借契約の期間は、一般的に2年間です。 そのため入居後2年を経過すると、入居者は契約の更新または解約を選択し、不動産会社に連絡をします。入居者から解約の通知が来ると、不動産会社は解約手続きに入りますが、この際にもシステムの解約管理機能が役立ちます。

解約管理機能は、解約月の賃料日割や保証金の清算、修繕費の相殺などを一元管理できる機能です。解約予定者の抽出、解約精算書の作成、解約手続きの進捗管理ができます。そのため、解約後にスムーズに集客業務に移れることもメリットです。

不動産業務効率化のツールを選ぶポイント

業務効率化ツールの種類はさまざまあり、スマホ向けの業務効率化アプリなどもあります。ここでは、業務効率化ツールを選ぶポイントを4つご紹介します。

ポイント①導入目的

まず導入の目的を明確にすることです。「他の企業も導入しているし、評判が良いから」という理由だけで導入するのはNGです。自社の課題を把握して、それを解決できるツールやシステムを導入しなければ、業務効率化は実現できません。そのためにも、現状の業務フローを見直し、何が問題点なのかを把握することが大切です。

ポイント②クラウドかオンプレミスか

これまでのシステムは、自社で構築したインフラで運用する「オンプレミス型」が主流でした。現在はインターネット環境とパソコンがあれば、どこからでも利用可能な「クラウド型」のシステムが増えています。クラウド型はソフトのアップデートにも対応でき、導入コストが安いことから選ばれています。

ポイント③使いやすさ

ツールを実際に利用したときの操作性も大事なポイントです。機能の種類が多く充実していても、使いこなせなければ、業務効率化は達成できません。そのため、機能面だけでなく、使い勝手も確認しておくことが大切です。とくに賃貸管理システムの導入では、操作しやすい初心者向けのシステムを意識して選ぶとよいでしょう。

ポイント④サポート体制

従業員の中には、新しいシステムが苦手な人がいるかもしれません。そのため、導入後のアフターフォローなどでしっかり対応しましょう。また、システムを使っていくうちに、カスタマイズが必要となってくることがあり、サポートに相談する機会が出てくるでしょう。そのためにも、電話やメールでの充実したサポート体制があるツールであれば導入後も安心です。

不動産業務効率化のツール導入事例

不動産業務の効率化に役立つツールはさまざまなものがあります。ここではツール導入事例を2つご紹介します。

事例①文書管理システムを導入したA社 

A社では、これまで契約書などの文書を紙で管理していました。そのため、「必要な書類を探すのに手間がかかり、書類がすぐに見つからない」「事業所間で書類を受け渡すのにコストがかかる」といった課題がありました。しかし、文書管理機能のあるシステムを追加してからは、必要な書類が検索機能ですぐ見つかるようになりました。

また、クラウドの利用により事業所間で書類を共有できるので、書類を簡単に確認できるようになり、業務効率化を達成できました。定常業務の負担が軽くなれば、それ以外の業務に注力できるようになることもメリットといえるでしょう。

事例②データの一元管理が可能なシステムを導入したB社

複数の商業施設の管理を行うB社が抱えていた課題は、管理システムや業務手順が施設ごとに違うため、別々に確認しなければならず、負担が大きいことでした。しかし、システムの導入により、管理システムが統一されたことで、一元管理が可能になり、業務効率を大幅に改善できました。

この企業のように、業務に関連する情報や書類が複数の事業所にある場合などは、データの収集や集計などにも相当な工数がかかります。しかし、一元管理することで、データ収集の手間が軽減されることに加え、データの重複や不整合が解消されるため、データ整備にかかる時間も短縮できます。

SMS送信サービスを活用した不動産の業務効率化

不動産業界で発生しているコミュニケーションの課題はSMSの導入で解決できます。SMS送信は、電話やメールまたはDMに代わる連絡手段としてさまざまな業種で注目されています。日頃の業務上の課題を解決し、DX推進にも役立つツールです。SMSは他のツールと比べて到達率と開封率が高いため、業務の効率化に加えて、コストの削減にもつながります。不動産業界では、家賃などの支払い督促、契約書類に記載不備があった際の連絡、プロモーションなど、多くのシーンでの活用が可能です。

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

「KDDI Message Cast」は、業界最安水準で長文も送信できる法人向けSMS送信サービスです。電話やメール、DMに代わる連絡手段として幅広い業界・業種で利用されています。他のツールと比べて開封率・到達率が高いため、重要なお知らせやリマインド通知など、多様なシーンで役立ちます。 配信量に応じて単価が下がる料金制で、安価で使用でき、また万が一届かない配信があった場合は、請求対象外となるので安心です。

Salesforce連携で顧客情報に直接送信することも可能です。

まとめ

不動産業界の仕事は、開発、販売、賃貸、管理といった業務があり、仕事の範囲が幅広く、残業が多い業界です。そんな不動産業界では、いまだにアナログで作業している企業もあり、デジタル化されていないことが残業の多い要因にもなっています。長時間労働をなくし、従業員の負担を軽くするために、業務効率化が求められています。そのためには、システムやツールの導入が有効な方法です。実際にツールを導入する際は、導入目的を明確にして、使い勝手を考慮して選びましょう。