業種:医療業界

ヘルスケアや医療の分野ではCRMの導入の必要性が話題になっています。国民の医療・健康をサポートする業界でCRMがなぜ必要なのかが疑問になっている人もいるでしょう。この記事では医療業界でCRMを導入するメリットと成功事例をまとめました。具体的なメリットを確認して、現場課題の解決手段としてCRMの活用が有効かどうかを考えてみてください。

ヘルスケア・医療業界でCRMが注目されている理由

ヘルスケア・医療業界でCRMの導入・活用が進められているのはDXのために不可欠という認識が広まったからです。デジタル技術を活用して変革を起こし、より良い医療サービスやヘルスケア商品を提供することが社会的に求められるようになっています。患者・顧客がより高い水準のサービスを求める時代になり、ニーズに応えられる対応をしなければ選んでもらえない問題が生じます。

CRMを導入すれば患者や顧客の情報を統合的に管理できます。データに基づいて提供すべき医療を検討したり、提案するヘルスケア商品を選定したりすることが可能です。電子カルテの導入に伴って、病院やクリニックの間では患者情報の共有もしやすくなりました。CRMで自院の患者の情報を他院と共有し、医療業界全体として品質を向上させる取り組みに貢献することもできます。DXによる自院の差別化という点でもCRMの導入が基盤になると考えられるようになっています。

医療業界が抱える課題

ここではヘルスケア・医療業界では解決しなければならない課題を解説します。CRMによって解決できるかを考えてみましょう。

高齢化に伴う患者数増加

医療業界で切実なのが高齢化に伴う患者数の増加です。日本では団塊の世代が高齢者になり、少子化が進んでいることもあって将来的には3人に1人程度が高齢者になる時代が到来すると言われています。内閣府の令和4年高齢社会白書では高齢化率は28.9%です。令和47年(2065年)には65歳以上の人が2.6人に1人を占めると予想しています。

高齢者になると心身に不調を生じやすくなります。高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクも高まりますが、各種がんの医療、緑内障や白内障などの目の疾患の治療、怪我によるリハビリの対応なども必要です。厚生労働省による調査では1日当たり医療費の伸び率は令和2年で5.8%で、令和元年の3.2%よりも飛躍的に上がっています。今後も増加する患者に対応できるように体制を整えなければならない状況があります。

参照:
令和2年度 医療費の動向」を公表します~概算医療費の年度集計結果~ |厚生労働省
第1節 高齢化の状況|令和4年版高齢社会白書(概要版) – 内閣府

他の医療機関との連携不足

ヘルスケア・医療業界では連携不足によって効率を上げられない状況が続いています。カルテ情報の共有ができていないのが大きな課題です。電子カルテによって共有がだんだんと進められる状況が出てきましたが、まだ徹底した医療機関間の連携ができているケースは多くありません。

従来のように患者に紹介状を書いて他院に転院させるには書面の作成をして郵送するか、患者に渡して紹介先で医師に渡してもらう必要があります。患者の治療が遅れてしまう原因になりかねません。患者の状態によっては紹介先の医療機関がすぐに思い当たらず、紹介先を探さなければならない場合もあるでしょう。他の医療機関との連携不足は医療の品質を低下させる原因になるので早急に対処しなければならない課題です。

医師不足の深刻化

医師の不足はヘルスケア・医療業界の切実な課題です。医療において中心的な役割を果たす医師が足りず、外来患者に対応しきれない、入院患者に十分な時間を割いて診察できないといった状況があります。医師の不足によって朝一に来院した患者が夕方まで診察を受けられない、予約を取りたいのに数週間先まで予約が埋まっているといったことも少なくありません。

診療科によって医師の不足状況にも違いはありますが、小児科などの医師の負担が大きい診療科では人材不足が切実です。医師の充足度は地域差も大きく、地方では医師がほとんどいない場合もあります。過疎化が進んでいる地方では満足な医療を受けられないことも稀ではありません。少子化によってさらに医師不足が深刻化するリスクがあるため、医療業界では別の角度からの対応が必要になっています。

IT化・DX化の遅滞

医療業界では他の業界に比べてIT活用による業務効率化が遅れているのも課題です。DXが推進される時代になっているものの、積極的にコストをかけてIT化やDX化を進めるのは医療業界では困難な状況があります。医療保険制度の診療報酬によって収入が厳しく制限されていて財源確保が難しいからです。破綻のリスクを抱えながら経営している医療機関も多いため、コストをかけてIT化・DX化を進めにくいのが深刻な問題です。

対応品質悪化による顧客満足度の低下

ヘルスケア・医療業界ではたくさんの課題を抱えています。結果として患者や顧客への対応品質が悪化してしまい、満足度の低下につながるリスクを抱えています。課題が多いから改善できないという言い訳をしても患者や顧客が納得するわけではありません。医療業界では厳しい状況に置かれていても顧客満足度を向上するための取り組みを続けなければなりません。サービス業としての自覚を持ち、品質の維持向上を実現する仕組み作りが課題になっています。

医療業界でのCRM導入メリット

CRMを導入すればヘルスケア・医療業界が抱える課題の解決を目指せます。ここではCRMによって実現できることと合わせて、導入のメリットをわかりやすく解説します。

患者データを管理できるようになる

CRMの導入メリットとして大きいのは患者のあらゆるデータを効率的かつ活用しやすい形で管理できるようになることです。CRMを使用すると患者一人一人についての情報を個別に集約管理できます。診察内容や検査結果だけでなく、治療歴や薬歴、看護記録なども一元管理することが可能です。入院中の投薬管理や術前術後ケアの実施状況なども同じシステム上で取り扱えるので、データに基づく適切な医療を進められるようになります。

CRMを導入すると他院への紹介などで医療機関の間での情報共有が必要な際にデジタルデータとして簡単に共有可能です。電子カルテや医療業務システムとの情報連携によって入力の手間も省けます。正確な患者データを最新に保つシステムづくりは必要ですが、患者情報の一元的なデジタルデータによる管理によって業務の品質と効率を同時に向上させられます。

医療機関の情報や薬の在庫管理ができる

医療機関や医薬品などの情報管理にもCRMは有効です。転院先の候補や必要な検査を受けられる機関の情報のデータベースとして活用できます。また、患者にとって必要な薬の在庫の必要量を計算して不足がないように対応する情報源になります。製薬メーカーや医療機器メーカーとの連携によって、薬の使用状況や在庫情報の共有によりメーカー側から主体的に納品してもらい、在庫管理の自動化を実現することも可能です。

地域の医療機関と連携がしやすくなる

地域の医療機関との連携はCRMによって円滑化できます。電話やFAX、郵送などによるやり取りをせずに、システム上で医療連携ができるからです。自院だけでなく他院でも連携可能なCRMを導入していることは必要ですが、患者情報をヒューマンエラーなくタイムリーに共有できるのがメリットです。地域全体の取り組みとして同じCRMを病院・クリニックで統一的に導入すれば、地域全体での医療連携をするインフラを整えられます。

病院スタッフ間の連携がしやすくなる

CRMは患者に紐づいたデータを通して病院スタッフ間の円滑なコミュニケーションを促すことができるのがメリットです。最新の検査結果などの医療情報がすべてCRMに集約されると、スタッフ間での口頭や書面による情報共有が必要なくなります。CRM上で情報共有をして連携するという意識を育むことで、迅速な医療対応ができるようになります。チーム医療が重要な現代医療では連携強化の手段としてCRMが有効です。

業務を効率化できる

CRMの導入は医療業務の効率化に直結します。医療現場ではさまざまな専門性を持っている医療スタッフが働いています。患者の検査から投薬に至るまでのプロセスを例に取ると、臨床検査技師が検査した結果を医師が見て診断を下し、薬剤師に医薬品のオーダーを出して看護師に投薬の指示を出すといったフローになっています。CRMで情報共有をすれば医師が個別に指示を出す必要がなくなり、システム上で円滑に個々の業務を進めていく体制を整えることが可能です。

関連リンク:医療業界の業務効率化を実現する方法6選 課題解決のメリットや成功事例をご紹介

病院の経営体制を強化できる

病院経営に必要なデータを蓄積し、今後の経営体制を強化できるインフラができるのはCRMの魅力です。経営体制を強化して安定して品質の高い医療を提供できるようにすることは医療業界では欠かせません。CRMを導入して継続的にデータを蓄積していくことで、経営上改善すべき点を見つけられるようになります。患者層の変化を見て医療スタッフの増員や配置変更などの対応をおこない、効率的な経営の実現に向けた取り組みを進められます。

医療業界でのCRM導入事例3選

医療業界にはCRMの活用に積極的に取り組んでいる企業・団体もあります。CRMは導入するだけで活用できなかったら成果につながりません。ここではCRM導入による成功事例を紹介します。

東京医科大学八王子医療センター

東京医科大学八王子医療センターではかかりつけ医検索システムをベースにしたCRMの導入で成功しています。先進医療と地域医療の両立を進める同センターでは地域との医療連携が課題になっていました。患者が医療を決める時代に変わってきたことを考慮し、かかりつけ医検索をホームページに載せて医療連携の同センターのサービス案内を示しています。導入によって地域連携をするインフラが整えられ、広報活動の積極展開をするきっかけになっています。

参照:東京医科大学八王子医療センター様の地域医療連携システム活用事例|地域医療連携システム「メディグル」

公益財団法人心臓血管研究所付属病院

公益財団法人心臓血管研究所付属病院ではCRMの導入と積極的な運用によってデータに基づく運営体制を構築しています。同研究所は訪問ケアも実施している地域に根ざした専門病院です。CRMの導入以前は、紹介を受けたときに対応に時間がかかっていたり、訪問医療の優先順位を決めるのが困難だったりする問題がありました。CRMによって紹介データや訪問記録を一元管理できるようにしたことで無駄のない対応ができるようになっています。

参照:心臓血管研究所付属病院様の地域医療連携システム活用事例| 地域医療連携システム「メディグル」

小林製薬

小林製薬ではCRMの導入によってお客様相談室の課題解決に成功しました。クレーム管理や顧客フォローはヘルスケア製品や医薬品の製造販売をする企業にとって欠かせません。同社では部署ごとに個別にデータ活用を進めていたため、データの共有・連携ができていませんでした。CRMの活用によってお客様相談室と営業・品質保証の部署間連携がデータを基にして簡単にできるようになり、情報提供のクオリティの向上に成功しています。

参照:小林製薬株式会社様 | 導入事例:事例一覧|FastSeries(ファストシリーズ)

医療業界の業務課題解決はSMSの活用がおすすめ

医療業界での業務課題ではSMSの導入・運用が解決につながります。SMSは到達率が高く、すぐに相手にメッセージを届けられるのが特徴です。医療施設間の連携では電話をかけてもつながらず、なかなか連携を取れないことがよくあります。SMSで連絡し、URLを記載して患者情報を共有すると円滑に連携が取れます。スタッフ間の情報共有でもSMSを活用できます。患者への連絡手段としても伝わりやすいメリットがあるのでSMSはおすすめです。

関連リンク:医療業界でのSMS(ショートメッセージ)送信サービスの活用事例

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

ヘルスケア・医療業界でSMSを活用するならKDDI Message Castをおすすめします。KDDI Message CastはSMS送信サービスで、一斉送信やAPI連携などの多岐にわたる機能を兼ね備えているのが特徴です。Salesforce連携もしていてCRMの運用とも親和性が高いサービスです。患者のフォローをするツールとしても、現場での連携をするシステムとしても優れています。導入にも6〜10営業日程度しかかからないので迅速に業務改善を目指せます。

まとめ

ヘルスケア・医療業界ではCRMの導入が欠かせない時代になっています。患者や顧客の情報を一元管理して、医療機関の間やスタッフの間で円滑な情報共有をおこなえる体制を整えて今後の医療のひっ迫に対応していくことが大切です。CRMの導入を考える際にはSMSの活用も並行して検討しましょう。SMS送信サービスを導入すればSMSのメリットを活かして迅速な情報の連携・提供ができます。CRMと連携することでさらに業務の効率と品質を向上させられるのでおすすめです。