業種:不動産業界

近年、さまざまな業界で進められているDXですが、不動産業界でもアナログな業務からデジタルを活用した業務へシフトし、消費者や社会のニーズに対応し始めています。この記事では、DXの導入が遅れている不動産業界の現状にスポットをあて、不動産業界でDXが求められている理由、現在抱えている課題、DXを導入する必要性やメリット、DX推進のプロセスとポイントなどについて解説します。

不動産DXとは?

ITやデジタル技術によりビジネスの仕組みや組織を変革するDX。近年では、さまざまな業界がDX化に取り組んでいますが、不動産業界でも導入を進めている事例が増えてきています。不動産業務では、顧客管理、書類手続きや入居業務などに効率化できる部分が多いですが、未だにアナログな手法が残っている業界であり、DX化が求められています。

不動産のDX化は、システムの統合、クラウド活用、ペーパーレス化などのプロセスのデジタル化が中心です。重要事項の説明業務をオンラインで実施すること(IT重説)も国土交通省に認められています。

不動産業界では、DX推進体制やプロジェクトの実行能力などが評価された大手不動産会社「三井不動産株式会社」をはじめ、DXの導入に成果が見られた企業が「DX銘柄2022」に選定されました。DX銘柄とは、上場している企業からデジタル活用で優れた実績をあげている企業を業種区分ごとに選び紹介するものです。

不動産業界のDX化はどのくらい進んでいる?

不動産テック7社・1団体が実施したDX推進状況調査によると、アンケートに回答した不動産事業者のうち約90%が「DX推進をしている」と答え、前年のアンケート調査結果と比べて1.5倍増加となりました。また、DXの目的は「業務効率化」が最も多く、「集客力アップ」「成功率アップ」がそのあとに続きます。DX年間予算は、「50万円以上」が67%、そのうち「100万円以上」は50%以上でした。「1,000万円以上」も18%存在していることから、本格的なDX投資を進めている企業が20%近くあることがわかりました。

参照:不動産事業者のDXは昨対1.5倍の90%超、DX予算規模も明らかに

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か

DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略です。2004年にスウェーデンのストールターマン教授が提唱しました。「ITの浸透が、人々の生活をより良く変化させる」という意味があります。ビジネスでは、IT化、AI、IoTなどのデジタル技術を使い、これまでとは異なる新しいビジネス形態を実現することを意味します。新たなデジタル時代に勝ち残れるように、企業が自社の競争力を高めることが目的です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?DX推進のメリットと課題も解説

不動産業界においてDXが必要とされる理由

不動産業界でDXがなぜ必要なのか、主な理由を3つ解説します。

アナログ作業の常態化

不動産業界は、古い商習慣により変化の少ない業界です。ITによる顧客管理を行っていてもシステムが古いままだったり、手書きで帳票を作成したり、など古い商習慣がDXの効率化を阻んでいるのです。重要事項説明の電子化も、2021年3月30日になってようやく施行されました。このような状況を打破するには、IT化やITの活用からさらに進んで、商習慣や企業風土の改革が求められます。

人手不足

不動産業界が抱えている問題の1つが長時間労働です。パーソル総合研究所と東京大学の教授による、残業実態調査の結果、各業種での残業実態がわかってきました。不動産業界は14業種のうち4番目に高く、30時間以上残業している人(管理職を除く)の割合は31.8%でした。月平均は21.6時間です。長時間労働による就労意欲の低下に加えて、不動産業界ではサービス残業が多いため、離職率が高いことも慢性的な人手不足につながっているのです。

参照:

パーソル総合研究所×東京大学 中原淳准教授 「希望の残業学プロジェクト」 会社員6,000人を対象とした残業実態調査の結果を発表 – パーソル総合研究所

ニーズの多様化

市場規模が拡大傾向を続けている不動産業界では、インターネットの普及により、顧客ニーズの多様化が顕著となったことも、DXが必要とされる要素に挙げられます。顧客はスマホなどで自ら情報収集を行い、自分のライフスタイルに合った商品やサービスを探すことが日常的になっています。近年は不動産を選ぶ際にも店舗に足を運ぶ機会が少なくなり、パソコンやスマホで物件を検索して情報を取得することが可能です。さらに新築不動産に限らず、中古不動産や付加価値を加えたリノベーション物件の需要が高まっており、顧客ニーズが複雑化してきました。こうした顧客ニーズに対応するために、DXは欠かせません。

不動産業界がDX推進に取り組むメリット

不動産業界がDXを推進することで期待できる主なメリットを解説します。

業務効率化による生産性の向上

DXの活用により、従来のアナログ方式からデジタルにシフトすることで、業務全体の効率化がアップし、生産性向上につながります。具体的には目視で行っていた物件情報をシステムで一括管理できることや、予約システムにより予約電話への対応に追われることがなくなります。また、生産性が向上すると、余ったリソースをコア業務である顧客とのやりとりに集中できるようになることも大きなメリットです。SNSなどのクチコミは宣伝材料として効果を発揮しますが、コミュニケーションが活発になれば、お客様に何度も選ばれるようになり継続的な利益につながるでしょう。

人手不足問題の解消

人手不足が課題となっている不動産業界では、DX導入によってこの問題の解消が期待できます。具体的には、事業プロセス自動化技術の一種であるRPA、AIなどを活用することで、定型業務の自動化が可能です。

見込み顧客からの問い合わせには、チャットボットを取り入れれば、AIが自動で返信するため、対応する人員や労働時間の削減も可能です。またAIを活用した価格査定システムを導入すると、膨大なデータから必要な情報だけ収集し、不動産の価格を瞬時に出すことができるなど、時間や手間を大幅に削減できます。

労働環境の整備

DXの推進により、業務の効率化、人手不足問題の解消が実現できると、企業で働く従業員の労働環境改善にもつながります。たとえば物件査定などの経験や知識が必要な業務でも、膨大なデータと連携しているシステムが導入されていれば、経験値の低い社員でも対応でき、業務の幅を広げられます。また顧客対応に追われる長時間労働環境が改善されることで、余裕を持って仕事に取り組めるでしょう。こうした労働環境の改善は仕事に対するモチベーションアップにつながります。

付加価値やビジネスモデルの創出

ビジネスで企業の競争力を高めるためには、新たに付加価値やビジネスモデルを創出することが重要です。業務の効率化だけでは限界があるため、付加価値やビジネスモデルを生み出すことで、ビジネスそのものの価値を大きく引き上げていく取り組みが必要です。DXを推進することで、付加価値やビジネスモデル創出の機会が得られるため、企業価値を高めることにつながります。

人件費など経費の削減

不動産業界でDXに取り組むと人件費や印刷費などのコストを削減できます。システムの導入によって自動化すれば人材を減らすことが可能で、外注で済ませていた作業を内製化する余力も生まれるでしょう。不動産業界では書類の取り扱いが多いですが、電子署名の導入やペーパーレス化を進めれば印刷費や消耗品費、書類の保管費用などを削減できます。経費削減が課題となっているときには初期投資をしてDXを進めた方が長期的には利益になります。

2025年の崖への対策

日本では2025年の崖に向けて対策が必要な状況にあります。2025年の崖とは経済産業省が「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」で指摘した警笛です。既存システムの課題を克服できなければ2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じると主張しています。

レガシーシステムでは事業部門ごとにシステムが構築されて、横断的なデータの利用ができないのが一般的です。システムの複雑化によって連携を取るのが困難なのもシステムの統合を妨げる原因になっています。この状況から脱却するには本格的にDXに取り組むことが必要です。

不動産業界では古くから使用されてきたレガシーシステムがある場合がほとんどです。抜本的にシステムを入れ替えてデータ活用を全社でおこなえる体制を整えるには覚悟が必要になります。しかし、2025の崖を乗り越えるためには不可欠な施策です。率先してDXに取り組めば、有利な立場で経営を続けられるようになります。

参照:

DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)

不動産業界のDX推進におけるデメリットや課題

不動産業界でDX化をするには課題があります。ここではDXを推進する際の課題をデメリットと合わせて詳しく解説します。

システムの導入にコストがかかる

新しいシステムの導入には予算を用意しなければなりません。システムを新たに導入するには初期費用に加えて、社員の教育コストもかかります。また、新システムを活用するための社内フローの見直しも必要になるため、業務コストもかかるのがデメリットです。

近年のシステムはインターフェースが優れているので使いやすいことが多いでしょう。しかし、システムの細かな機能をすべて活用するにはマニュアルだけでは十分ではない場合もあります。社内の業務フローも研修で説明しなければなかなか浸透しないことがあります。繰り返し社内研修を実施してDXを進めなければならない場合もあるので注意が必要です。

システムを導入した後はランニングコストも発生します。システムの契約費用やメンテナンス費用がかかることを加味して、中長期的な予算確保をしなければならないのが課題です。

自社に合うシステム選びが難しい

不動産業界には仲介やコンサルティングなどのさまざまな種類のサービスがあります。自社の事業の内容や規模に合わせて適切なシステムを選び出すのが大きな課題です。DXに有用なシステムは多数あり、サービスの内容も料金体系も異なります。費用対効果を最大化し、長期的に成長できる基盤になるシステムを選び出すのは容易ではありません。

クラウド型のシステムが増えていますが、オンプレミス型のシステムに比べて優れている面も劣っている面もあります。導入しやすさではクラウド型が優れているでしょう。しかし、オンプレミス型の方がカスタマイズ性が高くて自社に合うシステムを作り上げやすいメリットがあります。他にもシステムのサポートの状況や、インターフェース、利用できるデバイスなども重要なチェックポイントで、ベストなシステムを選ぶのに多大な苦労があります。

導入に手間がかかる

新しいシステムの導入によるDXは手間がかかるのがデメリットです。システムを導入するのはDXを推進する近道だと考えがちです。しかし、システムの導入までにまずシステム会社との打ち合わせで長大な時間がかかります。

レガシーシステムが存在する状況から乗り換えるには、社員が受け入れてくれる新システムにすることが必要です。今までの業務フローと比較して、メリットがあると社員に実感してもらえるシステムにしなければ不満が募ってしまうでしょう。現場の社員にヒアリングをして要望を取りまとめ、システム会社と相談してカスタマイズしてもらうことが必要です。

なかなか一元化されたシステムにまとめて入れ替えるのが難しい場合もあります。段階的にシステムを導入して統合していくというステップを踏まなければならないことも多いのが問題です。

不動産業界でDXを推進する方法

不動産業界におけるDX化の推進プロセスを4ステップで解説します。

DX戦略とは?立て方や推進プロセス、成功のポイントもご紹介 – SMS送信サービス「KDDIメッセージキャスト」

プロセス①組織作り

DX推進では、業界を問わず、組織的な体制づくりが欠かせません。日米のDXの取組状況について、「IPAのDX白書2021」を参照すると、DX推進に対して圧倒的に米国企業の方が積極的に取り組んでいることがわかります。また、組織的なDX推進の項目で、経営者、IT部門、業務部門の協調について日米の企業を比較すると、違いが明確に表れています。米国の企業では、協調性を重視しており、組織的なDX推進体制を重要視していることが顕著です。

参照:IPA DX白書2021

プロセス②目的の明確化

つぎにDXを推進する目的を明確にしておくことが重要です。業界によってDX推進の目的はさまざまで、目的によりDXの進め方や導入するシステムが異なります。そのため目的が曖昧では、自社の業務内容に合っていないシステムを導入してしまう可能性があります。目的がビジネスモデルの創出なのか、業務効率化なのかで運用方法が異なります。目的はその後の方向性を決める大切なステップです。組織全体で明確な目的意識を共有し、どのようにDX化を行えば、ビジネスの成長につながるのか考えましょう。

プロセス③人材の確保

DXを推進するにはDXに精通した人的リソースが必要です。どの業界にもいえることですが、DXを推進したくても対応できる人員が不足していることが課題となっています。不動産業界に限らず、DX推進にはデジタル人材が必要です。デジタル人材は最先端のデジタル技術で企業に新しい価値を提供できる知識とスキルのある人材のため、多くの企業で求められています。人員を確保するにはDXパートナー企業と提携することも選択肢の一つです。

プロセス④システムの導入

DX推進の準備が整ったら、DX推進の目標を目指して、できることから実践していきます。まずDX化で欠かせないのがシステムの導入ですが、社内の全システムを一気に見直すと混乱を招きかねないため、段階的に進めていきましょう。不動産業界に有効とされるシステムはいろいろあり、選定に迷うと思いますので、システム選びのポイントについては後述します。

不動産業界のDX推進システムの選定ポイント

DX推進を実現するにはシステムが欠かせません。ここではシステム選定の主要ポイントについて解説します。

DXツールとは 成功事例や活用状況、導入のメリットや選定時の注意点などを解説 – SMS送信サービス「KDDIメッセージキャスト」

DXソリューションとは 成功事例や導入方法、選定のポイントなどを徹底解説 – SMS送信サービス「KDDIメッセージキャスト」 – SMS送信サービス「KDDIメッセージキャスト」

明確な目標が重要

DX化に必要なシステムは、DX推進の目標によって異なります。DXは短期で取り組めるものではなく、中長期的に進めていくものであるため、明確な中長期ビジョンを決めておくことがまず重要です。それはシステムの選定に必要なだけではなく、今後のDX推進の方向性を固める意味でも非常に重要なポイントとなります。「DX推進でどのようなことを実現したいのか」という目標を明確にすることが、自社に最適なシステムを選定する最初の判断基準になります。

付加価値がある

DX推進は、データやデジタル技術による変革であるため、検討しているシステムが自社のビジネスを変革させるものであることが重要です。すなわち、ビジネスモデルの創出や新たな付加価値がシステムで実現できることが求められます。自社の中長期ビジョンに適したシステムであるかどうかを精査しましょう。

柔軟性、拡張性、使いやすさ

DX推進の際に導入するシステムには、後で機能を追加したり、性能を向上させたりする場合のために、柔軟性や拡張性が求められます。ビジネス環境の変化に伴い、DXの在り方も変わっていくからです。また、システムの使いやすさも重視すべきポイントです。DXは経営者、IT部門と業務部門が組織的に行いますが、ITリテラシーがどのくらいあるかは人によってさまざまです。そのため組織全体で扱えるようにシステムの使いやすさも検討しましょう。

導入後の運用方法

システムを導入したら活用していきます。DX推進でありがちな失敗が、システムを導入したらそれで終わりになってしまうケースです。DX推進をサポートするためのシステムなので、導入すること自体が目的ではありません。検討しているシステムにはどのような運用プランがあり、どれほどDX推進に貢献できるかを検討することが大切です。また業務に合うシステムを構築しても、途中で業務プロセスが変わる場合も予想されます。そのような場合はシステムのアップデートなどの見直しが必要ですので、導入後の運用方法も確認しておきましょう。

不動産業界でのSMSの活用事例

不動産業界では、到達率と開封率の高さから、SMSの活用が進んでいます。SMS活用の事例として、電話や手紙などの連絡手段をSMS送信に変更し成功した例があります。不動産会社では、入居者の方への家賃督促は電話または手紙で連絡していましたが、手間と時間が非常にかかっていました。そこで、SMS送信に変更することで、これまでの連絡業務に費やしていた時間と手間を短縮でき、さらにペーパーレス化も可能になりました。また入居者の方の電話番号宛に直接送信できるため、確実に本人に届けることができ、送信履歴も残っているためトラブルの際にも安心です。

不動産業界でのSMS(ショートメッセージ)活用事例について

SMS(ショートメッセージ)送信サービスの不動産業界での活用ポイントと活用ケース

住宅展示イベントでのSMS(ショートメッセージ)活用について

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

KDDI Message Castは、大手のKDDIが提供する、法人を対象としたSMS送信サービスです。最大660文字までの長文配信、画像や動画などの配信、国内直収接続による高い到達率などが特徴です。また、誤配信防止機能が搭載されているのも安心ポイントです。初期費用や月額費用などの負担がなく、低予算で始められるのも嬉しいポイントといえるでしょう。SMS送信サービスなら、ぜひKDDI Message Castをご利用ください。

まとめ

不動産業界では、書類のやり取りや顧客管理・情報管理などの業務でアナログ方式が未だに残っている企業が少なくありません。その中でも大手の不動産会社は先駆けてDX化へ取り組み、成功しています。不動産業界のDXでは、業務フローの見直し、人手不足の解消、DX推進システムの選定など、多様な作業が必要ですが、DX化による恩恵はそれ以上に大きいといえるでしょう。中長期的なビジョンを明確にして、DX実現に向けて今できることから始めてみましょう。

KDDIのSMS送信サービスについて詳しく知りたい方はこちら