各業界で働き手の不足が問題となっている昨今、農業においても働き手の不足やそれに関係するさまざまな課題を抱えています。そうした中で、農業にITやデジタル技術を活用することの重要性が高まっています。現段階では実証実験中の農家が多いものの、農業DXに興味を抱く農家も少なくありません。本記事では農業DXとは何か確認した上で、農業DXについて現状や今後、さらには実現したいことなどについて解説します。また、農業DXを推進するポイントや成功事例などについても紹介します。

農業DXとは?

農業DXは、ITと先端技術を活用して農業の生産性、流通、環境対策などを全面的に改善する動きです。これにより、食の安全・安定供給にも寄与します。

近年、農業従事者の高齢化や後継者不足が課題となっています。また、応募者は求人を出しても集まらず、働き手の不足も深刻です。

そうした中で、農林水産省が農業DX構想を打ち出しました。この構想ではデジタル技術を活かすことで、農業経営の効率化を目指すことが掲げられています。

農業DX構想ではFaaSの実現も目指しています。FaaSとはFarming as a Serviceの略語で、日本語ではサービスとしての農業という意味です。FaaSでは意思決定をデータ主導で行い、生産性と効率の向上を目標にしています。

また、FaaSにおいて機器レンタルや情報共有、分析などのテクノロジーやIoT技術を農作業に組み込むことで、農作業の負担軽減の実現も期待できるでしょう。

農業にDXを導入する際は利用できる補助金がないか探してみてください。例えば、資本金3億円以下、もしくは常時使用する従業員数が300人以下の法人もしくは個人はIT導入補助金の対象となります。

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農業DXの現状① 生産現場

生産現場においてDXを実現するための方法は多くありますが、その中でもロボットやAI、IoTなどの技術を活用したスマート農業が注目されています。

日本では農業に携わる人口の不足が年々深刻化しています。農林水産省が作成した「スマート農業の展開について」によると、自営業で農業に従事している農業従事者は1960年は1,175万人でした。しかし、2020年になると、その数は136万人と、大幅に減少しています。

農業従事者の減少にあわせて、高齢化問題も深刻です。農業従事者の約半数が60歳以上で、平均年齢は67.8歳。他の業界と比較しても平均年齢が高い傾向にあります。

このような状況の中、生産現場の人手不足を補うことや、作業の効率化などを目的に、遠隔操作やドローン、自動走行の農業機械などの実証実験が全国179地区で実施されています。

その他にも、ハードウェアのみならず、センサーを利用したデータ収集や画像解析、土壌評価を活用した生産も行われています。

しかし、いずれにおいても試験的な導入段階であり、本格的に利用されているケースは限られています。

参考:https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0108/12.html

農業DXの現状② 農村地域

産業としての農業のDXを促進する上で、農村地域全体でバリューチェーンを改善するモデル化や基盤整備は不可欠です。

近年、個人単位ではなく、地域全体で利益を生み出そうという動きが多くのエリアで見受けられます。例えば、2021年1月に農林水産省が公表した「農業DXをめぐる現状と課題」には、複数の集落による農地保全に向けた協同での取り組みや、鳥獣害対策などについての紹介があります。

その他にも、株式会社日本総研研究所は農村デジタルトランスフォーメーション協議会(農村DX協議会)を2019年に設立しました。自治体が主な参加者となっており、農村地域のDX推進に向けて連携した取り組みが行われています。

しかし、前述のように生産現場でのDX推進は実証実験の最中で、かつ導入も限られています。そうしたことからも、農村地域でのDX推進における協同での取り組みは限られたものです。

参考:https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=34781

農業DXの現状③ 流通・消費面

農業は流通・消費面においても多くの課題を抱えています。

例えば、日本の青果の約86%が市場流通で売買されているため、市場流通は日本の農産物流通において不可欠です。しかし、市場流通に携わるステークホルダー間の情報共有は不十分な傾向にあります。

生産者は農産物を都市部の大市場にまずは輸送します。農産物が多く集まった場合は価格が低下し、余った農産物は周辺の市場へ運び直すことに。そうなると、追加の輸送費がかかるだけでなく、農産物の鮮度も低下します。

流通におけるこれらの課題を解消するためにトレーサビリティの確保やブロックチェーン技術を活用した多段階を経て、消費者の手に届く農産物の管理の一元化が進んでいます。

また、消費面ではインターネットを活用した取り組みも実施されています。生産者と消費者はインターネットを活用することでコミュニケーションを円滑に取れるようになります。生産過程や生産における取り組み、使用している肥料の情報などをホームページに明記しておくことで、消費者の商品に対する安心感が高まるでしょう。

流通・消費面にDXを導入することで農業や輸送に携わる人たちの負担の軽減の他、消費者に新鮮な農産物を届けられるなどといったメリットも享受できます。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000258.000032702.html

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農業DXの課題と今後とは

前述のとおり、農業従事者の平均年齢は他の業界と比べても高いです。ITに馴染のない人や慣習を重視する人も多い傾向にあり、農業においてDXがなかなか浸透しない地域も少なくありません。

また、最近では各種データをオンライン上で管理する企業が増えていますが、農業の分野では多くが生産や出荷に関わる管理は紙で処理しています。脱アナログ化を実現するには農業者だけでなく、書類の授受を行う関連業者のデジタル化も必要です。

その他にも、自動運転のロボットコンバインなどの機械を導入するには、ある程度の規模の圃場であることが条件です。でこぼことした棚田の場合、機械の走行が難しくなります。

このようにさまざまな問題があるため、現在は限られたエリアで実証的導入が行われています。将来的には、多くの農業地帯でのDXの普及が期待されています。

農業DXで実現したいこととは

農業DXを導入する際は何を実現したいのか明確にしておく必要があります。

農業DXで実現したいことは主に以下のとおりです。

  • 体力や経験が劣る生産者においても高品質、かつ安定した収量確保の実現→AIを活用した予測精度の向上、およびロボットの導入によって作業を自動化する
  • 少人数での大規模生産の実現→自動走行トラクタを複数導入する
  • 消費者の嗜好に合った食品の提供→農業者と関連事業者で情報を共有し合う
  • 化学肥料の使用を避け、使用時と同程度の収量の維持→高精度の土壌の生物性の状態測定、および収集したデータを活用する

農業DXを推進するポイントとは

アジャイル手法

アジャイルには「素早い」「俊敏な」といった意味があります。そして、アジャイル手法とは、優先度の高い要件からプロジェクトをその都度進行する手法です。

農業DXにおいても新しい技術を活用したり、消費者のニーズの変化に応じたりするためには、プロジェクト計画の柔軟な変更が不可欠です。また、課題を洗い出したり、手段を検討したりするよりも優先順位の高い小さな課題の解決を図ることも求められます。

データの活用

2019年、農林水産省は「スマート農業の社会実装に向けた具体的な取組について」を発表しました。ここでは、ほぼ全ての農家でデータ活用を2025年までに実践するという目標が掲げられています。

この提言にも垣間見えるように、データ利活用は農業経営で不可欠です。そうした中で、データドリブン経営の重要性も高まっています。データドリブン経営では膨大な情報ビッグデータを活用した分析結果に基づいて、意思決定や施策の立案などを行います。

例えば、IoTセンサーによる温度や湿度、土壌、照度の水分量を取得できれば、農作物についての状況把握を正確に行えます。また、栽培作物や品種の選定にデータを活用すれば、勘や経験がなくてもある程度の正確性で予測できるでしょう。

参考:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/nourin/dai12/siryou4-2.pdf

UI/UXへの理解

DXの推進には、現場がデジタル技術に対して興味を抱いていることが前提となります。デジタル技術を活用してみたい、業務負担をデジタル技術を利用して軽減したいといった思いがなければ、現場で普及させることはできないでしょう。

農業従事者の中にはITやデジタルに慣れていなかったり、苦手意識を抱える人が多くいたりすることを考慮した施策が必要です。デジタル技術を普及させる担当者が丁寧なサポートを行うことはもちろん、操作のしやすさを重視した機器であることが前提となります。

農業・食関連産業以外の分野とのパートナーシップ

農業でDXを推進していくためには、農業や食品関連産業にかかわらず、他分野とパートナーシップを結ぶことが不可欠です。これまではあまり関係していなかった業界とパートナーシップを結ぶことで、イノベーションを創出できます。

農業DXのプロジェクトと他の分野の関係性に着目して、良い効果を得るための連携方法などの模索が不可欠です。

農業DXの成功事例を紹介

農業DXの成功事例について現場、行政実務、基盤の観点から以下の表で分類しました。どのような成功事例があるのか確認してみてください。

現場スマート農業技術カタログによるスマート農業技術の提供・農業支援サービス提供事業者が提供する情報の表示の共通化についてのガイドラインの作成・スマート農業実証プロジェクトの開始・高精度のAI病虫害画像診断システムWAGRIの提供
行政実務データ活用人材育成推進プロジェクトの開始
基盤農林水産省共通申請サービスeMAFFの提供

上記の表に記載されているとおり、農業DXは各分野においてそれぞれ進んでいます。例えば、農林水産省共通申請サービスであるeMAFFが立ち上げられたことによって、申請者にとって足を運ぶ手間や負担が軽減されました。

また、データ活用人材育成推進プロジェクトも進んでおり、IT人材やデジタルに長けた人材不足の問題を解消しようという動きがあります。

現場においても農業DXが進んでおり、デジタル技術を活用した作業が少しずつ始まっています。

農業DXで成功するためには具体的なイメージを抱きながら施策を進めていくことが重要です。

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農業DXの導入にはSMSを活用するのがおすすめ

農業DXにおいてSMSを活用することで農作業の負担を軽減できるだけでなく、コスト削減も実現できます。

農作業では野菜の状態やビニールハウス内の温度、光の当たり具合の確認などが必要です。しかし、高齢化、かつ人手不足が課題となっている圃場では、作業に従事する人たちにとってこうした確認作業も大きな負担となっています。

大規模な農家であれば、センサーで畑やビニールハウス内の状態を読み取って、環境制御を自動化することもできるでしょう。しかし、こうしたシステムはコストが嵩むため、一般的な農家で使用するにはハードルが高いです。

そこでおすすめできるのがSMSの活用です。例えば、KDDIウェブコミュニケーションズが開発した「てるちゃん」は圃場の温度や湿度、照度の他、異常についても検知し、生産者に電話、メール、SMSで通知します。SMSは携帯やスマートフィンから手軽に確認できるため、問題があった際はすぐに気づけるはずです。

農作業にSMSを活用することで、少ない人数でも負担なく圃場を管理できるようになります。

参考:https://www.tel-chan.com/

法人向けSMS送信サービスなら「KDDI Message Cast」

法人向けのSMSサービスならKDDI Message Castがおすすめです。KDDI Message Castを活用すれば、携帯電話番号だけでメッセージを送ることができます。

1通につき660文字までのSMSを送れる他、画像や動画の送信も可能です。国内直収接続、かつKDDIグループならではのノウハウで運用体制を構築しているため、大切なメッセージも安心して送信できます。

また、初期費用は0円で、定額費用もかからないため、無駄なくサービスを利用できます。

まとめ

農業は私たちの暮らしを支える上で重要な産業です。しかし、後継者不足や労働力不足といった問題が深刻化しています。こうした問題を解消するために農業DXが注目されています。DXを活用することで、農作業に効率的に従事できるため、従事者の負担が軽減され、少ない人数でも業務をまわせるようになります。

本記事で見てきたように農業DXにはさまざまな種類がありますが、SMSを活用した農業DXもおすすめです。

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