経理の業務はDX化できない、現実的ではないと思っていませんか?しかし、新型感染症の流行を機に、その必要性を感じる企業も多かったと言われるほど、状況は変わってきています。ここでは、経理のDX化で得られるメリットや活用しやすいツール、導入時のポイントなどを整理してご紹介します。

目次

そもそもDXとは?

DXが重要視される理由

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、簡単に言えばビジネスの分野でデジタル化をすすめ、組織やビジネスモデルを変革していくことを指します。

広い意味ではデジタル技術の浸透によって人々の生活に良い変化をもたらすことを指します。実際は、変化の激しいビジネス業界をデジタル技術で対応し、組織やビジネスモデルを変革し、競争優位性を確立するという意味で用いられることが多いです。

なぜDXが重視されているのかにも触れておきましょう。それは、システムの老朽化が進むことで莫大な経済損失が生じる可能性が指摘されているからです。通称「2025年の崖」と呼ばれており、IT人材が不足したままシステムが老朽化すると、2025年からは年間最大12兆円もの経済損失が生まれると言われています。DXが推進されると、この経済損失のリスクが回避できると考えられています。

経理DXの推進が必要な背景

経理DXは社会的な状況を考えると不可欠になっています。経理におけるDX推進が必要とされている背景には以下の2つがあります。

人材不足対策・属人化の対策

経理では業務の属人化が大きな課題になっています。経理についての専門知識を持っている人が手作業で帳簿処理をしていき、法的に正しいやり方で経理を行わなければなりません。ただ、優秀な経理の人材は決して多いわけではなく、現場では人材不足によって連日の残業を余儀なくされていることもあります。

DXによってルールに従って処理できる部分は自動化し、人の判断が必要な部分を優秀な経理人材が担当するというフローができれば効率が上がります。経理DXによって優秀な人材に今後の経営戦略や資金方針を考えさせる余力を与えられるのもメリットです。

インボイス制度への対応

インボイス制度の導入によって経理負担が大きくなっているのも経理DXが必要な理由です。インボイス制度は2023年10月1日に開始されました。適格事業者として登録されている取引先から、適格請求書として認められる要件を満たしている請求書が発行されたときだけ税制の優遇を受けられます。

インボイス制度ではルールベースで税制措置が決まるので、適格請求書かどうかといった判断は機械的に行えます。経理DXによってインボイス制度に対応すれば、余計な業務を増やさずに効率的かつ正確な経理処理ができるため、積極的に推進されています。

経理の現状と経営上の問題点

DXの目的とは?DXの目的を定めるべき理由と具体的な目的の例を解説

現状

DX化が進められている昨今ですが、経理部門においては未だ従来通りの方法で業務を行っており、DX化が進んでいないケースも多いと言われています。

そのため、紙ベースの取引や経費精算、ハンコ文化がまだ残り、手作業で行う処理が中心です。属人化した業務となりがちで、急な人員配置の変更でトラブルが発生しやすく、データは担当者以外が探し出せないほどあちこちに散財してしまっているのが現状です。

経営上の問題点

経理部門のDX化が進んでいないことで、以下のような問題が発生しています。

作業に追われ客観的な視点で考える余裕がない

経理の仕事は非常に範囲が広く多大な業務量を抱えていることも珍しくありません。経費の精算、月次・年次の締め、監査の対応など、日々の業務に追われて目の前のことしか手がつけられず、改善すべきことがあっても上層部に提案をしたり実際に改善しようと試みたりする余裕がないという問題があります。

決算の確定までに時間がかかる

決算に必要な情報がDX化できていないことで各社・各部署に散財し、収集することに時間がかかり、その結果として経営判断まで遅れてしまうという問題も潜んでいます。

リモートワークが難しい

新型感染症の流行でリモートワークはもはや定着したとも言えますが、従来どおりの方法では経理においては出社しないと仕事にならないケースも多々ありました。感染症だけでなく、災害などの事態に備えて、経理もリモートワーク可能な状態にしておかないと、今後最悪の場合事業がストップしてしまうリスクにつながります。

ガバナンスの体制整備不足

属人化された業務と手作業での業務が組み合わさると、不正が起こりやすい状況を生み出します。これは大きなリスクであり、会社へのあらゆる信頼を損ね事業そのものが継続できなくなる問題を引き起こす可能性につながります。

経理業務をDX化するメリット

経理業務をDX化するとどのようなメリットがあるのでしょうか。DX化を進めていきたいと考えている場合は、自社の課題が解決できそうかという視点で見ていきましょう。

さまざまなコストの削減につながる

経理のDX化によって、さまざまな業務の効率化ができ、経理の仕事の手間や時間の短縮につながります。属人化しやすい経理の業務をDX化することで、人員配置の変更や引き継ぎも行いやすくなるというメリットがあります。また、人的コストの最適化も可能となるでしょう。

また、ツールの利用により、ペーパーレス化にもつながります。紙の書類の量が減ると、用紙代をはじめインク代、プリンターのレンタル費、コピー機のメンテナンス費や消耗品費、電気代といった書類作成に伴うコストも削減できます。

紙の書類が発生しないということは、保管のためのスペースやファイリング用品も少なくて済むようになります。

SDGsへの取り組み事例となる

近年、盛んに言われているSDGs。持続可能な開発目標として、企業の取り組みが求められるようになりました。DX化によるペーパーレス化が実現すると、SDGsへの取り組みの1つとして実績になります。

単なる紙の削減、というわけではなく、ペーパーレスに伴って郵送用の封筒を使う機会が減少したり、紙の処分で発生する二酸化炭素の排出量の減少など、環境のことを考えると多くのメリットをもたらします。

環境保全のための施策を行うことは、企業イメージのアップにもつながります。

業務効率が上がりミスが少なくなる

総務・経理部門の仕事とDX化の相性がよいのは、決まった仕事をミスなく行うことが求められる経理の仕事の特性が関係しています。経理の仕事の多くは、決まった周期ごとに同じ作業を的確にこなし、ミスなく期日までに仕上げる必要があります。

こうした定型業務はDXにより自動化できる部分も多く、うまく活用できれば業務を大幅に効率化できます。経理部員は自動化できる部分をシステムに任せて、空いた時間を専門性の高い業務に充てることが可能となります。

経営指標やマーケティング戦略に役立つ

総務・経理部門をDX化すると、リアルタイムのデータが手に入り、その内容を分析・集計することで経営状況の確認に役立てることができます。データの活用方法は幾通りもありますが、経営戦略を立てる場面や業務プロセスを改善したい時にも客観的な指標として重要な判断材料になります。

リアルタイムで同じ経営状況を把握できるようになれば、上層部と現場責任者との認識のギャップも少なくなります。例えば、生産目標などが上層部と現場とで大きく異なる場合、判断材料となる指標の認識のズレが原因となっていることがあります。こうしたギャップが改善できれば、企業が一丸となって同じ目標を共有しやすくなるでしょう。

働き方改革が進む

経理DXを通して働き方改革を推進できるのはメリットです。経理業務の大半はリモートワークで対応できる内容で、DXにより在宅勤務を進めることができます。また、期末の決算のときには経理担当者が激務に追われてしまい、労働時間の問題が発生することもありますが、定型的な作業を自動化すれば業務量を減らすことが可能です。自宅で勤務できれば通勤時間もなくせるため、経理担当の従業員にとってはプライベートの時間を確保しやすくなります。

優秀な人材を確保しやすくなる

経理DXをすれば優秀な経理の人材を獲得して企業を成長させる基盤を築き上げられるようになります。リモートワークの導入やペーパーレス化などのDXに取り組むと企業価値が高く評価されて興味を持ってくれる人材が増えるでしょう。さらに、経理DXを通して自動化を進めていると、ルーチンの業務よりも経理経験を生かしたアイディア創出や判断力が求められているとわかります。

経理の人材が経営などに関連するアイデアを出せる環境を整えると優秀な人材に活躍の舞台を与えることが可能です。企業を成長させる、事業を成功させるといった観点での判断が可能な優秀な経理人材を確保できるようになり、安定したバックオフィス体制を整えることができます。

DX化にあたっての課題

メリットの多い経理のDX化ですが、導入するにはいくつかの課題もあります。どのような点をクリアしていくべきなのか、見ていきましょう。

連携しやすく一貫性のあるシステムの構築

DX化があまり進んでいない企業でも、先ほどご紹介したツールの中には既に導入しているものもある、というケースが多いのではないでしょうか。しかし、ここで問題になるのは、既存のシステムの老朽化や一貫性のなさです。

必要に応じて少しずつ増やしていったシステムの場合、それぞれが個別に役立つことはあっても、連携して活用させることが困難だったり、システム構築時にいた社員の退職によって改修ができなかったりといった問題が発生しがちです。また、古いシステムの改修を繰り返すことで徐々に保守費用がかさんでいくケースも珍しくありません。

もし、既存のシステムが古くて使いにくかったり、連携ができずDXの効果が十分に見込めない場合は、ケースによっては部門を横断して連携できるような大規模なシステム導入を検討する必要もあるでしょう。

ITに強い人材の確保と育成

DX化が進まない要因の1つに、ITに詳しい人材がいないという問題もあるかもしれません。実際、日本の企業ではIT人材の不足が課題となっているケースもあるため、それを補うためにITベンダー企業に任せることも多いでしょう。

DX化により、IT企業だけでなく、さまざまな業種でIT人材が求められるようになるのは言うまでもありません。将来的に長く必要性のある人材として、DXが滞りなく進めていけるような人材の確保と育成が求められています。

電子帳簿保存法やインボイス制度の実施など、経理業務は刻々と変化します。時代の変化に合わせて、都度必要な情報を集めて対策を行い、DXを活用して体制をつくるためには、知識やノウハウが必要です。

経理におけるDXの流れ

経理部門はDX化が遅れていると言われていますが、実際に導入すると大幅に業務内容が改善し効果も出やすいとされています。具体的に、経理のDX化を進める場合の流れを見ていきましょう。

書類のペーパーレス化をすすめる

請求書・納品書・領収書・伝票などはすべて電子化する方向で取り組むことが、第一段階となります。自社側から出す書類はデータでのやりとりに切り替えデジタルデータとして保存し、レシートなど紙に印刷されている書類をもらった場合はスキャンしてPDFデータにして保存します。

一度に両方のペーパーレス化をするのが難しい場合は、まずはもらった紙のレシートや領収書をデータ化することから始めてみましょう。そして最終的に、紙媒体でのやりとりをなくしていくのが1つの目標となります。

電子印鑑を設ける

ハンコ文化からの脱却は最近言われ始めたことではありませんが、未だに根強く残っています。新型感染症の緊急事態宣言下においても、ハンコの押印作業をしたり、されたりするためだけに出社を余儀なくされた人がたくさんいました。これはテレワークを阻む問題でもあり、どの会社でも改善が求められるポイントです。

押印という行程が残ったとしても、それが実際のハンコでなく電子で行えれば、経理部門の仕事内容にも大きく影響することとなります。PDFファイルなど電子データへの押印は電子化された印鑑が必要で、これを電子印鑑と呼びます。電子印鑑は電子認証局という信頼できる機関が発行する電子証明書により安全性・信頼性が担保される仕組みになっています。

システムを連携する

日本の会社では、各部門が個別に必要なシステムを導入する傾向にあり、部門や業務を横断できるような連携までは進みにくいと言われています。しかし、これらのシステムが連携できれば、より業務の効率化につながり個々のシステムの最適化にもつながります。

導入時のコストはかかるかもしれませんが、長期的な視点ではメリットも多く手間の削減にもつながります。クラウド環境などを活用して、システムを連携させていきましょう。本格的にDX化を推進するのであれば、優先度の高い取り組みと言えます。

経理部門で活用できるDXツール

これから経理部門のDX化を進めるのであれば、以下に紹介するツールがおすすめです。

督促・催促メールの書き方は?テンプレートや例文もご紹介!

RPA自動化ツール

このツールでは、人の行ってきた意志決定を必要としないオンラインで完結する作業をロボットに任せることができます。作業の手順やルールを明確にすれば、大量のデータも正確に処理できるのが特徴です。

例えば、経理部門においては、帳票の作成やメール送付、決算データの収集などがこれに該当します。近年はAIとの組み合わせによって意志決定の一部も自動で行えるようになりつつあり、RPAツールに任せられる業務範囲は拡大しています。

関連リンク:DXとRPAの違いとは何か?メリットや成功事例、導入方法を徹底解説
https://sms.supership.jp/blog/dx/rpa_dx_chigai/

ワークフローシステム

経費の精算や稟議書など、経費が承認を行う必要のある手続きを、システム上で行えるツールです。このツールにより、ペーパーレスの推進やハンコ文化の脱却、リモートワークの推進などにつながるだけでなく、申請から承認までの一連の流れがスムーズに行えたり、承認漏れといったミスが防げるようになります。

また、このツールで経費の精算などを行うと、会計システムへ自動的に仕分け出力ができる可能性もあり、大幅な業務量の削減につながります。

AI-OCR

紙や画像のテキスト部分をデジタルデータ化するツールです。紙の請求書や領収書は、このツールで処理すると便利です。仕組みとしてはスキャナやデジカメで読み取ったテキストをGIFやJPG、PNG形式でデータ化し、文字列を識別して変換する技術となっています。

AIが組み合わさっていることで読み取り精度が増し、転記ミスも少なくなっています。人の手による転記ミスが防げると同時に、入力作業の手間も省かれます。

電子帳票システム

企業間取引で必ず発生する、発注書や納品書などの帳票類を管理するシステムです。帳票の作成だけでなく、送付や保管まで行うことができ、送付においてはメール、FAX、郵送など個別に設定も可能です。

事前に設定したテンプレートを基幹システムと連携することで、このツールが成り立ちます。活用することでペーパーレス化、リモートワーク対応、帳票管理のための業務短縮につながります。

受発注システム

受発注を効率的、迅速に行うために役立ちます。取引先と同じ受発注システムを利用する必要があるため、必ずしもすべての取引先に対応できるとは限りませんが、このシステムが活用できれば発注書・受注請書の作成や送付、在庫確認などがスムーズになります。

経理部門が受発注業務に関わることは少ないため、あまり現実的に感じられないかもしれませんが、このツールで請求書のデータ入力が楽になったり、売り上げや仕入れの数が正確に把握できることから、決算時の業務に役立ちます。

経費精算システム

経費精算にかかる業務を全体的に効率化するためのツールです。先ほどご紹介した、AI-OCRと組み合わせて用いるのが主流で、領収書の読み取りやワークフロー機能、自動仕訳機能、振込データの作成などを行うことができます。

社内規定を設定しておけば、そのルールに沿ったものになっているかのチェックも自動で行われるなど、便利な機能が備わっているものもあります。

会計システム

こちらは経理業務全般をサポートするシステムです。DX化があまり進んでいなくても、このシステムについては導入済みの企業が多いのではないでしょうか。

ソフトウェアの種類で機能は異なりますが、一般的には帳票類の作成、帳簿の作成、売掛管理、買掛管理、決算書の作成、経費精算、銀行振込機能などがあります。

ERP

企業のリソースの配分を最適に行うことを目的に使われているツールです。企業のリソースとは、つまり人・モノ・カネの3つです。生産管理、調達管理、在庫管理、販売管理、経営管理などを一元的に行います。これらの業務データは企業の根幹でもあり、現状の可視化につながるだけでなく将来的なリソース配分の検討にも役立ちます。

ERPは数年かけて自社のサーバーに構築するのが主流でしたが、近年はクラウド上のサービスとして利用するSaaS型によって即時的な対応を行う方法がよく用いられます。

給与前払いサービス

給与前払いに対応している企業とそうでない企業がありますが、対応している場合は給与の前払いに伴う業務を専門のサービスに任せることが可能となります。システムを使っていない場合、前払いを行うには勤怠状況に基づく前払い金の計算や振込、仕訳帳への記入が個別に発生し、なかなかの手間となります。

しかし、ツールを使用すれば勤務データに基づいた立て替えをサービス会社が行うため、後日、サービス会社にまとめて入金するだけなので簡単。給与前払いに対応する経理の業務負担を軽減し、従業員の困り事にも対応できる便利なサービスです。

BIツール

BIツールはさまざまな情報をデータとして蓄積し、集計や加工、共有、分析、可視化をするツールです。経理部門では経費分析や資料の作成、決算処理などの作業を効率化することができます。

また、経理部門に限らず、会社全体でデータを蓄積することで、さまざまな部門で連携がとれ、経営の意思決定をサポートしたり、戦略策定に活用したりすることも可能です。そのため導入を検討する企業が増えているようです。

経理業務をDX化するメリット

経理業務をDX化するとどのようなメリットがあるのでしょうか。DX化を進めていきたいと考えている場合は、自社の課題が解決できそうかという視点で見ていきましょう。

さまざまなコストの削減につながる

経理のDX化によって、さまざまな業務の効率化ができ、経理の仕事の手間や時間の短縮につながります。属人化しやすい経理の業務をDX化することで、人員配置の変更や引き継ぎも行いやすくなるというメリットがあります。また、これまで経理に従事していた人員を減らして人的コストの削減も可能となるでしょう。

また、ツールの紹介の部分では、ペーパーレス化につながる部分も多かったことがわかります。紙の書類の量が減ると、用紙代をはじめインク代、プリンターのレンタル費、コピー機のメンテナンス費や消耗品費、電気代といった書類作成に伴うコストも削減できます。

紙の書類が発生しないということは、保管のためのスペースやファイリング用品も少なくて済むようになります。

SDGsへの取り組み事例となる

近年、さかんに言われているSDGs。持続可能な開発目標として、企業が環境への配慮をして取り組むことが求められるようになりました。DX化によるペーパーレス化が実現すると、SDGsへの取り組みの1つとして実績になります。

単なる紙の削減、というわけではなく、ペーパーレスに伴って郵送用の封筒を使う機会が減少したり、紙の処分で発生する二酸化炭素の排出量の減少など、環境のことを考えると多くのメリットをもたらします。

環境保全のための施策を行うことは、企業イメージのアップにもつながります。

業務効率が上がりミスが少なくなる

総務・経理部門の仕事とDX化の相性がよいのは、決まった仕事をミスなく行うことが求められる経理の仕事の特性が関係しています。経理の仕事の多くは、決まった周期ごとに同じ作業を的確にこなし、ミスなく期日までに仕上げる必要があります。

こうした定型業務はDXにより自動化できる部分も多く、うまく活用できれば業務を大幅に効率化できます。経理部員は自動化できる部分をシステムに任せて、空いた時間を専門性の高い業務に充てることが可能となります。

経営指標やマーケティング戦略に役立つ

総務・経理部門をDX化すると、リアルタイムのデータが手に入り、その内容を分析・集計することで経営状況の確認に役立てることができます。データの活用方法はいく通りもありますが、経営戦略を立てる場面や業務プロセスを改善したい時にも客観的な指標として重要な判断材料になります。

リアルタイムで同じ経営状況を把握できるようになれば、上層部と現場責任者との認識のギャップも少なくなります。例えば、生産目標などが上層部と現場とで大きく異なる場合、判断材料となる指標の認識のズレが原因となっていることがあります。こうしたギャップが改善できれば、企業が一丸となって同じ目標を共有しやすくなるでしょう。

DX化にあたっての課題

メリットの多い経理のDX化ですが、導入するにはいくつかの課題もあります。どのような点をクリアしていくべきなのか、見ていきましょう。

連携しやすく一貫性のあるシステムの構築

DX化があまり進んでいない企業でも、先ほどご紹介したツールの中には既に導入しているものもある、というケースが大半ではないでしょうか。しかし、ここで問題になるのは、既存のシステムの老朽化や一貫性のなさです。

必要に応じて少しずつ増やしていったシステムの場合、それぞれが個別に役立つことはあっても、連携して活用させることが困難だったり、システム構築時にいた社員の退職によって改修ができなかったりといった問題が発生しがちです。また、古いシステムの改修を繰り返すことで徐々に保守費用が高騰しているケースも珍しくありません。

もし、既存のシステムが古くて使いにくかったり、連携ができずDXの効果が十分に見込めない場合は、ケースによっては部門を横断して連携できるような大規模なシステム導入を検討する必要もあるでしょう。

ITに強い人材の確保と育成

DX化が進まない要因の1つに、ITに詳しい人材がいないという問題もあるかもしれません。実際、日本の企業ではIT人材の不足が課題となっているケースもあり、それを補うためにITベンダー企業に任せることも多いでしょう。

DX化により、IT企業だけでなく、さまざまな業種でIT人材が求められるようになるのは言うまでもありません。将来的に長く必要性のある人材として、DXが滞りなく進めていけるような人材の確保と育成が求められています。

電子帳簿保存法やインボイス制度の実施など、経理業務は刻々と変化します。時代の変化に合わせて、都度必要な情報を集めて対策を行い、DXを活用して体制をつくるためには、知識やノウハウが必要です。

効率的なDX化運用のポイント

企業が効率的にDX化を進め運用していくには、どのようなポイントに注力すれば良いのでしょうか。これから運用を開始する場合も、事前に把握しておくと安心です。

DX化の目標を明確にする

既存の業務をどこまでDX化するのかは、企業によって変わってくるでしょう。漠然とDX化を進めるというよりは、明確に目標を決めて必要なツールを検討するなど、事前の協議が重要となります。

現状の経理部門の問題を1つずつ見つめていき、まずは課題を洗い出しましょう。そして、早急に改善すべき課題から優先順位をつけて改革をしていくのが有効です。会社や経理部門における課題がすべてDX化で改善するとは限りませんが、DX化によって改善できる部分とそうでない部分の見極めは大事です。ITに明るい人材がいない場合は、専門家のアドバイスを受けるなどして対策を進めていくのも1つの方法です。

社内でDX化についての情報共有を行い協力体制をつくる

なぜDX化を行うのか、その目的が社内全体に知らされていなければ、スムーズに改革は進みません。DX化は、経理部門だけでなく、組織単位で取り組む可能性の高い試みです。ITに詳しくない社員でも、新しいマニュアルや業務フローを覚えて対応する場面が出てくるでしょう。

上層部が一方的にDX化を進めるという旨を伝えるだけでは、社員の不満につながり十分な協力が得られない可能性もあります。理解を促し、結果的にメリットが大きいことを周知させることで、一時的な負担も乗り越えやすくなるでしょう。

属人化しない体制をつくる

経理業務は属人化しやすいという課題があります。せっかく業務改善のためにDXを導入しても、結局一部の社員しかわからないようなシステムだった場合、属人化の解消にはつながりません。例えば、システムの運用で専門性を高めすぎると、誰かが引き継ごうとしても困難な場合があります。

こうした問題が発生しないように、多くの人が使いやすいシステムにすることや、マニュアルを作ってさまざまな事態に対応できるようにしておくことが必要です。

自社にあったツールを導入する

DX化を推進するための目標を達成できるツールを選定し、導入しましょう。どのシステムがあっているのかは、課題や目標によって変わってくるため、自社にあったツールを吟味するところから始めることが大切です。自社の抜本的な改革を実現できるツールを選び出すことが理想的なので、自社の経理で抱えている課題や、経理の部署と関連する他の部署の間で起きている問題やトラブルについて洗い出して検討しましょう。

他のシステムと連携がうまく取れるかなども確認しておくことをおすすめします。DX化を推進するにあたり、組織全体で連携が取れるかも重要になることもあります。経理は人事や総務などとの連携も必要で、研究開発部などの資金を使用している部署とうまく連携を取れないとトラブルを起こすこともあるでしょう。組織体制や事業内容によって適切なツールの種類は異なるため、自社にとってメリットが多い適切なツールの導入を行いましょう。

セキュリティ対策を万全にする

紙ベースでの経理が今もなお残っているのは、セキュリティ面の問題も少なからず影響しているのではないでしょうか。DX化が進むと、これまでよりも多くのスタッフがシステムを活用することとなり、またテレワークでの働き方も推進されるため、社内のみならず自由な場所でシステムにアクセスできるようになります。

過去には、テレワーク中を狙ったサイバー攻撃があったり、テレワーク中の社員から情報が漏れたりといったトラブルも実際にありました。セキュリティを守ることがどれだけ大事なことか、社員全員が意識しなければなりません。また、企業側がセキュリティを守る万全の体制を整えることが不可欠です。

仕入れ先や得意先などへの対応

DX化によって従来の方法と変わる部分は必ず生じます。こうした変化に伴い、仕入れ先や得意先など日頃から関わりの深い関係性にある相手には、影響や対応も考慮していく必要があります。

インボイス制度への対応を進める

インボイス制度の内容について経営側も経理担当者も理解をして、DXによる対応を進めましょう。インボイス制度では取引先が適格請求書発行事業者として認められていて、適格請求書のフォーマットに合っているときに税制の優遇を受けられます。このようなルーチン作業でできるチェックを自動化するシステムを取り入れて、インボイス制度の対応による経理負担を軽減するのが大切です。

DXによって経理部門が目指すべき姿とは

DXにより経理部門はどう変わり、どういう姿を目指していくべきなのでしょうか。将来の展望を交えながら見ていきましょう。

DX関連 – SMS送信サービス「KDDIメッセージキャスト」

リアルタイムの経営状況を可視化し対策できる

目まぐるしく変化し続ける現代においては、いち早く課題を発見し対処していくことが求められます。経理のDX化で、財務面の経営状況が可視化でき、上層部だけでなく現場の責任者なども把握できれば、早い段階で対処法を打ち出すことも可能となるでしょう。

毎日の売上や経費を細かく把握することは難しいかもしれませんが、毎月の決算をDX化で早期に完了できれば、そのぶん早くリアルタイムに近い状況で経営状況を把握することができます。

「攻めの経理」に役立てる

経理は縁の下の力持ちとしての役割をイメージする人も多いかもしれませんが、「攻めの経理」という言葉があるように、正確な数字やデータ、財務データを用いて経営をより良い方向へ導く姿勢であることも求められています。

DX化で経営状況が明らかになり、データも抽出できるのであれば、それをもとに課題を見つけ、改善案を出していくのも経理の仕事の1つです。どのようにすればコストが削減できるのか、資金の調達方法についての具体案など、経理としての専門的な知識やノウハウを用いて経営に役立てられるよう目指してみてはいかがでしょうか。

不正を防ぎクリーンな会社をつくる

属人化しやすく手作業が中心で行われる従来の経理業務では、不正も働きやすいというデメリットがありました。DX化によって体制を整えて、不正や改ざんが行えないような仕組みづくりをすると、会社全体のイメージや社員を守ることができます。

「攻めの経理」という言葉だけでなく、「守りの経理」という言葉もあります。経理は、DX化によって守りを固めつつ攻めていく姿勢が求められるでしょう。

SMS送信サービスを活用したDX

DX推進に向けた1つの対策として、SMSの活用がおすすめです。SMSは専用のアプリをダウンロードしなくても電話番号だけでメッセージの送受信ができます。

電話がなかなかつながらない、Eメールは気づかれにくいといったデメリットを、SMSは解消してくれます。到達率や開封率の高いコミュニケーション手段として、顧客やビジネス相手とのやりとりに役立ちます。

また、配信にかかるコストが少ないことや、一斉配信・個別配信を使い分けられることなどもSMSのメリットで、DXの推進を円滑に進めてくれるでしょう。

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

KDDI Message Castは、法人向けのSMS送信サービスです。Salesforceと連携し、登録しているユーザーなどへのメッセージ送信が少ない手間で行える、画期的なシステムとも言えます。

DX化の推進にあたり、コストを押さえながら業務の効率化を目指すツールは数多くありますが、大切な情報がユーザーに届きにくい点が課題となっている場合、KDDI Message Castの果たす役割は大きいでしょう。KDDI Message Castでは、SMSの送信履歴や送信結果の確認まで行うことが可能です。

Salesforce連携により顧客とのやりとりもSMS送信可能です。

まとめ

DX化を進めている企業は多いですが、経理部門においては後手にまわってしまうことも珍しくなく、従来どおりの方法で業務が行われているところも多いのが現状です。しかし、DXと総務・経理の業務はその特性から非常に効果が高く、さまざまなメリットもあります。

DX化を本格的に進めていくにあたり、一時的な負担は発生するかもしれませんが、活用できれば経理としての専門性の高い業務に集中できる時間が増えるなど、大きな変革も期待できるようになるでしょう。まずは第一段階のペーパーレス化からでも、取り組みをはじめてみてはいかがでしょうか。

KDDI Message Cast(KDDIメッセージキャスト)詳しくはこちら