外部環境が急激に変化しており、マーケティング業界でもDXを推進する企業が増えてきています。マーケティングDXを検討されている企業の経営者の方も多いのではないでしょうか。そこで、本記事では、マーケティングDXを推進する際に知っておきたい、マーケティングDXの重要性、デジタルマーケティングとの違い、進める手順、成功のポイントなどについて解説します。企業の活用事例もご紹介しますので参考にしてください。

マーケティングDXとは?

マーケティングDXとは、企業のDX推進のための施策の一つです。具体的にはITツールやAIを導入して、市場調査や商品開発などのプロセスをデジタル化し、新しいビジネスや組織を創出することを指します。

DXは、情報処理推進機構のDX白書2021の中で以下のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
引用:DX白書2021 p.22│情報処理推進機構

以上のDXの定義から、マーケティングDXはデジタル技術を利用して、マーケティング業務から企業文化・風土まで変革を行い、競争優位性を確保することと言えます。

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マーケティングDXの重要性について

DXが日本で注目されるようになったのは、経済産業省発表のDXレポートがきっかけです。DXレポートで、日本はデジタル化が遅れており、外部環境の変化に適応できない状態がこのまま続くと、2025年には巨額の経済損失が出ると警鐘を鳴らしたことによります。

マーケティング関連における外部環境の変化とは、新型コロナ感染症による顧客行動の変化をはじめ、スマホをはじめとする商品やサービスの市場シェア率の変化、デジタルディスラプターと呼ばれる、既存のビジネスモデルを破壊するベンチャー企業による市場破壊も含みます。

これらの変化は、SWOT分析では、機会・脅威の部分に該当します。

※SWOT分析とは
Strength=強み、Weakness=弱み、Opportunity=機会、Threat=脅威の頭文字をとって命名されたフレームワークで、読み方はスウォットです。SWOT分析は、SWOTの4つの要素を組み合わせて分析するもので、市場機会や事業課題を発見するための有名なフレームワークです。

デジタルマーケティングとの違いについて

マーケティング業界では、マーケティングDXと似ている「デジタルマーケティング」という用語がすでに使われています。デジタルマーケティングとは、Webサイトやアプリなどのデジタルメディアを用いたマーケティング手法のひとつです。マーケティングDXとの違いがわかりにくいかもしれませんが、両者は戦略や施策が異なります。

マーケティングDXは、マーケティングの変革が目的です。すなわち、デジタル技術を活用して業務を変革することを指しています。そのため、さまざまな施策を行うことで、根本的なビジネスや組織の変革を目指しているのです。業務変革を目的としていないデジタルマーケティングとは、ここが大きな違いといえます。変革の施策に積極的に取り組むマーケティングDXは、「外部環境の変化に対して優位性を確立する」というDXが目指していることにつながるため、重要視されているのです。

マーケティングDXの成功事例4選

日本コカ·コーラ株式会社

日本コカ・コーラ株式会社のマーケティング施策として、自販機を連動させたモバイルアプリ「Coke On」は、成功事例としてよく知られています。

小銭がなくて自販機でドリンクを購入できなかった経験はないでしょうか。「Coke On」のアプリをスマホに設定すれば、アプリを自販機にかざすだけで簡単にドリンクを購入できます。また、15本購入すると1本無料になるサービスも提供。自販機の利用でもスタンプが貯まり無料特典がもらえるという顧客体験の変革を実現したことも大きな特徴です。リピーターが増えれば売上アップにつながります。斬新なマーケティング施策として注目されています。

参照:https://c.cocacola.co.jp/app/howto/

ヤマハ発動機株式会社

ヤマハ発動機株式会社では、売上拡大を目指して、デジタル技術による改革を行うため、経営目線でビジネスの効率化と新たなビジネスの創出に取り組んでいます。さらに、海外における生産比率と売上高比率が高いため、グローバルな改革も実行しています。

またデジタル戦略部を設置し、マーケティングや生産部門などから人材を集め、検証を実施し、生産データの収集と分析、ナレッジのデータ化などを行いました。拠点ごとにバラバラになっていた基幹システムについては、外部パートナーと連携し、活用の方法などについて検討しています。今後は、マーケティング力の強化、デジタル改革の指導者となるべき人材育成に取り組んでいく予定です。

参照:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000312.pdf

江崎グリコ株式会社

江崎グリコ株式会社は、名刺情報や電話からの問い合わせにアプローチするのみで、これまでWEBサイトが活用されていませんでした。また新規開拓の営業は苦手で、商談化につながりにくい傾向がありました。これらの課題を解決するために、BtoB向けのMAツールを導入し、デジタルによる営業手法を行うため、オンライン営業へ移行。その結果、顧客の属性や検討段階の可視化が可能になり、適切なタイミングでコンテンツに誘導することで、リードの獲得につながり、WEBサイトでの成約率が上がりました。

また、グリコでは、この仕組みを災害用備蓄販売にも展開し、問い合わせからの受注率がほぼ100%という成果につながりました。他の事業にも展開し、ビジネス全体の変革をもたらした、DXの成功事例といえます。

参照:https://www.salesforce.com/content/dam/web/ja_jp/www/documents/customer_stories/glico.pdf

大塚製薬株式会社

大塚製薬株式会社と株式会社ジョリーグッドは、統合失調症の患者さんを支援するプログラム、「FACEDUO」を開発しました。本プログラムはVRを活用しており、VR映像内でコンビニなどのさまざまな日常場面での当事者体験が再現されます。場面が理解しやすく、患者さんと支援者の状況共有が格段にスムーズになることが大きなメリットです。VRは臨場感があり、何度も繰り返し見ることができることも特徴の一つです。FACEDUOは、経験の少ない支援者の方でもSST(ソーシャルスキル・トレーニング)による支援を開始しやすいように設計されています。また、患者さんにとっては、さまざまな社会場面での予行練習ができるため、生活機能の改善が期待されています。

参照:https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2022/20221010_1.html

マーケティングDXの課題とは

ボトムアップの発想になりがち

マーケティングDXは、前述した経済産業省のDXの定義に基づいて進めていくと、ボトムアップ型の発想になりやすいことが課題です。

ボトムアップ型の発想は、現場の情報を経営に反映できるというメリットがあります。しかし、意思決定に時間がかかるため、大規模な変革を起こしにくく、個別最適化になりがちで、総合的な目標の達成に至らないということが課題として挙げられています。最悪のケースでは、マーケティングDXの目的がツールの導入などで、そのツールさえ活用できていないケースも少なくありません。

マーケティングDXが注目されるようになった背景には、経産省がビジネスモデルの変革や競争優位性の確保を提言したにもかかわらず、内容がIT分野に偏っていたことがあります。そこで、IT活用との両輪で進めていかないと競争優位性を確立できない、と考えられたのです。

マーケティングDXは、内部環境全体の変革が必要です。そのためには、全体を俯瞰できる立場にある組織の上層部が方針や施策を決定し、その実行を各事業部や組織に指示するトップダウン型の管理方式が有効です。

利益相反することがある

ビジネスは、考える人、作る人、そして回していく人などがいて、それぞれの人たちは企業の活動により直接的な影響を受ける利害関係者です。そのため、DXへの取り組み起案時に、エリアや部門によって利益相反が生じ、マーケティングDXを望まないメンバーが出てくる可能性がかなり高いことも課題となっています。

例えば、EC市場規模が拡大している現代、ECサイトや専用アプリによる販売チャネルが増えると、エリア担当の売上が下がるといったことが発生します。また、社内の開発チームはDXへの取り組みに追われますが、品質管理部門では製品の品質ばかりを指摘するでしょう。このように、利益相反が起きることは少なくありません。DXによる影響が大きい場合は、全社的に部門やエリアの売上評価基準を改定するとともに、全社で調整しながら推進することが重要です。

また、業務変革となると、デジタルやデータになかなか馴染めないメンバーから反発を招くことも課題として挙げられます。マーケティングDXを推進するには、その意義を周知させ、デジタルの知識や技術を身につけてもらうリスキリングを行い、メンバーのデジタルリテラシーを向上させることが大切です。

マーケティングDXを進める手順とは

手順① 外部環境を整理し、ゴールを描く

マーケティングDXを進めるには、ビジョンを設定するとともに、5年後、10年後の外部環境の変化を整理したうえで、ゴールを描きます。そこで、PEST分析を活用することをおすすめします。

PEST分析は、Politics:政治、Economy:経済、Society:社会、Technology:技術の4つの視点で環境分析するフレームワークです。問題点の把握や、どう参入するかといった戦略における課題を発見できます。役員と主要な社員で外部環境の変化に対するイメージを共有し、目指すべきゴールを設定します。

手順② ゴールに向けたロードマップを描く

ゴールを決めたら、ゴールまでの行程やスケジュールを描くロードマップを作成します。各部門には既存事業の売上推移の予測と、目標を作成してもらいましょう。売上の推移を理解できていれば、新規事業に向けてどのくらいのスピード感と規模感で進める必要があるかが把握できます。

手順③ ロードマップに沿って施策を導く

ロードマップを作成したら、ロードマップをもとに必要な施策を考えます。施策を考える際には、以下のような問いかけに答える形で具体的な施策を掘り下げていきましょう。

・早急に転換が必要なことは何か
・どの組織で実行するのか
・10年後に新規事業に活用できるアセット(資源)は何か

A社では、膨大な顧客情報が自社の重要なアセットの一つであることが確認できました。しかし、顧客情報が部門ごと、またはセールスごとに管理されていることがわかり、まず顧客情報のシームレス化から取り組みました。そこで、顧客関係管理システムのCRM、営業管理システムのSFA導入、顧客データを活用するための基盤となるCDPの開発など、マーケティングツールを活用し、業務フローの最適化に取り組む施策を策定しました。

また、ゴールを達成するには、ブランドイメージの転換や、ブランド・アイデンティティの定義の見直しが必要であることもわかりました。このように、具体的な施策を考えるときには、現状を把握すれば、自ずとすべきことが見えてきます。

マーケティングDXを成功させるポイントとは

業務や組織の根本的な見直し

マーケティングDXでは、組織や業務プロセスを根本的に見直し、従来の企業体質を変えることが必要です。複数の部署を超えて改革を進めなければならないため、部門ごとの対応ではなく、全社で進めていくことが重要です。そのため必然的に経営層のコミットが求められます。電通の調査データからは、マーケティングDXで成果を出せている企業の約7割は経営層がコミットを行っていることが理解できます。

顧客体験の変革

顧客体験(CX)とは、顧客が製品やサービスの購入を検討する段階から利用に至る過程で、企業との接点で顧客が感じる体験のことを指します。マーケティングDXでは、この顧客体験の変革が重要です。変革を実現するには、企業側のメリットだけではなく、顧客側の視点に立ったサービスの開発や改善が求められます。同じく電通の調査結果を見ると、マーケティングDXの成果を出している企業の約8割以上が顧客体験変革を行っています。

外部サポートの利用

マーケティングDXには、従来にはなかった視点や技術が求められるため、社内リソースだけでは難しいケースも少なくありません。その場合は、最初から内製化しないで、外部への委託も選択肢に入れておきましょう。自社ですべてを完結しようとせず、必要に応じて外部パートナーを有効に活用することで、自社が本来注力すべき仕事により時間を使えるようになります。大手企業では、すでに外部人材の活用を始めています。外部人材からは、社内にはないスキルが得られることに加え、外部の視点によるアイデアを取り込むこともできるでしょう。

マーケティングDXにはSMSの活用がおすすめ

SMSマーケティングという言葉があるように、SMSは販促やマーケティングに活用できる配信ツールです。企業がメッセージを届けるという点では、SMS配信はメール配信と同じですが、メールと違い、到達率や開封率の高さから、SMSを導入する企業が増えています。昨今、商品やサービスについての満足度調査などのアンケートでもSMS送信を利用しているケースが増えてきています。従来のコミュニケーションツールと比べてより高い回収率が期待でき、効率的に実施できることもメリットです。

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

KDDIグループが提供するKDDI Message Castは、国内直収接続ならではの高い到達率を誇ります。送信できるメッセージのバリエーションも多く、最大660文字の長文の配信が可能であることに加え、画像、動画などのコンテンツ配信もでき、顧客へ視認性の高いご案内ができます。

特定の顧客へ確実にメッセージを届ける手法を検討されているのであれば、SMSの活用がおすすめです。初期費用・月額費用は不要で気軽に導入いただける点もKDDI Message Castの強みです。KDDI Message Castの利用をぜひ検討してみてください。

まとめ

デジタル技術を活用して、業務プロセスから企業文化まで変革するマーケティングDXは、業務変革が目的ではないデジタルマーケティングとは異なります。マーケティングDXを成功させるには、経営トップがコミットする、トップダウンのマネジメントが必要です。DX推進にあたっては、セミナーへ参加したり、外部からのサポートを受けたり、なども検討されるとよいでしょう。どの業界でもDXが注目されており、最新戦略が日々アップデートされていますので、他社の成功事例はぜひ参考にしてください。

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