DXではデザイン思考によって成功している事例があります。しかし、DX推進にはデザイン思考が必要かが疑問に思っている人もいるでしょう。アート思考などの他の思考方法でアイデアを出してもDXに成功できるのではないかと思うのももっともなことです。この記事ではDXでデザイン思考が重要視される理由を解説します。DXデザインによって成功した事例や、DXに有効なSMS送信サービスについても紹介するので参考にしてください。

DXとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とはデジタル技術の活用によって社会やビジネスに変革を起こし、優位性を確立することです。企業にとっては競合に優る価値を創出するためにITやデータを活用することを指します。

関連リンク:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?DX推進のメリットと課題も解説

デザイン思考とは

デザイン思考とは価値創造の手段としてターゲットの潜在ニーズを追求し、ニーズに応える価値を生み出す思考方法です。米国スタンフォード大学「d.school」での教育事例が有名で、汎用性が高いことからDXに限らずさまざまなシーンで活用されています。「デザイン思考」をビジネスで話題にするときには基本的に「売れる」ことを念頭に置く商品・サービスのデザインのための思考方法を意味します。芸術という意味合いの「デザイン」とは異なるので注意が必要です。

ビジネスにおけるデザイン思考では商品・サービスのターゲットになる消費者や市場の調査を通じてニーズを把握します。そして、ニーズに合う商品・サービスのデザインをするというアプローチです。ニーズは必ずしも顕在化されていないため、デザイン思考をスタートするには調査による潜在ニーズの把握が重要になります。情報の収集と分析を徹底して実施するのがデザイン思考を進める基本になっています。

デザイン思考の2パターン

デザイン思考には漸進型イノベーションと不連続イノベーションの2パターンがあります。DX推進の際には2つの違いを意識することが重要です。ここではデザイン思考の2パターンの特徴を端的に解説します。

漸進型イノベーション

漸進型イノベーションとは抜本的な変革を起こすのではなく、現状の問題点を着実に改善して質を向上させるデザイン思考のアプローチです。ターゲットや市場のニーズを調査し、課題を明確化して解決していくことでイノベーションを起こします。

漸進型イノベーションは一定のニーズがある商品やサービスの売上・シェアを伸ばす目的に合っている方法です。一つの取り組みによって大幅な改善が見られることはあまりありませんが、改善を積み重ねていくことで大きな変革になる可能性があります。ブランドを活かして推進すると企業成長にもつながるのが魅力です。

不連続型イノベーション

不連続型イノベーションとは新しいアイデアを取り入れて、既存の商品やサービスとは抜本的に異なるビジネスを生み出す方法です。今までと同じアプローチではニーズに応えられないという視点を持ち、情報に基づいてまったく異なる商品をデザインしたり、サービスを考案したりするのが不連続型イノベーションの特徴です。

ビジネスの環境変化によって既存事業では将来性が懸念される場合があります。既存の商品やサービスの成長を期待するよりも、新規ビジネスに取り組んだ方が今後の企業成長になると考えられる場合に適しているアプローチです。

デザイン思考とアート思考の違いとは

比較項目デザイン思考アート思考
思考のスタート地点ターゲットのニーズ自分のアイデア
実現可能性高い低い場合がある
オリジナリティ低い場合がある高い
必要な能力論理的思考力創造力

デザイン思考と並んでアート思考は新しい価値を創出する上で重要視されています。大きな違いは思考のスタートがターゲットとなるユーザーニーズか、自分のアイデアかです。デザイン思考ではニーズ重視で考えるのでオリジナリティは低くなる場合がありますが、実現可能性が高くなります。アート思考では自分自身の独創的な発想が起点になるのでオリジナリティは高いですが、あまりにも現実性がなくて実現が困難な場合があります。

デザイン思考は論理的思考によって進めるのに対して、アート思考は創造力が原動力になるのも違いです。DXでは合理的なデザイン思考がよく用いられていますが、アート思考も組み合わせるとさらに高い価値を生み出せる可能性があります。

DXでデザイン思考が重要視される理由とは

デザイン思考がDXで重要視されているのは、デザインによってユーザーエクスペリエンスの向上を図ることが価値を生み出すのに不可欠になっているからです。優位性のある商品やサービスを生み出すには、ユーザーに選んでもらえる価値を創出しなければなりません。

DXではデジタル技術を活用してデータを収集することはできますが、データをどのようにして生かすかは企業次第です。デザイン思考は商品やサービスのターゲットを重視する方法で、データをユーザー視点で生かすアプローチを考える基盤になります。ニーズに応えるデザインをしなければ競合他社との競争に勝ち抜けない時代だからこそ重要な思考方法です。

DXにデザイン思考を取り入れるメリット

DXにデザイン思考を取り入れれば、以下の2つの観点から競合に対して優位な立場でビジネスを展開できるようになります。

ターゲット視点でDXを推進できる

デザイン思考によって自社がターゲットとするユーザー視点でDXを推進できます。DXによる優位性の確立には、ニーズを理解して実現することが必要です。デザイン思考で商品・サービスの開発に取り組むことで、データに基づくアイデアの創出や既存商品・サービスの改善を実現しやすくなります。ユーザーファーストの現代のビジネスでは欠かせない視点なので、デザイン思考を社内に浸透させればDX推進の成功の可能性が高まります。

組織・個人が共に成長できる

DXにデザイン思考を取り入れると組織も個人も成長できるのがメリットです。デザイン思考では調査によるデータの収集から始まり、データの分析と考察をしてアイデアを創出することが求められます。個人のデータ分析スキルや思考力を育めるのは明らかです。個人のスキルアップになるだけでなく、分析結果やアイデアについての意見交換を通して組織全体として結束力が高まります。DXのアイデアを議論する場を設けるとさらに組織力の向上にもつながるでしょう。

DXデザインを成功させるためのポイント

デザイン思考に基づいてDXデザインを成功させるには体制整備を徹底する必要があるので、具体的なポイントを解説します。

DXによる経営・事業戦略の明確化

デザイン思考によるDXの成功には経営戦略や事業戦略を明確にして社員に浸透させるのが重要です。DX推進を打ち立てるだけでは具体的に何をすれば良いのかを社員が理解できません。具体的な戦略を立てて社員全員に伝えることで、組織としてDXデザインを積極的に進められるようになります。DXに必要な人材の獲得やデータベースシステムなどの整備もおこない、デザイン思考によるDXに必要なインフラを整えることも欠かせません。

ITリテラシーやプライバシーポリシーの教育の実施

DXでデザイン思考を活用して失敗しないためには徹底した社員教育が必要です。ITリテラシーやプライバシーポリシーについての理解を徹底することはDXでは欠かせません。ユーザー情報の取得や管理、利用などについての基本的な方針を整えて周知することが大切です。ITリテラシーの不足によってユーザーからクレームが来るような事態は避けなければならないので、定期的な研修を実施して社員の意識を高めましょう。

DXでデザイン思考を実践するための方法

デザイン思考は基本的な流れに沿って進めるのがおすすめです。ここではデザイン思考の実践の流れを解説します。

ユーザーの把握

ビジネスにおけるデザイン思考はユーザーの把握がスタート地点です。自社の商品やサービスのユーザーをまずは定義し、市場調査をしてどのようなニーズがあるかを調査しましょう。また、ユーザーの立場になって何が必要か、何が不満かを考える方法もありますが、思い込みによって誤解するリスクがあります。DXではデータの収集や活用をするのが基本なので、インターネットやSNSの情報やアンケート調査などを駆使して情報を集めましょう。

課題の発掘と定義

デザイン思考ではユーザーのニーズのデータに基づいて課題を探り、明確に定義するのが重要なステップです。調査したデータを整理して、ユーザーが満足していること、不満に思っていること、期待していることなどに分類します。ユーザーの満足している点は維持向上しつつ、不満点を改善したり、期待に応えたりすればDXにつながります。不満や期待の表現方法はたくさんありますが、抽象化して統合し、いくつかの課題としてまとめましょう。

アイデアの創出

課題をまとめたらアイデアを創出します。課題解決のために何ができるかを考えましょう。デザイン思考では最も重要なステップです。まずはベストなアイデアを出そうと思うのではなく、できるだけたくさんのアイデアを出していきましょう。複数のアイデアを組み合わせることでより良い方向性を見出せることもあるからです。アイデアは個人で考えても出せる数が限られているので、チームで取り組んでアイデアを増やすのが良い方法です。

アイデアの具体化

アイデアを出したら課題解決に最も効果的な方法を具体的に考えます。アイデアには非現実的なものもある場合があります。具体化が可能か、複数のアイデアを組み合わせられるかといった視点で検討して、商品・サービスの開発・改善の方策を決めましょう。アイデアを新たな商品やサービスとして具体化できたら、検証のための実施計画を立てます。実施のために必要なリソースを確保し、試作品の設計・開発を進めましょう。

検証・テスト

新しいアイデアで生み出された商品・サービスを実際にテストして、今回のアイデアが正しかったかどうかを検証します。テスターのユーザーを募集して試作品を使用してもらい、ユーザーからのコメントを得るのが基本的な方法です。コメントを受けて課題解決になったか、新しい課題が発生していないかを確認します。ユーザーの不満が大きい場合には再度デザインをして新しいアイデアを出し、仮説検証を繰り返して改善を目指していきます。

関連リンク:DX戦略とは?立て方や推進プロセス、成功のポイントもご紹介

DXにおけるデザイン思考の成功事例

デザイン思考の活用によってDXに成功している事例は多数あります。代表的な事例を紹介するので参考にしましょう。

Apple

Appleはデザイン思考を活用して成功してきた企業です。Apple創業者のスティーブ・ジョブズはd.schoolの創設者のデビット・ケリーに相談し、初期のAppleのマウスを考案しました。その後もiPodやiPhoneのように「いつでもどこでも音楽を聴ける」「ユーザーが直感的に使用できる」といったデザインを続けて、大きな市場シェアを獲得しています。

富士通グループ

富士通グループではデザイン思考プログラムを2016年から社内全体に浸透させる取り組みを続けてきました。結果としてDXを必要とするカスタマーのニーズを考え、自社技術を生かすビジネスの展開に幅広く成功しています。日本年金機構での国民のニーズに応えられるAIチャットボットの導入や、全国の小中学校における堅牢さ重視のスクールタブレット端末「ARROWS Tab Q5シリーズ」の開発が典型例です。

P&G

P&Gでは2005年のブラウンの買収後、電動歯ブラシの抜本的改革をデザイン思考によって実現しました。ブラウンは電気シェーバーで有名ですが、電動歯ブラシも手掛けていました。しかし、売れ行きが良くなかったため、P&Gは買収後にユーザーニーズを調査し、改善点を洗い出して成功しています。充電器の使いづらさの改善、替えブラシの購入忘れをなくすリマインドサービスの提供などを通して電動歯ブラシのシェアも広げてきています。

関連リンク:【DX導入事例14選】DX成功事例に見るDX推進のポイントは?

DXはSMS活用から始めよう

DXの推進にはデザイン思考が重要ですが、何から始めたら良いか具体的なアイデアが出ないこともあるでしょう。簡単にできて効果が上がりやすい方法としておすすめなのがSMS活用です。SMSを活用すればユーザーにタイムリーな情報を直接届けることができます。タイムセールなどのお得なときに買いたいと思っているユーザーにタイムリーにセール情報を提供できるので、ユーザーエクスペリエンスを向上させられるDX手法です。

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

SMSをビジネスで利用する際には「KDDI Message Cast」がおすすめです。KDDI Message Castならリーズナブルな送信コストで多数のユーザーにSMSを一斉送信できます。API連携にも対応していて、ユーザーがSMSを開封したかどうかもチェック可能です。ユーザーのレスポンスに基づいてメッセージの内容や配信のタイミングを変えて改善していくこともできるなど、DXの推進と相性が良いサービスなので検討してみましょう。

Salesforce連携

まとめ

デザイン思考に基づいて具体策を考えることでDXによるビジネスの新たな展開を見出せます。ターゲットのニーズをデータに基づいて考えて分析し、ユーザー視点でアイデアを出すことでユーザーから選ばれる商品・サービスになります。

SMSはユーザーニーズに応えるためのサービスを提供するのに有用なツールです。DXによる課題解決には、ユーザーエクスペリエンスを向上させる方法としてSMS送信サービスを活用するのもおすすめです。